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受付嬢は思うがまま  作者: 栢
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受付嬢曰く「来るのはいいけど面倒な人」の話

お久しぶりです

 ここ王都にある冒険者ギルドはさすが王都と言わんばかりにいつも活気に満ち溢れている。でもまあさすが冒険者ギルドとでもいうべきか、常に騒々しく問題がおこるのも日常茶飯事だ。ここでは年齢層も様々、男女、種族の縛りもなく強さだけがものを言う。本当にいろいろな人が集まってくるのでただいるだけで一日があっという間に過ぎてしまうのだから面白い。

 ・・とまあつまりここは俺のお気に入りの場所だってことだ。広い室内の中並べられたテーブルを一つ陣取り昼間っからギルドに訪れる奴らをつまみに酒を飲む・・、こうしていると自分がこの国の『王』であることも忘れてしまう。さすがに政務があるため毎日はこれないが、何度宰相たちに注意されようともここに通うのだけはやめられない。

 クククと一人で笑いながら酒を煽ると周りの奴らが不審そうな目でみてくるがどこかに護衛が潜んでいるだろうし問題はないだろう。


「・・ん?」


 もう酒がなくなったか。今日は特に気分がよくて思いのほか飲むスピードが早かったらしい。空になってしまったビンを振っていると一人の女が近づいてきた。


「ねえお兄さん、まだ飲み足りないでしょ?私と違う場所で飲みなおさない?」


「ほう?」


 王である身のためこんな風に声をかけられるようなことはそうない。思わずニヤリと口角をあげると女は俺が乗り気だと勘違いしたらしく隣に座るとわざとらしく腕に胸を押し付けてきた。

 しかしお兄さんか。確かに俺は王にしては若くまだ28だがそれにしてもお兄さんとは・・。


「ククッ」


「ねーえ、いいでしょう?」


「悪いが俺はここが好きなんでな。飲みたいならそこで飲んでいるといい。」


 笑いながらも軽くあしらった俺に女は不満そうに眉をひそめたがこれ以上絡んでも時間の無駄だと判断したらしい。今度は付き合ってよと言ってから離れていった。

 王でなければ誘いに乗っただろうかと考えるが結局はただの空想に過ぎない。・・とりあえず酒の追加だな。


「メアリー!!」


 壁のところでクエストの整理をしている背中に呼び掛ける・・、が何の反応もない。揺れている赤ピンクの髪とギルトの制服からして間違いなくメアリーなんだが。周りが騒がしくて聞こえてないのか?


「おいメアリー!!」


「・・・。」


 もう一度声をはりあげるとめんどくさそうに半身だけ振り返った。何も答えないメアリーにニヤリと笑いながら空のビンを持ち上げて見せる。


「追加、だ。」


「・・・。」


 いつもの無表情だが明らかにめんどくさいというオーラがあふれ出している。しばらく無言で見つめ合うがこの状況がめんどくさいというばかりに舌打ちをすると裏から酒を取りこちらにやってきた。


ドンッッッ!!


「・・・どうぞ。」


「悪いな。」


「本当にそう思っているなら二度と頼まないでください。」


「それはできないな。俺はお前に持ってきてほしいんだ。


・・・あからさまにはあ?っていうその顔はやめろ。軽く傷つく。」


 何年も通っているせいか無表情なのになんとなくだが心情が分かるようになってしまった。まあこいつの場合目は口程に物を言うというやつで表情がない分顕著に目が語っているというのもあるが。


「あなたに給仕することは私の仕事内容に含まれていないのですが。」


「じゃあ俺専属のメイドにでもなるか?


・・・だからその顔はやめろ。」


 結構本気だったんだがな。仕事はできるし冒険者たちに影で血まみれメアリーと言われるくらい腕が立つのも知っている。こいつが俺の専属メイドになってくれたらかなり役に立つだろう。


「とにかく私の仕事を増やさないでください。これのせいで仕事が遅れ私の勤務時間がのびようものなら容赦はしません。」


「お前本当に仕事が嫌いだな。毎日定時で上がって家でなにやってんだ?」


「あなたに言う必要はありません。」


「お前なあ顔は整っているんだ。少しにっこりとしてみたらどうだ。」


「必要ありません。」


「いつも世話になっている礼だ。仕事が終わったら夕食でも奢ってやろう。」


「必要ありません。」


「お前少しでも考えてるか?」


「必要ありません。」


「俺からの食事の誘いを断るのは?」


「当たり前です。」


・・・そこは必要ありませんというところだろうが。

それにしてもガードが堅い。余計なお世話かもしれんがいつも淡々と仕事だけして定時には家に直帰(とは限らないけれども)とは退屈ではないのだろうか。はっきりと年齢を聞いたことはないが年頃の娘だろうに。もっと楽しそうに過ごしたらいいものを。


「・・俺はお前を気に入っているんだ。楽しく日々を過ごしてほしい。」


「私は・・、それなりに毎日楽しいですが。ここは前に比べれば楽しいところです。」


「・・メアリー、」


 表情の変わらないその顔の下になんとなく悲しげな様子がみれた気がして思わず口をつぐむ。良く考えればこいつ自身のことはほとんど知らない。もしかすると過去になにかあったのだろうか・・・。


「俺になにか出来ることがあれば」


ふっ・・・


「お人好しですね。」


「おいお前、今、笑ったか・・?」


漏れたような声にパッと顔を上げると微かに口元が綻んでいたような気がした。もっとも既にその面影はないが、


「気を使っていただかなくても問題ありません。強いて言うなら先程から私に探るような視線を向けているあなたのお連れ様をなんとかしてください。では失礼します。」


・・・こいつ分かってやがったのか。

俺の質問はガン無視した上で淡々と言われた内容に思わず目を見張る。くっそマジで欲しくなってきた。

また掲示板に戻って作業を始めた背中を見ながら酒を瓶のままあおる。これをあければまたあいつを呼べるからな。


「メアリー俺は諦めないからな。」








□□□□□□□□□


ゾクゥッ



その日メアリーは鳥肌がとまらなかったそうな。



これからも絡めたいなーってキャラを思いついたら書きたいと思います!

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