五十七話~テンション程上下の移動が激しい物はない~
「いや、別に洗脳してもそれほど驚異ではなかったので……」
「「(はあ)」」
ボクが普通に思っていた事を口に出すと、この場に居る気絶していない全員からため息を吐かれた。勿論ラムからもだ。
「君達勇者ならまだ脅威は無いだろうけど、俺やそこのレティシア等じゃあの量の魔法は対処できない。そう言うことを確りと考えてくれ」
ハンガス先生は呆れながらも優しく教える様な感じで語り掛けてきていた。まあ、ボクはハンガス先生の命の恩人と言うこともあり、あまり強く怒る気には慣れなかっただろう。ただ、「洗脳されて……」と発言した時に一瞬だけ表情を変えていたので何か考えているのだろう。
「まあいい、何事もなかったのだから。じゃあ、皆は気絶している生徒達を頼む。ああ、ライムはこっちに来い」
何が何事も無かったのかは良く分からなかったが、何故かボクだけが呼び寄せられた。まあ、大方、状況説明やらなんやらを偉い人に報告しに行くのだろう。若しくはボク自身と相談か何かを。まあ、ボクよりもラムの方が確りしているから、ボクは代弁するだけなんだけどね。
(……おい、自分で考えると言う事を考えろ)
なんかラムが言っているけど聞こえなかったね、何故かノイズみたいなのが入った気がするよ。まあ、ボクは使えるものは使って行く主義だからね。今文句を言われていようとも変わらないからね。
そんなコントの様なやり取りをしながら、ボクはハンガス先生について行った。
「良し、じゃあ話そうか」
そして、人気のない場所に着くとハンガス先生が話始めた。まあ、帝国の手がこんなところまで広まっている事はあまり伝えたくないから、こう言う所で話しているんだろう。
「じゃあ、まず、さっきの光はなんだ?」
「……あれ? そっちの話ですか?」
始めに質問してくる内容は、洗脳やら、ハイドリヒ先生の事とかを聞いてくると考えていたから、その事を思わず口にしてしまった。
「そうだ、今は生徒達の安全の方が大事なんだ!」
何故かハンガス先生は、焦った様にと言えば良いのだろうか? それとも怒った様に。まあ、どちらでもいいが、かなり語気を強めて質問をして来た。
可笑しい、何故生徒達の洗脳を解除した魔法をそんなにしつこく聞いてくるんだ?
(ライム、少し情報を暈して伝えてみて、少しだけ怪しい)
(やっぱり? そう思うよね)
どうやらラムも同意見らしい。まあ、実際決定権はボクに有るけど実際の決定をしているのはラムに変わり無いからね、今回もその意見を聞くよ。…まあ、それで被害を被っても責任は決定したラムだしね。
「まあ、普通に魔法ですよ」
「あんな魔法は無かったと思うが」
ボクが平気で嘘をついたが、流石にこの世界の常識も知らないボクが嘘を吐くと言うのは難易度が高い。まあ、そう言うことで完全に言い逃れ出来る言い方が分からなかったので、適当に言ってみた。ヘルプッ! ラムッ!
(貴方が知らないだけだと思いますよ? 普通に有りますし……って言えばいいんじゃないの?)
「ハンガス先生が知らないだけだと思いますよ? ボクが普通に使ってますし」
ふふふ、必殺! ゴーストライター作戦! これによりボクの迂闊な発言ではなく、ラムのまともで確りした発言をして安全に会話できる! それにこれで問題が起きてもボクのせいではなく、ラムのせいに出来て責任を押し付けられる! 完璧な作戦だぁ。
と言う風に何故か馬鹿の様にはしゃいでいた。まあ、勿論ラムからはため息を吐かれていた




