英雄龍ドラス4
〜〜〜英雄龍ドラス視点〜〜〜
敵が消滅した後。 我は震える翼を休めるため、王都の広場へと舞い降りた。
……今のラングダム王は、非常に優秀らしい。 あれほどの戦闘があったにも関わらず、住民の避難は完了しており、本来賑わっているはずの王都には人っ子一人いない。 おかげで、着陸スペースには困らなかった。
降り立った先に、二人の人影があった。 一人は少年、もう一人は少女(幼女?)だ。
我は龍の眼で彼らを観察し……息を呑んだ。
その少年は、精神構造が明らかにおかしかった。 我は長年、魂の研究をしていたからよく分かる。 彼の魂は、まるで「別の世界の魂」と「この世界の器」を無理やり混ぜ合わせ、定着させたような歪な形をしていた。
そして、少女の方もだ。 こちらも魂が継ぎ接ぎだらけだ。 だが、それ以上に……内包する魔力が異常だ。 まるで、伝説の能力持ちのような威圧感。 いや、ありえない。人間やエルフごときに、そんな力があるはずが……。
そんなことを考えていると、
「よう。無事か、ドラス」
背後から、聞き慣れた声がした。
「ッ!?」
恐る恐る振り返ると、
そこには亡き友、契約龍アストが立っていた。 五体満足で。ヘラヘラと笑って。
「な……アスト……? いや、ありえない」
我はこの目で見た。 奴は水星龍の魔法で体を貫かれ、確実に死んでいた。 心臓も潰れていたはずだ。
龍といえど生物だ。そんなポンポン生き返ってたまるか。
だが、よく見ると気付いた。 アストの魂の形が、歪に、しかし強引に「整えられて」いる。 砕けた魂の破片を、強力な糊で接着したかのように。
それを見透かしたように、少女がつまらなそうに言った。
「……死んでたから、私が魂魄蘇生を使って生き返らせたわよ。」
驚愕で顎が外れるかと思った。
いや、顎は絶対に外れないか。
こ、こほん。
牙が外れるかと思った。
蘇生。 それは、生命を司る草属性の頂点に位置する究極魔法。 あの「緑樹龍」ですら習得できなかった、神の御業だ。
それを、この幼女が?
「あ、ありがとう……。我はラングダムの守護竜、ドラスだ。礼を言う」
なんとか礼を絞り出す。 すると、少女はふふんと胸を張った。
「......私はリズよ。端的に自己紹介すると、全属性の上級魔法を一秒で使えて、五十年前に龍王をボコボコにして泣かせたエルフよ。」
「「っ!!??」」
我とアストは、同時に絶句した。
あの、龍王を……ボコした? 最強の龍王を、「泣かせた」だと?
アタマオカシイ。 明らかにレベルが違う。 次元が違う。 そんな化け物、龍以下の魔物――例えば下位の竜が百体かかっても、束になっても勝てないだろう。
もしかしたら、こいつは本当に神の類かもしれない。
我らが死ぬほど驚いて固まっていると、今度は少年が爆弾発言を投下した。
「僕はソウス。あ、さっき空にいた黄色い龍と青い龍を吹き飛ばしたのは僕ね」
「「?????」」
えEEEEEEEE????????
意味がわからない。 あの一発で? 我らが束になっても勝てなかった二体の龍と、究極魔法ごと消し飛ばしたのが、このひ弱そうな少年?
「あ、ちなみに僕は雷の究極魔法が使えるよ。隣のリズは風以外の全属性の究極魔法が撃てるから、仲良くしてね」
「「!?!?!?!?!???!??!?!??!?!?!??!??!?!??!?」」
コイツラ、アタマオカシイ。 バケモノダ。 究極魔法のバーゲンセールかよ!!
もう許容量限界だ。帰って寝たい。 だが、少年の追撃は止まらない。
「あ、あと僕の領地には、リズ以上の魔力持ちのエルフが、あと百人ぐらいいるよ」
プツン。
我とアストの中で、何かが切れた。
「「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!」」
我々は、発狂するしかなかった。 この世界、終わってる。




