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英雄は砕かれた  作者: 大空界斗
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第五話 過去の過ち

家に到着。直後、天音から惚けた声が出た。

「疲れた…。」

「お前そんなに学校苦手なのか?」

「もちろん。」

不満じみた声をあげた。確かに、高校なんて怠い以外の何でもない。

「ほらよ、これでも飲んどけ。」

灯来は制服のまま天音に紅茶を渡した。

「あ、ありがと。」

それを制服のまま飲む天音。

「旨そうに飲むやつだな。」

「事実旨いしね、当たり前だよ。」

「ならよかった。」

灯来はその場で背伸びをしてソファに寝ころぶ。

「いっつ。まだ傷が痛むか…。」

「…大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。跡は残るかもだが、一二週間もしない内に治るだろ多分。」

「適当な…。あっそうだ。」

天音が灯来の方に向き直る。

「どうして灯来さんがLRPに入ったのか…聞いてなかった。」

「…教えろってか?」

「うん。」

興味津々の目を向けてくる出ない。勢いで負けてしまうではないか。

「あまり聞いてて気持ちのいいものではないぞ。」

「いいよ。」

「それ相応の覚悟がいる話かもしれない。」

「え…?」

「できないか?」

「いや…頑張る。」

「そうか…解ったよ、少し話す。」

聞くに頑張るもくそもないが、正直これは子守歌には厳しい話だ。ちゃんと聞いている限り眠れることはないだろう。

「…そうだな、どこから話そうか…。」

灯来は暫く考えていると、回答を口にした。

「俺の両親の話からするか。」

天音は首肯した。

 俺には二人の兄弟がいた。兄と弟が一人。ただの一般的な三人兄弟のいる家族。傍からみたらただの家族だろう。だが、両親の職業…いや、親父の職業は変わっていた。

 親父は少し金持ちの商店をやっていた。無論、何回か泥棒やらなんやらに襲われることもあったが、親父は何度もそれを退けてきた。親父は、元警察官で、柔道やらなんやら色んな技を覚えていて、俺たち三人にもそれは教えられた。俺も柔道、剣道、合気道らへんはかなり上の級の人に勝っている。両親が金持ちなのも相まって、海外で射撃経験も積んだ。まぁ、俺はもともと国に尽くすことに憧れていたんで、技術そのものを磨いていった。しかし、ある時、一家に悲劇が遅い狂う。

 当時中学の俺はドアを開け中に入る。そこには、撃退に失敗した兄弟が犯人グループに取り押さえられて横たわっていた。両親は仕事で不在だった。

「え?」

その現場を見た俺も当然の如く襲われる。

「ぐ、うぁあ。」

そのまま俺は意識を手放した。

 目が覚めたら、全く別の場所に移されていた。椅子に縛り上げられている。

「ど、どこだ…ここ。」

まず気が付いたのは、両親がいない。そして目の前に、兄弟二人の遺体が転がっていたことだ。死後数時間は立っていただろうな。何故俺だけ生かされたのか。犯人グループの一人がやってきた。

「お前は人質。そこの二人のようになりたくなければ、ちゃんと人質になりなさい。」

ちゃんとって何だちゃんとって。どうやら拷問にかけられるわけではないらしく、一安心したのもつかの間、もう一人の犯人が誰かと電話していた。

「こっちは人質がいる。あまり時間をかけない方がいいぞ。他の二人はどうなったか…。」

「名前を言わんと信じないだろ。俺は灯来だ。」

俺はそこで名乗っておいた。こいつらを舐めていたのは認める。こいつらは犯罪慣れしていないのは明白だった。恐怖よりも先に、兄貴に弟と、家族を殺されたことに対する憎しみが上をいっていた。

「ふん、俺たちに力を貸そうってか?それじゃ人質とは言えねぇな。」

「は?むしろ感謝してくれよ。お前らの欲しい情報くらい解る。」

「面白れぇ。その屁理屈二度と言えないようにしてやろうか。」

「望むところ…とは思わない。協力はしないが情報提供ならしてやろう。」

「ふん、どの身分だと。」

男は拳を握った。

「止せよ。いいじゃねぇか、面白れぇ。情報はあるだけ有利だぜ?」

電話をしていた奴が止めた。

「ま、俺の言う事を信じるかだがな…。」

「てめ、やっぱ殴らせろ!」

そこで俺は初めて、腹に痣を作った。

 数時間後、両親がここまで来た。金を持ってきたのだ。犯人は全部で五人いたが、その五人全員が金を受け取りにいく。瞬間、警察が入り、乱闘になった。その内に親父が俺を開放してくれた。しかし、もう一人いたことに気付かなかった。

「おーい、動くなよ。さもなくばコイツの首が跳ねるぜ?」

ありきたりの発言と共に、そこには今までとは違う、〝銃〟を持った奴がいた。明らかに犯罪慣れしている。お袋が捕まっていた。

「お前ら、軽く入試をミスってんじゃねぇ。詰めが甘いんだよ。」

こいつらの上司か。

「さて、誰か動け…こいつの首が跳ねる前にな。」

誰も動かなかった。親父も捕まり、他のメンバーも銃を取り出した。最後の言葉が下った。

「三、二、一。」

「動けよ‼」

警察の奴らは三人で来ていた。全員、足がすくんでいた。俺が叫んでも。

 親父が撃たれる。俺は動き出した。敵の銃弾をかわして。

「じゅ、銃を下ろせ‼」

そこでようやく警察の声が上がった。しかし、声が届く間もなく、銃声が響く。両親は信だのだ。その後は、覚えていない。気が付くと、辺り全員が地面に転がり、最後の一人が俺の拳で気絶した。

 警察署に同行され、俺は色んな尋問を受けた。その中で、俺は、

「警察は誰も動かなかった。今後、俺は警察を信用することは無くなるだろう。」

という旨の言葉を残した。外で、金髪を後ろで結んだごつい男が立っていたのを覚えている。

「ごめんな。」

急にそいつが首を下げたんで、俺は仰天しちまった。

「俺たち警察ごときが…不甲斐ないことをした。」

男は頭を垂れ、淡々と言った。

「いいよ、仕方ない。だけど俺はもう、警察を誰も信用しないだろう。」

「何か、罪滅ぼしをさせてくれ。」

「罪滅ぼし…ねぇ。」

ダメ元で、あるお願いをした。

「ある組織を作り出したい。」

「組織?」

「日本を支える、行政、立法、司法のどれにも当てはまらない最上位機関だ。」

「解った。」

「え?」

「内閣総理大臣は俺の知り合いだ。お前が協力してくれるならできるだろう。」

「…解った、協力しよう。」

「具体的にどんな組織にするつもりだ?」

「国の最上位機関に所属しない、違憲許可の警察補佐みたいなの。」

「…軍隊じゃないか。」

「違う。警察がちゃんとしてないからその見返りだ。三権のトップに絶対的証拠をつきつければ出来ない事はないだろう。」

「解った。協力させてくれ。」

「それはこっちの台詞だぞ。」

男はそれだけ言って右手を差し出した。

「よろしくな、俺は悔朱紅麗だ。」

「こちらこそよろしく頼むよ。俺は駆真灯来だ。」

そこで俺は紅麗と握手を交わした。

 そこからは簡単だった。紅麗から警察の証拠品を横流してもらって、それを持って三権のトップを集め、こんなことがあったんだよーって言ったら、許可くれた。曰く、

「君のような被害者ならともかく、警察は動かなかったのは国の責任。」

らしい。

「その責任を押し付けることの無いようにしたいが、君たちは保険として存在してくれ。」

ということだそうだ。因みに、憲法機関のトップは、やむを得ないのでは無く、実力として認めるとのことだった。どうやら俺たちは自衛隊判定らしい。

 過去の過ちを繰り返さないために。俺たちは無様にも、こうして出来上がったLRPを使いこなして、依頼をこなす万屋として世を忍ぶ形になった。


「ってとこだな。」

「…。」

口を開けて驚いた目線を送っている天音。

「だからあまり進めないと言ったろ。」

「あなたの実力を、国が認めたってこと?」

「まぁそういうことだな。試しに、警官と戦ったことがある。模擬戦とは言え、圧勝した。」

「わーお。」

すごい、この人本当に何者だよ。

「あ、そうだ。お腹見せてよ。」

「は?」

「筋肉、見てみたい。」

「ああ、そういう。」

俺は来ていたシャツをめくりあげて見せた。

「…すごい、割れてる。胸筋もちゃんとがっしり。」

何か会話が変な方向に向きそうな気がした。すぐさまシャツを戻す。

「今まで知らなかった。ごめんなさい。」

「知らなくて当然だし、謝る必要もない。」

灯来はそれだけ言って、部屋に入っていった。


「ここも外れか。」

紅麗は一人、灯来に頼まれていたあることを探していた。

「…簡単に炙り出せると踏んでたんだがな…。」

灯来の睨みによると、今回の猪狩組とやらには、裏があり、それはどこかで一度、警察に調査された対象らしい。ふと、紅麗は四年前の調査書に目を向けた。

「これ、懐かしいな。俺とアイツがであった頃のだ…。」

見た瞬間、目を見開いた。

「これは…ビンゴ…じゃなかろうか⁈」

声にならない声をあげ、紅麗はこの調査書を鞄に入れて警視庁を出ていった。

「こちら紅麗、例のものを見っけた。そっちは?」

『こちら風間、こっちも証拠品たるものを見つけました。』

「了解、お互いビンゴだな。謎解きもリーチといったところか。」

『いえ、まだ謎は深まるばかりです。すぐにでも合流しましょう。』

「解った。中身の拝見はそれからといこう。」

『了解です。』

「この町の最も大きな駅、その三階最も西側にある、〝所属〟店で待ち合わせよう。」

『解りました、直ちに向かいます。』

「頼んだ。」

俺はこれで謎の半分は溶けると踏んでる。だが灯来は、まだ何かあると言っていたな。早く事件の概要を掴まなければ、手遅れになる。

『紅麗、聞こえるか。』

「灯来⁈」

『単刀直入に言う。物語が動き始めるには、鍵が必要だ。まずは鍵穴を探せ。』

「何故そんなことを?」

『いいか、焦るな。もう既に異変は起き始めているということだ。』

「…解った。そっちも、しくじるなよ。」

『この期に及んで復讐をしくじるつもりはない。だが、それ以上の事態にはさせん。』

無線機が切れた。

 走る、ただ走る。三つの柱は崩壊を始めている。端的に言うとそう言う事だ。過去の過ちは繰り返されようとしている。それを止めるために、LRPは走る。

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