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呑気な冒険者たち  作者: さかもと希夢
底から始まる真実
88/224

<10>

 リッツとアンナ、レフの三人は、レフを先頭に暗がりを進んでいた。燭台の明かりが無ければ何も見えないリッツとアンナに対し、レフは暗闇でも目が見える。嗅覚、聴覚も優れているから、先頭に立って歩いて貰うには、もってこいなのだ。

 ラッセル邸の地下トンネルは、途中でこの洞窟へと繋がっていた。地下宝物庫が洞窟の中に作られている事は知っていたし、昔入ったこともあるが、ここまで広い洞窟とは思わず、ちょっとした驚きだった。

「レフはどういう風に暗いところで見えてるの?」 不意に脳天気なアンナの声が、耳に飛び込んできた。

「普通に見えてます」

「色もちゃんと見える?」

「もちろんです。アンナの赤毛もよく見えます」

「すごいねぇ!」

 先ほどまでぐったりしていたのと、この明るさは同じ人物とは思えない。単に強がっているのか、それとも本気で明るいのか、リッツにはそれが疑問だ。

「お、二股に別れてんな」

 地下宝物庫へと続く洞窟の中は、意外に入り組んでいて分かりづらい。昔ここに入った時は、もっと簡単な作りだった気がするが、それは正式なルートを通ったからだろう。

「本当だ。どっちかなぁ」

 アンナが燭台を捧げて立ち止まる。素人目にはその洞窟のどちらが正式な道に続いているのか、さっぱり分からない。先ほどから幾つもの分岐点を超えてきたのだが、その度に役立っているのは、人並み外れたレフの嗅覚だった。

「レフ、どうだ?」

 洞窟の臭いを嗅いでいたレフが首を傾げる。

「どっちも強盗団の臭いがする」

 戸惑った声でそう告げると、レフは考え込んだ。アンナが真似をして臭いを嗅いでみて、小さく笑う。

「分かんないなぁ」

「当たり前だろ」

 呆れてそう言うと、アンナは楽しそうに笑った。どうやら開放感から、何もかもが楽しくなっているらしい。

 そんなアンナを見て、心底ホッとした。何度も生きていてよかったと思わずにはいられない。あの時……地下牢で揺すっても反応のないアンナを見た時には、血の気が引いた。今も、もしアンナが死んでいたら、と考えだけでゾッと総毛立つ。

 おかしな話だが、アンナがいなくなることに耐えられそうにない。リッツは小さくため息をつくと、アンナから目を逸らしレフを見た。ここでぼんやりしている場合ではなかった。

「つまりどういう事だ?」

「どちらも臭いが強いんです」

 先ほどまでは二方向から臭いがしても、強い臭いを選んでいたのだが、どうやらそう言うわけにはいかなくなってきたらしい。

「つまり奴らが通ってから間がないって事か?」

「そうです」

 それなら確認するしかない。自分たちが迷うわけにはいかないのだから。

「レフ、左の道を見てくれるか? 俺とアンナで右を確認するからさ」

「はい」

 指示を受けるとレフは、すぐに左の洞窟へと足を向けた。その背に向かって言葉を掛ける。

「多分どちらかが行き止まりで、引き返してきたんだろ。だから行き止まりまでいったら、この入口に集合。先が長いようなら、途中で引き返してくれ」

「分かりました」

 レフは明るくそう言うと、真っ暗な左の洞窟へと消えた。夜目が効くとは便利なものだ。明かりひとつない真っ暗な空間に吸い込まれるように消えていったレフを見送ってから、リッツはアンナを振り返った。

「こっちも行くか?」

「うん」

 右の洞窟は比較的広かった。だが暗く天然の洞窟であることは変わりない。

「リッツ」

「ん?」

 アンナに呼び止められてリッツは足を止めた。

「私ね、洞窟って初めてなんだ。湖とか、石の氷柱(つらら)とかあるのかな?」

 状況からかけ離れたアンナの言葉に力が抜ける。普通は強盗団の話をしそうなものだが……。

「……お前、何を脳天気な……」

 ため息混じりにそう言うと、アンナは口を尖らせて、じっとリッツを見上げた。

「だって、ここで捕まってた話をしたら、思い出しちゃうもん」

 軽く睨まれてようやく、アンナの元気の理由に気が付く。完全なる空元気なのだ。

「……ああ、そうか」

 ようやく気が付いた自分が情けなくて、小さく息をつきゆっくりと額を押さえる。

「そうだよ、頑張ってんだもん」

 空元気な上に空威張りをするアンナを見ると、上手い慰めの言葉も出ない。

「……ごめん」

 少し前まで死ぬかと思って恐怖に絶えていたアンナに、強盗団のことを話してくれないだろうかと思うのは、無理があった。関係ないことを話すことで、アンナはあの恐怖から逃れようとしてたのだ。

 アンナは自分の中で恐怖を克服するためにひたむきに前を見ていく。じっと黙って一人抱え込み、後々まで延々と引きずりまくる自分とは雲泥の差だ。

 アンナの頭に手を乗せると、リッツは軽く頭をポンと叩き、すぐさま話題を変えた。

「隣のレフの国には、すっげぇ綺麗な洞窟があるぞ」

 咄嗟にそんな言葉が出てきた。

「どんな洞窟?」

「すげえぞ、真っ白な石の柱と怖いくらい真っ青な地底湖があるんだ」

 リッツは一度だけ行った、その洞窟のことを思い出した。地上の小さな穴から降り注ぐ光の糸に照らされた、真っ青な地底湖、ガラスのように煌めく石柱がある洞窟だ。

「ほんと?」

「ああ。いつか連れて行ってやるな」

「本当? 約束だよ?」

「約束だ」

 安請け合いしてしまった。本当はもの凄いところにあるから、簡単にいけるところではないのだが、まあいいことにしよう。

 雑談をしていたリッツは、前方から来る気配に気が付いた。その気配はこちらに向かってきている。まだ気付かれてはいないようだ。

「アンナ、火を消せ」

「うん!」

 アンナが燭台を吹き消すと、当たりは闇に包まれた。現在この地下にいるのは、自分たちと強盗団だけのはず。だとしたら、一人捕らえて親玉の元へ案内させるのが早道だ。

 アンナを背に庇い、じっと暗闇に潜んで気配が近づくのを待つ。敵の実力は分かっている。普通の人間で、殆ど武芸の心得はない。簡単に捕まえられるだろう。

 ランプの明かりが、ぼんやりと浮かび上がった。

「あれを落とせるか?」 

 小声で後ろにいるアンナに尋ねると、アンナはしばらく考えてから返事をした。

「ランプだよね? う~ん……やってみる」

 相当自信がなさそうだ。だがここはやって貰うしかない。

「俺が合図をしたら、水の球をランプに向かって投げてくれ。俺は水の球のすぐ後に移動して、敵を捕まえる」

 小声で作戦を告げると、アンナは小さく頷いた。リッツに微かに触れている、手の感触でそれが分かった。

「三、二、一……今だっ!」

 小さくとも鋭くそう言うと、アンナが手を合わせて水の球を作り出した。咄嗟だったからかなり小さく手のひらサイズだが、十分だ。

「飛んでって、水の球」

 小さくそう言うと、水の球は敵に向かって飛んでいく。リッツはその後を追った。水の球がランプをはじき飛ばした瞬間、洞窟内は再び闇に包まれる。

 敵が攻撃に気が付く前に、あっさり捕獲してやる。あの玄関ホールでの戦いから、彼らが弱いことは分かっている。剣を使えば一瞬で切り捨ててしまいそうだ。

 リッツは、ランプを持っていた男の鳩尾に蹴りの一発入れようとして構えたが、そのとたんに予想外のことが起きた。

 敵が剣を抜いた音がしたのだ。

「!」

 咄嗟の行動が、素早い。予想外の行動にリッツが身構えるよりも先に、男が剣を振るう。咄嗟に大剣を抜いていた。

 剣と剣がぶつかり合う。

 こいつ……一般人じゃない……。

 力任せに剣をなぎ払うと、相手の男がよろめくでもなく、一歩後ろに下がった。地面を踏む音でそれが分かる。体勢を整えているのだろう。

 気配と足音、風の動き……全てに神経を張りつめる。暗いせいで、相手の動きを読むのに、異常なまでの精神力を使う。

 リッツも剣を構え直した。

 油断している場合ではない。やけくそで剣を持ち出した、あの執事の甥を名乗る男とは違う……。

 今度は相手の男が動いた。相手も同じく、リッツの動きを物音と気配で探っていたのだろう。

 素早い。それにこの気配……隙がない。

 何度か打ち合ってから、再び離れて体勢を立て直す。何だかとてつもなく嫌な剣技を使う男だ。何となく苦手な気がする。

 ……嫌な剣技? 何となく苦手?

 リッツの状況に気が付いたのか、アンナが駆け寄って来る。敵はそんな状況を知るよしもなく、再びリッツに打ち込んできた。咄嗟に剣で受けながら、リッツはアンナに怒鳴った。

「下がってろ!」

「でも……」

 だがそこで意外なことが起きた。敵が一瞬力を抜いた後、ふっと笑ったのだ。可笑しくてたまらないというような笑い方と共に、剣に込められていた力も緩む。

「何がおかしい?」

 ムッとしながらそう言うと、敵は再び笑った。今度は堂々たる大声だ。リッツはその笑い声にとても聞き覚えがあった。聞き覚えどころではない、その声は飽きが来るほど聞き慣れている。

 そしてそれは、ここで聞くはずもないと思われていた人物の声だ。

「笑わずにはいられんだろう。この状況ではな」

「お、お前……エド!」

 剣を構えていた力が一気に抜ける。エドワードが剣を収めたのが音で分かった。抜き身をぶら下げているわけにはいかず、リッツも剣を収める。

「奇妙なはずだ。この暗い中で相手の動きが読めるなどあり得んのに、相手がどうでるか、何となく感じたからな」

「……そういやそうだな」

 確かに言われてみればその通りだ。無意識に体は相手が誰だか理解していたのかもしれない。

「アンナもいるね?」

「はいエドさん」

 手探りでリッツの背中を掴んだアンナが、エドワードがいると思しき方向に答える。

「水の球が飛んできた時点で気付けばよかったんだが、まさかお前達がこんなところにいるとは思わなかったからな」

 そこにいたのは間違いなくエドワードだった。いくら暗くて顔が見えないからといって、盟友を見分けられないわけがない。後ろにいた男が、落ちていたランプを拾い上げると再び火を付けた。幸い割れてはいなかったらしい。

「やあ、リッツ。奇遇だ」

 明かりに照らされて、物静かそうなその男が穏やかに、明るく微笑んだ。

「ジェラルド……」

 ランプの明かりを貰って、アンナも自分の燭台に火を入れた。二つ分の明かりでだいぶ明るくなった。

「何でエドとジェラルドが、こんなところにいるんだよ」

 不信感たっぷりに尋ねると、エドワードはゆるりと腕を組みながらリッツを見返した。

「その質問は根本的におかしくはないか、リッツ。私がすべき質問だ」

「何でだよ」

「ここは城の地下宝物庫。そして私はこの国の国王、ジェラルドは王太子だ。地下宝物庫にいる可能性はある。つまり私とジェラルドがいるのは、ある意味当然だ」

 いわれてみればその通りだ。国王はいつでもこの宝物庫に入る権利を持ち合わせているのだから。しかも譲位を宣言した以上、その権利は無条件にジェラルドにも与えられる。

「まぁ、そうだよな」

 曖昧に返事をしたが、エドワードは言葉を止めない。

「その上、私とジェラルドは正式なルートでここに来た。今の状況でいうなら、お前さん達は立派に侵入者だぞ?」

 いわれてみればその通りだ。もしエドワードではなく憲兵隊に捕まっていたら、面倒なことになったに違いない。運良くアルトマンの小隊にでも当たらない限り、牢獄行きは免れなかったろう。

「分かったよ、降参だ。俺たちの方が断然怪しい」

 リッツが負けを認めると、エドワードは楽しげに笑った。

「最初から潔くそう言っていればいいものを」

「うるさい」

 エドワードにからかわれながらも、リッツは手早く今までの状況を説明した。状況が状況だけに途中から真剣な顔でエドワードは話に耳を傾けた。

「なるほどな。それでお前がここにいると」

「ああ」

 エドワードは少し考え込んでから、顔を上げた。

「大変だったね、アンナ」

 柔らかな微笑みを浮かべながら、エドワードはそうアンナを気遣った。つられたようにアンナも笑顔を浮かべる。

「怖かったっていったら嘘だけど、きっと、助けに来てくれるって信じてたんです」

 アンナにそう言われると不思議と嬉しい。助けた甲斐があるというものだ。そう思う自分に奇妙な違和感を感じるが、まあそれはそれだ。

「そうか」

 穏やかにエドワードは頷いた。

「本当に来てくれた時は、嬉しくて泣いちゃったけど」

 照れたようにアンナは笑った。そんなアンナをエドワードは、本当の祖父のような笑みを浮かべてみている。

「本当に無事で何よりだったな」

「はい、エドさん」

 嬉しさと多少の混乱が入り交じった、複雑な気持ちを見抜いたエドワードが、肩をすくめながらリッツを見る。

「よかったなリッツ、信じて貰えて」

「なんだそれ」

 全くもって、何を考えてるのかさっぱり分からない。とりあえず四人になった一行は、レフが待っているであろう分岐点へと戻りながら、話を続けた。

「で、お前はどうしてここにいる?」

「……人捜しだ」

「は?」

 地下宝物庫で人捜し……。そんな奇妙なことがあるわけがない。

「お前とジェラルド二人で人捜しね……」

 もう一度口に出して、頭の中で今のエドワードとジェラルドの置かれた状況を反芻する。何となく分かってきた。王族二人……しかも王と王太子の二人が内密で探すといったら……。

 隣を歩いているエドワードをちらりと見ると、エドワードはため息をつき、小さく呟いた。

「……お前さんには見当がつくだろう?」

「ああ」

 グレイグだ。言葉に出さずにいると、リッツが理解したものとして、エドワードは言葉を続けた。

「グレイグだけならまだいい。正直に言うとな、お前さん達とここで会えて、少々安堵しているんだ」

 そのあまりに困った口調で分かった。グレイグはまだ子供だ。ここに一人で侵入するよりは、仲間を一緒に連れてきたいと思うだろう。そしてグレイグには仲間……というか友達が一人しかいない。

「……フランツがいるんだな?」

「ああ、いる」

 もう一人の仲間の名前を、思いも寄らぬところで聞いたアンナは、驚いて振り返ったが、深刻に話す二人を見て、黙ったまま続きを聞いている。

 そう言えば、フランツはグレイグと野営のまねごとをしに出掛けるといっていた。まさか地下宝物庫に侵入しているとは……。

「グレイグはまだしも、フランツを罪人にするわけにはいかない。あの子はグレイグに引きずり回されているだけだからな」

 だから二人きりで、地下宝物庫へ降りてきたらしい。となると、今地下宝物庫にいるのは強盗団とフランツとグレイグということになる。

「やばいな……」

 接近遭遇戦で、大混戦……。そういう状況が目に浮かぶ。相手は素人、グレイグは剣技に優れている。安心といえば安心だが、実際の敵は礼を持って彼らに接してくれるわけではない。

「剣と精霊を使えても、大人数で袋だたきにされたら、ひとたまりもないな」

「……お前もそう思うか?」

 エドワードもそれを心配していたのだ。

「急ごう。レフが待ってる」

 歩を早めながらそういうと、エドワードは足を止めずに首を傾げた。

「レフ?」

 その名前に顔を綻ばせたのは、ジェラルドだった。

「レフがいるのかい? 心強いね」

 予想以上に親しげな言葉に、リッツの方が首をひねる。

「ジェラルド、レフと親しかったっけ?」

「ああ、親しいよ。彼が憲兵隊の特別室に入っている時に、幾度も会って話をしているからね」

 なるほどレフが色々とリッツの話を聞いているといったのは、ジェラルドからだったのだ。リッツが放りっぱなしにしている間も、ジェラルドがこまめに面倒を見てくれていたならよかった。

 再び分岐点に辿り着くと、レフが待っていた。リッツの顔を見て、それからジェラルドの姿を見つけると、嬉しそうに顔を綻ばせる。

「ジェラルド殿下」

「やあレフ。元気だったかい?」

 穏やかに再会を喜ぶ二人を見て、エドワードが呟いた。

「なるほど……あの時の獣人か……」

「そうだ。俺がしばらく面倒見ることになってる」

 ジェラルドとの再会を喜ぶと、レフは真剣な顔に戻りながらリッツを見た。

「この先に大きな部屋があって、その中に強盗団がいます」

 リッツはレフに向かって頷くと、エドワードを見た。

「この先は宝物庫で間違いないな?」

「ああ」

 だとしたら中に、グレイグとフランツがいるのか。

「フランツとグレイグ殿下は捕まっちゃったの?」

 不安そうにアンナが尋ねた。

「まだそうと決まったわけじゃないけど、その可能性はあるな」

「そんなぁ……」

 アンナはぎゅっとリッツの服の裾を握っている。またあの時の恐怖が蘇ってきたのかと思ったが、少々違った。

「私を痛い目にあわせて、それでフランツとグレイグ殿下にまで酷いことしたら許さないんだから!」

 不安で握っていたのではない、怒りで拳を握りしめたのだ。さすがアンナ、正義感で自らの恐怖を克服している。

「レフ、見張りはいたか?」

 エドワードがそう尋ねると、レフは頷いた。

「はい陛下。二人います」

 彼はきちんと国王を認識している。さすがケニーとアルトマンとジェラルド。そこらへんはしっかりしたものだ。

「どうしますか父上」

 ジェラルドが問うと、エドワードはしばらく考えた後、口の端に笑みを浮かべた。

「グレイグとフランツが私の部屋から鍵を盗みだし、地下宝物庫に侵入した。さてここで問題だ。罰を与えることなく、彼らを許すことは出来んと思わんか?」

 その人の悪い笑みを見て、リッツ以外の全員が困惑する。今その事を持ち出す意味が分からないのだ。

「ああ、そうかい。分かったよ」

 だがリッツは理解した。ため息をつきつつ、大剣を鞘ごと外す。殺生を嫌うアンナがいるし、相手は素人。抜けないようにしっかりと剣と鞘を固定する。

「……リッツ、分かんないよぉ」

 アンナが掴んだままのリッツの裾を引く。気が付けば全員の視線がリッツに集まっている。エドワードを見ると、彼は解説する気など初めからないらしく一人で前に進んでいた。

「……強行突破だとさ」

「え……?」

 アンナとジェラルド、レフは固まった。

「……グレイグとフランツが中にいるのにかい?」

 恐る恐るジェラルドが尋ねる。

「だからこれがあいつらへの罰なんだろ? 強行突破をして苦しい立場になるが、お前らには罪があるから自力で何とかしろって」

「……そんな……」

 絶句するジェラルドの横で、アンナはポンと手を叩いた。

「そっか、それで勝手に地下宝物庫に侵入した罪はなかったことにしてくれるんだ」

「よくできました」

 アンナに笑顔を向けて褒めると、リッツはエドワードに続いた。全員が大きく息をついて、二人に続く。この状況ではそれしかないことを、みんな分かっているのだ。右に曲がった洞窟の先に大きな扉があり、二人の見張りが立っている。全員がその角に潜んだ。

「さ、行こうではないか、皆のもの」

 冗談がかった言葉を、いかにも楽しげな笑顔でエドワードがいうと、それが合図となってため息混じりのリッツと、忠実なるレフが飛び出す。それにエドワードとジェラルド、アンナが続いた。

 咄嗟の事に見張りの男達が叫んだ言葉は、見当違いのものだった。

「敵だ! 憲兵隊だ!」

 ご愁傷様だ。

 まさか国王と王太子とは夢にも思わんだろうと、嫌々ながらも大臣を拝命しているリッツは、ため息混じりにそう思った。 

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