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四季の女王とアンジ  作者: クチン
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冬の女王

お城の中はとても広く、迷子になってしまうほどでした。しかし、所々に兵士が立っていて、王様のいる部屋まで案内してくれたので迷わずに済みました。少しお城の中を探検してみたいと思ったのですが、兵士がずっと僕らを見ていたので変に動くことも出来ず、一直線に王様の部屋に行くことになりました。

 王様のいる部屋には大勢の兵士が列を作って王様の護衛をしていました。「そなたが季節を春にしてくれるという人じゃな」

 王様はアンジのほうを見つめながら言った。アンジもそれに答えた。「そうでございます。私の名前はアンジと申します。これから王様のお望み通り季節を春にしてみせます。さっそくですが、季節の女王のいる塔はどちらにあるのか教えていただけませんか?」

 アンジは王様に敬意を払いながらさっそく本題に入り、王様にたずねるとこころよく答えてくれた。「お城に来る途中に大きな塔を見たと思うのじゃが、その塔だ。わかるか?」

「はい、お城に来る途中で見ました。さっそく行ってまいります」

 王様に向かって一礼し、アンジと妖精はお城を後にしてお城に一直線に向かいました。お城のある街にはあまり活気がありませんでした。アンジは初めてこの町に来たので、いつもこうなのかどうかはわかりませんでしたが、人々に笑顔が少ないのは確かでした。これも冬が続いているために起こったのならとアンジは考え、早く解決しなければならないと思いました。

 アンジは先ほどから一つ気になっていたことがあったので、妖精にたずねました。「妖精って僕だけにしか見えないの? この間会ったうさぎには見えてたからそういうわけじゃないと思うんだけど」

 妖精は笑いながら答えた。「そうだね、動物とアンジだけにしか見えないんだよね。今も周りの人からすると『この人独り言すごいな』って思われているよ」

 妖精に言われた瞬間、アンジはきょろきょろと辺りを見渡すと、道行く人たちが皆アンジのことを怪しがってみていた。それに気付くとすぐにアンジは足早にその場を去ってしまった。

 町から出ると、辺りはまた雪景色に変わった。ここのところずっと雪が積もっていたので、寒さには強くなったのですが雪の上は歩きにくく、一緒に連れてきた馬もとても歩きにくそうにしていました。

 そんなことを考えながら歩いていると、とうとう大きな塔が見えてきました。けれども、アンジは塔に行って何をするか全く決めていなかったのです。何か策があるわけでもないのに塔に行っても何も出来ないと考えたアンジは歩きながら何かしらの案を考えることにしました。

 少し歩くと、塔のほうから人が歩いてきているのを見ました。すかさずアンジはその人たちに声をかけました。「塔に行ったのですか?」

 すると、男の人は言いました。「塔に行ったけど、何も出来なくて終わったんだ。雪の女王様に話しさえも聞いてもらえなかったよ。本当に誰か解決できるのか」

 それを聞いたアンジはさらに聞きました。「それじゃあ、ほかに何か手段とかないんですか?」

 男はアンジに向かっていきなり怒鳴りつけました。「そんなのわかってたら苦労しないよ! じゃあな、俺はもうここには用はないんだ」

 男の人はそのまま歩いて行ってしまいました。どうやら、アンジが考えていたよりも大変な仕事だったそうです。このまま策を考えていても何も始まらないと思い、まずは話だけでも聞いてもらうことに決めました。

 アンジは塔の真下に到着しました。塔は遠くから見ているときよりもずっと大きく見えました。

 アンジはとにかく話をすることが大切と考えたので、ドアをノックしてみました。しかいし、しばらくたっても返事がありません。

 もう一度扉をたたいたのですが、やはり返事がありません。困ったアンジは妖精にたずねました。「どうしたら冬の女王に話を聞いてもらえると思う?」

 すると、妖精は答えました。「それなら、僕の力を使って直接女王に伝えるのはどうかな? 僕の力を使えばどんなに遠くに離れている人でも自分が伝えたいことを伝えることが出来るんだ」

 妖精は自慢げに話しました。それを聞いたアンジはその力を使おうと考えました。けれども、それには問題点もありました。それは、一方的に思いを伝えることは出来るのですが相手が無視をすれば何の意味もないということです。

 とにかく、何かやらなくては始まらないので一度やってみることにしました。

 妖精は女王に伝えました。「どうして話も聞いてくれないのですか?」

 その直後、塔の上のほうにある窓が開いて、冬の女王が辺りを見渡し始めました。そして、アンジたちのことを見つけると言いました。「あなたたちが今私に話しかけたの?」

 アンジは頷いて答えました。「そうです。やっと話してくれましたね」

 女王は驚きを隠せずにいました。塔の窓が閉じたかと思うと、次は塔の扉が開かれたのです。女王様に促されるまま塔の中に入ったアンジと妖精は驚きました。なんと、塔は外から見たときよりもずっと高さがなかったのです。中から塔の上を見つめてもせいぜい3階建てくらいにしか見えませんでした。そのようなことを考えていると、今度は女王からアンジたちに話しかけてきました。「さっそくで悪いのですが、あなたたちはなんでこの塔にやってきたのですか?」

 アンジはあらかじめ用意しておいたことを言った。「王様に頼まれてやってきたのです。季節がいつまでたっても冬から春にならなくてみんな困っているんです。そこで、僕はこの現状を変えたいと思いやってきました」

 すると、なぜか女王は暗い顔になりました。そして、アンジの言った言葉に少し反論しました。「みんながみんなこの現状について困っているとは限らないと思う。あなたは知らないと思うのだけど、実はこの国は今、隣の国と戦争しているの。」

 その一言を聞いたアンジはまたまた驚きました。戦争をやっている雰囲気なんてみじんも感じていなかったからです。けれども、一つだけ納得できるような点もありました。それはお城のある町が妙に静かだったことです。しかし、アンジには季節が変わらないことと、戦争がどのようにつながるのかわからなかったので女王にたずねました。「戦争と季節が変わらないのはどのような関係があるのですか?」

 女王はわかりやすく答えてくれた。「実は隣の国には冬っていう季節が無くて雪に慣れてないの。雪が積もることにより、隣の国が攻撃しにくくなるのはわかるよね。だから、私は戦争がこれ以上起きないように春の女王と変わらない。ただ、私の勝手な判断で困っている人たちもいるのよね。私間違っていたかもしれない。王様が隣の国と戦争をやめると思ったのだけど、私の思い違いだったようね。今から春の女王と変わるわ」

 それを聞いたアンジは女王に一つ提案をしました。「それでは、僕がそのことを王様に伝えてみるのでそれでどうですか?」

 女王は笑顔で答えました。「本当ですか? うれしいです。ではお願いします」

 それを聞くや、アンジと妖精は足早に王様のいるお城に向かった。

 お城に着き、王様に女王と話したことを伝えましたが、相手にしてくれませんでした。何度も何度も王様に話しましたが、やはり相手にはしてくれませんでした。

 アンジはとても悲しくなりました。女王の言っていることは正しいのになぜわかっていただけないのか。

 しかし、これ以上話しても無駄だと考えたアンジは塔に戻り女王に話しました。

 これを聞いた女王は残念そうにしていましたが、やがて意を決したように言いました。「わかりました。これ以上他の人々に迷惑はかけられないので、春の女王と変わります。あなたたちには本当にお世話になりました。ありがとね」

 そう言って女王は塔を出て行った。

しばらくすると、どこからともなく暖かい風が吹いてきた。それと同時に華やかなドレスに身を包んだ春の女王が現れました。「こんにちは。今日はいい天気ですね」

僕たちに向かって一言声をかけると塔の中へと消えて行った。

アンジと妖精は報酬をもらうためにお城に向かいました。しかし、王様に会うことさえかなわなかったのです。隣の国がアンジの国を攻撃し始めたからです。やっぱり冬の女王が言っていたことは正しかったのです。

きっと冬の女王はどこかでこの戦争を見て心を痛めていることでしょう。しかし、今さら悔やんでも仕方ありません。

王様は戦争に負けてから女王の言っていたことが正しいと気付きました。王様は自分の行いを悔やみました。

アンジと妖精はルバク村に帰りました。ルバク村に帰ると、両親が笑顔で迎えてくれました。季節が春になったのは良かったのですが、戦争が始まったことはとても悲しいことでした。

両親にこのことを伝えると、優しく声をかけてくれました。「季節を変えたのはおまえじゃないか。戦争を起こしたのは王様なんだし、自業自得だと思うな。それに巻き込まれた人々はお気の毒だけど。それでも、アンジは良く頑張ったよ」

その言葉にアンジは救われました。

この出来事があってから王様はいろいろな人の言葉に耳を傾けるようになりました。

 もちろん、ことがかたずいてからアンジには報酬が与えられました。

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