戦後
その後。 ドラスとアスト、二柱の龍をレイクリ帝国側に見せ、事情を説明することで、誤解は解けた。 帝国は驚愕しつつも事実を受け入れ、ラングダム王国との同盟は再締結された。
あの宣戦布告の通信は、「行方不明の龍王による音声偽造工作だった」ということで結論づけられ、会議は終結した。
以下、今回の「三龍戦争」における戦後報告である。
【被害状況】
帝国連合側:歩兵30,000、魔馬兵1,000、魔法兵500
王国同盟側:歩兵25,000、魔馬兵1,000、魔法兵300
【主要人物・龍の動向】
ラズネット(元エルフ王):戦後、混乱に乗じて失踪。一時的に契約を結んでいたが、依然として大罪人であるため、国際指名手配中。
龍王:行方不明。
雷帝龍&水星龍:ソウスの一撃で死亡確認……されたはずだが、後に死体が消失。現場には大量の血痕だけが残されていた。
契約龍アスト:ドワーフ国へ帰還。
英雄龍ドラス:ラングダム王国へ帰還。
【その他】
エルフ国:現状維持(ベシュタルト領)。
商国ミシド:関係改善および賠償金として、王国へ3,000万ドラスを寄付。
そして――。 ソウスとリズは、「ドラスとアストを連れ帰った救世主」として、王都へ凱旋することになった。
*
馬車に揺られながら、リズが大げさに額の汗を拭う。
「……ふぅ。今回は、ずいぶん大変だったわね」
いや、汗を拭うな。 その仕草も可愛いけど……そうじゃない。
お前、一番疲れてないだろ。 最後においしいところで蘇生魔法を使っただけじゃないか。 道中はずっと馬車で寝てたくせに。
……いや、待てよ? 「契約龍アストを蘇生させた」って、功績的には歴史に残るレベルの偉業なのか? だとしたら、一番の功労者なのか……?
……。 考えるのはやめよう。頭が痛くなる。
それよりも、凱旋だ。 馬車の窓から外を見ると、沿道を埋め尽くす大勢の国民が見える。
ふと、夜空を見上げる。 月が、綺麗だ。
エルフ国からも同じ月が見えたのに、平和になったせいか、こちらの方が綺麗に感じる。
……あれ?
そういえば、ここって「異世界」だよな? なんで、地球と同じ**「月」**があるんだろう……。
模様も、大きさも、地球で見上げていたものと酷似している。 ということは、この大陸がある星も、地球のような「球体」なのか? だとしたら、地図にない大陸がまだまだあるのかもしれない。
俺が思索に耽っていると、歓声が大きくなった。 大声で俺たちの名を呼び、祝っている人たち。
……こうして見ると、貴族と平民で服装の質が明らかに違うな。 貧富の差が激しい。 領地経営が落ち着いたら、そこも改善の余地ありだな。
「ソウス様ーーー!!」 「リズ様ーーーーーーー!!」 「よくやったーーーー!! 俺たちの国の誇りだーーーー!!」
わーきゃーと、黄色い声援が飛んでくる。
……恥ずかしい。 昔から、人前での発表とか、褒められるのは苦手なのだ。
照れ隠しに、俺はこっそりと準備していた「アレ」を使うことにした。 創造魔法で作った、とびきりのプレゼントだ。
俺は窓から顔を出し、筒状の物体を空へ投げた。
ヒュルルルル……。
パーンッ! パラパラパラ……
「きゃああぁ!? ……わぁぁぁ!!」 「おおおおおおおおおおお!!」 「すげーーーーーーー!! 綺麗だーーーー!!」
夜空に大輪の花が咲いた。 そう、花火だ。
前世の中学時代、自由研究で火薬の配合色を結構ガチで研究していたのだ。 (あの頃の俺、兵器とか火薬とか好きすぎだろ……) 面倒だと思っていた黒歴史知識だが、こうして人々の笑顔に変わるなら、悪くない。
俺がほっこりしている、その時だった。
隣のリズが、いつから詠唱していたのか、窓から身を乗り出した。
「… ああ。神よ。我に啓示を与えたまえ。この世の精霊と我の魔力で、全てを灰燼に帰せ。 炎の究極よ。 核炎」
「え、ちょっ待っ――」
ドォォォォォォンッ!!!!!
リズが空に向かって、炎の究極魔法核炎をぶっ放した。
空が、昼間のように真っ赤に染まる。 熱波がビリビリと伝わってくる。 一歩間違えれば王都が消し飛ぶ、戦略級魔法だ。
多分帝国筆頭魔法使いのペールも腰を抜かすほどの核炎だ。
だが、国民たちはそれを「すごい花火」だと思ったらしい。
「「「うおおおおおおおおお!! すげええええええええ!!」」」
割れんばかりの大拍手。 俺の花火の倍以上の盛り上がりだ。
「……。」
リズが得意げにVサインをする。
なんか言えよ。
……。
ええー……。 俺の繊細な化学反応より、単なる暴力の方がウケがいいなんて……。
……。
俺は引きつった笑みを浮かべながら、歓声に応えるのだった。




