二十七話~自己紹介程精神的苦痛が有る物はない~
すみません、テスト勉強期間なので一週間に一度投稿にしたいとおもいます。
見てくださっている方には、申し訳ないです。
「はあ、ライムさん、かなりギリギリですよ? 今日が初めてなんだから、もう少し早くきたらどうなんですか? それと、案内を頼んだレティシアさんは?」
教室に入ると、そこには寮長のハイドリヒさんが居た。
「その、遅刻しそうなので置いて来ましたけど、何故ここにハイドリヒさんが居るんですか?」
「あら? 言っていなかったかしら? 私は第一学年Cクラス担任兼、化学科顧問なのよ、だから私はここにいるの。それよりも置いてきたってどういう――」
ハイドリヒさんが、レティシアさんの事を聞こうとしたとき、丁度レティシアさんが教室についた。滅茶苦茶走ったらしく、完全に息は上がっていた。ぷぷぷ、遅刻してやんの。
「ぜぇ、ぜぇ、あ、貴女、色々なことを私の言っておいて、自分だけ、遅刻していないというのは、少し卑怯すぎますよ?」
「んふふ、卑怯も何も、レティシアさんが遅いのが問題なんじゃないかな? 結局遅刻したんだし」
ボクがレティシアさんを挑発すると、またまた、顔を真っ赤にしてプルプルと震えだした。あはは、やっぱりレティシアさんは面白いね。
「はあ、今回の遅刻は不問にするから、レティシアさんは早く座って」
「くっ、私は悪くないわ! すべてあの人が悪い!」
そうやって、ボクを指さし、自分の無実を証明しようとするが、周りの人達はそれを微笑ましく眺めていた。レティシアさんはボクを睨みながら言ってきたので、優越感がすごかった。
「はあ、じゃあ、右の人から自己紹介していって」
この学園には一学年に六クラスあるらしく、ボク達、勇者三十名は全員第一学年に振り分けられる。だから、今立っている勇者は、男二人と女三人の五人だ。
因みに、クラスはAからFまであり、Aに近付くほど成績が良く、逆にFに近付くほど成績が悪い。成績の付け方は、季節ごとに行われている筆記試験の成績と、毎月の実習試験の成績で決まるらしい。
「はい、俺は……」
「……」
「……」
「……」
ボク以外の四人の自己紹介が終わった。今、ボクの心臓はバクバクと音を鳴らしていた。勿論、自己紹介なんてものは、人見知りのボクからしたら地獄だ。簡潔に済まそうかな。
「えと、ボクはライムです。よろしく」
ボクが自己紹介には思えないほどの短さで締めると、皆がボクの方を見てきた。
「じゃあ。紙を渡すから自分の席に座ってね」
紙には、ボクの席の位置と、ボクの授業の時間割だった。時間割は
一、化学科
二、地学科
三、戦士科
四、戦略科
五、六は上記なら自由に、学級の事をやっても良い。
木曜は全授業学級内でやる。
と言う事が書いてあった。
そして、ボクの席は一番奥の、一番窓に近い席と言う、余り人と関わらなさそうな位置になったが、何故かレティシアさんの隣だった。
「あらあら、何故私を見て苦虫を噛み潰したような表情をしているんですか?」
「あはは、それは横の席に人君だったからだよー。それとね? レティシアさんも苦虫を噛み潰したような表情をしてるよ」
ボクは嫌々、レティシアさんの横の席に着いた。その時、ボクの顔を見たのか、表情のことを言ってきた。ただ、レティシアさんの表情も硬く、同じような気持ちを抱いているようだった。
「それはそうよ、性格が私の会ったことのある貴族のすべてよりも、貴女の方が性格が悪いんですもの」
「それはこっちの台詞だよ、ボクの友達も大概下衆いのが多いけど、レティシアさんほどの下衆はいないよ」
「なっ、私はそんな低俗そうな勇者共よりも、この私が下衆だと? 笑わせてくれる。ただ、貴様は侯爵令嬢の私に喧嘩を売ったと言う事をしっかりと理解できているのだろうな?」
ボクがレティシアさんに下衆、と言うと、レティシアさんは、表情をなくし、口調を変えてかなり威圧的に話しかけてきた。多分、レティシアさんは普通にキレているんだろうけど、あまり怖くはないね。カシモトみたいに殺気が載っていないし。
「んん、まあ、とにかく、学級の席だけ隣ですが、他の時はできるだけ近づかないでください。授業に集中できなくなります」
「それはボクも同じだから近づかないけど、今日って木曜日だから結局意味なくない?」
「煩い! こういう注意をしないと貴女は絶対に挑発してくるんだから」
レティシアさんがボクの事をどう思っているのかは、知らないけれど、ボクはそんなシンノスケのような行動はしないよ?
「そこの二人! 遅刻ギリギリだったくせに何を呑気に談笑しているんですか!? 今度の学級対抗で貴方達二人は決定です! 異論も認めませんッ!」
ボク達が論争していたのを、ハイドリヒさんは談笑していたと勘違いして、学級対抗? と言うものに参加するのを決定されてしまった。
「レティシアさん、学級対抗って何ですか?」
「はあ、学期末に行われる行事よ、学級で五人ずつ代表を出して、それぞれの代表たちが戦うのよ」
学級対抗というのは、体育祭の決闘版のような感じらしい。クラスのほかの人たちも言っていた気がするが「あの生意気なAクラスをぎゃふんと言わせようぜ!」と言っていたので、多分Cクラスの目標は、驕り高ぶっているAクラスへの反逆、みたいな感じなのかな?
「先生! いくら勇者だからって、強いとは限らないです!」
「なら、文句は二人に言ってください。これは罰です。まあ、全く戦えないとなるのなら変えますが、まあ、レティシアさんは決定ですね」
眼鏡をかけている、女子生徒が、ボクの強さの事を不安に思っているらしく、先生に抗議し始めた。「あ゛ぁ? 私の力が信用できねぇっていうのかぁ?」とかは言いませんよ? そもそもボクは、眼鏡さんの意見に賛成ですし。
「と言う訳で、今日は勇者と皆の力を確かめるために、トーナメントを第二訓練場でやるわ、だから早くついてきて」
ハイドリヒさんは、雑に言うと、何事もなかったように、皆は動き出した。多分この様子だと、いつもこんな感じなのだろうが、……これが教師でいいのかな? 下手したらシンノスケと同レベルな位乱雑じゃね?
「貴女は何ぼけっとしているのよ? そんなに参加したくないの? 一応言って置くけれど、このクラスで一番強いのは私なのよ? それに勝てたんだから、そこまで心配しなくても大丈夫だと思うわよ?」
「え、え、誰? 何でレティシアさんがボクの事を気遣うような事を、ま、まさか! 偽も――」
ボクがハイドリヒさんの雑さに呆然としていると、レティシアさんが、学級対抗に出たくないと思ったのか、ボクを気遣うように話しかけてくれた。その言葉は理解できたけれど、その言葉を発した人が全く理解できなかった。だって、あの下衆侯爵令嬢だよ? 気遣いという言葉の真逆の人生を生きてそうな人だよ? これで理解できる人がいるのなら、それは人間のような別の生命体でしょ。
「くっ、人が心配して差し上げているのに貴女って人は本当にッ!」
「あはは、それの方がまだ良いよ。心配されると、裏に何かあるのか? とか、気持ち悪ッ! って思っちゃうから」
「ふんッ! その余裕が何時まで続きか見物わね、私は今回は本気でいきますので」




