その7:連鎖崩壊の始まり。誰も得をしない学園長の即断
――その後の俺たちは、二日間の時を別々に過ごした。
そして授業参観・激励の日が訪れた。
私達は、初めて教室の中で過ごすことになった。
入り、端の席に座る私を不思議そうに見つめる人たち。
一瞬見た顔がニヤニヤ笑っている。
エリストス様だけは意外と真顔だ。
見渡すと、壁の端々に彫刻、窓はステンドグラス。
フィエル君もいる。
教室全体が輝いている。
お人形以外の先生。
「この問題が分かる人は起立して答えてください。」
「はい!私が考えますに…」
衝撃的な光景ばかり。
絶句しながらも、高級そうな紙に指が授業内容を
メモしてくれる。
あそこは文字通り、倉庫のような場所だった。
"私がメモをする。だから今は楽しんで"
魂を伝って声が聞こえた。
草田さん…私はこの光景、一生忘れない。
「この魔定式について、そうですね。
…あなたは答えられますか、アントワーヌさん。」
えっ…私に回ってくるの??
王族の人も見ている授業参観で、私に??
激励のために、見学をしている人たちが見える。
期待にこたえなければ。
立ち上がる。
「力のかけ方 Xが抵抗値Nによって減衰されるので
発生する熱は抵抗値Nに比例します
そしてその浸透力は術者の集中力Yに比例するので
この熟練者の場合発生する熱は
NYXが時間に比例し発生することとなります。
その場合、この素材自体は問題ないですが
表面に低溶銀が塗られているので、
術者が集中するほど弱く出力しないといけないという事でしょうか。」
「…そうですね。
詳しく解説しましょうか。
まず…」
口調が変だったかな、不安にさいなまれる。
でも後悔しても仕方ないし、私は授業に集中し始めた。
それからはあっという間だった。
何事もなく授業参観だからかたった1時間勉強したら
食事会になってしまった。
凄い、人がいっぱいで
机から食事を摂ってる。
食事会と言っても私の給食が無かったから、ヘステス先生がいたので
聞いてみた。
人形じゃない姿、久しぶりに見た。
「私のいつものパンは何処ですか?」
ヘステスさんの顔の眉間の方にしわが寄った。
面白いな。
「机から取っていいんだぞ。」
「あのパンが食べたいです。」
すぐ勉強に戻れるから。
「アントワーヌ。」
私の肩を叩かれ、肩越しにあの声がした。
「フィエル!」
思わず飛びつきたい気持ちを抑えた。
手には…パン。
それに何かピンクのものが挟まっている。
「人込みは苦手だろうし、端ですこし話そう。」
――彼女が思ったより…
人が苦手なのかもしれない。
机に近付くことも出来ていない。
人の近くで話し合うのは辛かったかな。
まずは二人で話して、気分が乗ってきたところで
他の奴に紹介しよう。
会場の端で、壁に寄りかかりパンを食べるのを待った。
他の貴族の男子を言いくるめて、女子を引き付ける様頼んだからか
俺の周りには人がいない。
ただ、テーブルに座ると俺たちが見えちゃうからな。
落ち着いて話すならこうするしかない。
彼女がパンを少し齧り、驚く。
「香ばしい…あんまり食べたことない。」
また衝撃を受けた。焼き立てのパンをってことか?
食べたことが殆どないだと…
「歯が痛いよ…」
綺麗な歯を見せてアントワーヌは笑う。
焼き立てのパンのとげとげした感じか、分からなくもない。
「アントワーヌ。」
俺は集団の方を見ながら、会話を始めた。
「君はどんなふうに生まれて
どんな生活をしてきたんだ。」
「あのね、私ブルーテルって軍閥貴族の家に生まれたんだ。」
目を閉じて、想像する。
「そうか、軍閥貴族か…」
「うん、それで6歳ぐらいの時かな。
妹と弟の面倒を見ながら
ここに入るための勉強を始めて…」
「それは親に言われたのか?」
「うん、使えないと分かったら
追放だって。
魔力沈着が優秀な人しか、血筋としては要らないって。」
下の子の世話に、親の圧力…
まずは感情を入れるな、俺。
「それで、ここの学園に入るために3年
ずっと勉強したんだ」
「うん。」
「それでね、この学園の試験で
火の使い方を間違えちゃって。」
「ああ。」
「危険だから、特別室で学習するか
クラスを落とすかってことになったの。」
「…?」
「使えないと追放だから特別室で
学習することになって、それから2年間。
私は…」
「待ってくれ、理屈が合わない。」
言葉を止めると、彼女はパンを齧った。
ピンク色の肉と花も齧り、その香りに驚いている。
目を見開いている。
…すこし黙っておいてやろう。
数分後、カラになった皿を持ってやって
続きの話を聞く。
「だから、中等生のネルって人と
フィエル君以外
まだお友達がいないんだ。」
ネル…記憶しておこう。
「それで、毎日朝から…夜まで…」
…?
「勉強したけど。
テストはいつも加減して
8割位に…」
どさり。
彼女の体が床に倒れる。
突然のことに混乱してしまった。
何が起きた、花か、ハムか。
いや、他の奴らは…
「ああ、いけません。
すぐに隔離しなくては!」
メリストスが口を押えて叫ぶ。
突然防護服を着た先生達がやってきて
アントワーヌをどこかに運ぶ。
「待て!」
俺は止めた。
だが進んでいった。
「どんな理由だ。」
「他人にうつる、パン以外が食べれなくなる感染症だって
お医者さんが…
治りきってなかったんですわね。」
「じゃあ俺も隔離しろ。
話したからな。」
どういうことだ…!
そんな症状…聞いたこともないぞ!!
「流石はフィエル様!
申し訳ないですが…先生方、フィエル様も隔離を。」
あり得ない、なんだこれは。
感染症?そんなはずはない。
特定の食物拒絶症か!?
ダメだ、気付かなかった。
だが学校側は気付いていたことに…
しまった、これは口実か。
アントワーヌを再び隔離するためか何かの。
だが、知ってしまった以上すぐにでも救い出す。
隔離が終わったら…
そして俺は、自ら隔離期間に入った。
仕方ない。
公衆の面前で感染症の可能性があると言われてしまった。
周りには聞こえていないかもしれないが、隔離されておかないと
後々何かあった時に問題になる。
そして、俺は5日間の間に
とある実験をしてみた。
二人の人物しか思い浮べずに
無言で、授業を12時間受けたらどうなるか。
……
はは、今の状況を見ればわかる。
首を掻きむしってしまった。
勉強も進まない、食事はゴミだ。
あんなの食い物じゃない。
隔離期間を超え、俺は朝一番に
アントワーヌのいるはずの部屋に駆け込んだ。
…そこには、破られた人形があった。
ちらりと見えた、アントワーヌの人形だ。
服がない。
3階に登ってみた。 居ない。
お手洗い、居ない…
俺は思い出してメリストスに聞いてみた。
隔離と言い出したのはコイツのはずだ。
「隔離されてるわ。」
「俺が謎を残すのが嫌いなのは知っているはずだ。
居なかった。」
「…え?」
奴は俺の目を見た。
そして次にこう言った。
「あの子は隔離されてるんじゃ…」
席を立ち、何処かに行ってしまった。
「どう説明すればいいのよ!!!!」
そんな叫び声が響き渡ったのは、
30分後の事であった。
――「捨てた。」
「…え?」
メリストスは学園長である父から
その一言を聞いた。
★境界からの独り言★
作品が違うって?それも境界。
だからここにかいた。
一回だけ境界を破りたかった。(宣伝はしないよ、最低限の礼儀は守る)
ここから、この学園における悲劇の始まりです。
想像すれば、なんとなくわかりますよね。
お楽しみにお待ち下さい。




