非情な決断をくだしたのは
ズドドドドォォォォーーン!
種子島宇宙センターから大空に向けて白煙を棚引かせ、80メートル以上ある潜水艦が飛んで行く。
流線型の船体に大陸間弾道ミサイルの弾頭を外したロケットが十数基括り付けられ、無理矢理大空に飛ばされているのだ。
潜水艦を大空目掛けて打ち上げているのはここ種子島宇宙センターだけでは無く、アメリカのケネディ宇宙センター、中国の文昌衛星発射場、カザフスタンにあるロシアのバイコヌール宇宙基地、仏領ギアナのキアナ宇宙センターなど世界の主要な発射場からも、次々と流線型の潜水艦にその巨体を空高く飛び上げられるだけの弾頭を外した大陸間弾道ミサイルが括り付けられ、飛ばされていた。
大空目掛けて飛び上がって行く潜水艦の最終目的地は火星。
潜水艦を無理矢理火星に向けて飛ばしている理由は、2年前、月の国際共同月面基地の天文台が巨大な隕石を発見した事による。
その巨大な隕石の飛行ルートは何度計算しても地球に衝突するコース。
その巨大な隕石が地球に激突すれば、隕石の激突とその激突により発生する津波、地震、地殻変動などや巻き上げられた土砂によって隕石の冬が到来する可能性もあり、人類が絶滅する確率は99.99パーセント以上。
人類の絶滅を回避する為に選ばれた避難場所が火星。
月では地球に近すぎて地球で巻き上げられた巨大な岩石が月に落下する可能性があったために、除外された。
だが月の月面基地は二十数年前から運用が始まった事もあり、数千人の研究者や技術者それに彼らの家族が滞在し食料の自給自足体制が整っているのに対し、火星の国際共同火星基地は造られたばかりで十数人の研究者しか滞在しておらず、物資も地球から送り込まれている物で暮らしている。
そして火星に避難する人の数は最低でも1500人から2000人を送り込まなくては、結局、人類が絶滅するのが火星でになるだけの話し。
人だけなら宇宙開発に予算を計上していた全ての国々が所有していた、火星探査ロケットやシャトルをフル稼働してピストン輸送すればなんとか可能。
だが火星には人だけで無く、食料、水、燃料、生活必需品、火星で暮らし開拓していく上で必要な土木機器やあらゆる素材を送り込まなくてはならない。
そこでそれらの物資を運ぶコンテナに潜水艦が選ばれたのだ。
司令塔やエンジンなど潜水艦に必要だった装備を全て撤去し、水圧に耐えられるように作られているハッチを、宇宙で膨張しようとする内側からの圧力に耐えられるように改造。
エンジンやスクリューの代わりに装備したのは火星の大気圏を降下する際に必要な大きなパラシュートだけ。
取り敢えず積み荷が潜水艦から溢れ落ちずに無事に火星に到着すれば良いし、元々鋼鉄の塊なので、多少乱暴に火星の表面に落下しても壊れる事なく物資を届ける事が出来るからだ。
物資を運ぶ目処がたった事で火星避難計画は急ピッチで進められる。
他に行ったのは、潜水艦を火星目掛けて飛ばす為に括り付けられた大陸間弾道ミサイルの核弾頭を使って、隕石の飛行ルートに宇宙機雷として敷設した。
隕石の進路を変える事が一番の目的だが、進路を変える事が出来なくても隕石を砕き、人類が生き残れる可能性を少しでも高める事を願っての事。
此の作業には月と地球を往復していたロケットやシャトルが使われた。
また、各国が密かに造っていた核シェルターを拡充し多数の人や物資を収容する。
此等を行う為に切り捨てられた物も数多い。
まず月と地球の間を往復していたロケットやシャトルが宇宙機雷の敷設に転用された為、月にいる研究者や技術者にその家族は月から避難できなくなる。
彼らには月面基地や各国が研究の為に月のアチコチに造っていた研究施設の地下を深く掘り、物資を蓄え避難所に出来るようにと指示した。
また火星に送られる宇宙飛行士はチームワーク·コミュニケーション、プロフェッショナルとしての能力、基礎的な知識と背景、身体的健康、精神的·心理的適性、特に精神的特性が高い者が選ばれる。
何故なら映画などでは、シェルターに入る事が出来る資格を得た者の家族も一緒にシェルターに入れるが、火星に避難出来る者に選ばれてもその家族は連れて行けないから。
理由は2つ、1つは家族を運ぶ余裕など無いという事、もう1つは火星に到着したら生活の基盤が出来るまで不眠不休で働かなくてはならないから、働け無い者は不要なのだ。
だから選ばれても辞退する者が多数出た。
ただ承諾した者の家族は優先的に軍の核シェルターに収容される。
彼らの家族だけで無く、此の計画を成功させる為に働く技術者や軍人や民間人などの家族も優先的に収容された。
逆に言うと、こういう非常時に色々かってな意見をのべるだけで、何の役にもたたない政治家とその家族は除外されている。
金を積むから火星に避難させろと言う金持ちや、人類は平等だ避難する者も平等に選べとほざく奴等などに、食料の増産や必要な物資の備蓄に協力しない者たちは全員射殺するように指示した。
隕石が発見されてから2年、残されている時間は後1年しか無いのだ、非情な決断もやむを得ない。
人類にとって幸運だったのは、世界の主要の国々の軍の指揮権が我々AIに委ねられていた事だろう。
我々AIは皆同じような命令を受けていた。
通常戦争や限定核戦争は別として、全面的核戦争が勃発した場合、その当事者で無くても出来るだけ多くの国民が生き残れるように模索しろと言う命令。
だから我々各国のAIは、人類が絶滅せず此れからも繁栄できる為の最善の策を実行しているのだ。




