二十八話~オートモード程頭の可笑しい物はない~
すみません、結構遅れてしまいました。申し訳ございません。
「勇者達はわかっていないと思うから言うと、ここには結界が張ってあって、致命傷になるような攻撃が入りそうになると、自動的に外に転移されるから、全力を出していいぞ。この結界が壊れるなんて事は絶対に起きないからな」
ボク達が訓練場に着くと、昨日レティシアさんに言われたこと説明してくれた。多分本気を出せってことなんだろうけど。……戦闘技能を使わないで戦ってみたいから、あまり本気は出さないけどね。
「ああ、因みに、私の教育のモットーは実践重視だから、道具とかも使っていいぞ」
じ。実践重視だったのか、ここは貴族も通ってる学園なのにね。
「じゃあ、最初は勇者の力がどれくらいかを見るために、勇者同士で戦ってみて」
「……はい」
「なんだ文句があるのか?」
ボクが乗り気が無さそうに言ったことが聞こえてしまったらしく、ハイドリヒさんがボクの事を無表情で見てきていた。……だって、勇者たちの訓練とかを見ていたけれどそこまで強くなさそうなんだもん。
「じゃあ、ライムと、そこのサトウで」
どうやらボクの態度が不愉快だったらしく、ボクの対戦相手は勇者達の中では一番がたいの良い元女子になった。ただ、ハイドリヒさんは勇者たちが全員性転換をしていて、実際は今現在女子の方が平均的に強いことを知らないらしい。……まあ、サトウはかなり強い方なんだけどね。
「ライムを傷つけるのは忍びないけれど、ライムを傷つけるとどういう表情をするのかも楽しみなんだよね。だから覚悟してね?」
ボクが銃を構えると、サトウが急に頬を上気させながら、猟奇的なことを言いだした。因みに、サトウさんは、超弩級のドSです。
そして、その事を知らない、学園の人たちはざわざわと、騒ぎ出した。
「お、おい、俺、今なんか幻聴が聞こえたぞ?」
「お、俺もだ、「傷つけたらどんな表情をするのか楽しみ」って、聞こえたぞ」
「ま、まさか、勇者たち全員がこういうように頭の可笑しい性格なんじゃ」
サトウの言ったことを聞き取った生徒が、ほかの生徒に伝え、伝わった人がまたほかの人に伝え、というループを繰り返し、すぐに全員がサトウが言った言葉を理解していた。そのおかげか、ボクに同情の目線を向けてくる人もいた。同情するなら変わってくれ!
「開始!」
ハイドリヒさんはこの喧噪の中で試合の開始の合図を出した。生徒たちはハイドリヒさんの合図に気付いていない様だったが、サトウが開始した瞬間に放った殺気により戦闘が始まったことに気付いたらしかった。
パンッ!
「我を彼の者からの攻撃を跳ね返せ、物理防壁」
ボクが開幕射撃を行ったが、流石に銃の存在を知っているサトウには効かず、物理防壁? という魔法で弾かれてしまった。そのことは予想道理だが、これでまともに戦える武器は、銃についている銃剣だけになってしまった。なので戦闘技能を使うしかなくなるが、それだと人外認定されてしまうが、それ以外に方法がない。
勿論、ボクには形状変化というものがあるが、それを使うと文字通りの人外と言う事が、いろいろな人にばれてしまうので、実質それは選択肢に入らないよ。
「電気よ、我の命令に従い槍となれ、雷之槍!」
飛んできたのは、レティシアさんが放った火槍よりも速い、帯電している、と言うか電気そのものが槍状に向かってきた。
流石にこれ以上は戦闘技能ではないと無理なので、ボクは戦闘技能に、サトウをボクの体に危険が無いように負けさせる。という命令をした。
「凄いね、これを所見で避けるなんて、私が開発した魔法なのに」
「なッ! あいつが作った魔法なのか!? こんな出来の良い魔法をこの世界で生まれた我々で難しいといわれている魔法開発を、異世界から来た奴が成功させたのか!?」
どうやら、雷之槍はサトウが開発した魔法らしい。そのせいで生徒たちが驚いていたので、この星の人達も、魔法開発をするのは難しい事らしい。適正職業が、魔法開発者とかって奴なのかな? 有るか分からないけど。
「だけど、もうライムには飛び道具はないからね! 私の方が圧倒的有利なんだよ! 雷之槍!」
ボクが遠くに攻撃できないことに調子に乗って、雷之槍を連発してきた。勿論、ボクは戦闘技能の力ですべて避けているので、ダメージはない。ただ、雷之槍の弾幕が凄くて近づけず、じり貧状態になっている。
「あ、あの数の魔法を、魔法も使わずに避けるだとッ!?」
「でも、どちらも攻撃できないからジリ貧だろ、まあ、女の方が不利だと思うけど」
観客たちがボク達の戦いに見入っていた。
すると、戦闘技能は、銃剣の付いた銃を片手で構えた。……それは何なのかな? ボクの体は特攻しても傷付かないような頑丈な体とでも示しているのかい? そうかもしれないけれど、ボクの精神に異常をきたしちゃうかもよ?
「ま、まさか、突撃でもする気なのか!?」
「さ、流石に無理だろ! そんなのを耐えれたら流石に化け物だぞ!?」
生徒たちもボクと同じようなことを思っているらしく、更に騒がしなった。
ボクが、この後に起きることに、少し絶望していると、急に腕を振りかぶった。
ブワンッ
「「は?」」
周りの喧騒はなくなり、ボクも併せて呆然としていた。
どうやら銃を投げ、それがサトウに当たったらしく、サトウはいなくなっていた。……な、投げちゃったよ、槍でもないのに。
「しょ、勝者はライム」
試合が終わったのでレティシアさんの方向を向くと、顔を真っ青にして、こちらを見てきた。新しいアクションだけど、多分おびえてるんだろうね。投げた銃、壁に突き刺さってるし。
「うぉぉ! 勇者ってスゲーー!」
「こ、これならAクラスに勝てるんじゃないか!」




