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しずかのうみで  作者: 村井なお
第二章 神社の一日は早起きから
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10. 身を浄めて

「お待たせ」


 手水舎で少し待っていると、みちるさんがやって来た。


「さて、これから拝殿で実際に魂鎮めをおこなうわ。その前に禊をして身を浄めないといけません。神さまの御前で祭祀をするわけだから、失礼のないようにしないとね。それに神通力の効きもちがってくる。二人とも、手水舎での身の浄め方は知ってる?」


「柄杓で水をくんで、口をゆすぐんでしょ」


 わたしが答えると、みちるさんは首を横に振った。


「それだけじゃ不正解。ここでは手と口を両方浄めるの。見てて。まず右手で柄杓を持って手水をすくって、その手水で左手を浄める。次は逆に、左手で右手を浄める。そしたら左手に水をためて……」


 そう言ってみちるさんは左手の水で口をゆすいだ。


「そうしたら左手をもう一度浄めて、最後は使わせていただいた柄杓の柄を洗っておしまい。ここまでの作法は、神業とか関係なく、ふつうに神社に参拝するときにもやる所作ね。さ、二人もやって」


 のどかと二人、そろって両手と口を浄める。


 こういう決まった手順を守るのって、何だか儀式めいたというか、特別なことをしている気分になる。


「うん。それでいいわ。本当は祭祀の前にもっといろいろ禊をするものなんだけど、今日は基本だけで済ませましょう。さあ、拝殿に行くわよ」


 そしてみちるさんは参道の端っこを歩いて拝殿に向かった。


「参道の真ん中、正中は神さまの通り道だから通っちゃダメ。必ず端を歩きなさい」


 拝殿に着くと、みちるさんは賽銭箱のわきで草履を脱ぎ、階段をすたすたのぼっていった。


 その後ろでわたしとのどかはぴたりと足を止める。


「どうしたの?」

 と、振りかえったみちるさんが聞いてきた。


「えっと、本当にここ上がっちゃっていいのかなーって」


 わたしがこたえると、みちるさんは苦笑いを浮かた。


「だいじょうぶよ。拝殿はね、人が神さまに祈りをささげるための場所だから。ただね、今感じているためらいの気持ちは忘れないでいて。神さまへの崇敬、遠慮の念は常に持っているように。これも神仕えとしてだけじゃない。人として大事なことよ」


 そう言って、みちるさんは先頭に立って拝殿へと入っていった。



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