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異世界戦記 ~雷魔法と日本知識だけで大陸最強へと成り上がる~  作者: TO
大陸内戦争〜vsレイクリ帝国連合軍〜

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戴冠式

パッパラパッパーーー!!


いかにも「戴冠式です!」と言わんばかりの、盛大なファンファーレが鳴り響く。


……まあ、実際に戴冠式なんだけどね。それも、貴族の最高位である「公爵」の。


はぁ。 こんな冷静なツッコミを心の中で入れていても、心臓はバクバクだ。とても緊張している。


赤絨毯の先には、この国の王バークレー・ラングダム。 その横には、とても知的な顔をした――中身は九十八歳の残念エルフ――リズ先生が澄ました顔で立っている。


そしてその手前には、すでに王へのお辞儀を済ませた俺の家族(父、母、兄、姉)が整列している。


周囲には、男爵から公爵まで、この国の有力貴族たちが勢ぞろいだ。 全員の視線が、俺一人に注がれている。


見ないで。恥ずかしい。 ……前世でも、俺は人前での発表が大の苦手だったのだ。


緊張で足が震える。 だが、俺はこの日のために「緊張を紛らわす方法」を考えてきた。


その名も、「失敗するより怖いことを考えれば緊張しない説」だ。


例えば、今ここで派手にズッコケるよりも、リズ先生に怒られる方が怖い……とか。 そうやって思考を逸らせば、体の力が抜け――。


「あっ」


思考と足が絡まった。 俺の体は、物理的に前のめりになり――。


(ヤバい、こける!!)


公爵授与式で派手に転倒。一生の恥。歴史に残る汚点。


精神強制マインド・コントロールッ!!」


俺は、地面に顔が激突するコンマ一秒前、とっさに全魔力を放出した。 それはもう、迷いなく。全力で。


『俺を中心とした半径百メートル以内の全ての生物よ、今から前後十秒の記憶を失え』


世界が一瞬、白く染まる。


俺は時間を稼いだその隙に、超高速で体勢を立て直し、何事もなかったかのように直立不動の姿勢に戻る。 そして、魔法を解いた。


……。


世界が動き出す。


「……?」


周囲の貴族たちが、一瞬だけキョトンとした顔をした。 だが、誰も「何があったか」覚えていないため、すぐに厳かな表情に戻る。


完全犯罪成立。 ふぅ、危なかった。


そう思って顔を上げると。


壇上のリズ先生が、疲れたような目で、じっくりとこちらを見ていた。 顔に穴が開きそうなぐらい、ジト目で。


(……あ、リズには効かないんだった)


……ああ、穴を作ってくれたなら、入りたい。


俺は何事もなかったような顔をして、再び歩き出す。 リズも空気を読んで、俺から目を逸らし、澄ました顔に戻ってくれた。 本当に、リズの精神拘束が解けていてよかった。 ……後で、リズに何か美味しいものでも作ってやろう。


そうして俺は、家族の列に並ぶ。 姉上の右側に立ち、王に向かって深々と頭を下げた。


王が、あらかじめ用意されていたであろう羊皮紙を読み上げる。


「汝らは、今回の功績を鑑み……」


俺は冷や汗を拭いながら、ボーっと聞いていた。 あぁ、本当に焦った。心臓が止まるかと思った。 だけど、ひとまず一件落着だ。


……そう思っていた時期が、僕にもありました。


『……ねぇ、ソウス』


脳内に直接、通信(コール)が響いた。 声の主は、隣にいるカーム姉上だ。


『今の魔法、凄かったわね。全員の記憶を飛ばすなんて……。 ねぇ? 今のを王様や他の貴族にバラされたくなければ、後で馬車で使っていた「あの便利な魔法」を教えてくれるわよね???』


え、怖っ。 脅迫だよ。十歳の子供に対する態度じゃないよ。


というか、姉上には効いてなかったのか!? いったいどうやったんだろう。

...そういえば、姉上は、水が使えるっけ。抵抗力が高いのもそのせいか。魔力は、均等に分けたし、もともと魔法の先生がいたといっていたし、魔力も高かったんだろうな。


はぁ。 後で、教えてやるか。背に腹は代えられない。


俺は通信(コール)で、短く返した。


『……わかったよ。教えるよ』


その瞬間。


姉上は小声で、ボソッと呟いた。


主従契約(コネクト・バリュー)


カッ。 契約成立。


……え? 姉上、いつの間にその魔法覚えたの? もしかして、馬車で俺が父上たちに使ったのを見てコピーした?


……なんか、壇上のリズが可哀想な目でこっちを見ているんだけど。 きっと、通信が聞こえていたんだな。


……。 いや、違った。 あの目は「可哀想な目」じゃない。 「私もその魔法教えてほしいな」という目だ。



何も言っていないのに、わかってしまう。 リズの精神年齢は九十八歳に戻ったはずだが、ちゃっかり強ねだるところは変わっていない。きっと、あれが成長したらこんな感じになるんだろうな、と納得できた。


俺が遠い目をしていると、王の宣言が佳境に入った。


「――よって、汝らベシュタルト子爵家を、それらの功績によって公爵家に叙し、新たな領地として旧エルフ王国全土を治めることを、ここに命ずる。 これらは、ラングダム王国国王、バークレー・ラングダムの名の下において、宣言する」


……え?


エルフの国って、ベシュタルト家が治めるの? いや、まあ「公爵領」をどこから持ってくるのか疑問には思っていたけどさ……。


一国の運営を丸投げ!?


それは、ちょっと王としてどうかと...。


「うむ。頼んだぞ、ソウス公爵」


王が、ニカっと笑った気がした。


あ、これダメなやつだ。この人は、めんどくさいことは、したくないんだ。


会場から、厳かな拍手が巻き起こる。


こうして俺は、二人の女性に貴重なオリジナル魔法を教える約束をさせられ、さらに一国の復興という重すぎる荷物を背負わされて、勲章式を終えたのだった。


はぁ。あと一週間で、エルフの国に行かなければならない。

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