そうして終わった戦争
大晦日ですね。
パリンッ。
唐突に空間が割れる音がした。
「……あ」
忘れてた。 ペールさんと、ゼインが亜空間で戦っていたのだった。
... いや、違うんだ。こっちの戦いが激しすぎて、向こうの音が全く聞こえなかったから、つい失念していただけなんだ。
……。
いや、本当に本当だから。 悪気はなかったの。信じて。
ペールたちが現れ、崩壊した会議場を見渡す。 そして、即座に動いた。
「草の壁」
ペールが杖を振るい、ボロボロになったゼインを守るように壁を展開する。
あれ? なぜ、敵だったゼインに守りの魔法を?
「……ゼインは私と契約し、忠誠を誓う下僕になりました。これにて、私と彼との戦闘は終結です」
ペールは淡々と報告し、そして俺の肩で寝息を立てている幼女に視線を落とした。
「……それで、あの厄災が、我々が出てきても魔法を撃ってこないほど静かなのは、なぜかしら? ……あら、そういうことね」
ペールは察したように溜息をついた。 俺は、安心しきった顔で寝ているリズをちらっと見て、苦しい言い訳をする。
「リズ先生が、お休みのお時間だったからだよ」
……。
なんか、すごい誤解をされている気がする。 これ、リズが起きた時に「私が寝てたこと言ったでしょ!」って怒られるやつだ。
「じ、実は、リズはラズネットに強力な記憶拘束をされていたんだ。それが解けて、反動で寝てるだけだよ」
「へぇ、そうだったのね。やはり、巧妙に精神を操作されていたみたいね……」
ペールは興味深そうに頷いた。
「それで、どうやってその拘束を解いたの? 普通なら、拘束されていること自体に意識が向かないように、認識阻害や記憶誘導もされていたはずじゃない」
「それはですね……。なんか、夢の中でカレーが溢れてて、その中で僕を救うために頑張ったら、なんかバキッて解けたらしいです」
「……」
「……い、意味が分からないですよね。僕もです」
ペールは数秒沈黙した後、考えるのを放棄したように首を振った。
「と、とにかく。理由はともかく、ソウスさんを救うために自力で解いたというのは、いいことよ。結果オーライね」
「そ、そうですね」
「では、通信で、逃げ出した各国の王たちを、もう一度このボロボロな会議室に呼び戻しましょうか」
*
そうして、波乱の緊急全国会議は幕を閉じた。
再開された会議では、まずリズの「解放」と「ラズネットの海底追放」について報告がなされ、全員が顎が外れるほど驚いていた。
その後の取り決めにより、大陸の勢力図は大きく変わった。
まず、ハーフフット国は王が下僕契約を結んだため、事実上レイクリ王国の「属国」となった。 これは、どんな手段を用いても反逆できない絶対的服従だ。
また、ドワーフ国は、コナキ王がラズネットへの攻撃に加担していたため、国連からの強固な「同盟国」となった。
そして、王を失った問題のエルフ王国についてだが……。 ドワーフ王国が捕らえた重役以外の運営を、晴れて頭がよくなったリズが担当することになった。 そして、その「補助」として、なぜか究極魔法を使える俺、ソウスが指名されたのだった。
……。
ぼ、僕、十歳ですよ? まだ成人すらしていない子供に、一国の復興(しかも他国)を手伝えと?
だが、か弱い十歳の僕の抗議は虚しく無視された。 俺は近いうちにエルフ王国へ赴き、国の立て直しをしなければならなくなってしまったのだ。
ただ、幸いなことに、一か月の執行猶予が与えられた。
そして、もう一つ。 もし僕がラズネットの足止めをしていなければ、リズは目覚めずに殺されていたかもしれない。 つまり、実質的に「リズを救い、国を救った」という特大の功績が認められたのだ。
その結果。
ベシュタルト家は、子爵から一気に「公爵」へと飛び級昇格することになった。
...いいなぁ。何もしなくても、どんどん位が上がっていって。
俺は再び、あの胃の痛くなるような勲章授与式に出ることになったのだった。
もちろん、他の貴族の反対はなかった。
国が滅ぼされ、貴族の位どころではなくなる所だったからだ。
*
その後、ドワーフ国は、ハーフフット国を攻めていたため、少し損害賠償を食らったのはまた別の話。




