四十七話~神ほど俗な物はない~
「んっ、んうぅ」
ボクが目を開けると、そこはテーブルと椅子が二つ有るだけの真っ白な空間だった。そしてその椅子には翼を生やした女性が座っていた。
「はあ、ライムの方は起きたか」
そんなことを言われ、ボクがなぜこんなところに居るのかを思い出した。たしか説教をするためにここにつれてこられたんだっけ?
「あ、あれぇ? ここはどこだぁ? あのぅ、出来れば元のところに返してもらいたいんですけどぅ」
ボクがそんなことを言うと、またまた、アルスは頭を抱えながらボクを見てきた。
「私が君を逃がすとでも? あと、少しは反省しようと思わないのかい? まあ、いいよ、君は一応神の一人だからな、しっかりと落とし前を付けないと」
アルスがそう言うと、なぜかボクは動けなくなった。まあ、それは道理だろう。ボクも説教する相手が逃げ出そうとしていたら捕まえるよ。
「そう思うなら、しなければ良いだろう? それなのにそんなことをするって、そんなに虐められたいの? まあ、そんなに虐められたいのなら苛めてあげるけど?」
そう言った瞬間、凄い快感が生まれた。勿論、そんなことをするとは全く思っていなかったから、声が出るのを防げなかった。
「ひぁぁっ! って、やめろぉ!」
「う~ん、私は性癖は特になかった筈だが、そそられるな」
やっぱりアルスが何かをしたようで、ボクを少し欲情が入った目でボクを見ていた。そして、ボクは不規則に途切れ途切れで流れてくる、電流のようなものに翻弄されていた。
「んぅぅぅっ! 説教するんじゃなかったのかよ!?」
「いや、ラムが起きるまでの間は、ね?」
ボク見るアルスの目は、完全に捕食者が獲物を見る目だった。
「んっ、んうぅ」
僕が目を開けると、そこはテーブルと椅子が二つ有るだけの真っ白な空間だった。そしてその椅子に座った、翼を生やした女性が僕抱き、僕は何故か地面に水溜まりを作り、失神していた。
「あ、……おはよう?」
そんな事をアルスが言い、僕は何故ここに居るのかを思い出していた。
確か、説教する筈だったと思うけど、今の状況は幼い男女を誘拐し、その片方の女を襲った事後のような状態だ。まあ、様な、ではなく、本当なのだが。
「だ、大丈夫だよ? だから後ずさらないで?」
そう言いながらゆっくりと、言葉を囁きながら近付いてくる様は、不審者のそれと、何一つ変わりがなかった。
少し時間が経ち、ライムが目覚めた。
普通なら、それを合図に説教が始まる筈だったが、それよりも先に、僕が性犯罪者もしくは誘拐犯を説教していた。
「ら、ラムっ!? 大丈夫!? それに近付くと危ないよ! 襲われるから早く離れて!」
「そ、そんなに言わなくても良いじゃんよ」
ライムの起きた後の第一声が「危ない! それに……」と言われ、流石に頭のイカれてる、アルスも精神的なダメージを受けていた。勿論、そんな風に思われる行動をする方が可笑しいんだけどね。自業自得だよ。
「ほら、君がどれだけ可笑しい行動をしているか理解できた?」
「いや、だって、ライムが誘ってくるからぁ」
アルスは僕が説教をすると、怒られた子供の様にしゅんと、小さくなっていた。それよりも、アルスが発した、「ライムが誘ってくるからぁ」と言う言葉により、辺りの空気が凍てついた。
「ん? ライム? 申し開きはある?」
「ち、違う! 誘ってなんかないから! 勝手にアルスが判断しただけだから!」
僕がライムをジト目をで睨むと、ライムは慌てて僕に伝えてきた。……ああ、もう秩序の審議使おうかな。
「秩序の審議」
そう唱え、脳内に出てきたのは、アルス、有罪と言うことだった。




