五十四話~刺激ほど人を変えるものはない~
「ふう、これくらいかな、スッキリした」
レティシアさんと同じ様な言葉を聞いたのはあれから三十分後だった。その時にはもう授業開始五分前だった。
実際、レティシアさんは遅刻してもならないかもしれないが、ボクが遅刻したらボコられるのは確定なので、少し不味い。
「あ、あのさ? その、時計を見てから言ったら?」
ボクはその事をシンノスケに教えようと、出来るだけ刺激しないように言うと、少し訝しげな表情をし、壁にかけている時計を見て固まっていた。
「……ヤバいね、どうしよう?」
そして、レティシアさんも気付いたようで、二人揃ってあわてふためいていた。
ただ、ボクは種族的に滅茶苦茶早く走れるので、走れば普通に間に合うレベルなので慌ててはいなかった。
「ヤバイねって、君が説教してこんな時間になったんだから、君が責任をとるべきでしょ?」
そんな状況で、ボクの他人を弄る欲求が沸き出ない訳がなく、ボクは弄るのを開始した。
「そ、それなら説教する原因を作ったライムがーー」
流石に焦っているらしく、日本人と言う人種の特徴である他人に押し付ける、と言う行動を取り始めていた。
「それなら説教し始めた方が悪いよ! 実行犯は君だよ!」
ボクが声を大きく叫ぶように言うと、更に場は混乱した。あと、ホームルーム開始まで一分だった。なのでボクも急がないといけない時間なのでもう走ることにした。
「ういしょ、じゃ」
「って、逃げるな!」
ふふ、逃げるなって言われて、止まる逃走者が居るわけがないじゃないか、そもそもボクは教室で、本日第三ラウンドの説教をされたくないんだ。だからごめんよ! 人間と言うのは利己的な生物なんだ!
「あ、あほが結構ギリギリの時間にやって来た」
ボクが教室につくと、いきなりサトウに馬鹿にされた。意味が分からない。学力で言えばボクの方が圧倒的に高いのに。
「黙れ極度のサディスト、別にボクはあほじゃない」
「あははっ! そんな見た目で凄まれても。向こうよりも可愛くなってるから意味がないよ」
別に地球でのボクより可愛くなっているのは分かってるよ? それは男子全員に当てはまることだよ? でも、後半は要らないんじゃないかな? 向こうでも可愛かったから意味ないけど。
「サディスト過ぎて、好きな人から嫌われてる奴よりは良いよ」
「あ?」
サトウには元々好きな人が居たが、サディストと言う事でその人から嫌われている。しかもその好きな人と言うのはコウタだ、脳内も腐っているが、目も腐っているようだ。
「それによりにもよってコウタって、目が腐ってんじゃないの?」
「……」
(あぶなぁっ!)
サトウが黙りながら、いきなり首へ手刀をかましてきた。ラムに守られ、何事もなく、別に今のボクは機械種と言う事で死ぬことはないが、人間だったら普通に死んでいた。
「な、何すんのさぁ!?」
「ん? 死んでもらいたかったからだけど」
どうやらサトウは、ボクがコウタの事を馬鹿にしたせいで、サディストからサイコパスに進化したようだった。
そして、何故かアルスに睨まれているような気がした。




