女神の願い①
ここからしばらく、女神視点の伏線回収になります。
そして、ここから毎日20:00投稿になります。
~~~女神視点~~~
――時は遡る。 西暦でいうところの三世紀半ば。
倭国の女王、卑弥呼は死を迎え、その魂は女神の空間へと招かれていた。
「卑弥呼よ。私はこの地球を管理する女神だ。お前の偉大なる預言の力を見込んで、頼みがある。将来、異世界に誕生する魔王について占ってほしい」
女神は、内心で深くため息をついていた。
(はぁ……。あの方も無理難題を押し付けるわよね。 こっちの世界から転生者を連れて行っても構わん。とにかく、あちらの世界で将来起こる魔王の誕生を阻止するか、討伐させろだなんて)
女神は葛藤していた。 この宇宙が生まれて百三十八億年。ようやく地球に文明が芽生え、これからという時期なのだ。そんな時に、管轄外の異世界の面倒まで見ろなんて、土台無理な話だ。
今、顕現させているこの肉体だって、わざわざ地球の生命体に合わせてデザインしたというのに。
(はぁ。どうしたものか。あちらは剣と魔法の世界。こちらの世界の住人がいきなり転生しても、困惑してすぐ死ぬのが目に見えているわ)
……ただ、あの方――さらに上位の神の命令は絶対だということも、理解していた。中間管理職の辛いところである。
だから今回は、わざわざ死んだばかりの預言者の魂を呼び寄せて、魔王の出現予想をさせることにしたのだ。どうせ私にはわからないのだから、猫の手も、神の手も借りたい。
(……私、そういえば神だったわ)
自分自身にツッコミを入れつつ、女神は卑弥呼の言葉を待つ。
……。
……。
……返答が遅い。
いくらなんでも、遅すぎない? もう体感で一分くらい待ってるわよ?
(私も暇じゃないんだから、早くしてほしいんだけど。 ……いや、そういえば全然暇だったわ。悠久の時を生きてるし)
そんなくだらないことを女神が考えているうちに、卑弥呼が口を開いた。
「……啓示が、降りた」
おもむろに卑弥呼は告げた。
「これから遥か未来。異世界を救う鍵となる魂が現れる。猫に関する物語を紡いだ、偉大なる文豪。その名に縁ある魂が、魔王を討ち滅ぼす希望となるだろう」
卑弥呼は、その魂と、将来あうということは知っていた。ただ、遠い未来らしく、その文だけしか分からなかった。また、その予言まで、全く予言が得られなかったのを不思議に思っていた。
(……猫? 文豪?)
女神はいまいちピンとこなかったが、とりあえず予言は得られた。
「ご苦労。では、報酬として……そうね。とりあえずあなたは、その異世界に転生してちょうだい。そこで、次の魂が来るまでの間、人類を守っておいて」
「……承知した」
そうして、彼女は無表情なまま、光に包まれて異世界へと転生していった。
女神は、正直その予言を全面的に信じたわけではなかったが、猫という単語には興味を惹かれた。
その後、気まぐれで地球の猫を観察しているうちにすっかり気に入り、自らの使い魔として、地球の監視をさせることにした。
女神は、猫を愛でながら、悠久の時の中で異世界を監視し続けた。
やがて、長い時が流れた。
異世界は、地球でいう中世ヨーロッパ風の文明レベルまで発展した。 一方の地球も、西暦一八〇〇年代に入り、産業革命を経て技術力が飛躍的に向上していった。
不思議なことに、元々の予言という才能と、チート「究極覚醒」を持っていたのに、卑弥呼が転生したと思われる体の活躍の話はなかった。
あれ?確かに転生させたとき、少し手ごたえがないな、とは思ったんだけど...
(……とりあえず「あの方」に怒られなくて済んだわ。よかった)
そうして、さらに年月は過ぎていく。




