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英雄は砕かれた  作者: 大空界斗
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第二十七話 聖戦の果て

 全員が片腕を前に伸ばし、四つの魔法陣が開かれる。赤、紫、白、水色の魔法陣が光を放ち、拡大していく。灯来は天音を守るために伸ばした左腕に魔法陣を展開する。

「天音。これでお前は保護された。しばらく離れるが、じっとしてられるな?」

「…うん。でも、必ず生きて帰ってきて。」

「その依頼、承ったよ。必ず戻ってきてやる。」

そして灯来は、紅麗に目を向けた。

「紅麗。連中を仕留められるか?」

「無理に等しいがやってみる。だが灯来。俺にはどうもできん。」

「大丈夫。お前を殺させやしないからな。サポートしよう。俺が三人の動きを止める。お前は首を討て。その間に俺は、ホルンを。」

「ホルン?」

「あそこにいる、俺の親父を殺す。」

「まさかっ!あ、あれが、あの、武なのか…⁈」

灯来は、右腕にまかれていた布を引っ張り取った。直後、敵の溜め技が来る。それをかわしたのは、灯来と紅麗だ。

「お前、その石…。」

「そうだよ。この右腕の石…。これは、親父の攻撃によって埋め込まれた魔法の石。」

ホルンの方向を見て灯来はにらむ。再びきた敵の攻撃をよけながら灯来は言った。

「俺はこの体になったのは、強盗のせいじゃない。親父が八咫烏に反発したことで八咫烏商会所に一家全員とらえられ、そのまま人体実験のような形でこの体を作られた。俺のみが成功体だった。この親父と兄弟たちは、力を最大限に使うことができる。だが、自我がない。過去の記憶を持ったままの能力付与に成功したのは俺だけなんだ。力を最大限に使うことができるわけではない。だが、成功体は俺だけと言われた。だから、他四人の実験体を始末することになる。それが俺だった。だが、俺は親父との闘いに敗れた。躊躇い、相手の力で押し切られて。これはその時に負った傷だ。」

何度も何度も繰り返される敵の猛攻でも、灯来がひるむことはなかった。

「俺が公務員どもを恨んでいるのもそのせいさ。八咫烏は憲法より強い力を持っている。だが、その創設者はすでに死に、形骸化した組織そのものが残っているだけ。その力が暴走し、親父や俺をこんな悪魔に仕立て上げたのだ。…公務員は憲法に逆らえない。だとするならば、その憲法よりも強い力を働かせる八咫烏にも当然、抗えないのだ。」

灯来は一、二発敵に攻撃をあてるが、それでも敵三人には効力がまるでない。

「…俺が拘置所にいたのもそのせいさ。結局、力を使う勇気がない失敗作と言われ、俺は死刑にされるところだった。そこを紅麗。お前に助けてもらえたんだ。」

そう、天音に騙ったこととは全く違う内容である。

「これが真実だ。嘘偽りのない、俺の過去だ。」

そして、敵の兄弟との距離を一気につめる灯来。

「そして形骸化した八咫烏という組織を支配した奴がいた。」

目の前に群がる三人の頬に傷を作った。

「ホルンは…親父は暴走をし、八咫烏の権力を完全に吸収した。そして、八咫烏によってかくまわれていた日本軍の物資をアメリカ軍から受け取りながら傭兵で商売を始める。」

「それがっ⁈」

「それが俺たちの調べていた米軍への取引内容だ。だが、こいつらの組織系統は、下部の傭兵たちと上層部の幹部たちで完全に分離されている。だから猪狩組の連中は、自分が雇われている自覚もなしに、鍵沢の指示を聞いていたんだよ。」

一つ一つの矛盾が解決されていく。ここまで来て、もはや攻撃をやめる灯来ではなかった。直後、群がる三人の足が消えた。

「ぬっぐぁっ!」

「お前ら…腕、鈍ったな。」

「何を⁈」

「俺より強いはずだぞ…。」

そう見下す灯来。

「それは違うぞ。」

紅麗は会話を遮る。

「人を好きになれる奴ほど強いんだ。お前はもう、こいつらの数倍は強い。」

「…お前ほど面倒な性格のやつは初めてだ…。」

そして、彼ら三人の額に魔法陣が展開された。

「…魔力で拘束した。あとは頼む、紅麗。」

「おう。…あと、もう一つ聞きたい。」

「なんだ?」

「…砕剣ってなんだ?」

「…そこだけ、俺にもわからなかった。俺たちが今まで無力化してきた三つの下部組織。そして、その他の六つの下部組織。俺は、この組織たちを操れる権利を砕剣…砕権だと思っている。組織の砕権。組織を粉砕できる権利…。それ以上のことは読めなかった。」

「解った。…ホルンを頼む。」

「任せろ。」

そう言って灯来は過ぎ去った。そして、紅麗は自分に残された最後の武器である、ナイフを握る。そのナイフで、目の前の少年の首を切り裂くのだ。

「じゃぁな…。」

そう言葉を残して。

「ありがとな、紅麗。」

灯来も、そう言葉を残して。

 そして、最深部とも言えよう場所にたどり着く灯来。

「お前…もはやしゃべることもできないか…。」

ゆっくりと立ち上がるホルン。

「いいだろう。…さぁ、神々の、最後の聖戦…ラグナロク胎動の音を鳴らそうか…。」

直後、消えるホルン。合わせて、灯来はホルンの動きを探る。

「そこ!」

スコーピオンを構え、撃つ。左手で構え、撃つ。

「ここか!」

撃つ。

「らぁ‼」

撃つ。…だが。

「…やはり、当たらないか。早い。うぉっ!」

とっさに灯来は後ろにはねのけた。

「ㇰッ…。野郎、魔法石の使い手だったな、ホルン。」

無数に散らばる、黒曜石のさらに済んだ黒色をし、小さく尖った魔石が、次々と灯来に振りかぶる。それをナイフではじければいいのだが…。

「硬い…。やはり、ナイフでは手も足もでないか!」

装備していた三本のナイフのうち、二本のナイフが折れてしまった。

「グッ…チッ。」

悪態をつく灯来。

「またかよ…。」

彼の頬にかすり傷ができていた。

「ダメだ!」

一旦後ろに退く灯来。ホルンの動きは見えてきたが、まだ石の動きがつかめていない。

「ㇰッ。ダメだ、まだ。まだ退くな‼」

そう自分を鼓舞し、再びリングに上る。ホルンはなおも、数々の魔石を灯来めがけてはなっていた。それを、下に。上に。右に。左に。突っ込みながらかわしていく。スピードを下げる。また上げる。魔法陣が現れる。魔石の弾道を予測。かわす。右にそる。左にそる。また右にそる。こんどは上、下。そのすべての石をかわしきり、一気にホルンとの距離をつめる。そして、突きの一撃を食らわせた。

「今だ。」

そう言って灯来は、連続で殴りを繰り返し、その後回し蹴り。からの相手の懐に潜り込み、アッパー。そして、後ろに重心が倒れたところを、天井から叩き落す。だが、地面につく寸前、ホルンは瞬間移動をしてその攻撃を免れる。灯来はバランスを崩すが、そのまま前回りをして体制を立て直した。だが、その一瞬だった。

「あ。」

数々の石片が、灯来の目を目掛けて高速で放たれたのだ。

「ㇰッ、しまっ…うぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」

この日、初めて灯来は悲鳴を上げた。

 …瞬間、俺は左によけていた。だが、よけきれず、俺は右手で右目をかばっていた。その後上げた俺の悲鳴。俺は、立ったまま痛みに悶絶して。…その右腕が、額から抜けない。…恐らく、石片によって固定されてしまった。…なら、引き抜くまでだ。ビシャッ。あたりに鈍い音が響く。ドロドロの液体が滴り落ちるような、そんな音である。

「…もう、知らんよ。」

痛い。だが、それがどうした。痛みなどしらない。俺は、引き抜いた右腕に力を込める。右目は完全に眼球がつぶされていた。もう二度と物を見ることはできないだろう。だが、それがどうした。知ったことか。俺には、俺の成すべきことがある。目の前の…。

「目の前の敵を…。始末する。」

瞬間、再びホルンは石片を俺目掛けて放つ。だが、それももうどうでもいい。俺は、最後のナイフをしまったまま、スコーピオンを持ったまま、右手でその石片を一つ一つ掴んでどかした。刺さる。痛い。右手も、右目も、痛い。だが、知らない。

「痛みなんて、知らない。そんなもの、捨てた!」

そういうなり、俺は一気に距離を詰める。だが再び召喚された石片をよけるのだ。スコーピオンでそれを受け止めた。

「チッ…。もう、使えないか。」

俺はそれを放り投げた。

「長い付き合いだったな、スコーピオン‼」

その、今投げ捨てた相棒の仇を撃つべく。仲間たちの仇を、天音の仇を撃つべく、俺は戦う。戦うことに意味はない。だが、天音を守る。彼女を救う。彼女の仇を撃つ。そのためだけに戦う。戦え、駆真灯来。お前は勝てる。

「人を好きになれる奴ほど強いんだ。」

先ほどの紅麗の言葉を頭の中で反芻させながら、俺は戦う。

「死ね!」

そう叫び、瞬間移動で一気に距離を詰めるが、その時の魔力を感じ取ったホルンは、逆方向に瞬間移動する。だが、その程度で諦められない。

「んなっ‼」

ほぼゼロ距離。目の前に魔法陣を展開され、数々の石片が召喚された。

「ㇰッ!」

それを、右手の平で掴んで外にやるのだ。手に食い込む石片。骨まではやられなかったが、外側の皮膚は破けに破け、右手は血だらけになっていた。手を伸ばす。ホルンの襟に届いた。灯来はそのまま、背負い投げる。そこから、灯来のコンボが始まる。

「もらった。」

殴る。蹴る。一瞬でその二つを出したのち、再び五回連続で殴る。その後、バランスを崩したホルンに足払いし、今度は下に潜り込んで再び背負い投げる。からの殴り。これを何度も繰り返し、ホルンの体中をズタボロにした。そして最後。首を中心に攻撃し、首回りの肉がえぐれたあたりで、灯来はホルンの頭をつかむ。

「…じゃぁな、親父。」

血まみれの右手でホルンの頭を、返り血まみれの左手で首を抑え、ホルンの首を取った。

 血まみれ。誰にも合わす顔がないが、灯来は天音のもとに来ていた。

「灯来…その顔…!」

「すまない天音!…俺を信用しろって、言ったのに!…こんな。…こんな結果なんて‼」

灯来はそう強く言い放った。

「顔を上げて?ね?灯来。…あなたはよく頑張ってくれた…私なんかのことを、必死に守ろうとしてくれた。輪郭もわからないほど超巨大な組織に、こうして立ち向かってくれた。私には十分。今まで誰も信用できなかったわたしには、十分すぎるほどの誠意をくれた…私なんかのために戦ってくれた。…私は今、幸せよ。」

そう優しく灯来に語り掛ける。

「…だが、天音、お前は俺のせいで―」

「灯来‼…お前、前に言っていたよな…。本当に守りたいやつがいれば、そいつのことを守り切りたいって。どうなんだ灯来⁈今の告白は、嘘じゃないんだろぅ⁈」

傍で聞いていた紅麗が、灯来の言葉を遮って声を上げた。

「…ったく、煩いなぁ紅麗は…。」

苦笑しながら、その場でよろよろと立ち上がる灯来。

「…嘘なわけあるかよ。依頼は反故になんかしない。天音を守る。生涯通して、守り切る‼…これが俺の、誓いだ‼」

そう言った灯来の拳は固く握られ、彼の片目しかない目が薄暗い地下で赤く輝いた。その誓いを聞いたように、ホルンの遺体から気体のようなものが出てきていた。

「…魔素か。おいおい、本当に…。どうやったら死ぬんだよ、親父。」

その魔素は、質量はないが質量のあるものにダメージを与えてしまう。灯来は、残されたたった一つの武器を見て気付いた。

「…砕剣といったな。あれは九つの下部組織を手駒に変える手段だといったが、どうやら違うらしいな。」

「は?」

「ライはホルンを倒した。つまり、砕剣は、俺自身が持っていたものだったんだ…。」

灯来は身切れを掲げた。直後、天井からがれきが落ちてきた。灯来は魔力でドーム状の天井を生成し、天音と紅麗を守った。

「…残存のLRPと、〝仲間たち〟が待ってる。行くぞ、天音、紅麗。」

そう言って灯来は、魔法で階段状に瓦礫を移動させた。

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