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英雄は砕かれた  作者: 大空界斗
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第四話 三本の柱

正直、風呂に入ってここまで悶絶したのは初めてである。灯来は、疲れ切って風呂場から出てきた。

「あの…どうしました?」

「やべぇ。傷むっちゃしみる…。」

「ご、ご愁傷様…。」

疲れ果てた灯来の顔を呆れた表情で覗き込む天音。灯来は気になっていたことを天音に聞いた。

「お前、敬語苦手?」

「ええ、まぁ、そうです。」

「…別に敬語解いてもらっていいんだが。」

「でも、今まで会ったこともなかったわけですし…。」

「そういうわけじゃないだろ。そもそもクラス一緒じゃないか。」

「そ、そうですけど…。」

「俺はどっちでもいいが、解きたくなったら敬語じゃなくてもいいからな。」

灯来はそれだけ言って冷蔵庫に向かった。

「な、なら、今からでもいいですか?」

「勿論。コーヒーと紅茶、どっちがいい?」

「紅茶で。」

「あいよ。砂糖やらなんやらはお好みで。」

「はい。」

灯来はコーヒーを口にする。

「それ、ブラックなの?」

「そうだよ。あまり砂糖とかは入れないかな。まぁ、濃いやつなら入れるかもだが。」

「苦いものは得意?」

「そうでもない。でもコーヒーはこのくらいが自分的には好みかな。」

「そーなの。」

「言ってる天音はコーヒー飲む?」

「そうでもない、かな。実際飲むときはミルクの一つは入れるし、苦いのは得意ではない。」

「紅茶も?」

「うん。なるべく一杯は砂糖を入れる。」

「とことんダメだね。好き嫌いとかは?」

「そこはあまりない。灯来さんは?」

「俺かぁ。…言われてみるとあまりないな。」

…思いつかなかっただけである。というか、敬語を解いた途端天音が話上手になった。恐らくだが、あまり他の人間に興味を持たないためか、敬語をつける癖ができたんだろうが、その敬語があまり得意じゃなかったって寸法だろうな。

「一つ、聞いていい?」

「どうした?」

天音は、自分が一番気になっていることを聞いた。

「前に、日本には柱がどうのって言ってたじゃない?それってどういうこと?」

「詳しく聞かせろ…と?」

「そう。」

「…解った。ただ、もう遅いから多少省くよ。」

「承知。」

「まず、この日本を動かしている絶対的な権力…なにか解る?」

「…政権?」

「それより上位な存在だ。今の日本を保っているのは憲法といっていい。」

「その憲法とやらが三つの柱の大本?」

「そう。憲法は、平和主義、基本的人権の尊重、国民主権を三つの柱に掲げている。」

「その柱が例の?」

「ちと違う。これはあくまで、方針だ。」

「じゃ、三つの柱とは?」

「まず柱の定義から行こう。柱ってのは、支えるもの。要は日本を支えている柱のことだ。当然、日本国家全体を支える必要があるんだから、柱になるべきものは権利だ。」

「権利…。」

「そう。学校でも習ったろ?行政権、立法権、司法権。それぞれ内閣、国会、裁判の権利に値していて、世界的には憲法の次に最も上位の存在とされている権利だ。」

「それが三つの柱…。」

「そう。この三つの柱は憲法の三原則に則り権利を行使しなければならない。これは国民として守るべき掟なんだが。だが俺たちは正直憲法に乗っ取っていない。武器を使っている時点で平和主義の項目に反しているからな。憲法九条なんかは主に…。だが俺たちは大丈夫なんだ。国民の中で、最上位の権利を行使できない代わりに、憲法以外の様々な権利を行使できる。つまり、違憲がある程度認められている。」

「でも、それだと―」

「そう。三つの柱のどれかに属している限り、違憲は認められない。〝国民〟である限り、国会に属している判定だからな。」

「まさか。」

「そう。俺たちは、〝国民〟でありながら、三つの柱に属していない。国会に属している判定の国民は、選挙権を持つ国民に限られる。子供は、少年法つって、別で法律に守られている。俺たちはその柱の外…部外者たちの集まりなんだ。」

「部外者…。」

天音は少し考えこんだ。

「どうしたら、部外者…いえ、四番目の〝柱〟に入れるの?」

「〝柱〟と表現してくれるのはありがたいが、入ることはできない。最上位の意思決定機関の判断で部外者たちのメンバーは構成判断が成される。俺たちじゃどうしようもない。」

「じゃあ、あなたは入りたくもないのに入ったの?」

「いや、違う。むしろ、自分から名乗り出たさ。たまたま議会で承認されただけ。」

「なら、私も―わっ!」

灯来は天音の肩に手をおいて、力強く唸った。

「ダメだ。こちら側に来てはいけない。お前は自分の未来を棒に振るう気か⁈」

「そう…よね。ごめん。」

天音は俯いて言った。

「悪い、強く当たっちまった。」

「ううん。私が悪いから、いい。何で灯来さんは、自ら四番目に?」

「…憎かったからだ。」

「え?」

「仕事をしない公務員共が…役立たずの国のトップ共が憎かったからだ‼」

灯来は怒声を響かせる共に、虚空を睨みつけた。

「…話はこれで終わりだ。遅いから早めに寝なさい。」

「…解った。」

それだけ話して、二人は解散していった。

 翌朝、天音は目を覚まし、着替えを澄ましてリビングに降りると、すでに灯来は着替えて降りていた。キッチンで朝食を作っているところの様だ。

「おはよう。」

「…おはよう。」

「もう少しで飯が出来るから待っててくれ。そこに置いてある水、飲んでいいから。」

「…ありがと。」

灯来は手際よく朝食を作り終え、テーブルに置いた。

「「いただきます。」」

二人は同時に声をあげ、朝食を食べ始める。トーストと軽いサラダ。灯来はとてもベタな朝食をもくもくと食べていた。物凄い集中力で、灯来は食べ終えた。

「眠れた?」

「…全然。」

「そうか。授業で寝るなよ?」

「あっ‼」

「?」

忘れてた、今日学校だ‼今何時だろう⁈

「落ち着けよ。今は六時半。起きてこなそうだから六時に音を出しておいた。」

「音?」

「そう。人間には、小さな音でも聞いたら目覚めが早まる音階がある。」

「だから寝起きが悪かったのか…。」

「次からちゃんと自分でアラームセットしとけよ。」

「うぅ、はーい。」

こいつ、朝が苦手なタイプの娘か。なるほどなるほど。

 互いに制服に着替え、荷物を持って外に出た。これまた三重の鍵で守られている。簡単な国家金庫みたくなっているこの厳重さ。灯来の家には、国家機密や武器がたんまりとある。ひとたび泥棒に踏み込まれれば、大変なことになる。だが、灯来は闇の中では有名で、出会ったら必ず捕まるという、謎のレッテルが貼られた有名人のため、この家に近づこうとはしない。ただ、顔は知られていないようで、犯人グループが灯来だと認識するまでビクビクともしないんだとか。勿論、正体がただの高校生だからバレないようにふるまっているわけで。通学路は必然的に天音と全く同じだ。天音は初めて通る道もあったらしく、若干迷っていたが、何とか学校にたどり着いた。一度来れば覚えるだろうと思いつつ、灯来も歩く。

「今日の放課後、部活?」

「うん、一応…。」

「じゃ、それ終わったら旧教科準備室に着て。あぁあと、後で連絡先教えて。」

「解った。」

それだけ言って天音は自分の友達だろう女子たちの輪に入っていった。

 すれ違いざま、ある緑髪の少年に灯来は一言呟いた。

「まだ残っている。あくまで、おびき出せ。」

その少年は、頷いたような気がした。

 残念ながらこの高校は校則が甘すぎることで有名で、銀髪や金髪の奴は普通にいる。自分はというと、髪の毛が思いっきり肩までかかっているが、注意されたことは一度と無かった。俺がいうのもなんだが、もうちと校則縛ろうぜ。

 夕方、今日も晴れていた。目の前の机に脚をのっけて思いっきりだらける。ここだけは、この空間だけはただでさえ甘すぎるこの高校の校則も一切が無効で、さらには上下関係さえも無縁である。扉から入ると、この空間を仕切っているそいつが、夕日に照らされつつだらけていた。

「おぅ、来たのか。」

灯来は脚を戻した。

「…行儀悪いよ?」

「悪いな、ここは俺のプライベートな空間なもんで。」

「自由ねぇ。」

天音は置いてあった横向きのソファに座った。

「あぁあと、君に紹介したい人物がいる。」

「紹介?」

「俺と同じ存在。そして俺の部下。そしてお前の同級生。」

「誰⁈」

窓の横にあるドアから出てきたのは、緑の目に緑の短髪の少年。身長は灯来より若干大きいくらいの少年だった。

「風間風輝だ。LRPの一員。俺よりも細かい諜報活動なんかを専門にしている。」

「よ…よろしく。」

未だ驚きながら挨拶をする天音。

「よろしくお願いします。」

丁寧に頭を下げて挨拶する風間。雲泥の差というやつだ。

「ってか、そこに扉なんてあったの…ですか?」

「気付かなかった?この隣は倉庫だよ。」

「倉庫?」

「色んな国家機密がある。入ったら瞬間、お尋ね者さ。無論、LRP以外はね。」

「は、はぁ。相変わらず規格外…。」

呆れて天音が言った。

「まぁ、同じ境遇ってことで一応紹介しておく。まぁ、あまり深くかかわることはないだろうがな。」

「はぁ。」

天音はまだ呆れている。

「今日は、依頼は特にない。明日以降、例の件で注意してくれ。」

「はっ。」

灯来はその場から立ち上がり、扉の方へ向かった。

「どこ行くの?」

「え?」

「え?」

久しぶりに噛み合わない二人の会話。

「…帰宅だよ?」

「あっそういう。」

天音が鞄を持って出ようとする。

「あ、私もここに荷物置いて行っていい?」

「ダメだ。LRPじゃない奴を毎朝ここに連れてくるわけにもいかん。」

「で、ですよねー。」

「悪いが勘弁願う。」

呆気なく断られてしまった。仕方ないんだけどね。

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