リズネットの解放
~~~リズネット視点~~~
むにゃむにゃ。
カレーがひとつ、 カレーがふたつ、 カレーがみっつ、 ……。
あぁ、おいしい。
バースのお肉が、パタパタ。 ジャガイモが、ゴロゴロ。 ニンジンが、スリスリ。 ルーが、ボトン。
……。
カレーがあそこに四つ、 ここにも五つ。
……。
あれ?
ない。
どこ?
ソウスは?
あ、いた。 おーい、ソウスー。
……あれ?
あの光は、なに?
ちょ、ちょっと待って。 あれはダメ。
ソウス、逃げて。 早く。
あれには勝てない。今の私でも無理かも。
いや、無理じゃない。
そう、私がソウスを救う。
彼は、なぜか私がずっと求め続けていた何かに似ている。 今はまだ、思い出せないけれど。
それでも、彼を救う。 絶対に、救ってみせる。
その強い意志を抱いた瞬間。
頭の中に絡みついていた分厚い鎖が、バキィッ!! と音を立てて砕け散った。
*
――ハッ。
私は……寝ていたのか。
なんて、情けない。 私も、もうすぐ百歳になるというのに。
……状況を把握する。 これまでの、記憶はある。あの「残念な子供」として振舞っていた九十年間の記憶も、全て。
これもすべて、あいつ――父、ラズネットの仕業か。
あの時、私は精神拘束の抵抗に失敗したのか。 まあ、当時の私の魔力量では、あいつの百分の一にも及ばなかった。無理もない話だ。
私の精神を幼子のまま封じ込め、飼い殺しにしていたのか。 この百年間、一度も自力で解けなかったとは、我ながら情けない。
ただ、この鎖を認識させないようにもしていたのか。
だが、いったい何のために?
……おそらく、あいつは私の「真の才能」と、前世からの「記憶」の片鱗に気づいていたな?
いや、記憶までは知られるはずがない。 だが、私が持つ「預言者」としての才能を危惧し、次の王位継承者、あるいは自分を脅かす存在になるのを恐れたのだろう。 自分が築いた地位が、私の予言によって崩されるのを防ぐために。
ただ、もう大丈夫だ。
精神の鎖は、今、解いた。 ソウスを救いたいという意志が、呪縛を焼き切った。
あとは、体に刻まれた誓約を解くために、術者であるあいつを殺すだけだ。
そう、私の生物学上の親、ラズネットを。
魔力量に関しては、前世の私は持ち合わせていなかったから比較できないが……この体の魔力は悪くない。 そして何より、「預言者」の能力は、まだ健在なようだ。
……。
(チッ)
やばい。 覚醒した予言能力によって、今、「最悪の未来」が脳裏をよぎった。
私がここで本気を出せば、今の戦況は打破できるが……その先に待つ未来は、あまりよろしくない。
まぁ、いい。 今考えるべきは、目の前の敵だ。 取り敢えずは、諸悪の根源であるラズネットを潰す。
――ここまでの思考時間、わずか0.1秒。
預言者の能力のひとつに、「思考加速」がある。思考速度を百倍に引き上げる能力だ。
止まっていた世界が、ゆっくりと動き出す。
さて、やるか。




