覇王と魔王の意外な繋がり
『ダークを好きにさせれば、争い事の種になると思ったんだがな…』
覇王、お前って奴は…
「分かってたから止めたんですよ?」
「魔王、良くやった!」
「貴様っ」
おっと、ついうっかり。
従者さんがまた殺気立つ。
美女からの鋭い視線…悪くない。
「僕は気にしてないから、イリスも落ち着いて」
従者さんはイリスと言うらしい。
イリスさんは俺を睨み付けて言った。
「私の名前はアイリスだ。
当然ながら貴様に名を呼ぶ事を許可するつもりは無い。
そして貴様と会話するつもりも無い。
余計な事をすれば即座に殺す」
可愛らしい名前の割りに、怖い人らしい。
まあ?2次元をこよなく愛する俺からすれば、2次元的美女から向けられる物は好意だろうと悪意だろうと御褒美ですがね!
『ふーん、イリスってのか。
魔王よ、前に来た時は見なかった顔だが新入りか?』
覇王をアイリスさんが眼力で射殺さんばかりに睨み付けている。
だが、俺と違い睨むだけで何も言わない。
恐らく、先程の攻撃を難無く消し去ったのが大きいのだろう。
「はは…。
覇王、君が前に来たのは千年以上前だよ?
君が魔王城を作り、罠を仕掛け、巨大な魔石をダンジョンコアに変え、魔王城をダンジョン化させる事で、僕に難攻不落の拠点をくれた事は感謝してもしきれないくらいだ」
『だろ?良い仕事をしたと自負している』
どうりで、魔王城を誉めていた訳だ。
自分で壊してたけど。
「馬鹿な…!
魔王様と私の愛の巣を作ったのが覇王だと…?」
「イリス、少し静かにしててね?」
「はい…」
あ、アイリスさんがシュンとした。
可愛い。
「覇王、君が居たのは僕が此処に来たばかりの頃だ。
その頃の僕は魔王ではない、君の人格の内の一つに過ぎなかった」
衝撃の事実!
え?てことは魔王と俺って似たようなもん?
「そうだね、ダーク君だったかな?
君と僕は、根っこの部分が同じだ」
え?俺、今は声出してなかったよな?
「僕らは根っこが同じだから、声に出さなくても相手に考えが伝わるんだよ。
表層意識だけだけどね。
本来は僕らの間の意志疎通しか無かったんだけど、僕がイリスと繋がっているからイリスも君の言葉が分かったんだ」
本当か?覇王。
『確かに、俺の人格同士なら言葉が無くても意志疎通は可能だが…魔王よ、そいつと繋がっていると言ったな?』
「うん、イリスと僕は主従契約を結んでいる。
僕とイリスの魂は繋がっている状態だ。
話を進める為に、今は接続を切ってるけどね」
『それは、俺の与えた任務を破棄するという事か?』
「それについて君に話したかったんだ。
君が来たのは予想外だったけど、良かったよ」
覇王はどうやら魔王に何か任せていたらしいが、魔王がそれに反発しようとしてるのか?
「僕は、君に任された
「魔王という立場になり、人間の敵として君臨する。
そして管理者の一員として世界の均衡を保つ」
という仕事はこれからも続けるつもりだよ」
『ならば、何故この世界の存在と契約を結んだ?
王が1人きりでは締まらんだろうと魔王として配下を作るのは認めた。
其処ら辺から魔物や魔族を適当に拾って飼うのも認めた。
だが、必要以上に肩入れするなと言った筈だぞ?』
「管理者としての仕事は続けるさ。
だけど、僕は「覇王の端末代わり」として世界の管理をするよりも、魔王としての立場の方が大切になったんだ。
イリスという大切な存在が出来たからね」
端末?
「君は知らないみたいだね?
覇王が人格に肉体を与え、自由に動く事を認めているのは情報収集の為なんだよ。
世界中に散らばる事で、覇王だけでは分からなかった事を知る為だけに僕らは仮初めの自由を与えられた。
覇王の耳として、目として…その上、手足の様に世界の管理の手伝いをするなんて嫌なんだよ!
だから、僕は君から離れる!
仕事は一度請け負ったんだ、僕が死ぬか世界が滅びるまではしっかりと働くさ。
だけど、君の、覇王の手駒として動くのはもう嫌だ!」
『その話、誰が言っていた?
貴様の考えではないだろう』
覇王の、魔王に対する呼び方が変わった。
「否定はしないんだね?
君に仕事を任された時、僕は嬉しかった。
数多の人格の中から僕に仕事をくれた、つまり僕は君から頼られる存在なんだと思ったからだ!
だけど、ただ利用されるだけの存在なんて我慢出来ない!」
『とりあえず貴様の裏に誰かしら居る、という事だけはよく分かった』
覇王は拳を構えた。
『聞いても素直に答えないのだろう?
だから、力尽くでその存在に関する情報を吐かそう』
「やってみろ!
僕が何時までも君の思い通りになると思うなよ!」
魔王は虚空から取り出した大剣を構え、闇の魔力をその身に纏い鎧とした。
ん?アイリスさんが静か過ぎないか?
覇王と主が戦おうというのに一言も無いとは…
『イリスとやらは時を止め、異空間に送ったぞ?
俺は戦い自体は好きだが、無駄な破壊は趣味ではないからな』
覇王は意外と常識があるらしい。
ならば俺にも常識的な対応を求む!
『断る、自分を相手に遠慮する意味など無かろう』
そう言うと、覇王は構えを解き魔王に言った。
『1分やる。
その間好きに攻撃するが良い』
「何を言っている…?」
『悪い、ハンデがあまりにも足らんな。
一時間くれてやろう。
これ以上は待つのが面倒だから増やさんぞ』
「ふざけるな!
確かに、僕は君より弱い。
だけど、今の僕は完全武装だ。
対して君は素手で、何の効果も無いマントを羽織っているだけだ。
その上一時間のハンデ?馬鹿にするのも大概にしろ!」
『はあ…面倒だから早くかかってこい』
「後悔するなよ!」
王と王の戦いが幕を開けた…が、落ちがクッキリハッキリ見えるのは気のせいだろうか?
シリアスなシーン…(;・∀・)
続かないだろうなぁ…。