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英雄は砕かれた  作者: 大空界斗
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第二十四話 仲間たち

 隣接する第二格納庫が制圧されるのも間もなくだった。この次は、武器庫。…第三格納庫である。最も大きなその格納庫は、世界でも一二を争うまでに多くの戦闘用武器が貯蔵されている。通常の歩兵用の突撃銃や拳銃、狙撃銃を初め、機関銃や固定用の重機関銃、ヘリに装着するようなミニガンや大型のガトリングガン、大砲まであるのだ。この武器庫に唯一一種類もない砲撃を数えるのは、片手で足りるだろう。その一つが、弾道ミサイル。彼らは、ロケットのような大型のミサイルは、核爆弾を搭載することも可能のため、保持していない。また、無反動砲の様なロケットランチャー等の貯蔵数も少ない。だが、探せばある。そんな超巨大武器庫であった。

「…であるからに、ここには多くの火薬も貯蔵されている。くれぐれも当てるなよ。」

「…当てたら多分、無差別殺人用ピタゴラスイッチが始まりますので。」

「笑顔で怖い事言うな。」

風輝の冗談に、灯来が突っ込んだ。

「お前、たまにそういうとこあるから怖い。」

「そうですか?これでも、灯来さんと同い年で実力も下ですよ?」

「…解ってるけどな!」

そんな他愛もない会話をしていた。戦場では、緊迫した状況でかつ、精神が追いつめられる。こういう冗談で笑えるほど、戦場では自我を保ってられるのだ。そう灯来は信じている。

「敵は…前方に二名。俺がいく。」

「ちょ、灯来さん!」

「いい。…別動隊をこっちに寄越しておけ。ここを制圧できたのはかなり強みになる。」

「…了解。」

灯来は飛び出す。音もなく。周囲に、他の敵兵はいなかった。ナイフを持って、後ろにいる奴のうなじを切り裂く。断末魔の叫びを響かせて息絶えた。振り向いたもう一人は、喉元でナイフを寸止めしてやった。

「…動くな。」

そいつは、黙って銃を下ろした。

「…ここの見張りはお前ら二人だけか?」

そいつは、黙って首を大きく、何度も何度も縦に振った。

「少なくないか?」

「…いいえ。あなた方がここまで来れる…だなんて…。…ㇶッ!」

さらにナイフを押し付けるが、コイツの言葉はそれまでだった。そこで、灯来はナイフで、そいつの喉元を切った。その場で、息絶えた。その返り血を浴び、灯来の顔の右半分が赤く染まる。一瞬の叫び。それが木霊し終えた頃、彼はここに息絶えた。

「全員、仮拠点設営。」

「何故です⁈」

突如、灯来がそう言った。隊員たちはみな、その意味を理解できなかった。

「すくなくともここ、A区画には敵はいない。あんだけ叫べば誰か来る。」

その一言で、A区画の制圧が完了したと紅麗に報告されたのだ。

「…同様に、B,C,D区画も制圧する。それが完了次第…。」

灯来は溜めて、こう告げた。

「…仲間たちを動員しろ。」

「了解。」

 仲間たち。それは、我々LRPが、これまで味方にしてきた敵戦力だ。敵たちも、俺たちに寝返れば貴重な戦力だ。信用はできないが、使える駒にはなる。

「適所に配置してやれ。それが俺たちの駒になるんだ。」

『了解だ、灯来。…お前のしてきた行動の意味が、解ってきた。』

「…言ったろ。いずれ解る。」

『お前な…。報告だが、このペースなら夜明けごろには目的地、管制塔だ。』

「そんなにか…。チェック。現在時刻は?」

『午前三時半だな。』

「日の出時刻は一時間後か…。よし、拠点設営は五班に任せた。できるか?」

「了解です‼」

「うん。他、一から四班はB区画、六から九班はC区画を頼む。特殊班は俺とD区画だ。」

「「了解‼」」

「五班!…防衛ラインだ。任せたぞ。」

「了解!」

その声を背に、灯来は扉の向こうへと消えていった。

 その他の区画でもそうだ。二人しか警備がいない。明らかに手を抜いているように感じる。何か、敵にも秘策があるのか。周囲に緊迫が走った。

「こちら駆真。第三格納庫制圧。別動隊を派遣してくれ。」

『了解灯来。思った以上に速いな。』

「警備が二人しかいなかった。手薄なのはかなり気になる。」

『把握した。こちらから情報を提供するなら、そちら側は特に警備が薄いようだ。周囲には目立った変化はない。結論から言うと、まだ俺たちは未発見…ってとこだろう。』

「なるほど了解。先ほど尋問の末、一人が吐露った情報をそちらで解析してくれ。録音を効かせる。」

『了解。敵の、本部内部の警備状況をそちらの端末に転送しよう。』

「頼む。」

そう言って、灯来は紅麗との連絡を切った。そして一口、水を口にする。木箱があった。彼は、その上に立った。

「これより、〝仲間たち〟と合流次第、本部に突入する。その間、紅麗が情報を解析したものを端末に転送してくれる。各班、確認の上行動せよ。」

そう言って全員は、背後からの気配を感じて後ろを向いた。

「…見ろ。こんなにも。〝仲間たち〟が…。」

仲間たちと呼ばれた、敵が寝返った部隊が到着したのだ。

「俺たちは、もはや負けない。負けることはない。諸君ら、最初の心境はどうだった?正直、この軍勢に勝てないとでも思ってた路?…否定はしない。事実、俺も、勝てるなんて思ってなかった。でも、希望はあった。お前たちを信頼しての希望だ。それが、俺たちをここまで運んでくれた。俺たちはもはや、後戻りすることはできない。後戻りする気もない。そうだろ?」

歓声が上がった。うぉーだの、そうだぁだの、どれも感嘆符のつくものばかりの叫びだ。

「俺は、負け戦はしない。そういう主義だ。…だが、今回ばかりは、負け戦じゃないのだ。俺たちは、彼らに勝つことができる。今、王手が見えてきた。もう少しで、王を取ることができる。だが、完全に詰ませなければ、敵は再起し、再び我々の駒を奪いに来るだろう。その前に消せ!奴らの、痕跡もろとも、この世から消せ‼」

その灯来の演説に、再び歓声があがる。

「俺たちが狙うのは、敵軍の制覇でも、この拠点の奪還でもない。何より、人質の救出。そして何よりの、チェックメイトだ‼俺たちはナイト!短し夜を走る、騎士だ‼」

「「おぉーー‼」」

「俺たちは、勝つために来た‼」

「「おぉーーー‼」」

「なら何すれば勝てる?ここで指をくわえていれば勝てるのか?…いいや勝てない。戦って初めて、人は勝てるのだ。さぁ、戦うぞ‼」

「「おぉーーーー‼‼」」

「陣形を整えろ!」

全員が、扉の前で整列していた。

「灯来さん、紅麗さんから情報が転送されました。」

「了解。さぁ、最後の大仕事だ。俺たちはこの、かつての家を取り戻し、天音を救い出して初めて、作戦が成功する。そのことを深く胸に刻め。そして、忘れるな。今日はまだ、誰も死んでいない。だが、いつも死とは隣り合わせだと。これまで死んでいった仲間たちの思いも背負っていることを忘れるな。」

そう言うと、灯来は彼らの先頭に出た。陣形が変わり、本部は灯来が中心に制圧をしていく。

「さて諸君。開始の時間だ。もうじき、夜が明ける。帰ってきた暁には、宴ができることを期待しよう。」

そう言って灯来は、手を伸ばしスコーピオンを虚空に向けた。

「突撃‼」

その一言で、部隊は動き出した。

「特殊班は、紅麗たちの道を開くため、兵士寮裏側の東側通路を制圧。一・二班は兵士寮を制圧。残りで本部、管制塔を制圧。完了次第風輝に連絡しろ。」

「「了解‼」」

「さて…今まで主に特殊作戦を遂行してきた特殊班だが…。風輝。君には、本部の連中の制圧を指揮してくれ。」

「え?」

「お前の力が必要だ。彼らも、それを期待している。」

「私なんかが…よろしいのですか?」

「なんかとか言うな。お前の功績は確かに素晴らしい。才能も、その心も、感心するものがある。お前は自分の信念を全うしろ。」

「…はい。全力でやらせていただきます!」

「それともう一つ。…お前が編成した精鋭班を、紅麗たちの外部班と合同で合流させる。お前には、そいつらの指揮も頼みたい。」

「…どうして、そんなにも大役を?」

「…お前、そう言ったんだろ。」

「はい?」

「…影の主権者になるってな。」

風輝は、目を見開いた。

「なら、皆にその実力を見せてやれ。…これがお前の初仕事。俺からの依頼だ。」

「…そうでしたね。…万屋…紛いのLRP…。はい。その依頼、確かに‼」

そう言って風輝は、身を翻して、本部制圧の隊の輪に入っていった。

「俺たちも、行くぞ。」

そう言って灯来たちは四人、逆へ行く。通路の…十門にもなる銃座を片付けるために。

「敵。目の前に四人。…構えろ‼」

右舷を見ていた一人が叫んだ。思わず、灯来は身構える。ナイフを三本、いつでも投げれるように身構える。姿勢を低くして、敵をよく観察する。

「…確か紅麗は、ここには十人以上の人数は見えなかったと言っていた。」

「…八、九、十人です。目の前のこいつ等で、全員の様です。」

「了解した。…敷地の外側。こっちに、丘がある。そこから回り道しよう。」

「了解です。」

「だが気を付けろ。…ここの丘から少しでも外に外れると、敵の哨戒範囲だ。」

全員が頷いた。彼らは、敷地の鉄柵を軽々と超え、丘の影を通っていった。そして、突撃ポイントに到着した。

「…ここが突撃ポイントです。」

「よし。俺、右舷、左舷、後方の順で降りる。全員で本部側の五人を倒した後、反対を仕留める。レディ。」

灯来は、全員と目を合わせた。

『こちら一班。制圧完了。』

そう連絡をもらった。そして、息をそろえて駆け出すのだ。真夜中。ほとんど明かりもない中、彼らの瞳孔は開き、ある程度は見えるようになっていた。今までは室内。格納庫や通信支部。どれも明かりがあった。だが、ここにはそれがない。それでも、彼らは飛ぶのだ。飛ぶことしかできないのだ。

 敵襲。その二文字すら言わす時間も与えず、まずは五人。仕留める。他の三人は味方の三人に任せた。俺は目の前の二人を殺る。…一人目は、口を抑えつつ声帯事切り取る。二人目は、口を塞ぎながら首をへし折り、声帯ごと切る。深く、ズバっと。肉を深くえぐる。ただそれだけ。反対の連中が、俺たちに気付くこともなく。他の三人も、反対側のやつに攻撃をした瞬間、こっちを向いた二人の敵に、俺はナイフを投げた。一人は額を、一人は喉元を突かれた瞬間、俺が手の平で二人に刺さったナイフを押し込んだ。これだけで、敵は死ぬのだ。人間とは、弱い。これだけで死ぬのだから。命は脆い刺された二人の最期の叫びは、狭いこの空間にだけ響くのだった。

「こちら駆真。紅麗、東側の連絡路を開通。クリアだ。」

『本当に仕事が速くて助かる。よし、俺たちも移動しよう。』

「頼む。LRP全体は外で待機だ。紅麗。お前は、精鋭班と外部班だけ連れて、この銃座を見張っててくれ。精鋭班は、風輝たちの班と合流するんだ。」

『了解した。』

 その報告は、早すぎた。だが、紅麗たちの準備も速すぎた。彼らはすでに準備を終え、灯来たちの元に移動を始めていた。

「灯来…あの野郎、かなり強くなったみたいだ。…昔のあのクソガキ姿を知ってる俺からしたら、大したもんだよ。」

「…まさに、紅麗さんにとっての灯来さんは、息子の様なものなんですね。」

「まぁな。…あいつが家族を失ってからずっと寄り添ってきた。信頼してるぜ、灯来!」

そして、歩く足を速めたのだ。

「灯来‼」

「紅麗‼」

二人はそれぞれ声をあげた。」

「…遅くなってすまねぇな。」

「んなこと言うな。早すぎさ。…お前のおかげで、ここまでこれた。感謝してる。」

「何言ってるのさ。…これは、お前の実力。お前と、風輝と、ここにいる全員の実力だ。」

紅麗は、ここに集ったLRPの面々と顏を合わせた。そして、灯来と目を合わせ、頷く。

「そうだな。…俺のじゃない。俺たちの実力。俺たちの戦果だ。無駄にはしない。」

そう言って、灯来は、再び宣言するのだ。

「奪還作戦最終フェイズ…これより、突入だ‼」

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