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第3話

「うーっす、おなしゃーす」


「へぇ、かわいい子じゃん、やったねぇ」


 まず募集でひっかかったのは、若い男二人組だった。ジャラジャラと魔石の飾りをつけた男と、刻印を身体から顔にいたるまでびっしりと書き込んだ男だ。


 ふたりとも戦闘経験豊富で地元じゃ負け知らずだったらしいが……


「ぐ、ぐあー!」


「おやおや、これはまずいねぇ」


 井の中の蛙、大海を知らず。ダンジョンの敵に適応できずに、道半ばでリタイア。



 1パーティ目、解散。





「ふえぇ、お願いしますぅ」


「よろしくですぅ」


 次の応募者は双子の少女たち。抱えている魔銃の形はLMGとSR。武器を持っているというより、武器に持たされているといった感じ。


 意外にも戦闘も安定しており、地力の高さを感じさせる。だがしかし……


「駄目ですアズマさん」


「ちゃんと休憩してからなのです」


 1戦1戦終わった後に風呂敷を広げては、休憩を挟むスタイル。


「無事クリアですぅ」


「アズマさんもさすがですわ」


「あ、ああ」


 早朝に入り始めたというのに、出てきたのは深夜だった。

 こんなでは、皆においつくころには婆さんになってしまう。


「すまん!用事を思い出した!」



 2パーティ目、解散。





「よろしくね、お嬢さん」


「ふふふ、私のデータによれば、このパーティのクリア平均90%」


 次の応募者は、妖艶な雰囲気をまとった女性と、メガネを3秒に一回はかけ直す長身男性のペアだった。


「任せてください、私のデータは嘘をつかないことを証明しましょう」


「ふふ、うちの旦那がごめんなさいねぇ」


 どうやら夫婦らしい。意外な組み合わせだが、はたして……


「ふっ!データによれば右方向に接敵確率、98%」


「あなた、次は?」


「敵の装備が薄い確率、75%。そして打たれた際、私のいる方向に逃げ込んでくる確率……100%」


 見事なまでのデータ攻略によって、道中はとても安定していた。


「アズマ氏、いったん止まってください」


「あ、ああ」


 立ち止まると、死角からモンスターが出てくる。


「ここは巡回ルートです。ダンジョン開始から20分後にここに来た場合、彼らの巡回とかち合うというわけです」


「は、はぁ」


 こういった目でダンジョンを考えたことはなかった。実に面白く、かつ効率的だ。

 だがしかし、一つ問題があるとすれば……


「アズマ氏、先程の戦闘にて腕の角度が15度外側であれば被弾せず」


「アズマ氏、先程の接敵は私のデータより5歩先に陣取っていたがために起きたものであり」


「アズマ氏


「アズマ氏


「アズマ氏


「う、うわぁぁぁやってられっかあぁぁぁ!」


「アズマ氏!そっちにいった場合強敵に遭遇する確率が!」


「うわぁぁぁぁ」


「ブモォォォォォォォ」


「へっなんだこいt」


 気がついたら蘇生室だった。


 懇切丁寧に次回探索をお断りさせていただいた。



 3パーティ目、解散。





 その後も数々のパーティとマッチしてみたが、俺の温度感にあうパーティは見つけられなかった。


 そこで一つの事実に気づく。


「別にソロでもぐっても構わないんじゃないか?」


 ダンジョン攻略をソロで行う人は、いなくもない。

 報酬を分ける必要がないし、隠れやすさもパーティとは段違いだ。

 それになにより、メンバーに気を使う必要がないというのが、一番のメリットだ。


 パーティの解散原因の8割が、人間関係によるものだと言われている。パーティでしかダンジョンに潜れないとなると、解散から次のパーティが見つかるまでのブランク期間が生まれてしまう。そうなると収入の面で大変なので、ある程度熟練の探索者は皆ソロでそれなりに回れるよう訓練する。


 ダンジョンレベルの面からしても、ラストヒット争いがなくなると考えればソロも悪くはない。


「そうだ、ソロで回ろう」


 そうとなれば準備も最低限でいい。どうせ詰んだときは死に戻ってしまうのだから、いざというときの備えも最小限に控える。逆に弾はギリギリまで多く持っていき、道中の敵はすべて倒すスタイルで行く。


 そして一番のコツがこれーー


 知る人ぞ知るドリンク、『ラング・ウォーター』だ。


 このドリンクには魔法によるバフがかかっており、スタミナ向上・息切れ防止の効果がある。もちろんギルド公認のいわゆるダンジョンドリンクというやつで、探索者になる特権の一つがこのダンジョンドリンクの購入権だ。


 このドリンクがなぜ重要になるかといえば、効率重視の攻略ルートにある。


 レベルのシステムからして、最も効率の良い経験値取得方法は『生きて帰って来る』ことである。つまり、時間効率だけを考えるのであれば、探索の内容を凝るよりも『何度も出撃して生きて帰ってくる』ことが重要になってくる。


 いかに出撃回数を稼げるかがこの際問題となってくるわけだ。

 攻略時のフローはこうだ。


 まず出撃と同時にドリンクバフをつけて走り始める。

 敵と接敵したら基本倒す方針で経験値を稼ぐ。

 出撃地点付近のアイテム部屋を多少あさったら脱出地点まで再びランニング。

 帰還したらアイテムを整理してすぐに再出撃する。


 これを繰り返して早々に高層へと到達する。それが俺のしばらくの目標だ。


「弾よし、回復よし、ドリンクよし」


 再度荷物を確かめ、準備を完了する。


「本当に一人でかまいませんか?」


「ああ、もちろんだ」


 ギルド嬢の心配そうな言葉に、俺は自信満々に返す。


「それでは、お気をつけて」


 見送りの言葉を背に、俺はダンジョン開始のワープポータルを起動させた。

「うーっす、おなしゃーす」


「へぇ、かわいい子じゃん、やったねぇ」


 まず募集でひっかかったのは、若い男二人組だった。ジャラジャラと魔石の飾りをつけた男と、刻印を身体から顔にいたるまでびっしりと書き込んだ男だ。


 ふたりとも戦闘経験豊富で地元じゃ負け知らずだったらしいが……


「ぐ、ぐあー!」


「おやおや、これはまずいねぇ」


 井の中の蛙、大海を知らず。ダンジョンの敵に適応できずに、道半ばでリタイア。



 1パーティ目、解散。





「ふえぇ、お願いしますぅ」


「よろしくですぅ」


 次の応募者は双子の少女たち。抱えている魔銃の形はLMGとSR。武器を持っているというより、武器に持たされているといった感じ。


 意外にも戦闘も安定しており、地力の高さを感じさせる。だがしかし……


「駄目ですアズマさん」


「ちゃんと休憩してからなのです」


 1戦1戦終わった後に風呂敷を広げては、休憩を挟むスタイル。


「無事クリアですぅ」


「アズマさんもさすがですわ」


「あ、ああ」


 早朝に入り始めたというのに、出てきたのは深夜だった。

 こんなでは、皆においつくころには婆さんになってしまう。


「すまん!用事を思い出した!」



 2パーティ目、解散。





「よろしくね、お嬢さん」


「ふふふ、私のデータによれば、このパーティのクリア平均90%」


 次の応募者は、妖艶な雰囲気をまとった女性と、メガネを3秒に一回はかけ直す長身男性のペアだった。


「任せてください、私のデータは嘘をつかないことを証明しましょう」


「ふふ、うちの旦那がごめんなさいねぇ」


 どうやら夫婦らしい。意外な組み合わせだが、はたして……


「ふっ!データによれば右方向に接敵確率、98%」


「あなた、次は?」


「敵の装備が薄い確率、75%。そして打たれた際、私のいる方向に逃げ込んでくる確率……100%」


 見事なまでのデータ攻略によって、道中はとても安定していた。


「アズマ氏、いったん止まってください」


「あ、ああ」


 立ち止まると、死角からモンスターが出てくる。


「ここは巡回ルートです。ダンジョン開始から20分後にここに来た場合、彼らの巡回とかち合うというわけです」


「は、はぁ」


 こういった目でダンジョンを考えたことはなかった。実に面白く、かつ効率的だ。

 だがしかし、一つ問題があるとすれば……


「アズマ氏、先程の戦闘にて腕の角度が15度外側であれば被弾せず」


「アズマ氏、先程の接敵は私のデータより5歩先に陣取っていたがために起きたものであり」


「アズマ氏


「アズマ氏


「アズマ氏


「う、うわぁぁぁやってられっかあぁぁぁ!」


「アズマ氏!そっちにいった場合強敵に遭遇する確率が!」


「うわぁぁぁぁ」


「ブモォォォォォォォ」


「へっなんだこいt」


 気がついたら蘇生室だった。


 懇切丁寧に次回探索をお断りさせていただいた。



 3パーティ目、解散。





 その後も数々のパーティとマッチしてみたが、俺の温度感にあうパーティは見つけられなかった。


 そこで一つの事実に気づく。


「別にソロでもぐっても構わないんじゃないか?」


 ダンジョン攻略をソロで行う人は、いなくもない。

 報酬を分ける必要がないし、隠れやすさもパーティとは段違いだ。

 それになにより、メンバーに気を使う必要がないというのが、一番のメリットだ。


 パーティの解散原因の8割が、人間関係によるものだと言われている。パーティでしかダンジョンに潜れないとなると、解散から次のパーティが見つかるまでのブランク期間が生まれてしまう。そうなると収入の面で大変なので、ある程度熟練の探索者は皆ソロでそれなりに回れるよう訓練する。


 ダンジョンレベルの面からしても、ラストヒット争いがなくなると考えればソロも悪くはない。


「そうだ、ソロで回ろう」


 そうとなれば準備も最低限でいい。どうせ詰んだときは死に戻ってしまうのだから、いざというときの備えも最小限に控える。逆に弾はギリギリまで多く持っていき、道中の敵はすべて倒すスタイルで行く。


 そして一番のコツがこれーー


 知る人ぞ知るドリンク、『ラング・ウォーター』だ。


 このドリンクには魔法によるバフがかかっており、スタミナ向上・息切れ防止の効果がある。もちろんギルド公認のいわゆるダンジョンドリンクというやつで、探索者になる特権の一つがこのダンジョンドリンクの購入権だ。


 このドリンクがなぜ重要になるかといえば、効率重視の攻略ルートにある。


 レベルのシステムからして、最も効率の良い経験値取得方法は『生きて帰って来る』ことである。つまり、時間効率だけを考えるのであれば、探索の内容を凝るよりも『何度も出撃して生きて帰ってくる』ことが重要になってくる。


 いかに出撃回数を稼げるかがこの際問題となってくるわけだ。

 攻略時のフローはこうだ。


 まず出撃と同時にドリンクバフをつけて走り始める。

 敵と接敵したら基本倒す方針で経験値を稼ぐ。

 出撃地点付近のアイテム部屋を多少あさったら脱出地点まで再びランニング。

 帰還したらアイテムを整理してすぐに再出撃する。


 これを繰り返して早々に高層へと到達する。それが俺のしばらくの目標だ。


「弾よし、回復よし、ドリンクよし」


 再度荷物を確かめ、準備を完了する。


「本当に一人でかまいませんか?」


「ああ、もちろんだ」


 ギルド嬢の心配そうな言葉に、俺は自信満々に返す。


「それでは、お気をつけて」


 見送りの言葉を背に、俺はダンジョン開始のワープポータルを起動させた。


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