他の国の動揺①
そうして、ラングダム王国主催による「緊急全国会議」が開かれることになった。
一方、当事者であるソウスは、とても困惑していた。
「……なんで?」
突如として王都から召集命令が届き、緊急全国会議とやらに出席することになったのだ。 はて、一体なぜなのだろうか。俺、何かしたっけ?
心当たりと言えば、リズ先生に無理やり究極魔法を覚えさせられたことくらいだが……まさか、それが原因か?
本来なら当主である父上が同行するべきなのだが、父上は召集令状を見た瞬間から「ひぃぃ、リズ様の件だ、絶対そうだ、俺の胃が死ぬ……」とガタガタ震え出し、生まれたての小鹿のようになって使い物にならなくなってしまった。 仕方がないので、俺一人で王都に向かうしかない。
そのために、母上から領地で一番マシな馬車を借り、俺は人生二度目となる王都への旅路についた。
*
「……おぇ」
気持ち悪い。
二度目だからと言って、慣れるものではなかった。サスペンションのない馬車の振動は、容赦なく俺の三半規管を破壊してくる。 この時、ソウスは固く心に誓ったのだった。 絶対に、快適な移動手段を――ゴムタイヤとスプリングを実装した馬車、いや、いっそ自動車を作ってやる、と。
そうして、地獄の移動を経て、王都の城にて会議が始まる。
*
~~~三大国の一つ、レイクリ帝国国王、バーゼル・レイクリ視点~~~
その緊急報告が、隣国ラングダム王国から届いた時、私は乾いた笑いを漏らすしかなかった。
報告内容は二つ。 一つは、ラングダム王国の宮廷筆頭魔導士リズが、新たに五つもの究極魔法を習得したというもの。 正確に言うなら、「遂にあの問題児がやらかしたか」という表現の方がしっくりくる。
草の究極魔法を覚えたのは予想外だったが、それ以外は絶対に驚くべきことなのに、しっくりくるのだ。
...不思議なことに。
そしてもう一つ。そのリズが、わずか十歳の少年に雷の究極魔法を教え込み、世界で十人もいない究極魔法の使い手を一人増やした、というものだ。
普通なら「どんな質の悪い冗談だ」と一笑に付すところだが、リズが絡んでいる時点で、これが紛れもない事実なのだろうという謎の確信があった。あのエルフならやりかねない。
「それで陛下、その会議に出席されますか?」
執務室で静かに問いかけてきたのは、我が国の筆頭宮廷魔法使い、ペールである。
彼女は獣人族の中でも特に身体能力に優れた猫族の特徴を持ち、しなやかな体躯と、魔法の才能を兼ね備えた非常に優秀な魔導士だ。
彼女の適性属性は、闇、炎、風、水。どれも隠密や奇襲に適した、まさに暗殺者向きの構成だ。それが彼女を宮廷魔法使いの地位に押し上げた理由でもある。 だが、彼女の真価はそれだけではない。彼女が習得している究極魔法は、広範囲を焼き尽くす炎の核炎。これは純粋な戦争向けの魔法だ。
暗殺者としての隠密性と、戦略級の火力を両立させる。その二つの異なるスタイルを使いこなす知性と器用さこそが、彼女の最大の武器だった。
さて、どうしたものか。
結論は、すでに出ている。
出席するしかないのだ。
まず第一に、この会議を欠席すれば、あのリズの反感を買う可能性がある。それだけは絶対に避けたい。あの歩く厄災を敵に回すなど、国家存亡の危機に直結する。
そして、もう一つ理由がある。その雷の究極魔法を覚えたという少年を、この目で見てみたいのだ。
彼が発明したという、素晴らしい道具の数々。以前、ラングダム王国から洗濯機の知的財産権を買い取った時、私はその設計思想を見て一瞬で「天才の仕事だ」と確信した。 その対価として支払った三百億ドラス――我が国の通貨で三兆レイク(日本円にして約三兆円)という国家予算レベルの巨額も、決して高い買い物だとは思わなかった。それだけの価値が、あの発明にはあったのだ。
そんな発明を生み出す頭脳と、究極魔法を操る力を持つ十歳の少年。興味が湧かないはずがない。
「よし、ペールよ。その会議に出席する。すぐにラングダム王国へ通信を繋げ。参加の意思を伝える」
そうして、バーゼル・レイクリは、不敵な笑みを浮かべながら参加を決定したのだった。




