六十二話〜勇気程暴力的な物は無い〜
あ～あ、明日からまた学校かぁ、絶望しか感じられないよ。
「ややや、やばいよ！ どうするのさ！ 流石にラムもこんな数は対処できないよね？」
流石に、ラムの盾が一撃で破壊されてしまったところを見てしまうと、ラムでは防げないように思えてしまう。ただ、ラムはボクみたいに焦っている訳ではなく、ただその一面を無言で眺めていた。
「そんなに黙ってみてるけど防げるの？」
「あはは、君は何を馬鹿な事を言っているんだい？ そんな事が僕に出来る訳がないじゃないか。僕はもう諦めてるんだよ」
もっと駄目だった。まあ、ラムの言う通りボク達は生き残れる可能性が零なのだから、大人しく殺されても良いのだろうけど、普通にボクは生き残りたい。……それにあんな精神異常者に殺されるなんて事は嫌だ。なんでそんなしょうもない死に方をしなければいけないんだ。
絶望の許容量を超えたためアップデートを開始します。
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終了しました。
秩序、審議、に続き、絶望、希望が追加されました。
属性が二つを超えた為アップデートを開始します。
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世界の管理者から、真なる管理者に進化しました。
主神が既に一体いる為、第二神に移行されました。
属性が二つ以上になったので、精神が持ち応えない為属性を、分割します。
名称、ライムは秩序、審議。名称、ラムは絶望、希望に別れました。
「ふぇ？ 何これ」
急に現れた画面にボクは反応してしまった。色々と何かになったようだ。て言うか今までってボクが神で、ラムはまだアルスの眷族だったのか。……だったらボクは秩序を全く守ってなかったんだけど良かったのかな？
「ん？ 何か力が増えたように感じたのだが」
（ラムっ！ 能力を使って！ て言うかもう神だってバレていいから本気を出そう！）
（えぇ、まあ、良いけどさ）
「「機械仕掛けの神！」」
以前とは違い、何故か翼は金属製になっていたが力が漲っているようだった。この機械仕掛けとか言う奴はきっと、ロールプレイングゲームで言う、強化系って奴なのだろう、で無ければこんなに力がみなぎる訳がない。
「なっ！？ 貴様は神だったのか、まあ、貴様如きでは私には敵わんがな」
しかし、エンフィーツからしたらボク達は恐るに足らない存在らしく、笑いながらゆっくりと崩壊の邪法をボク達に近づけて来ていた。勿論、それはボク達が防げない事への驕りなのだろう。
「ふふ、そんなに驕り高ぶっていても大丈夫なのかな？」
「はっ！ 何を馬鹿な事を、貴様はどうせ死んでしまうだろうに」
そんな状態の中、急にラムがエンフィーツを煽り始めた。
確かにエンフィーツは現状、驕り高ぶっているが、エンフィーツの言っている言葉のほうが正論だ。それに、ラムの発言も少しだけ調子に乗っている、これじゃあ良く分からない。
「正義は窮地に陥る程強くなるんだよ？ だから本当は一撃で倒さなければいけなかったんだよ」
「な、なにを」
流石に様子が可笑しいラムに対して警戒心を抱いたのか、少しだけ後退りになりながら崩壊の邪法の速度を少しだけ上げていた。
まあ、ボクからしたら、死にかけているせいで精神が狂ってしまった、って言う可能性の方を考えちゃうんだけどね。
「勇者的論理」
……どうやらラムは別に頭が可笑しくなってしまった訳では無い様だ。いや、厨二病と言う意味で言うなら可笑しくなっていると言えるだろう。
「ふん、それが何か？」
「君は馬鹿だなぁ。どんどん崩壊の威力が下がっていっているじゃないか」
ボクもエンフィーツと同じ様に思った。やっぱり狂ったのかと思っていると、いきなり崩壊が目に見える勢いで縮小しているのが分かった。
「な、何ぃ！？」
「ふふふ、君は崩壊するのに特化している様だけれど、希望、又は勇気というものは諸刃の剣ではあるが、勇気等と言う物程理不尽な物はない」
エンフィーツが消えていってしまっている崩壊に対して。力を加えているようだったが、ラムに使った勇者的論理によって生成すら邪魔されているようで、何も起こってはいなかった。
「そして勇気、希望は絶望を呼ぶ。深淵の闇」
「ぐがぁぁぁ！！！」
ラムがそう唱えると、エンフィーツが頭を抱えながら叫び始めた。その叫び声は雄叫び、と言うよりも悲鳴の方に近く。ラムが何かしたのは明らかだった。
「そして勇気と言う物は時に悪となり、絶望となり、希望となり、慈愛になり、そしてすべてを無にすらできる。それ位、勇気という物は異常な物だ。何せ勇気と言う物は家畜にだろうが昆虫にだろうが、何にだって存在するからだ」
今すぐにラムの頬をぶん殴りたい。それも北海道から東京に吹っ飛ぶ勢いくらいで、ただそんな事をしたら自分まで死んでしまうので出来ない。
ごめんね。君はこの後に厨ニ的発言をした事を一年くらい悔やむかも知れないけど、それを止める事ができないボクを許して。
「まあ、これで終わりだ。死は絶望の元に」
ラムがそう唱え、エンフィーツの体はどんどんと風化していく、しかしその最中にもエンフィーツは叫び、暴れていたが、結局跡形もなく消えてしまった。
「ふう、終わったね。……どうしよっか、一度アルスに会いに行く？」
ボクが立ち尽くしているラムに向かってこれからの事を話し合おうと思っていたのだけど、少しだけ落ち着かせたほうが良いのだろう。
人殺しをしてしまった罪悪感、もしくは厨ニ的発言をした事への圧倒的後悔。それかそれ以外の何かの要因で立ち尽くしているのだからね。
「ん〜、どうやらアレスが来てるみたいだね」
違った、立ち尽くしていたのはどこかにいるアルスを探していたのだろう。神の能力でも使ったのだろうか、だったら滅茶苦茶しょうもない使い方だが、普通に目視だとほざきだしたらそれはそれでヤバイ。例の民族？ 部族も驚きの視力だよ。
「おーい！ 君たちは一体何をしたんだっ!」
その数十秒後、ラムが行った通りアルスが現れた。
アルスは叱責しようと思ったのか、それともボク達を心配しに来たのか、怒りと慈愛の表情が入り混じった可笑しな表情になっていた。
「なんか異世界の神とか言って攻撃してきたんで反撃しただけですよ」
「それ程度であんなに魔力が乱れる程度には力を出したの？ 髪の可能性は零に近いのに？」
始めに言われたのは説教の言葉だった。
まあ、流石にあんな神法を使ったのはアルスにバレるのは当たり前と言えば当たり前なのだが、そしてボクだって精神異常者としか思えなかったエンフィーツに対してそれ程力を加えるのは可笑しいと客観的に見れば誰でもそう判断するだろう。
「いや、だって消滅とか使ってきたんだもん」
「はあ、だもんじゃないでしょ？ ……はあ？」
流石にボク達が一般人相手に無差別的なテロ行為をした訳では無いと、ほんの少しだけ理解できたみたいで、ボク達の話を聞いてくれるようになった。
「それはどう言う事？ 本当に消滅を使っていたの？」
「そうだってさっきから言ってるじゃん」
少しだけ会話するのが怠くなってしまったので、少し適当に相槌をしながらアルスの話を聞いていた。
