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最後の物語  作者: 無月 華旅
2/10

第一章~祝~ 上

「最後の物語」の続きです。

前の話を見ていなくても、第一章からでも内容はわかります。


お楽しみいただけたら幸いです。

第一章~祝~


 森の中でかくれんぼというのは、鬼にとってすごく不利だと改めて思った。

「見つかんないよぉ」

 十七、八歳の少女が嘆きながら、その場にへたり込んだ。

「あきらめる、よくない」

 少女の隣に、少女と同じくらいの少年が腰を下ろして励ました。二人とも、白髪に似た銀髪をぼさぼさに伸ばし少年に至っては顔が半分ほど見えなくなっている。少女は青緑色の瞳をこすりながら少年を見つめ返す。

「うん……」

 少年に続いて、少女も気を取り直して立ち上がる。

 少年と少女はかくれんぼの鬼だった。鬼ということは当然ほかの人を探さないといけないわけで、その範囲が森の中全部ということで……。

「やっぱり無理だよぉ~」

 そんなことを考えていたら、ますます見つかる気がしなくなってきた少女は、またまた座り込んだ。

「おや? アルとクルムじゃないか」

 突然のハスキーボイスに、少女はびくりと体を震わせると、そのまま後ずさった。対して少年は声の主に嬉しそうに近寄った。

「ヴォルペ!」

「おう、クルム。何やってんだ?」

 ヴォルペと呼ばれた青年は、腰の辺りに飛びついた少年、クルムの頭をポンポンと優しく撫でた。

「かくれんぼ。リスタ、さがしてる」

 少女、アルもヴォルペと分かると近寄ってきた。クルムと同じように頭を撫でようとしたヴォルペの手をパシンと跳ね除けた。

「子供扱いしないで」

「悪い悪い」

 ヴォルペからしたら二人とも子供なのだが、それを言ったらクルムはともかくアルは確実に怒るので、心の中ではにやにやしながらも口先だけで謝っておいた。

「朝からずっと探してるんだけど、見つからないんだよ」

 アルの怒りの矛先は、今は探し人であるリスタなる人物に向いているようだ。

「ふーん、リスタがそんなことをね」

 ヴォルペは意味深な顔でふむふむと頷いた。

「もうすぐ日が暮れるな」

「うん」

「かくれんぼは日が落ちるまでなの。リスタを見つけないとわたし達の負けになっちゃうんだよ」

「うん」

 アルとクルムは必死にリスタの隠れていそうな場所を考えているのにヴォルペはいつの間にかいなくなっていた。

「また化かされた……」

 アルはポツリとつぶやく。その言葉にクルムも静かに頷いた。

 ただ立って考えていてもリスタは見つからないので、アルとクルムは歩き出した。

「あと、さがしてないとこ」

「うん、どこだろう……?」

 歩きながらでも、二人はずっと考える。考えながら探し、また考えた。日が傾いてきた。もうすぐ約束の時間になる。クルムは木に登って日が沈んでいくのを眺めていた。

「しんぼく」

「えっ?」

 アルは木の下で探していたためクルムのこえは届かない。でもクルムは降りてくる様子がないので、アルも木に登った。

「なに?」

隣に立ったアルを見ないでクルムは真っすぐ大きな木を指さした。

「しんぼく」

 アルはクルムが指し示す、森の中でも一際大きな木を眺めて、クルムが何を言わんとしているのか気が付いた。

「神木は近づいちゃダメって小さい時からリスタに言われてたでしょ?」

「でも、さがしてない。しんぼく」

「それはそうだけど……」

 アルの煮えきらない返答に、クルムはさっさと下に降りてしまった。

「ま、待ってよぉ~」

 アルもクルムを追いかけたが、すでにクルムは神木に向かって走って行ってしまっていた。



     ✡




 はじめまして、こんにちは無月華旅です。たいへん長らくお待たせしてしまって申し訳ないです。話は出来ているのですが、なかなか打ち込む時間が取れなくて……。


 第一章の上ということで、ひとまずここまでです。これからも、この双子の冒険を末永く見守っていただけたらなと思っています。

 では、今度は第一章の後半でお会いしましょう。……私が別の色気を出さなければですが。

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