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佐々木さんの異世界猫生活一日目(1)

お気に入りに登録して下さった皆様、ありがとうございます。そしてすみません。しょっぱなからふた月近く放置してしまいました。

こんなのろのろ更新ではありますが、佐々木さんの異世界猫生活をお楽しみいただければ、と思います。


「ふに゛ゃ!!」


 ポイッとか、ぺいっといった、とにかく気遣いとかそういうのをあまり感じないやり方で放り出された。

 どこにって?どっかの路地裏にだ。それも地面は慣れ親しんだアスファルトではなくレンガ敷き。あんまり綺麗じゃない。

 ここはどこだろう。落下したのにその先がレンガ敷きって総二郎おじいちゃんちには地下通路でもあったのだろうか?そんなバカな。若干じんじんする体を起こす。地面はレンガ敷き、足元には水たまり。青空を映し出すそれをちょっと覗きこんで、目をそらす。今私ハ何モ見ナカッタヨ?

 気を取り直してあたりを見回すと、近くには明らかに生ゴミとかが入ってそうなでっかいゴミ箱があった。・・・このゴミ箱めちゃくちゃでかいな。私の身長よりでかいんだけど。ゴミ箱を見上げて、ふと気づく。ここ、今までいたとこじゃない。


「大丈夫ですかー?」


 頭上に見えるのは青空である。建物の間から覗く、雲ひとつ無い快晴。うむ、いい天気である。私がアオイくんと話していたときは青空が欠片も見えない曇り空だったのだが。

 果たしてここはどこで、なんでこんなとこにいるんだろう。いや、原因は十中八九アオイくんである。だって行ってらっしゃいって言ってたもの。あの素敵セクシーボイスで言ってたもの。アオイくんは魔法使いだし、地面に穴を開けるぐらいお茶の子さいさいだろう。穴に落とされたって言うよりは別の場所に移動された状況だけど。


「佐々木さーん」


 というか、行ってらっしゃいって言ってそのまま放置はさすがにひどいよアオイくん。フォローって大事だよ。いくら楽観的でなんとかなるさ精神の私でも現状のヒントくらいは欲しい。ここはどこで私はなんでここにいてなにをすればいいのー。


「ねー、猫ストーカーの佐々木苑子さ~ん」


 あ、でもお嫁さんにならないかって言われたんだよね?じゃあここにいるのはそれが理由?・・・速攻でOKの返事をした自分の脊髄反射がオソロシイ。後悔はしてないが反省はしてる。せめてここでなにすればいいのかくらい聞いておけばよかった。

 まあ考えてもしょうがない。さすがにプロポースした相手を危ない状況に置いてはおかないだろう、多分。


「さーさーきーさーんーてーばーあー」


 しかしアオイくん、なにが苑子ならいっか、なんだろう。私を相手に選んだ判断基準が謎である。いや、私はアオイくんがお嫁さんにしてくれるなら文句なんて無いけれども。喜んで嫁ぐけれども。


「もー、現実逃避は程々にしてくださいよー。自分の目で見たものは信じるんじゃなかったんですかー?」

「・・・」


 さっきから妙に間延びした声が話しかけてきていたのは知っていた。知っていたが、しかし。


「声の主が発光物体ってどうなの・・・」


 猫のアオイくんが話すとかそういう次元ではない。これイキモノじゃないでしょ。ただの光の玉。それがぷかぷかふよふよ漂いながら、さんざん無視した私に対してプリプリ怒っている。ナニコレ。


「発光物体とはなんですかー。私ってば、こう見えても精霊なんですからねー」

「・・・"ただの明かり"なのに?」

「佐々木さんひどいですー!確かに生まれたばっかりですけどー。生後10分ですけどー」


 まだ球体しかとれないけど、精霊なんですからー。

 間延びした口調で抗議する自称精霊になんとも言えない気分になった。生後10分でこれだけおしゃべりなのってどうなんだろう。それとも精霊はこれが標準装備なのか。もしそうなのだとしたら、私は今後(あるかもわからないけど)精霊と相対するたびにこんな気分を味わわねばならんのか。


「あのー、あなたさ」

「ミケですー」


 ミケたる要素はどこにもないぞ、オイ。


「あー、ミケちゃん。あなた、もしかして、さっきアオイくんが魔法で出してた明かり?」

「そうですー。あの時は"ただの明かり"でしたけどー。佐々木さんに助言するために、アオイ様が精霊に昇格してくれたんですー。だからー、わかんないことは何でも聞いてくれていいですよー」


 えへん、と誇らしげな声のミケ。なるほど、この子はアオイくんが派遣してくれたフォロー役ということらしい。ああよかった。とりあえず問題がひとつ解決しそうだ。さっきから考えないようにしてたけど、どうしても気になることがあるんだよね。


「じゃあさ、質問していい?」

「はいー」


「なんで私、猫になってんの?」


 私の足元の水たまり。そこに映るのは、真っ白な長毛種のにゃんこだった。




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