他の国の動揺②
~~~三大国の一つ、亜人連合アスト国国王、ドワーフ族のコナキ視点~~~
私は、この国、亜人連合アスト国の国王を務めているドワーフ族のコナキだ。
この国は、その名の通り亜人同士の連合で成り立っている。 東にハーフフット、南にドワーフ、西にエルフの領域があり、北には人類の国、レイクリ帝国が隣接している。
そして、エルフの領域の北にラングダム王国がある。
そして、その隙間に他の小国、商国や宗国、獣国などが点在する。
我々人類ではない三種族は、遥か昔、今は消息不明である「守護龍アスト」の名において、共に国を作ることを宣言したのである。
それぞれの種族の領域に王都があるが、一応、ドワーフの王都がこの国の中心ということになっている。 だが、実質的な政治は、ドワーフ王の私コナキ、ハーフフット王のゼイン、エルフ王のラズネットによる「三王合議制(多数決)」で決められているのが実情だ。
この連合国は、エルフの魔法、ドワーフの武器加工技術、ハーフフットの機動力を併せ持ち、とてつもない戦闘力を誇る。 しかしその反面、総人口はラングダム王国の十分の一にも満たない少数精鋭国家でもあった。
そして今。 その一応のまとめ役である私コナキは、頭を抱え、死んだ魚のような目をしていた。
「……なぜ、あのリズが究極魔法を覚えるんだよ!!」
執務室で叫ばずにはいられなかった。
リズ――本名、リズネット。 彼女はもともと、エルフ王ラズネットの第三王女だった。
だが、彼女は魔法の才能こそあれど、精神が全く成長しないという問題を抱えていた。 王族として育てるのは無理だと判断され、今から九十年ほど前、ラングダム王国への「技術視察」という名目で、実質的な厄介払いをされたのだ。
ちなみに、当時のリズは十歳。精神年齢は一歳児レベル。 その「残念さ」は、推して知るべしだ。
……実のところ、リズはその精神年齢のせいで、エルフ族の中でもかなり不遇な立場に置かれていた。
そんな彼女を拾ったのが、ラングダム王国の二代前の国王だ。彼はリズの魔法の腕だけを買って、宮廷魔法使いに据えたのだが……。
お分かりだろうか。
やはり、その精神の残念さは治らなかった。 彼女は魔法という概念を正しく理解しておらず、まるでクッキーでも食べるような軽いノリで、戦略級の上級魔法をぶっ放していたのだ。
まあ、他国への抑止力にはなったため、父であるエルフ王ラズネットは「それでいい」と放置していた。 そして私、コナキも「他国で元気にやっているならそれでいい」と思っていた。
九十年前からずっと、リズネットの「残念な噂」は聞いていたからだ。
だが、その期待は見事に裏切られた。 悪い方向に、ではない。良すぎる方向に、だ。
そして今日、九十年ぶりに亜人連合の緊急会議が開かれたのだが……。
会議の結論は、最悪だった。
「リズネットを連れ戻す」。 エルフ王ラズネットはそう主張し、ラングダム王国で開かれる会議に参加することになった。
もし、ラングダム側がリズの引き渡しを拒否した場合、ラズネットとハーフフット王ゼインが、実力行使をしてでも、たとえ暴れてでも連れ戻すというのだ。
私としては、無能扱いして厄介払いをしておきながら、才能が芽生えた途端に返せというのは、あまりにも自分勝手すぎる理屈だと思ったのだが……。
多数決は、絶対だ。 二対一。見事に私も、その強奪作戦に加担する側になってしまったのだ。
これには、全く納得がいかない。
(……ふん)
私は、心の中で冷たく笑った。
もし、リズとかいうその少女が、あの身勝手な二人の王を返り討ちにできたなら……。 その時は、私が連合国内でクーデターを起こしてやろう。
守護龍「アスト」には申し訳ないが...
腐った王たちを一掃する、いい機会だ。
そうして、各国の思惑が交錯する中、運命の会議が始まろうとしていた。




