五十六話~教師の勘違い程イラつく物はない~
「な、何をするんだ!」
「……」
ボクの障壁により、危機一髪魔法がハンガス先生に当たらなかったが、魔法を撃ったこと自体が罰すべき行為なことは一目瞭然だし、立派な殺人未遂だ。だからハンガス先生がキレるのは普通だ。
「……実戦訓練ですけど? 炎槍」」
「水球、ふざけるな! ここは教室だ! これではただの殺し合いだ! それに俺は戦闘は出来ないんだ!」
ハンガス先生は、威力の低い水球で相殺していたが、そもそも魔導化学科の先生と言う事で魔法のコントロールは確りと出来ているが、戦闘は出来ないらしい。まあ、製作系の仕事をしていても自分で作った武器が扱えるとは限らないからね。
「……だからなんですか? 一斉射!」
その男子生徒が合図を出すと、ボクの様な勇者とレティシアさん以外の生徒全員がハンガス先生に向けて、様々な魔法を放った。流石にこれはハンガス先生に対処は無理で、呆然と立ち尽くしていた。
ぼふぼふぼふぼふ。
ボクもこれだけの魔法を一斉発射するところは見たことがなく、と言うか地球には魔法が存在しなかったので見入ってしまい固まっていたが、ラムは確りと行動をしておりハンガス先生の周りに障壁を張っていた。
「ふんっ、これが防げたからと言って慢心するなよ。爆発」
「「「爆発!」」」
しかし魔法を放っても、一応神であるボク? ラムの障壁を破れるわけがなく、滅茶苦茶に爆発していたが全くハンガス先生には聞いていなかった。
「ば、馬鹿な!? この量の魔法を撃ってもびくともしないだと!? な、なんだこの障壁は!?」
流石にいくら撃っても罅すら入らない障壁に疑問を感じだして居る。ただ、その男子生徒以外は黙々と撃ち込み続けていた。ラムが言った通りなら全員が洗脳されていて、一人だけ別の洗脳の仕方が違うのだろう。そう言う洗脳系の物語で良くある設定なら嬉しいのだが……。
(今はそんな馬鹿みたいな事を考えて居る場合じゃないんじゃないの? 別に君が今すぐに問題を解決させたいのなら出来るんだけど?)
(そうですね! ボクが馬鹿でした! だから解決して!)
いま、相手は混乱しており固まっている。洗脳、と言うか魔法を掛けるには一番よいタイミングだ。それを伝えようと思ったのだろうが、ボクが、こう言う展開だったらなぁ、と言う考えをしていたのでキレてしまったのだろう。全く、その短気さは誰に似たんだか。
(はあ、分かれば宜しい。ただ短気なのは絶対に君に似ただけだよ。呪縛消去)
ラムがそう唱えるとボクの手から虹色の光が生徒たちに向かって飛び出していった。
少し待つと光が収まり、そこには地面に寝転び気を失っている大量の生徒が現れた。
「こ、今度はいったい何なんだ!? もう訳がわからない!」
流石にここまで一度に色々な事が起きると錯乱するようで、ハンガス先生は叫んでいた。まあ、ボクでも殺されかけて、そのあと死んだと思ったら何故か生きていて、その後に殺人未遂犯が気を失って倒れていたらボクもそうなると思うよ。
「ああ、大丈夫ですよ、ハンガス先生、あの人たちはハイドリヒ先生に洗脳されていただけですから」
ボクはハンガス先生を落ち着かせようと、やさしく語り掛けたつもりなのだったけど、ハンガス先生はボクの台詞を聞き黙りながら方を震わせていた。何故?
(はあ、全く、君は本当に間抜けだね。普通に考えて洗脳されていた事の何処が、されていただけ、になるんだよ。馬鹿じゃないの? 本当に僕の本体とは思えないよ)
……なんか凄く毒舌だよねラムって。こう言う所は真面目にシンノスケに似たよね。ボクは性格は悪いけど毒舌ではないし。
「何処がだけなんだ!」
ボクがラムの毒台詞に対しての考察をしていると、黙りながら肩を震わせていたハンガス先生がボクに向かって怒鳴ってきた。……ボクは悪くないのにね、こう言う所が学校の嫌な所だよね。




