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ほら吹き少年と司祭  作者: 山風勇太
第一章 ほら吹きレッコー
1/36

魔族が来る

 初めての投稿です。読みやすい文章を心がけつつ、とりあえず完結を目指してがんばります。

 消せない罪を背負った少年が、人との交流を通して生き方について考える物語です。戦闘シーンが出てきますが、ファンタジーとしてはライトなものになる予定です。

 人間と魔族が、剣と魔法でせめぎあっている世界の話。



「魔族だ! 魔族が来る!」

 こう叫びながら、ひとりの少年がカレド村に駆け込んできた。としは十五といったところ、小柄で、瞳の輝きが好奇心の強さを物語っている。

 ちょうどそこにいた中年の男が、一瞬ぎょっとした顔をしたが、その顔がややあってうんざりしたような表情に変わり、じろりと少年を睨んだ。

「やあ、レッコー、羊の番はどうした?」

「ラートさん、魔族だよ、魔物の群れが襲ってきたんだよ!」

 レッコーと呼ばれた少年が急き込んで訴えるが、男は別段慌てもしない。

「そうかい、まあ、魔物の十頭や二十頭、おれが軽く片付けてやるさ」

「だけど……じゃあ、それならそれで、羊達を助けに行ってよ!」

「おう、カブの種まきが済んだらな」

 男はそう言いながら、さっさと歩いていってしまう。何事かと様子をうかがっていた人々も、話が済んだと見るや散ってしまった。

 レッコーは周囲を見回したが、話し相手がいないと分かると、さらに村の中に走っていった。そしてなおも「魔族が来る」とわめき続けたが、みんな知らぬ顔をしている。そこでレッコーは、石造りの神殿に駆け込んだ。

「魔族が来るぞ! カルエレ様、アイナ司祭!」

 レッコーが大声で呼ばわると、勝気かちきそうな顔の少女が出てきた。歳のころはレッコーと同じか、ひとつふたつ下かもしれない。

「レッコー、どうしたの、大声出して」

「エーデ、魔族だよ、魔族が来るんだ!」

「あんた、またそんなこと言って……」

「エーデ、レッコー、どうしたの?」

 奥から、また別の女性が姿を現した。すらりとした体型で、小さな顔、小さな鼻と口に対して、少し垂れた大きな目が印象的だ。二十歳を少し過ぎたくらいと見える。

「また魔族が出たんだって、アイナ様」

 エーデが答える。

「おやおや、またなの?」

 と、三人目の女性が顔を出した。歳は六十といったところで、アイナと同じように、体をすっぽり覆う司祭服を着ている。

「そう、またなのよ」エーデがげんなりしたように言った。

「でも、今度は本当なんだ!」レッコーが言う。「それで、早く逃げなきゃ間に合わないんだよ」

「そう、それじゃ、すぐに逃げなきゃね」

「アイナ様!」

 アイナが応じた途端、エーデが金切声を上げた。

「なんで逃げる必要があるのよ! この前も、その前も、そのまた前も、魔族なんて来なかったじゃない、レッコーがひとりで騒いでただけで!」

「でも、今度は本当かもしれない。それなら、信じなければならないわ」

「『神を信じよ、同様に人を信じよ』って言うんでしょ?」エーデが呆れたように言う。「ギムデしんの教え! ありがたい教えよね」

「これ、エーデ、そんなふうに言うものじゃありません」

 年かさの司祭、カルエレがたしなめるように言った。

「それじゃ、カルエレ様も一緒に逃げるっていうんですか?」

「そうね、人を信じよと、ギムデがおっしゃっているのだから」

 言いながら、カルエレはちらりとレッコーの顔を見やった。少年はあくまで真剣な顔をしている。

 ただその表情に、ほんの一瞬、悲しみの影のようなものが走った。

「みんな、出ていらっしゃい」

 アイナが神殿の奥へ呼ばわる。と、五歳から十二歳くらいと見える子どもが六人、ぞろぞろと寄ってきた。

「みんな、お話は聞こえてた?」

「うん!」

 アイナの問いかけに、子ども達のひとりが答えた。

「また遠足に行くんでしょ?」

 子ども達はお出かけが嬉しい。

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