異世界で…やっていけるかな?
ん?何て言った?この駄女神。
「駄女神ってなんですか!」
おっと、また顔に出てたか…てか勝手に察して文句言うとか理不尽過ぎじゃね?
「神様ですから、勝手なのです」
おおっと?開き直りやがったぞこの女神。てかコイツ一人の価値観に神全体を巻き込みやがった。
「勝手な私は話を進めます」
さいですか。
「あなたには勇者を殺してもらいます」
こっちの意思はガン無視かな?
「拒否権は?」
「ありません」
デスヨネー。
「あなたがこれから行く世界は、あなたの好きな剣と魔法のファンタジーな世界です」
俄然行きたくなった!が、まだ足りない。
「勿論、魔物も妖精も奴隷も居ます」
くっ…だがまだだ、まだ俺は屈しない!
「エルフも獣人もいますよ?」
「是非行かせてください!」
何故俺の好みを把握してるんだ?
「あなたの趣味嗜好は、好きな食べ物から好きな声優等々…。完全に把握しています」
「プライバシーって言葉、知ってる?」
個人情報の保護は?
「そんな人間同士のルールが神に関係有るとでも?」
そんなこったろうと思ったよ。
「分かった、分かりましたよ。
異世界行って勇者を殺せばいいんだな?
正直、人殺しなんてやった事無いから失敗すると思うけどな」
「…あれ?せっかく言うことを聞かせる為の脅しを沢山考えたのに、無駄になっちゃう感じです?」
一応聞こう、どんな脅しなんだ?
「例えば、黒歴史ノートを学校の黒板に張り付けておくとか?」
コイツ、神じゃねえ!悪魔だ!
「失礼ですね…私はれっきとした女神様ですよ?」
「てか、なんで神様が勇者を殺そうとしてんの?勇者って神が支援してるんじゃないの?」
勇者ってのは神が異世界へと連れてくるイメージなんだが?
「何を言っているんです?世界を狂わせかねない様な真似、わざわざ神がする訳ないじゃないですか」
俺を送りこもうとしてるのは?
「やられたらやり返す…」
「成る程言いたい事はよく分かった!」
それ以上は駄目だ、言わせちゃいけない!
「まあ、もう面倒くさいんでサクッと説明しますと」
この女神……もう何も言うまい。
「あなたがこれから行く世界は、全ての生き物がバランス良く暮らせる様な一定の基準に整えられていたのです。
私によって」
うん、それで?
「なのに無駄に知恵を着けた人間が道具や魔術を使い始め、自らの都合の為に私の整えた完璧なバランスを崩したのです!
人間が増えすぎては世界のバランスが崩れてしまう為、人間を間引く為に私は自然にいた動物よりも強い魔力を持つ物…魔物を創り出しました」
間引くてオイ。
「なのに!
人間は私が創った魔物から力の源である魔石を抉り出し、更に優れた武器を作りやがったのです!
お陰で更に人間は増え、更にバランスが崩れました」
言葉が汚くなってるよ?
「なので私は更に強く、圧倒的な力で人間を駆逐する為に1000の魔族と5体の神獣を生み出しました。
これには人間もひとたまりもなく、数を大きく減らしました。全世界で十万人くらいまで」
元々は?
「最大5億人くらいでしたかね?」
大量殺戮ってレベルじゃねえ!
「しかし!人間はしぶとかった!這い寄るGの如く!」
それ、もう絶滅しないんじゃね?
「奴等は、減り続ける数を増やす為に人体実験を繰り返し、新たな力を得ようとしたのです!
私は自らの手を汚さずに奴等が勝手に消えてくれると喜んでいたのですが…」
もう汚れてるよね?
「害虫駆除です、問題有りません」
…で、どうなった?
「やりやがった…奴等、異世界から人を召喚する術を手に入れやがったんだ!」
ナ、ナンダッテー!
「その異世界人達は世界の壁を越える際に神の領域を通るのですが、それに気がついた神々は面白がって我先にと加護を与えたのです…私の世界を滅茶苦茶にするくらい強力な加護を!」
どんまい?
「ドンマイじゃないですよ!抗議しても聞いてくれないし!お陰で人間も調子に乗って異世界人呼びまくるし!お陰で魔族も減っちゃって…」
どれくらい呼んだんだ?
「術式が作られたのは400年程前、勇者一人を呼ぶのに宮廷魔術師10人が魔力枯渇で死にます。それでも5年に一度のペースで呼び続け、結果1000人居た魔族も300人まで減り神獣も一体倒されてしまいました」
女神が直接動くのは駄目なのか?
「だから、私は決めたのです!人間が異世界から助っ人呼ぶなら私も呼んでやる!と」
流された……でも何で俺?
「人間の価値観に染まってなかったからです」
それって…どういう事だ?
「例えば、人殺しは悪い事だと思いますか?」
「悪いんじゃないか?」
「何故?」
「そりゃ人殺しを認めたら自分が殺されるかもしれないからだろ?」
「それですよ」
?
「人間は「人殺しはしてはいけない。理由?常識だから」等と下らない常識に縛られていて、私の助けになってくれるとは思えなかったのです。
その点あなたは理由を理解していた。
理由を教えれば何が正しいかをちゃんと考えてくれる。
そう思ったからあなたを選んだんです」
「成る程、俺を選んだ訳は分かった。ところで、異世界転生ときたらチートは外せないでしょ?どんなのくれんの?」
「え?チートあげたら勇者と同じになっちゃうじゃないですか…」
おっと?
「勇者嫌いは分かったけど、着の身着のままで異世界行っても一週間持たないよ?なんなら初日に力尽きる自信があるよ?」
「…分かりました。どんな能力が欲しいんですか?」
「言語理解は当然として、やっぱ他を圧倒する身体能力がないと。あ、でも力に振り回されて怪我するのは嫌だから制御スキルも欲しいかな。あとは定番の膨大な魔力と魔法の全適正、魔力制御スキルも。それからアイテムボックスと当座の資金と…」
「とりあえず、あなたの理想を反映するようにしておきます。それから、人を変に追い込むとまた変な力を得そうなので国を滅ぼすノルマとかは無しでいいですよ?あ、最低でも勇者の5、6人は殺して下さいね?」
異世界行ってノルマとか嫌過ぎる!無くて良かった。
「分かった、とりあえずやってみる」
「それから、あなたが一人で生きていけるとは思えないので魔族の王として勇者を殺して下さい。では」
そう言うと女神の周りに光が集まり、周りが暗くなってきた。
「え?魔族の王とか聞こえたんだけど?あとこれもしかして、ここ来た時の?」
「細かい説明は向こうの魔族に聞いて下さい」
足下にあの魔方陣が出現した。
まだ言いたい事が有るんだが、話が勝手に進んでいく。
「頑張って下さい、気が向いたら助けてあげます」
気が向かなかったら?
「ガンバ♪」
軽っ!
俺の意識はそこで途絶えた。