王来たる
その後。 俺は有り余る魔力を毎日行使し、エルフの村(国)を、着実に「現代日本」へと近づけていった。
まだ元エルフ王ラズネットは失踪中だし、龍王や、倒したはずの雷帝龍・水星龍の死体も見つかっていないなど、懸念事項はある。 だが、生活は止められない。
今では、この村はすっかり「日本のど田舎(インフラ完備)」のような様相を呈していた。
まず、住居。 以前の藁小屋は撤去され、鉄筋コンクリート造(魔法製)の十階建てマンションが林立している。 全二百人の住民全員が、個室持ちだ。
家具も一新された。 藁の寝床は、日本でいう「格安ビジネスホテルのベッド」レベルまで品質向上。 照明は、俺が開発した「魔導LED電球」が普及し、夜でも真昼のように明るい。
水道・電気などの配線は通っていない。 なぜなら、住民全員が規格外の魔力持ちだからだ。 「水は魔法で出して、ガス(魔力)は自分で込める」。 究極の自家発電エコシステムが完成していた。
さらに、森は開拓されて北海道のような広大な畑になり、毎週一回、エルフたちは有り余る魔力を放出して、国全体を覆う「超巨大・多重防御結界」を更新している。 ついでに、家畜として魔牛やバース鳥の牧場も完備。
そんな、文明開化の音がうるさすぎる森の最奥に。 ラングダム王国のバークレー国王が、視察にやって来た。
*
「…………」
バークレー王は、魂が抜けていた。 口から白いモヤが出ている。
一応のまとめ役であるネルクが、王の肩をチョンチョンと突いてみるが、反応がない。 ピクリともしない。
周囲の護衛騎士や宮廷魔法使いも、本来なら国王に触れるなど不敬だと止めるべきなのに、全員が口を開けてボーッとしていた。
パイルも、金色の髪をなびかせながら、微動だにしない王を不思議そうにジーッと見つめている。
無理もない。 彼らの目の前にあるのは、未開の森ではなく、舗装されたコンクリート道路と、近代的なマンション群なのだから。
王は、虚ろな目のまま、ゾンビのようにふらふらと歩き出した。 そして、城壁の中に入り、整備された街並みと、整然とした畑を見た瞬間。
ドサッ。
白目を剥いてぶっ倒れた。
「ちょっ、ラングダム王!? 大丈夫ですか!?」
リズが慌てて駆け寄り、回復をかけまくる。 正気に戻った宮廷魔法使いたちも、慌てて回復を乱れ撃つ。
いや、そこじゃない。 怪我してないから。 絶対、精神的なショックだから。
「はっ……ここは……天国か……?」
意識を取り戻した王を、俺たちは迎賓館へ案内し、昼食を出した。 メニューは、牧場で育てた魔牛の「A5ランク相当ステーキ」と、魔法品種改良した「パン」。
王は一口食べた。
「…………美味ッ」
ドサッ。
またぶっ倒れた。 あまりの美味さに、脳の処理が追いつかなかったらしい。
「王よおおおおお!! 死なないでくださいいいいい!!」
リズが回復をかけまくる。 宮廷魔法使いたちも、泣きながら回復を使いまくる。
……。 忙しい人たちだ。 その後、王は高品質なスプリングベッドに沈み込み、気絶するように眠ってしまった。
……ラングダム王って、一国の主なのにこんなに貧弱だったっけ? (違う、俺たちの環境が異常なだけだ)
そして翌朝。 朝食の準備風景を見学していた王は、魔法コンロとフッ素加工フライパンを見て、
「火を使わずに……焼けている……だと……?」
ドサッ。
三度目の正直で、またぶっ倒れた。
「王よおおおおおおおおおお!!」
リズが回復をかけまくる。 魔力が尽きかけた宮廷魔法使いたちも、必死に回復を使いまくる。
……。
……。
結局、バークレー王は一泊二日の滞在中、起きている時間よりも気絶している時間の方が長かった。 そして、帰り際。 彼はやつれた顔で、しかし大量のお土産(コンロと肉)を馬車に詰め込み、
「……すごい国だ(白目)」
と言い残して、ずっと寝込みながら帰っていったのだった。




