秋と小説と苺と ~君に伝える~
友香「何をしてるんですか?」
楓「苺を部室で育てようとがんばってるの。」
友香「無駄な努力をする前に手伝ってください。」
楓「冷たい!アイスより冷たい!」
足元を見ると一枚の紅葉が落ちていた。
「もう、秋か。」
私、赤坂楓は苺を食べながら景色を眺めていた。
「先輩。苺は季節はずれです。」
隣で私の可愛い後輩、佐藤友香が苺のパックを奪い上げた。
「ちょ!何すんの!私の命の元を返して!」
「秋らしい名前なのになんで苺が好きなんですか。」
友香は165cm。私は157cm。・・・手が届かない。
「名前は関係ないじゃん、ってかその苺高かったんだから返して!」
友香が上げていた手を下ろした。急いで苺を奪い返す。
「それより先輩、手伝ってください。〆切が近いんですよ。」
私たちは文芸部。部員は私と友香と1年2人。〆切は明日・・・
「友香。見てごらん、夕日が綺麗よ・・・」
「先輩。現実逃避しないで手伝ってください。それとこの部室からは夕日は見えません。」
「小鳥のさえずりが・・・」
「カラスです。」
「・・・」
「この小説、タイトルすら決まってないんですよ。」
「・・・」
「後、何ページか知ってますか?」
「友香。」
「はい、なんですか?」
「私は今まで黙ってたけど、実は2次元の世界から来たのよ。」
「そうですか。」
「・・・・・冷たい。」
「そうですか。」
「その大きな胸に優しさは入ってないの?」
「そうですか。」
「・・・」
だんだんと暗くなってきた。
「あ、もう帰ろっか。」
1年に話しかける。
「でも、明日までに終わらせないと打ち消され・・・」
「いいのいいの。どうせ、私の考えたくだらない夢物語なんだから。」
「でも・・・」
「どうせ、去年みたいに誰も読んでくれないんだから。」
「・・・」
部室に鍵をかける。もう外は真っ暗だ。
「ばいばーい。」
1年に手を振る。
2人が小さく手を振り返すのが見えた。
「先輩、行きますよ。」
友香が服の端を引っ張った。
「はいはい。」
友香の家は何処にあるかは知らないけど、いつも同じ方角だ。
だから、いつも一緒に帰っている。
「くだらなくなんかないですよ。」
「え?何が?」
友香が真剣な顔で私を見た。
「今回の小説のことです。」
「ああ、1年に言ってたセリフか。」
「それに何人かちゃんと読んでますよ。」
去年、確かに3、4冊ぐらい売れた。
「でも、私なんかの夢物語なんてつまらないよー」
「そんなことないです!!」
友香が今まで聴いたこと無いような大声で叫んだ。
「つまらなくないです!私は去年の小説を読んで、感動して、書いた人に会いたくて、この文芸部に入ったんです!!先輩の大大大大ファンなんです!!」
「わ、分ったから落ち着いて!」
友香の息は荒かった。この子がこんなに感情を出したのは初めて見た。
「と、とにかく、今回の小説だって、楽しみなんです。」
友香の目が潤んでいた。
カラスが鳴いている。
「そういえば友香の家って何処?」
「神大利です。」
「神大利・・・って、真逆の方向じゃん!!」
「こっちからの方が近いんです。」
「いやいや、それは無いでしょ。」
「そうでもないです。」
「あ、もしかして、私を送ってくれてるんでしょ。」
「そ、そんなことあるわけないわけ○△×♪◎■・・・」
「あれ?そうなんだ。」
「・・・私、変ですか?」
「え?いや、変じゃないよ。」
「私・・・先輩のことがスキかもしれないです。」
「え?私も大好きだよ。」
街灯が点滅している。道には人影がなかった。
「先輩のスキはLikeのスキですけど私のスキはLoveのスキです。」
「友香。」
「はい。」
「送ってくれてありがとう。」
気がつけば家の前にいた。
「先輩!私の話聞いてました!?」
「じゃあね。また明日。」
ドアを開けて、中に入る。
親は今日はいない。
階段を上って、自分の部屋に入る。
鞄を開けると苺の香りがした。
「覚えてないのかな・・・」
*********去年****************
目の前には大量に詰まれた本。
通り過ぎる人。
「誰も買ってはくれないか。」
私、楓は諦めていた。
ふと、下をこっそり見ると紙袋がある。
あまりにも売れないから自分でこっそり3冊買ったのだ。
「この本下さい。」
上から声がした。
見上げると165cmぐらいの大きな女の子が立っていた。
「300円ですよね。はい。」
その子の手には100円玉が3枚あった。
「あ、ありがとう。」
その子は苺の模様の鞄を持っていた。
「苺、すきなの?」
「え?あ、はい。好きです。」
「そうなんだ。」
************************************
もう、1年もたっている。
その後、わざと苺を持ってきている。
友香は気づいてるかな・・・いや、気づいてないのかも。
「あーあ。私から告白するつもりだったのにな。」
END
初のGL小説です。
あんまり自信は無いです・・・
ここまで読んでくださりありがとうございます!!