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英雄は砕かれた  作者: 大空界斗
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序章 Lie-最後の強者

 死亡の覚悟、悲痛な叫びが木霊する、この絶海の地球(ほし)の檻の中、今日も世界は恐怖に染まる。数々の死者を生み出してもなお、彼らの進行は止まらない。

 聖なる大賢者と四大騎士の内の三名の騎士。彼らが従えた九つの騎士団は、世界を恐怖の色に染め上げた。世界各地に点在していた城々は、やがて己の限界を知った。人類は、外界を放棄、何年もの籠城の末、遂にスキは打ち砕かれた。

 絶対的な力を持った大賢者と三名の騎士は、九つの騎士団を三つに分解し、それぞれ日、月、心の名を賜った。

 数百年の静寂は、一人の謀反者によって覆った。

 勇者、ここに誕生し、彼の者は武器を手に、大賢者の前に立ちはだかる。その前、三名の騎士、立ちはだかる。

 彼の者の武器、名を、「砕剣」と言う。砕剣、騎士の三名の剣を破壊。切っ先は大賢者の目の先に向けられた。

 背後より、日の騎士団。左舷より、月の騎士団。右舷より、心の騎士団。しかし彼の目に、三つの騎士団は無く、彼の視界にあったのは、聖なる大賢者ただ一人だった。

 遡る事二年前、彼の者は聖域をすべる龍を打倒し内包するその剣を天高く掲げ、支配者たる大賢者への復讐を誓う。彼の反旗に、数々の民草、勇気を得た。

 連戦と激戦が幾もの時間を奪い去り、次々と日、月、心の騎士団は敗れ敗れと倒れていく。最後、勇者の腹心、三名の騎士の首を打つ。滴り落ちる血液は、最後の合戦の地、この城の白き壁を赤く染め上げる。

 勇者、砕剣を抜刀する。大賢者、女神召喚する。

 他の者は皆、女神に跪く。しかし、ただ一人、勇者は違った。女神が勇者目掛けて走る。その横を、勇者は通り過ぎて、女神は勇者に振り向いて、一刃の閃光は、大賢者の大杖が受け止める。

 圧倒的な力を持ってもなお、大賢者は勇者を苦しめた。しかし、終い、大賢者の杖は砕剣によって、粉砕された。

 崩れ落ちる大賢者、勇者は再び砕剣を天高く掲げ、切っ先一点に集中する。

 その一太刀、大賢者の首を奪い去る。

 権力は一切を切り刻ん。民草を苦しめし大賢者、ここに滅ぶ。三度天高く掲げられし砕剣は、貪欲な黒雲の隙間から現れる神々しい光を浴びた。

 彼の者の剣、誰の手にも届かぬ場に、今も在り。砕剣、誰も実物と思わぬ場に、今も在り。貪欲の権力から救った、勇者の雄姿、英雄として百代まで語り継がれん。

 終い、彼は一つ、言葉を残した。その言葉、誰の耳にも届かぬ場に、今も在り。が、誰の目にも届かん場に、今も在り。刻まれし文字は、前世まで語り継がれる。

「予ぞ、謀反者。予こそ、四大騎士の最後の一人。」

前世まで語り継がれよ。彼の者の名は、偽り(Lie)。



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