女神の考察
〜〜〜女神視点〜〜〜
私は、下界に放っている「猫」の視界を通して、その光景をじっと見ていた。
ソウスが作り出した、あの「銃」。 正直に言って、すごいわね。 前世の記憶だけで、よくあれだけの複雑な機構を頭に叩き込んでいたものだわ。 どうして平和な日本で、あそこまで兵器構造に詳しかったのかは謎だけど。
……ただ。 「銃を作る技術」と「銃を撃つ技術」は別物だったみたいね。
はっきり言うわ。 彼は、ド素人よ。
実際、彼の放った弾丸は、照準がめちゃくちゃにズレていたわ。 あのままだと、敵の龍じゃなくて、落下してくる味方――アストの脳天を直撃して「死体撃ち」するところだったもの。
そうなったら、流石のリズでも、粉微塵になった灰からの蘇生は無理だったでしょうね。
だから、私が少しだけ世界の理(物理法則)をいじらせてもらったの。 弾道をキュッと曲げて、敵の急所に吸い込まれるようにね。 感謝しなさいよ、ソウス。
それにしても……。 あのリズというエルフの少女。 彼女、たぶん能力を持っているわね。 それも、極上のやつを。
魂の輝き方が、普通のエルフじゃない。 あのオーラ、どこかで見たことがあると思ったら……。
まるで、かつての極東の島国の女王――『卑弥呼』のようだわ。
……。
いや。 まさかね。 あの幼女エルフの中身が、あの卑弥呼だなんて。
……。
いや、でも……。
ハッ。 そういえば、ソウスを転生させて送り出す時、妙に「魂の手応え」が軽かったような気がする。 もしかして、あの時、時空の狭間に別の魂が迷い込んで、混ざってしまった?
もし彼女が、時空の狭間を漂流してこの世界に辿り着いたのだとしたら、本来なら文化の違いや情報の奔流で発狂していたはず。 でも、「精神拘束(リズのポンコツ化現象)」があったおかげで、徐々にこの世界に馴染むことができた……? だとしたら、辻褄が合うわね。
そして、目を転じて「地球」の方を見てみる。 相変わらずだわ。 あそこの文明は、ありえない速度で発展している。 ただ、私の「故郷」よりはまだ遅いけれど。
それと、やはり地球は、あちらの世界の亜種のようね。
一日の長さなどが同じだわ。
ただ、時間の流れは地球の方が百倍ほど遅いのね。
あちらにソウスが旅立って十年ほどだから、地球では一年、ということかしらね。
そうやって、二つの世界をザッピングして暇つぶしをしていると、頭の中にあの方からの直接命令が響いた。
『――もうこちらの世界に手出しをするな。これ以降は、監視だけにしろ』
……チッ。 バレたか。 銃の弾道を勝手にいじったのがマズかったかしらね。
はぁ。 とにかく、これでもう手助けはできないわよ、ソウス。 リズの正体についても、これ以上探ると怒られそうだし、迷宮入りかしらね。
ふと、考える。 そういえば、この世界も、かつての私の世界のように「崩壊」するのかしら?
……まぁ、それはまだわからないわね。
かつて私の世界が崩壊した時、『あの方』が私を拾って神にしてくれたように。 もしこの世界が終わるなら、私は一人だけなら、この世界から誰かを救い出す権限を持っているんだけど。
まぁ、その審判が下るのは、あと五億年ほど先の話かしらね。
私は猫のあくびと共に、通信を切った。




