表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もしもこんな日本だったら  作者: fire−cat
1/1

日本國憲法

上諭

 

 日本国は先の悲惨なる戦争を省み、今、未曾有の改革を為さんとす。朕自ら先んじ、維新の誓文に立ち還り日本の国是を定め復興の道を求めん。日本国民は共に心を一つにし日本の復興と繁栄のために努力すべし。

 朕は、日本国民の総意に基いて、新日本建設の礎が定まるに至ったことを、深く慶び、枢密顧問の諮詢及び帝国憲法第七十三條による帝国議会の議決を経た帝国憲法の改正を裁可し、ここに之を公布せしめる。

 

 御名 御璽  

 

昭和二十二年十一月三日

内閣総理大臣

国務大臣

宮内大臣

司法大臣

外務大臣

内務大臣

文部大臣

農林大臣

国務大臣

逓信大臣

商工大臣

厚生大臣

国務大臣

運輸大臣

大蔵大臣

労働大臣

国務大臣

建設大臣

国務大臣

国務大臣

 

 

前文

 

 日本国は、国会における正当に選挙された代表者を通じて、我ら自身と子孫のために、諸国民との間に平和的協力を成立させ、日本国全土にわたって自由の福祉を確保し、無責任な軍国主義によって再び戦争の惨禍が発生しない様にすることを決意し、ここに国民の総意が至高なものであることを宣言し、この憲法を制定する。

 日本国民は、立法、行政及び司法の三権分立を基礎として国家を統治し、その意思を最終的に決定する。

 日本国民は、内外に甚大なる被害を与えた先の悲惨なる戦争を深く反省すると同時に世界の恒久平和を希求し、国際協調の精神をもって、国際社会の平和と繁栄と安全の実現に向け、不断の努力を続ける。

 日本国民は、基本的人権が尊重され国民の福祉が増進される、自由で活力があり、かつ公正な社会の実現を、個人の自律と相互の協力の精神の下に希求する。

 日本国民は自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や、人類を破壊に導く為の科学ではなく未利用資源の開発或は生存を豊富にし、平和的な意味に於て人類をあらゆる不幸と困窮から解放するための手段としての科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させ、国際社会において、名誉ある地位を占めることを希求する。

 日本国民は、国家の名誉に懸け、全力をあげてこの高遠な主義と目的を達成することを誓う。

 

 

第1章 国家体制の基礎

 

第1条

 日本国は日本国民の享有する統治権により之を統治する。

 

第2条

 天皇は、国民が統治権を享有する日本国の元首であり、日本国民の総意に基づく国民統合の象徴である。

 

第3条

 国民とは正当な手段を持って日本国籍を有している自然人である。

 

第4条

 住民とは日本国憲法を遵守し法令に従って当該地域に正当な手段を持って一定期間居住し生活を営む者である。

 

第5条

 日本の国籍は法律で詳細を定めるところにより出生及び両親の国籍に基づき取得される。国籍は法律に規定する基準に従い届出又は申請に基づき付与することができる。

 

第6条

 法律に規定する基準により、かつ、外国の国籍を保有し、取得することを条件とするのでなければ国籍を失うことはない。

 

第7条

 統治権は分割され、憲法の条規に拠り行使される。公権力の行使は、法律に基づかなければならず、全ての公的活動において、法律は、厳格に遵守されなければならない。

 

第8条

 立法権は、議会が行使し、また、議会は、国家財政について決定する。

 

第9条

 行政権は、内閣が行使し、内閣の構成員は、議会の信任を得ていなければならない。

 

第10条

 司法権は、大審院及び国務院を終審とする独立の裁判所が行使する。行政機関は、終審として裁判を行なうことができない。

 

第11条

 日本国の領域は不可分とする。議会の同意を得ずに国境を変更することはできない。

 

第12条

 国旗は日章旗、国章は菊花紋、五七桐花紋とし、国歌については別に法律を定める。国旗、国章の詳細は法律において定める。

 

第13条

 日本国民は自国及び他国の国旗、国章及び国歌が、その国を象徴しその尊厳を表すものであることを理解し、これらを尊重し冒涜または侮辱することのないよう努めなければならない。

 

第14条

 国旗、国章、国歌を尊重する事を思想信条の統制や政治的な権力への従属を強いることに用いてはならず、国旗、国章、国歌の持つ権威を政治的圧力、示威の道具とすることは許されない。

 

 

第2章 日本国民の権利

 

第1条 

 何人もこの憲法に別段の定めが無い限り法の前において同じ権利を有する。合理的な理由なく年齢、出身、言語、信仰、信条、意見、精神又は身体の障碍、その他の個人的事情に基づいて異なる取扱いをされてはならない。

 

第2条 

 男女は同じ権利を有する。この権利は生理学的根拠に依らずに異なる取扱いをされてはならない。男女の性的、政治的、経済的、文化的、或いは婚姻を含む社会的活動における同権については必ず保障されなければならない。

 

第3条

 労働並びに社会的活動において、役割分担は個人の選択に委ねられるべきであり、社会が生理学的根拠に依らず性別に基づく固定的な価値観を強制することはあってはならない。国は男女同権の原則に基づき、教育や啓発活動を通じて、社会の固定的な価値観の是正を促進しなければならない。

 

第4条

 日本国民は、個人として尊重される。日本国民の生命並びに個人の自由、幸福追求に対する権利については、他人の権利を侵害せず、かつ、憲法的秩序または一般的道徳に違反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 

第5条 

 何人も生命並びに個人の自由、不可侵性及び安全に対する権利を有し、恣意的に法律で定める理由なく生命若しくは自由を剥奪されてはならない。

 

第6条 

 何人も、奴隷あるいは隷属の状態にされ、また犯罪に因る処罰の場合を除いてはその意に反する苦役に服させられてはならない。ただし、法律に基づき国民に課される国土防衛の役務及びこれに代わる役務、並びに社会の存立又は福祉を脅かす災害その他緊急事態の場合に法律によって要求される役務、別に憲法に定められた国民としての通常の義務とされる作業又は役務は苦役とはみなされない。

 

第7条 

 生命若しくは自由の剥奪を伴う刑罰は裁判所が科する。その他の自由の剥奪の合法性については裁判所の審査に付する。自由を剥奪された者の権利は法律により保障される。

 

第8条

 何人も、契約上の義務を履行することができないことのみを理由として拘禁されてはならない。

 

第9条

 何人も不合理な捜索および押収に対し、身体、家屋、書類および所有物の安全を保障される。現行犯として逮捕される場合を除いては権限を有する裁判官が発し、且つ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ逮捕され、または所有権を有する物を押収される事はない。令状は確約によって裏付けられた相当な理由に基づいてのみ発行され、かつ捜索すべき場所、および逮捕すべき人、または押収すべき物件を特定して示したものでなければならない。不合理な捜索および押収により被った損害に対しては、国家による賠償を受ける権利を有する。

 

第10条

 刑事上の罪に問われて身体を拘束された者は、捜査と拘禁の機能の分離を実質的に確保するため、拘束後直ちに通常裁判所に身柄を送致され、家族もしくは本人の指名する個人に通知され、妥当な期間内に裁判を受ける権利又は釈放される権利を有する。釈放は、裁判その他の司法上の手続のすべての段階における出頭及び必要な場合における判決の執行のための出頭が保証されることを条件とすることができる。

 

第11条

 何人もその関係する事件が法律に基づき管轄権を有する裁判所又はその他の公的機関において適切に、かつ、不当な遅滞なく審理される権利並びにその権利及び義務に関する決定が裁判所又はその他の独立の司法機関で公開審理される権利を有する。

 

第12条

 何人も裁判所及びその他の公的機関において日本語若しくは国際公用語のいずれかを使用し、当該言語による公的文書を交付される権利を保障される。

 

第13条

 何人も身体を拘束された後、訴追を受けるまでは無罪と推定され、その地位に相応しいを受ける権利を有する。犯罪の訴追を受けた者も、すべて、自己の弁護に必要なすべての保障を与えられた公開の裁判において法律に従って有罪の立証があるまでは、無罪と推定される権利を有し、刑事裁判において、事実の存否が明確にならないときには被告人にとって有利に扱わなければならない。

 

第14条

 犯罪の訴追を受けた者は、すべての証人、捜査資料に対して審問し、審問を受ける権利、理由を付した裁判を受ける権利及び上訴の権利、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利、いかなる場合にも資格を有する弁護人を依頼する権利を有する。被告人が自ら資格を有する弁護人を依頼することができないときは国でこれを附する。その他の公正な裁判及び良好な運営の保障は、法律で確保される。

 

第15条

 何人も拷問その他、人間の尊厳を侵害する取扱いを受けてはならない。特に公務員による拷問に類する行為や、その他の残虐な非人道的なまたは品位を傷つける処遇や刑罰を強要したり、教唆、認容したりしてはならない。

 

第16条

 拷問その他の残虐で非人道的で虐待的な扱いや処罰を、上位の命令や、戦争状態や戦争の脅威、国家安全保障に対する脅威、政情不安定、またはその他の社会的緊急事態などの例外的な状況を示して正当化することはできない。

 

第17条

 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。欺瞞、誘導、教唆又は強制若しくは拷問又は脅迫による自白或いは長く抑留、拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができず、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪の判決又は刑罰を科せられない。

 

第18条

 何人も実行の時点において法律で可罰的であると定められていない行為に基づいて有罪とされ、刑を宣告されてはならない。

 

第19条

 犯罪に対して実行の時点における法律の規定よりも重い刑を宣告してはならず、法律は犯罪に対して残虐で異常な刑罰、過重な罰金、過大な額の保釈金を要求してはならない。

 

第20条

 何人も、すでに裁判によって無罪とされた行為について、改めて刑罰を科せられることなく、また、裁判所の判決が確定した同一の行為について重ねて生命身体の危険にさらされることはない。

 

第21条

 何人も、抑留され、又は拘禁された後、裁判の結果無罪となったときは法律の定めるところにより国にその補償を求めることができる。

 

第22条

 何人も、思想、良心の自由を有し、これを侵してはならない。

 

第23条

 何人も信仰の自由を有する。信仰の自由は信仰を告白し実践する権利または告白しない権利、信条を表明する権利またはしない権利を含み、何人もその良心に反する信仰の実践に参加する義務を負わない。但し、礼拝、儀式、布教活動の自由は、宗教的共同体に所属する権利または所属しない権利を含め、この憲法の安寧秩序、公衆の健康若しくは他の者の基本的な権利及び自由を保護するために必要な制限、国民一般の義務に服従しなければならない。

 

第24条

 国は国教を如何なる形態においても定めてはならず、いかなる宗教団体にも特権を与えてはならない。

 

第25条

 宗教団体は国から特権を受け、或いは政治上の権力を行使してはならず、また、いかなる形態の政治団体も組織してはならない。

 

第26条

 何人も学問、芸術及び高等教育の自由は、保障される。

 

第27条

 何人も、干渉されることなく意見を持つ権利を有し、表現の自由を有する。表現の自由は、口頭、手書き若しくは印行、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、事前に誰にも妨げられることなく、情報、意見及びその他あらゆる種類の考えを求め、表明し、公表し、及び受け取る権利を含む。議会は他の者の権利、名誉又は信用の尊重、子供の保護、国の安全、公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護のために不可欠な制限について法律で定めることができる。

 

第28条

 何人も、結社の自由を有する。結社の自由は、許可なく団体を結成する権利、団体に所属し、又は所属しない権利及び団体の活動に参加、または参加しない権利を含む。憲法に別段の定めがない限り職業上の結社の自由及びその他の利益を擁護するために団結する自由も、同様に保障される。この権利の行使については、法律で定める制限であって国の安全若しくは公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳の保護又は他の者の権利及び自由の保護のため必要なもの以外のいかなる制限も課することができない。

 

第29条

 何人も平和的な集会、示威行動を行う自由を有する。この権利の行使については、法律で定める制限であって国の安全若しくは公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳の保護又は他の者の権利及び自由の保護のため必要なもの以外のいかなる制限も課することができない。

 

第30条

 何人も信書、通話、その他の内密の通信の秘密は侵害されない。個人若しくは社会の安全又は住居の平穏を脅かす犯罪の捜査、訴訟、保安検査、拘禁中において不可欠の通信の秘密に対する制限について法律で定めることができる。

 

第31条

 何人も個人的な生活領域の尊重に対する権利を有する。個人の記録及び提供に関わる個人的生活領域の保護のための規則は法律で定める。

 

第32条

 日本国の公的機関が保有する文書及びその他の記録は、やむを得ない理由のためにその公開が法律で個別に制限されている場合を除き、公開される。何人も、公文書及び公記録から情報を得る権利を有する。

 

第33条

 婚姻をなすことができる年齢の男女が婚姻をし、かつ家族を形成する権利は保障される。婚姻は、強制ではなく両当事者の自由かつ完全な合意に基づき、かつ婚姻をなす両当事者の一方による支配ではなく両当事者の協力なしには成立しない。

 

第34条

 家族は、社会の自然かつ基礎的な単位であり、社会及び国による保護を受ける権利を有する。家族の戸籍、家紋については法律で定める。

 

第35条

 夫婦は、婚姻の際に法律の定めるところに従い、夫若しくは妻の氏を称し、又は各自の婚姻前の氏を日常的に称することができる。夫婦が各自の婚姻前の氏を称するときは、子の氏は第一子出生の際に父母の協議で定める父又は母の氏を称するものとし、以降、子は皆同じ氏を名乗ることとする。ただしその協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、通常裁判所が、父又は母の請求により、協議に代わる審判をすることができる。

 

第36条

 何人も住居の平穏を保障され平和裏に生活を営む権利を有する。日本国の公的機関は、憲法で保障された権利及び犯罪の捜査のために不可欠の住居の平穏に触れる措置について、法律で定めることができる。

 

第37条

 日本国民の住居に対する権利を促進し、及び居住の主体的な確保を支援することは日本国政府の責務とする。 

 

第38条

 日本国民及び合法的に国内に滞在する外国人の財産は、保障される。公共の必要のための財産の強制収用については、補償を法律で定める。

 

第39条

 日本国民及び合法的に国内に滞在する外国人は、他人の権利を侵害せず、かつ、憲法的秩序または一般的道徳に違反しない限り、自ら選択した労働、法律に反しない職業または生業によって生計を立てる権利を有し、法律に基づく理由がなければ解雇されてはならない。

 

第40条

 日本国民で人間の尊厳ある生活の維持に必要な保障を得ることができない全ての者は、不可欠の生活手段及び保護に対する権利を有する。失業、疾病、負傷、労働能力の喪失及び老齢並びに子の出産及び扶養者の喪失による基本的生活手段の保障に対する権利は、日本国の国籍を有する何人に対しても法律で保障される。

 

第41条

 日本国の公的機関は国民が老年疾病其の他の事情により労働不能となった場合、健康で文化的な生活を営む権利を保証しなければならない。

 

第42条

 日本国の公的機関は労働力の保護に配慮し、賃金、就業時間、休暇、休息その他の勤労条件に関する基準について法律でこれを定める義務を負う。勤労条件は労働者の健康、人格的威厳または家庭生活を破壊するものであってはならず、男女の賃金及びその他の勤労条件に関する決定は第2章第2条に基づき法律で詳細を定める。

 

第43条

 日本国の公的機関は、同一労働に対する同一賃金の原則、生活費を基準とする最低賃金制の設定によって就業を促進し、労働に対する全ての人の権利の保障に努めなければならない。就業訓練に対する権利については、法律で定める。

 

第44条

 日本国民及び合法的に国内に滞在する外国人は、国内の移動及び居住地選択の自由を有する。この権利に対して、国防上又は公共の利益を確保するため若しくは心身に対する危険から守るために不可欠の制限を法律で定めることができる。

 

第45条

 日本国民は、外国に移住し、国籍を離脱する自由を侵されない。

 

第46条

 日本国民及び合法的に国内に滞在する外国人は、出国の権利を有する。この権利に対して、訴訟の遂行若しくは刑の執行、国土防衛の役務及びこの役務の免除を享受する者が法律によって要求される国民的役務の履行を確保するために不可欠の制限を法律で定めることができる。

 

第47条

 日本国民は、帰国を妨げられ、国外に追放され、又は意に反して外国に引き渡され、若しくは移送されてはならない。ただし日本国民が、外国で犯罪を行ったと疑うに足る相当な理由がある場合、若しくは訴訟のため、又は子の監護若しくは養育に係る決定の執行のために、実質的相互主義に基づく国際約束により人権及び法による保護が保障される国に引き渡され、又は移送されることがあること、並びに検疫を理由とした入国制限があることを法律で定めることができる。

 

第48条

 外国人の日本に入国及び国内に滞在する権利は実質的相互主義に基づく法律で定める。

 

第49条

 外国人が日本国内において合法的に滞在している間に精神的自由権を行使した事により、母国において人間の尊厳を侵害する取扱いを受けるおそれがある場合には、母国に送還されてはならない。但し、法定刑の下限が六箇月以上の拘禁刑に相当する犯罪を行い刑が確定した外国人、或いは日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した外国人に対してはこの限りではない。

 

第50条

 日本国民及び合法的に国内に滞在する外国人は、無償の基礎教育に対する権利を有する。無償の基礎教育についての詳細は、法律で定める。

 

第51条

 日本国民及び合法的に国内に滞在する外国人は、その能力及び特別の必要に応じて、資力の欠如のために妨げられることなく基礎教育以外の教育を受け自らを発達させるための平等な機会を保障される。

 

第52条

 日本国民及び合法的に国内に滞在する外国人の子供は、基本的人権について個人として大人と同等に扱われなければならず、また、その成長に応じて、本人に関することに影響を及ぼすことができなければならない。

 

第53条

 日本国の公的機関は、子供の保護に当たる家族及びその他の者が子供の福祉及び個人の成長を確保できるように支援しなければならない。

 

第54条

 日本国民及び合法的に国内に滞在する外国人は、損害その他に関する救済及び法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正に関し平穏に請願する権利を有し、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。平穏に請願する手続については法律で定める。

 

第55条

 日本国民は、法律に定められた年齢に達したとき、選挙及び国民投票において投票する権利と義務を有する。投票する権利は選挙区に居住する住民であり法律で定められた年齢に達し、かつ、選挙権が排除されていない者にある。法律に定められた年齢に達した日本国民が有する被選挙権については、この憲法の個々の規定が適用される。

 

第56条

 日本国民で、法律で指定された罪を犯したため、裁判所の確定判決により少なくとも一年の自由刑を宣告され、かつ、これと同時に選挙権を剥奪された者並びに精神障碍を理由とする裁判所の確定判決に基づき法律行為を行う能力を有しない者は、選挙権が排除される。選挙権を排された者は当然投票の義務を免ぜられる。選挙権の回復については法律で定める。

 

第57条

 日本国民は、法律で定めた一定数以上の賛同者の署名により、公務員の解職、地方議会の解散を請求する権利、並びに法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正の発案を行う権利を有し、かかる請求又は発案をしたためにいかなる差別待遇も受けることはない。この請求又は発案の審議について議会は議事規則で詳細を定める。

 

第58条

 外国籍を有する住民は参政権を有しない。

 

第59条

 日本国に居住する北海道、千島、台湾における原住民の集団は自らの言語、文化を維持し、発展させる権利を有し、言語及び陋習とされた民族の文化は、日本国憲法及びそれに基づいた法律に反しない限り尊重される。公的機関において自らの言語を使用する権利については法律で定める。

 

第60条

 日本国の公的機関は、方言を含む国内の言語について文化的及び社会的な必要性に等しく配慮しなければならない。

 

第61条

 日本国に居住する障碍のために補助を必要とする者の権利は、法律で保障されなければならない。

 

第62条

 この憲法に一定の権利を列挙したことを根拠に、他の諸権利を否定し、または軽視したものと解釈してはならない。また、この憲法のいかなる規定も、憲法の掲げる権利及び自由の破壊を目的とする活動に従事し、又はそのような目的を有する行為を行う権利を認めるものと解釈してはならない。

 

第63条

 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民は、他人の権利を侵害せず、かつ、憲法的秩序または道徳に違反しない限りにおいて、憲法が保障する自由及び権利を有する。何人も自由及び権利の行使には責任が伴うことを自覚し、その濫用を戒め、自由及び権利の行使、義務の履行を信義に従い誠実に行わなければならない。

 

 

第3章 日本国民の義務

 

第1条

 海外に居住する日本国民であっても、投票の義務は定められた期日までに在外公館で果たさなければならない。但し、定められた期日までに投票を行う事が著しく困難なものはその義務を免除する。

 

第2条

 日本国の公的機関は投票の義務を履行できる環境を整える責任を負う。また国民が特段の理由なく投票を怠るときは罰則を以てあたらねばならない。但し罰則を適用するには十分な配慮をなさねばならない。

 

第3条

 法律に定められた年齢に達し、一定の要件を満たした全ての日本国民は、法律に基づき、国土防衛の役務に参加する義務を負う。

 

第4条

 信念に基づき国土防衛の役務への免除を受ける権利については、これを保障し、手続等の詳細は法律で定める。

 

第5条

 信念に基づき国土防衛の役務の免除を享受する者に役務の免除の代替として法律によって要求される役務を義務付ける。代替役務を理由にした如何なる差別的取り扱いも行ってはならない。

 

第6条

 日本国民は法律に基づき無償の基礎教育を受ける義務を負う。無償の基礎教育を受ける義務についての詳細は法律で定める。

 

第7条

 日本国民は、法律の定めるところに従い、納税の義務を有する。

 

 

第4章 天皇および皇族

 

第1条

 皇位は世襲のものであり、皇統に属する男系皇族が、国会の議決によって定められた皇室典範に従いこれを継承する。

 

第2条

 皇位の承継、皇嗣の称号、摂政の設置その他皇族に関する事項は、皇室典範により定める。

 

第3条

 皇室典範は法律の形式により制定され、改正には国会の議決と皇族会議の承認を要し、その公布は官報をもって行う。

 

第4条

 皇族は、国民生活の模範として、常に品位を保持し、謙譲と誠実をもって振る舞わなければならない。

 

第5条

 皇族は、国土防衛への従事、納税および普通選挙に係る義務を有しない。

 

第6条

 皇族に関わる重要事項を審議するため、皇族会議を置く。皇族会議の構成および手続は皇室典範に定める。

 

第7条

 皇族と華族、または皇族と国民の間の民事訴訟に関する手続は、皇室典範で定め、国会の同意を要する。

 

第8条

 皇族相互の民事訴訟を所管するため、大審院に属する非公開の皇室裁判所を設けることができる。当該裁判所の構成及び手続は法律に定める。

 

第9条

 皇族に関する裁判についてこの憲法に明文の定めがない事項は、皇室典範の規定に従う。

 

第10条

 天皇は、この憲法に定められた国事行為のみを行い、皇族は摂政の場合を除き国政に関与する権能を有しない。摂政は天皇の名において、その国事に関する行為を行う。

 

第11条

 天皇のすべての国事行為には、内閣の助言と承認を要する。これらの行為に対する責任は、内閣に帰属する。

 

第12条

 天皇の発する文書その他の国事行為は、内閣総理大臣または担当大臣の副署をもってその効力を生ずる。副署の欠けた行為は無効とする。

 

第13条

 内閣が議会の信任を失ったときは、天皇は憲法に定める手続に従い、内閣の辞職を承認する。

 

第14条

 天皇は、内閣または大臣の申し出により、当該者の辞職を承認する。

 

第15条

 天皇は、議会の開会、延長、停会または衆議院の解散及び参議院通常選挙の施行について、憲法に従い詔書を発する。

 

第16条

 天皇は、憲法に従い、議会召集の詔書を発する。

 

第17条

 天皇は、議会によって選出された内閣総理大臣を任命する。

 

第18条

 天皇は、参議院の指名に基づき顧問官を任命する。

 

第19条

 天皇は、顧問官および護民官の互選により、枢密院議長を任命する。

 

第20条

 天皇は、憲法および法律に従い、内閣における大臣、地方自治体の首長、法律の定めるその他の公務員の任免を認証する。

 

第21条

 天皇は、国民投票の結果を受け、内閣の助言と承認により憲法改正を公布する。

 

第22条

 天皇は、議会の議決を経た法律を認証し、公布する。

 

第23条

 天皇は、議会の承認を得た条約その他の外交文書を認証し、公布する。

 

第24条

 天皇は、司法委員会の助言に基づき、枢密院の推薦を経て、大審院長官および国務院長官を任命する。

 

第25条

 天皇は、司法委員会の推薦に基づき、検察官の中から検事総長を任命する。任命後、推薦理由は国会に報告されるものとする。

 

第26条

 天皇は、大審院から意見を得た上で内閣に対し恩赦の提議を行う。

 

第27条

 天皇は、内閣の助言と承認により、全権委任状、信任状その他の外交文書を認証する。

 

第28条

 天皇は、内閣の助言と承認により、外国の大使、公使の接受を行う。

 

第29条

 天皇は、内閣の助言に基づき、栄典を授与する。栄典に関する基準および授与手続は、法律で定める。

 

第30条

 天皇は、枢密院の助言により元号を制定し、これを公布する。元号は皇位の継承時に定め、一世一元とする。

 

第31条

 天皇は、内閣の助言と承認により、儀式、宮中祭祀を執行し、国、地方自治体その他の公共団体が主催する式典への出席その他の公的な行為を行う。

 

第32条

 皇族以外の者が皇族に財産を譲与し、または皇族が皇族以外の者から財産を譲受するには、国会の議決を必要とする。

 

 

第5章 華族

 

第1条

 華族は、日本の最も古くからの伝統及び文化の継承に資する名誉的な地位を保持する。

 

第2条

 華族の称号は、西暦千八百六十八年以前より堂上家の称を有した家系及び賜姓皇族の家系に限り、これを継承するものとする。

 

第3条

 華族の無秩序な拡大を排するため、その家督は嫡流の嫡子により世襲されるものとする。

 

第4条

 嫡流の家系は、その家督を継承する嫡子とその子孫に限り、華族の身分を恒久的に保持する。

 

第5条

 嫡流の嫡子以外の男子及び女子、並びに庶子は、傍流とみなす。傍流の嫡子の家系は、その初代から六世までの者に限り、華族の身分を保持する。六世以降の者は、全て華族の身分を離れる。

 

第6条

 傍流の嫡子以外の男子及び女子並びに庶子は継承権を有しない一代限りの華族の地位を保持する。

 

第7条

 一代華族を含める華族は、衆議院議員若しくは地方自治体議会の議員資格、並びにそれらの選挙権を有しない。

 

第8条

 嫡子の定義、家督継承に関する詳細、及び前各条に定めるもののほか、華族に関する一切の事項は、議会の同意を得た新たな法律で定める。

 

 

第6章 議会

 

第1条

 議会は衆議院、参議院、付属する事務局で構成される。

 

第2条

 衆議院の役割は活溌に民意を代表することにあり、参議院の役割は国民各層の知識経験を代表することにある。

 

第3条

 何人も、同時に両議会の議員たることはできない。

 

第4条

 国会議員は一定の年齢に達した全ての国民の自由な意思によって秘密選挙で公選される。全ての投票権者は、選挙において平等な投票権を有し、その選択に関し公的にも私的にも責任を問われない。

 

第5条

 衆議院は国民が直接公選した議員により構成される。議員定数は法律でこれを定める。但し、衆議院の議員定数は有権者百万人に付き八人を下回ってはならない。

 

第6条

 衆議院議員は一つの選挙区で複数の候補を優先順位をつけて選択し選出する制度で公選される。衆議院議員の公選に関する条規は法律によって定められるが一つの選挙区から選出される議員定数は二人以上でなければならない。

 

第7条

 衆議院議員の選挙は一つの選挙区で投票者数の四分の一以上の無効投票があるときはその選挙区の選挙結果は無効となりその選挙区では再度の選挙を行わなければならない。また、選挙区内の選挙有権者総数を当該選挙区内の議員の定数で割って得た数の四分の一以上の票を得た者でなければ候補者の数が当該選挙区内の議員の定数に達せずとも当選者となることはできない。ただし、選挙すべき議員の数が通常選挙における当該選挙区内の議員の定数を超える場合においては、選挙有権者総数をその選挙すべき議員の数で割って得た数の六分の一以上の票を得た者でなければ当選者となることはできない。

 

第8条

 参議院は華族、地域、経済、学術、芸術等の法認団体が其々の代表候補者を選出し、その候補者の中から国民により公選された議員により構成される。参議院の議員定数及び其々の代表議員の定数は法律でこれを定める。

 

第9条

 参議院議員の選挙は代表議員選挙法に基づき施行される。参議院の被選挙権は、選挙権を持つ日本国籍を有する有識者で法認団体に選出された者が有する。参議院の各代表議員選挙法に関する条規についての定義は法律によって定められる。

 

第10条

 衆議院議員は四年の任期で選ばれる。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。

 

第11条

 参議院議員の任期は六年とし、三年毎に議員の半数を改選する。

 

第12条

 議員の任期は、議会期と称し、選挙の結果が確定した時に始まり、次回の選挙が実施され、選挙の結果が確定する時まで継続する。

 

第13条

 任期満了に伴う議会選挙の期日については、法律で詳細を定める。

 

第14条

 天皇は、理由を付した内閣総理大臣の発案に基づき、かつ、衆議院の会派の意見を聴いた上で、衆議院の会期中に任期満了前の選挙を実施することを認証し詔書を発布することができる。この後、衆議院は、選挙の実施前にその任務を終える日を決定する。

 

第15条

 議会選挙の後、議会がより早い集会の日を決定した場合を除き、選挙を決定した日から九十日が経過した後の最初の月の初日に、議会は集会する。

 

第16条

 議会は、その新たに任命された議員の当選証書を審査し、当選証書又は選挙自体に関して生じた争訟について、法律の定める規則を遵守して判定する。

 

第17条

 現役武官、国土防衛の役務及びこの役務の免除を享受する者が法律によって要求される国民的役務に従事している者、枢密院の構成員、会計検査院の構成員、通常裁判所または通常行政裁判所の構成員、国又は地方公共団体の公務員、地方自治体議員は国会議員に選挙されることができない。この他の議員資格と同時に遂行することができない職の種類については法律で別途定める。

 

第18条

 議員の職は、国会議員がその被選挙権を喪失した場合、終了する。法律は、親族関係又は婚姻から議員資格への障害が生ずること及び法律で指定された行為を行うことにより議員資格を喪失し得ることを定めることができる。

 

第19条

 議員が妊娠及び出産並びに負傷疾病による療養の間、議員の職の遂行は、中断し、その間は議員が指名した代理議員がその職を遂行する。議員の職の遂行は、国土防衛の役務及びこの役務の免除を享受する者が法律によって要求される国民的役務に従事している間においても中断する。

 

第20条

 議会は、辞職の許可に合理的な理由があると認める場合には、国会議員の申出により、辞職を許可することができる。

 

第21条

 国会議員が本質的かつ反復的に議員の職の遂行を怠った場合には、議会は、当該案件について憲法委員会、大委員会の意見を得て、各々の議会における議員総数の三分の二以上の出席、かつ投票数の六分の五以上の賛同をもって支持された議決により、任期の全期間又は一定の期間議員の職を停止することができる。停職の間、歳費は支給されない。

 

第22条

 国会議員は、その議員の職の遂行を妨げられてはならない。

 

第23条

 国会議員の逮捕及び拘禁は、直ちに所属する議会の議長に通知されなければならない。国会議員は、重大な理由により法定刑の下限が六箇月以上の拘禁刑に相当する犯罪を行い現行犯として逮捕及び拘禁された時を除き、議会の同意がなければ裁判開始前に逮捕又は拘禁されない。逮捕又は拘禁された議員は、その議院の要求があれば判決を受けるまで、会期中、これを釈放しなければならない。

 

第24条

 国会議員に選挙された者が故意の犯罪による拘禁刑又は選挙に関する犯罪に係る刑に処する旨の執行可能な判決を受けた場合には、議会は、その国会議員としての留任の可否について調査することができる。犯罪が、判決を受けた者が議員の職に必要な信用及び尊敬に値しないことを示す場合には、議会は、当該案件について憲法委員会、大委員会の意見を得て、各々の議会における議員総数の三分の二以上の出席、かつ投票数の六分の五以上の賛同をもって支持された議決により、その者の議員の職の終了を宣言することができる。

 

第25条

 国会議員は、各々の議会における議員総数の三分の二以上の出席、かつ投票数の六分の五以上の賛同をもって支持された議決により議会が同意した場合を除き、会期において表明した意見又は議案の審議中の行為のために、訴追され、又は自由を剥奪されてはならない。

 

第26条

 議員は、冷静沈着かつ品位をもって、かつ、他人を傷つけないように行動しなければならない。国会議員がこれに反した場合には、議長は、そのことを指摘し、又は議員に発言を続けることを禁ずることができる。議会は、繰り返し秩序を乱す議員に対して警告し、又は当該議員を最長十四日間議会の会議に出席させないことができる。出席停止の間、歳費は支給されない。

 

第27条

 国会議員は、その職において自己の良心、正義及び真実に従う義務を負う。また、国会議員は、憲法を遵守する義務を負い、その他の指示に拘束されない。

 

第28条

 国会議員は、議会において討論に付されたあらゆる案件及びその審議において憲法に定められた範囲内で自由に発言する権利を有する。

 

第29条

 国会議員は、良く身を修め、道徳的、倫理的に国民を感化し、品性を高く保ち、国民の代表として相応しい人格を身につけなければならない。国会議員はその所属する団体又は選挙区の為に委任使となって委嘱を代行する者ではない。

 

第30条

 議員は、本人に個人的に関係する議案に関する委員会審査及び議決手続に参加する資格を有しない。ただし、本会議において、当該議案に関する討論に参加することができる。国会議員は、また、委員会において、自らの公務の調査に関する議案の審査に参加することができない。

 

第31条

 議員は議会期の間、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を支給される。

 

 

第7章 議会の活動

 

第1条

 議会は、毎年二回常会を開会する。常会の召集は、召集詔書の公布によって行う。常会は一回を予算中心に、一回を決算中心に開会して、政府の統治権行使を監督する。

 

第2条

 常会は各百二十日とし、両議会同一の日数とする。

 

第3条

 常会の日数は政府において必要と認めたとき、各議会の決議があった時は詔書の公布によって延長する。常会の延長は一度限りとする。

 

第4条

 臨時会の招集は内閣の決定又は議会の総議員の四分の一以上の要求又は衆議院議員の任期満了による総選挙若しくは参議院議員の通常選挙後に、召集詔書の公布によって行う。議会の総議員の四分の一以上の要求による招集は三十日以内に行なわらなければならない。

 

第5条

 臨時会の日数は常会を超えてはならない。日数は両議会同一とする。臨時会は二度の延長を認める。

 

第6条

 議会の開会、閉会、会期の延長及び停会は、両院同時に行う。衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。

 

第7条

 衆議院は議会期ごとに議長及び二人の副議長を同時に選挙する。参議院は、改選の都度、非改選議員から議長及び二人の副議長を同時に選挙する。

 

第8条

 議会の議長及び副議長の選挙は、秘密投票により実施される。選挙においては、投票の過半数を得た国会議員を当選人とする。最初の二回の投票において投票の過半数を誰も得なかった場合には、第三回の投票で最も多くの票を得た議員を当選人とする。

 

第9条

 議長及び副議長並びに委員会の委員長は、議長評議会を組織する。議長評議会は、議会の任務の調整のための指示を発し、及びこの憲法又は議事規則で個別に定めるところにより、議案の審議に当たって遵守すべき手続について決定する。議長評議会は、議会職員に関する法律及び議事規則の制定又は改正の発議並びに議会の活動に関するその他の規則についての提案を行うことができる。

 

第10条

 議会は、その議会期に大委員会並びに憲法委員会、外務委員会、財務委員会、監査委員会及び議事規則で定めるその他の常任委員会を設置する。また、議会は、特定の議案について審査し、又は調査するための特別委員会を設置することができる。

 

第11条

 大委員会は常任委員会が掌管しない分野及び政治的な議論を扱い、その他の委員会は掌管する分野についてのみ議論するものとする。委員会の掌管する分野について議事規則で個別に定める事なく、類推解釈を行ってはならない。

 

第12条

 大委員会には、二十五人以上の委員を置く。憲法委員会、外務委員会及び財務委員会には、十七人以上の委員を置く。その他の常任委員会には、十一人以上の委員を置く。また、委員会には、必要な数の代理委員を置く。

 

第13条

 委員会は、特定の議案について、より多くの委員数を個別に定める場合を除き、委員の三分の二以上が出席する時に議決することができる。

 

第14条

 議会は、法律で詳細を定めるところにより、全ての国民が加入する健康保険機関及び年金機関の運営及び活動を監督するための委員を選挙する。

 

第15条

 議会は、この憲法、その他の法律又は議事規則で定めるところにより、その他の必要な機関を選挙する。

 

第16条

 国際約束に基づく国際的な機関又はその他の国際的な機関への議会の代表者の選挙については、法律又は議事規則で定める。

 

第17条

 委員会及びその他の議会の機関は、この憲法、議事規則又は議会が定めた機関の細則で別に定める場合を除き、議会期最初の臨時会において全議会期を通じて設置される。ただし、議会は、議長評議会の提案により、議会期の途中で、機関を再び設置することを決定することができる。

 

第18条

 議会は、委員会及びその他の機関の選挙を実施する。

 

第19条

 議案は、内閣が提出した政府の提案若しくは国会議員の発議又はこの憲法若しくは議事規則で定めるその他の方法により、議会に提出される。

 

第20条

 議会は、提出された請願書を受理することができる。

 

第21条

 議員は、法律の制定に関する提案を内容とする立法発議、予算又は補正予算に計上されるべき経費又はその他の決定の提案を内容とする予算発議、法律の起草又はその他の措置の開始の提案を内容とする措置発議を行う権限を有する。

 

第22条

 政府の提案、国会議員の発議、受理された請願、議会に提出された報告書及びその他の議案であって、この憲法又は議事規則で定めるものは、本会議における最終的な審議の前に、委員会において専門家、枢密院の構成員、政府職員の意見を聴いて審査されなければならない。

 

第23条

 本会議における議決は、この憲法に別に定めがない限り、各々の議会における議員総数の三分の二以上の出席、かつ投票数の過半数の賛同によって決定する。なお、無効票は反対を表明したものと看做す。提案の可決に特別多数が必要である場合を除き、票が同数の場合には、くじによる。投票の手続については、議事規則で詳細を定める。

 

第24条

 議長は、本会議を招集し、これに議案を上程し、及び討論を指揮し、並びに本会議における議案の審議において憲法が遵守されるように監督する。議長は、憲法、その他の法律又は議会が既に行った議決に反すると認める場合を除き、議案の審議及び表決の提案を拒否してはならない。拒否する場合には、議長は、拒否の理由を明らかにしなければならない。議会が議長の措置に不服がある場合には、事案は、憲法委員会に付託され、憲法委員会は、議長が適正に措置したかどうかを遅滞なく判定しなければならない。

 

第25条

 議長は、本会議における討論及び表決に参加しない。

 

第26条

 二十人以上の国会議員を有する会派は、内閣又は大臣に対して、その所管事項について代表質問をすることができる。代表質問に対しては、質問が内閣に伝達された時から十五日以内に議会の本会議において答弁されなければならない。

 

第27条

 代表質問の討論中に内閣又は大臣に対する不信任の表明が提案された場合には、代表質問の審議の最後に内閣又は大臣の信任について表決が行われる。

 

第28条

 内閣は、議会に対して国政又は国際関係に関する事項について声明又は報告を提出することができる。

 

第29条

 声明の討論中に内閣又は大臣に対する不信任の表明が提案された場合には、声明の審議の最後に内閣又は大臣の信任について表決が行われる。報告の審議においては、内閣又はその構成員の信任に関する決議をすることができない。

 

第30条

 国会議員は、大臣に対し、その所管事項について質問する権限を有する。質問すること及びその答弁については、議事規則で定める。

 

第31条

 内閣総理大臣又はその指名する大臣は、現下の課題について、議会に対し口頭報告を行うことができる。本会議においては、議事規則で詳細を定めるところにより、現下の課題について討論を行うことができる。議会は、この条に規定する案件について議決しない。

 

第32条

 内閣は、議会に対して、政府の活動及び議会の決議を受けて行った措置に関する報告書並びに国家財政の運営及び予算の遵守に関する報告書を毎年提出しなければならない。その他の報告書は、憲法その他の法律又は議事規則の定めるところにより、提出される。

 

第33条

 議会は、内閣から議案の審議に必要な情報を入手する権限を有する。所管の大臣は、委員会又はその他の議会の機関が必要な文書及びその他の情報であって、公的機関が保有するものを遅滞なく入手することができるように配慮しなければならない。

 

第34条

 委員会は、その所管事項について、内閣又は所管の省庁から報告を入手する権限を有する。委員会は、報告を受けて内閣又は省庁に対して見解を表明することができる。

 

第35条

 国会議員は、秘密の情報及び作成中の国の予算案に関する情報を除き、議員の職の遂行に必要な情報であって、公的機関が保有するものを、当該機関から入手する権限を有する。その他、国際的事項における情報を入手する議会の権限については、この憲法で別に定めるところによる。

 

第36条

 大臣は議会の構成員でない場合においても、本会議の討論に出席し、及び参加する権利を有する。大臣は、議会の委員会の長になることができない。

 

第37条

 顧問官は、その報告書又はその発議により提出したその他の議案について審議中の本会議の討論に出席し、及び参加することができる。

 

第38条

 会期中に終了しなかった議案の審議は、閉会中に議会選挙が行われた場合を除き、次回の会期に継続される。議会に付議された国際的な議案の審議は、必要な場合には、議会選挙の後の議会期に継続することもできる。

 

第39条

 議会の本会議は、特に重大な事由により両議会が特定の議案について異なる議決をする場合を除き、公開とする。議会は、議事規則で詳細を定めるところにより、議会の議事録を公表する。出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。

 

第40条

 委員会の会議は、公開としない。ただし、委員会は、委員会が議案の審査のための情報を収集する限りにおいて会議の公開を決定することができる。委員会の議事録及びこれらに関連するその他の文書は、やむを得ない理由のために、議事規則で異なる定めをしている場合又は委員会が特定の議案について異なる議決をする場合を除き、公開とする。

 

第41条

 委員会の委員は、委員会がやむを得ない理由により議案について特に必要と認める秘密保持を遵守しなければならない。日本国の国際関係に関する議案の審査中は、委員会の委員は、外務委員会又は大委員会が内閣の意見を聴いた上で当該議案の性質上必要と認めた秘密保持を遵守しなければならない。

 

第42条

 議会は、議会の内部運営、議会が実施する選挙及びその他の議会の任務の詳細を整備するために、規則を発することができる。議会は、その選挙した機関のために細則を可決することができる。議事規則で、会期において遵守すべき手続並びに議会の機関及び議会の任務について詳細な規定を定める。議事規則は、本会議において、法律案の審議手続に従って可決され、官報において公布される。

 

 

第8章 法源

 

第1条

 憲法、法律、慣習法、批准された国際約束及び政令が日本国の一般的拘束力のある法源である。

 

第2条

 憲法で別段に定められた規則及び地方自治体において定められた条例は一般的拘束力のある法源として扱う。

 

第3条

 成文法、慣習法が共に存在しないとき裁判官は条理を推考して裁判を行う。この場合条理は法源足り得、それに基づく判例も同様となる。

 

 

第9章 立法

 

第1条

 凡て法律の制定は、政府の提案、国会議員の法律の発議、一定数以上の賛同者の署名により国民より発案された法律の審議により議会において開始され、国会議員の新たな法律の発議は、議会の開会中に行うことができる。

 

第2条

 政府の提案は、新たな補足提案の提出によって補足され、又は撤回されることができる。補足提案は、議案を審査する委員会がその報告書を提出した後には、提出することができない。

 

第3条

 法律案は、当該議案を審査した委員会がその報告書を提出した後、議会の本会議において二回の審議に付される。

 

第4条

 法律案の第一回の審議では、委員会の報告書について討論を行い、法律案の内容について議決される。第一回の審議の終了後三日目以降に行われる第二回の審議においては、法律案の可否について議決される。法律案の審議については、議事規則で詳細を定める。

 

第5条

 国民の生計に結びつく財政法案は国民の直接選挙により成立する衆議院で先決することが相応しい為、衆議院にて先決される。参議院は衆議院において削減された予算案の復活を決議することはできない。

 

第6条

 参議院は衆議院が採決した法律案を審議し付帯事項を付けて差し戻すことができる。衆議院において可決され参議院にて差し戻され、再審査された後に総議員の三分の二以上の出席且つ投票数の三分の二以上の賛同によって再び可決された法律案は、天皇の認証を受ける。なお、無効票は反対を表明したものと看做す。

 

第7条

 参議院が、衆議院の可決した予算案、法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院が差し戻したものとみなすことができる。この規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議会の協議会を開くことを求めることを妨げない。

 

第8条

 一つの議院で否決された法律案及び議事規則案は本章第六条、第七条の場合を除き翌会期を経過するまで再び提出することは出来ない。

 

第9条

 法律は、法律によらずに改正し、又は廃止し、或いは空文化してはならない。

 

第10条

 法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議会で可決し、天皇が署名し大臣又は副大臣の副署した後、官報において公布したとき法律となる。法律が憲法所定の手続で制定された場合には、法律にその旨を明記しなければならない。

 

第11条

 議会が可決した法律は天皇に提出される。天皇は、法律についての意見書を大審院、国務院並びに枢密院から得ることができる。天皇は施行される法律について異議がある場合はその旨を付帯することができるが署名を拒んではならない。

 

第12条

 天皇によって署名された法律は所管の大臣又は副大臣によって副署されなければならない。内閣は大臣又は副大臣の副署後、遅滞なく官報において法律を公布しなければならない。

 

第13条

 法律は、施行期日を明らかにしなければならない。特別な理由により、施行期日については命令で定める旨を法律に定めることができる。法律は、定められた施行期日までに公布されない場合には、公布日に施行される。

 

第14条

 内閣及び省庁は、この憲法又はその他の法律で定める権限に基づき政令を制定することができる。ただし、個人の権利及び義務の原理その他憲法に基づき法律事項とされる事項については、法律で定めなければならない。政令の制定者が個別に定められていない場合には、政令は、内閣が発する。政令及びその他の規則の公布及び施行に関する通則については、法律で定める。

 

第15条

 規律の対象に関連する特別の理由がある特定の事項及び規律の実際の重要性に照らし、法律又は命令で規定することを要しない特定の事項について、規則を制定することを法律で他の公的機関に委任することができる。この委任の適用範囲は、明確に限定しなければならない。規則の公布及び施行に関する通則については、法律で定める。

 

第16条

 委任は、政令を制定する管轄機関及び規定に委任される問題の範囲並びに行為の内容に関する指針を定めたものでなければならない。

 

第17条

 政令の制定を委任された機関は権限をその他の機関に移管してはならない。

 

第18条

 省庁の通達は、内規に関するものであり、かかる法規を制定する機関に組織的に従属する組織を拘束する。

 

第19条

 通達は、法律に基づいてのみ制定される。通達は、市民、法人及びその他の主体に対する決定の根拠とはならない。

 

第20条

 国民投票の実施については法律で定め、当該法律には、投票期日及び投票者に提示される選択肢が規定されなければならない。国民投票において遵守すべき手続については、法律で定める。

 

 

第10章 枢密院

 

第1条

 枢密院は顧問官及び護民官により組織される枢密院会議と事務総局により構成される。

 

第2条

 枢密院を代表する者を枢密院議長とし、顧問官及び護民官の互選により選出され、天皇が任命する。

 

第3条

 議会は、四年の任期で、三人の護民官を選出し、うち一人を首席護民官とする。

 

第4条

 護民官は日本国籍を有する人格知見ともに優れた法律専門家でなければならない。護民官は、法律で詳細を定めるところにより、代理人を有することができ、その代理人については、護民官に関する規定を準用する。

 

第5条

 議会は、特に重大な理由により、当該案件について憲法委員会の意見を得て、本会議に於いて総議員の三分の二以上の出席かつ投票の三分の二以上の賛同をもって支持された議決により、護民官を任期の途中で解職することができる。

 

第6条

 内閣に四年の任期で三人の顧問官を附置し、うち一人を首席顧問官とする。

 

第7条

 顧問官は日本国籍を有する人格知見ともに優れ高い学識経験を有する者から参議院が候補者を六名以上指名する。天皇は候補者より三人の顧問官を任命し、うち一人を首席顧問官とする。

 

第8条

 顧問官は法律で詳細を定めるところにより、その職責を遂行する代理人を四年の任期で有することができ、その代理人については、顧問官に関する規定を準用する。

 

第9条

 顧問官は、求めに応じ、天皇、内閣及び大臣に対して、憲法及び法律の問題に関する情報及び意見、社会経済情勢等に関する情報及び意見、保健医療科学における既存の制度の見直しや新たな施策の展開等に関する情報及び意見を提供しなければならない。

 

第10条

 顧問官及び護民官はすべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は在任中減額することができない。

 

第11条

 枢密院は、毎年、その公務及び活動、司法の状況及び立法に見られる欠陥、法律の遵守に関する所見、政策立案に当たっての科学的根拠の提供及び政策の科学的評価、社会経済情勢等に関する所見について、議会及び内閣に報告書を提出する。

 

第12条

 公務における違法な処置に関する裁判官に対する訴追の提起については、枢密院が決定する。枢密院は、その合法性の監督に属するその他の事案においても弾劾裁判所に訴追を実施し、又は訴追の提起を命ずることができる。

 

第13条

 憲法に明記されていない枢密院に関する付加的規定は、他の法律で定める。

 

 

第11章 内閣

 

第1条

 内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。

 

第2条

 内閣に、必要な数の省庁を置く。各省庁は、その所管分野において内閣に属する案件の策定及び行政の適切な運営について責任を負う。

 

第3条

 省庁の長は、大臣とする。省庁の数の上限及びその設置の一般的な基準については、法律で定める。省庁の所管分野及び省庁間における案件の配分並びに内閣のその他の組織については、法律又は政令で定める。

 

第4条

 内閣総理大臣が必要と認める場合において、副大臣職を設ける事ができる。副大臣は国務大臣の指示を遵守して大臣職を代行し、職務に責任を負うが、国務大臣の責任を免ずるものではない。

 

第5条

 内閣に、案件の策定のため、委員会を置くことができる。

 

第6条

 内閣総理大臣及び国務大臣は、その公務について議会に対して責任を負う。内閣において案件の審議に参加した各大臣は、議事録に記録される形で異議を表明した場合を除き、決定について責任を負う。

 

第7条

 内閣総理大臣及び国務大臣は、出生を理由とした日本国籍を有する国民で、誠実かつ有能と認められ、現役の武官、国土防衛の役務及びこの役務の免除を享受する者が法律によって要求される国民的役務に従事している者であってはならない。

 

第8条

 議会の会派は、内閣総理大臣の選挙前に政府の綱領及び内閣の構成について協議する。これらの協議の結果に基づき、議会の議長の意見を聴いた上で、天皇は、議会に複数名の内閣総理大臣候補者を通知する。議会において実施される投票において投票の過半数が候補者の当選を支持した場合には、候補者は、内閣総理大臣に選挙される。

 

第9条

 候補者が当選に必要な過半数を得なかった場合には、同一の手順で新しい内閣総理大臣候補者が指名される。新しい候補者も投票の過半数を得なかった場合には、議会において記名投票により内閣総理大臣の選挙が行われる。この場合には、最も多く票を得た者を当選人とする。

 

第10条

 衆議院と参議院の投票の結果が異なった時は両院協議会を設ける。両院協議会において内閣総理大臣候補者が統一できなかったときは、長期的視点から判断を行うことを求められる参議院の結果が優先される。

 

第11条

 天皇は、選出された候補者を内閣総理大臣に任命する。その他の国務大臣は内閣総理大臣が任命し、天皇が認証する。ただし国務大臣の過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。

 

第12条

 内閣が任命されるとき及びその構成が著しく変更されるときは、議会が開会中でなければならない。

 

第13条

 内閣は、その綱領を、声明の形で議会に遅滞なく提出しなければならない。内閣の構成が著しく変更されるときも、同様とする。

 

第14条

 内閣総理大臣は内閣を代表して議案を議会に提出し、一般国務及び外交関係について報告し、並びに行政各部を監視董督する。

 

第15条

 内閣総理大臣は、内閣の活動を指揮し、内閣に属する案件の策定及び審議の調整に配慮する。内閣総理大臣は、閣議において案件の審議を指揮する。

 

第16条

 閣議は、内閣総理大臣またはその代理に指名された大臣の他、五人の構成員が出席する時に決定することができる。

 

第17条

 内閣総理大臣は任意に国務大臣を推挙し、免職することができる。天皇は総理大臣の申出に基づきこれを認証する。

 

第18条

 内閣総理大臣に事故があるときは内閣総理大臣の代理に指定された大臣が、この大臣に事故があるときは最も在職年数の長い国務大臣が、内閣総理大臣の職責を遂行する。但し、内閣総理大臣が恒久的に執務を行えないときは内閣は、総辞職をしなければならない。

 

第19条

 内閣の構成員は、大臣である間は、いかなる雇用もなされてはならず、公職又はその他の職務であって、大臣の職責を遂行することを妨げ、若しくは内閣の構成員としての活動への信頼を損なうおそれがある、いかなる任務も引き受けてはならず、いかなる活動も遂行してはならない。

 

第20条

 大臣は、その任命後遅滞なく、その営利活動、会社の株式保有及びその他の重要な資産について、並びに大臣の公務外の業務及びその他の利害関係であって、内閣の構成員としての活動を評価するに当たって重要である可能性のあるものについて、議会に報告を提出しなければならない。

 

第21条

 大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。

 

第22条

 大臣が議会の議長に選挙された場合には、選挙された日にその職責を解かれたものとみなす。

 

第23条

 天皇は、内閣又は大臣に対して、申出により免職を承認する。

 

第24条

 天皇は、内閣が衆議院で不信任の決議案を可決され、又は信任の決議案を否決され信任を失ったときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、内閣の申出がなくとも内閣の免職を承認しなければならない。

 

第25条

 内閣に属する案件は、閣議又は所管の省庁において決定される。閣議においては、広範な案件及び原則的に重要な案件並びにその重要性から閣議における決定が必要とされるその他の案件が決定される。内閣の決定権限を調整する基準については、法律で詳細を定める。

 

第26条

 内閣の審議案件は、所管の省庁において策定されなければならない。

 

第27条

 内閣は、基本権、人権の実現を保障しなければならない。

 

第28条

 内閣は、就業を促進し労働に対する全ての人の権利の保障に努めなければならない。就業訓練に対する権利については、法律で定める。

 

第29条

 内閣は、法律で詳細を定めるところにより、国民に対し十分な社会保障を行い健康を増進しなければならない。

 

第30条

 内閣は、子供の保護に当たる家族及びその他の者が子供の福祉及び個人の成長を確保できるように支援しなければならない。

 

第31条

 内閣総理大臣その他の国務大臣は、いつでも議案について発言するため議会に出席することができる。内閣総理大臣その他の国務大臣は、答弁又は説明のため議会から出席を求められたときは、健康上或いは職務の遂行上やむを得ない事情がある場合を除き、出席しなければならない。

 

第32条

 この憲法に個別に定められた職責並びにその他の政府事項及び行政事項であって、内閣若しくは省庁が決定するものと定められたもの又はその他の公的機関の権限に当てられなかったものは、内閣に帰属する。

 

第33条

 衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は、総辞職をしなければならない。

 

第34条

 前条の規定に限らず、内閣の総辞職が生じた場合、総辞職から新たに内閣が組閣されるまでの間、内閣の職務は議長評議会がこれを行う。

 

 

第12章 司法権の構造と管轄

 

第1条

 裁判所は通常裁判所と通常行政裁判所から構成される。

 

第2条

 通常裁判所は、大審院、控訴院及び法律により定められた下級裁判所と付随する事務局とする。

 

第3条

 通常行政裁判所は、国務院、行政控訴院及び法律により定められた下級行政裁判所と付随する事務局とする。

 

第4条

 この憲法に別段の定めがない特別裁判所、臨時裁判所の設置は、禁止する。

 

第5条

 最上級の裁判所は、通常司法部門においては大審院、行政司法部門においては国務院とし、両院はそれぞれ独立して裁判権を行使する。ただし、民事・刑事法と行政法が重なる事件に関しては、両院によって構成される合同法廷を開廷し、統一的な審理および判断を行う。合同法廷の裁判長は大審院長官、副裁判長は国務院長官とする。合同法廷の構成、権限及び審理手続の詳細は法律で定める。

 

第6条

 大審院及び国務院は、その自らの管轄分野で司法を監督し、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。検察官は大審院及び国務院の定める規則に従わなければならない。大審院及び国務院は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。

 

第7条

 大審院及び国務院は、立法作業の着手について内閣に提案をすることができる。

 

第8条

 軍人軍属に係る事件は、控訴院に設置された軍事法廷部門により審理される。当該部門における裁判は資格を有する軍人の判士一名と文民裁判官二名の合議体によって行われる。判決に不服がある場合は大審院の特別軍事法廷部門に抗告を行える。大審院の特別軍事法廷部門における裁判は資格を有する軍人の判士五名と文民裁判官十名の合議体によって行われる。

 

第9条

 大審院及び国務院に長官及び必要な数のその他の構成員を置く。

 

第10条

 大審院及び国務院は、法律で個別に異なる構成人数を定める場合を除き、五人の裁判官によって開廷することができる。その他の裁判所の開廷人数は法律で定める。

 

第11条

 裁判所は、裁判を迅速かつ適確に行なうように努めなければならない。大審院および国務院は、毎年一回、裁判事務の進捗状況を国会に報告しなければならない。

 

 

第13章 裁判官制度

 

第1条

 すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行ない、この憲法及び法律にのみ拘束される。

 

第2条

 裁判官は、次に掲げる要件をすべて満たす者の中から、司法委員会の助言に基づき選出されるものとする。

一 法学の修士課程以上を修了した者

二 出生によって日本国籍を有する者

三 定められた試験に合格し、一定期間以上の法曹経験を有する者

四 必要な学識及びその応用能力を有することが司法委員会によって認定された者

 

第3条

 裁判官は、裁判所の判決によらずに失職を宣告されることはない。裁判官は、また、司法部門の再編による場合を除き、その同意なく他の職に異動させられてはならない。事務局に属する公務員もまたこれに準じる。

 

第4条

 定年又は職務遂行能力が失われた場合における裁判官の退職の義務については、法律で定める。

 

第5条

 裁判官は給与を与えられる職業、任務を兼ねることができない。事務局に属する官吏もまたこれに準じる。

 

第6条

 裁判官はすべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は在任中減額することができない。その他、裁判官の在職の基準については、法律で個別に定める。事務局に属する官吏もまたこれに準じる。

 

 

第14章 公開裁判と恩赦

 

第1条

 裁判の対審及び判決は、公開法廷で行う。通常裁判所、通常行政裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行うことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又は国民の権利が問題となっている事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。

 

第2条

 天皇は、個々の事案において、大審院から意見を得た上で、裁判所により科された刑又はその他の刑事制裁の全部又は一部について恩赦を提議することができる。一般恩赦については、法律で定めなければならない。

 

 

第15章 弾劾制度

 

第1条

 弾劾裁判所は、公務における違法な処置に関し内閣の構成員、枢密院の構成員、通常裁判所又は通常行政裁判所の構成員に対して提起される訴追を処理する。

 

第2条

 弾劾裁判所は憲法委員会から二名を選出し、裁判長、副裁判長とするほか、大審院長官及び国務院長官、四年の任期で公選された三名の市民代表. 枢密院が推挙した二名の有識者で構成される。市民代表の選出資格は衆議院の被選挙権に準ずる。

 

第3条

 大審院長官、国務院長官が訴追の対象である時は、大審院副長官、国務院副長官がその任にあたる。長官、副長官がともに訴追の対象である時は、最も在職年数が長い控訴院長官、行政控訴院長官がその任にあたる。

 

第4条

 弾劾裁判所の開廷に必要な構成員数及び活動については、法律で詳細を定める。

 

 

第16章 再審制度

 

第1条

 再審は、有罪であることに疑いを生じさせる新たな事実又は前訴で知り得なかった証拠の提出により、それのみで、又は取調べ済みの証拠をあわせて、被告人の無罪を理由づけるのに適していることを必要とする。

 

第2条

 再審の可否を決定するのは、再審査法院である。

 

第3条

 再審査法院は、大審院に附属する独立した部門として設置され、既存の司法機構内に位置づけられる。再審査法院の審理は原則として公開で行い、再審査法院の判決は大審院による上訴対象とはならない。

 

第4条

 再審査法院は大審院長官を裁判長とした裁判官15名と3名の学識経験者で構成される。確定判決に関与した裁判官が再審の可否に関与することは出来ない。

 

第5条

 再審請求を検討している者は、請求前に、検事に対し、新事実の提出又は確定審で知られていなかった証拠の顕出に必要と思われるすべての証拠の取り調べを請求でき、これを受けた検察官は、理由を付した決定書によって回答しなければならない。

 

第6条

 再審査法院は職権で証跡記録を含めた補充の情報収集をすることができる。検察官が情報の収集を拒否することは許されない。

 

第7条

 再審請求者は、再審査法院に対して、請求の審理に必要と思われるすべての書類を取り調べることを請求できる。

 

第8条

 再審の請求が法令上の方式に違反しているとき、法律の定める再審事由を主張していないとき、又は、見込みのある証拠を示していない場合は請求を不適法として棄却する。

 

第9条

 再審の審理は公開の法廷で、事件につき実体判断を行ったうえで理由を付した決定を一年以内に行う。請求に理由があるときは、有罪判決を取り消し再審を行う。

 

第10条

 検察官は再審査法院の再審決定に対して不服申立はできない。

 

第11条

 再審公判は、確定判決から完全に独立して行われるものとし、審理および証拠調べは新たに構築された証拠資料に基づいて行われる。再審査法院は、当該証拠に照らして被告人に対する有罪判決が維持され得ないと合理的に認める場合には、直ちに無罪の言渡しを行うことができる。

 

第12条

 再審公判は公開の法廷で行われ、判決に関与する裁判官は、当該公判において証拠調べおよび審理に直接関与した者でなければならない。

 

第13条

 裁判官の変更その他やむを得ない事情により審理継続が困難となった場合には、審理に関与した裁判官に準ずる者を補充し、補充理由および関与範囲について開廷時に説明しなければならない。

 

 

第17章 検察制度

 

第1条

 検察は、三権分立の趣旨に基づき、司法権の構成要素として制度的独立を維持するものとする。検察官の任命、昇進及び監督については、司法委員会によって統括される。

 

第2条

 検察官は、犯罪の捜査と公訴提起を行い、公益の代表者として行動し、法の支配を守る。 

 

第3条

 検察官は法学の修士以上の課程を修了した、出生によって日本国民たる者で、必要な学識及びその応用能力を有するかを判定する定められた試験に合格し一定期間以上の法曹経験を有する日本国民でなければならない。

 

第4条

 検察は、司法制度に附属する独立機関として、いかなる行政機関からも干渉を受けず、法に基づき独自に職務を遂行する。

 

第5条

 検察は最高検察庁、高等検察庁、地方検察庁と付属する事務局で構成される。

 

第6条

 最高検察庁は大審院に、高等検察庁は控訴院に、地方検察庁は各下級裁判所にそれぞれ対応してこれを置く。検察は裁判所に対応して置かれるが、制度上は別個の機構とする。検察の活動は最高裁判機関である大審院及び国務院を通じて、国会への年次報告義務を負うものとする。

 

第7条

 検察を指揮する最高位の検察官として検事総長を置く。

 

第8条

 検事総長は、司法委員会が審査・推薦した者の中から、六年の任期で天皇が任命するものとする。任命にあたっては、能力、倫理性、政治的中立性、及び検察実務の知見を総合的に評価しなければならない。衆議院及び参議院は、任命後に司法委員会から推薦理由等の報告を受け、必要に応じて意見表明を行うことができる。

 

第9条

 検事総長を補佐する為次長検事を置く。次長検事は検察事務の運営に責任を負う。

 

第10条

 次長検事は、検事総長が四年の任期で任命する。

 

第11条

 高等検察庁および地方検察庁の検察官は、最高検察庁が、司法委員会の助言に基づき任命する。これらの任命は定期報告の対象とし、国会に対して年次で公的に報告されるものとする。

 

第12条

 検察官は裁判所の判決によらずに失職を宣告されることはない。

 

第13条

 その他の検察に必要な構成員数及び活動については、法律で詳細を定める。

 

 

第18章 司法委員会

 

第1条

 司法の独立を維持し、裁判官及び検察官の人事を公正かつ透明に行うための司法委員会を設置する。委員会は、多様な視点を持つことを目的とし、法曹界、その他学識経験者及び市民代表から構成され、その委員は独立性及び公正性を保持する。

 

第2条

 司法委員会委員は出生を理由とした日本国籍を有し、高等教育を受け、広い視野を持ち、社会的な問題に対応できる見識を有し、いかなる特定の利害関係からも独立して判断を行い、公正な見解を持つことができる者でなければならない。

 

第3条

 天皇は、司法委員会の助言に基づき、枢密院の推薦を得て、資格を有する裁判官の中から大審院長官及び国務院長官を任命する。助言及び推薦の詳細な手続は法律で定める。

 

第4条

 司法委員会は、裁判官および長官の任命にあたって、資格・適格性・社会的視野・独立性に基づく審査を行い、推薦候補者を枢密院に提出する。

 

第5条

 司法委員会は、個々の候補者に対し、その専門知識・職務経験・倫理性・独立性を審査し、公正かつ透明な基準に基づいて推薦を行う。

 

第6条

 司法委員会は、検察制度の中立性および業務運営の公正を確保するため、司法委員会に附属する検察監督部を設置するものとし、その構成・権限は法律で定める。

 

第7条

 司法委員会は、裁判官及び検察官の選出、昇進及び異動に関する全ての事項について助言及び勧告を行う。

 

第8条

 司法委員会の審議は、原則として公開とし、透明性を確保する。委員会の決定に至った理由及び過程は、市民に対して説明責任を果たすものとする。

 

第9条

 継続的な新陳代謝と公正性を保持するため司法委員会委員の任期は5年とし、再任は2回までとする。委員の選挙権は衆議院の選挙権に準ずる。

 

第10条

 司法委員会委員はすべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は在任中減額することができない。

 

第11条

 司法委員会委員は、政治的中立性を保持し、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。但し委員が政党その他の政治的団体に属することを禁ずるものではない。

 

第12条

 司法委員会委員は、高い倫理観と誠実さを持ち、公共の利益を最優先に考え、公正かつ誠実に職務を遂行しなければならない。

 

第13条

 憲法に明記されていない委員会に関する付加的規定は、他の法律で定める。

 

 

第19章 合法性の監督

 

第1条

 裁判所の審理に付されている事件において、法律の規定を適用することが明らかに憲法に反する場合には、裁判所は、憲法の規定を優先しなければならない。命令又は法律よりも下位のその他の法令の規定が憲法又はその他の法律に反する場合には、裁判所又はその他の公的機関においてこれを適用してはならない。

 

第2条

 内閣の公務の適法性を監督することは、顧問官の職責とする。

 

第3条

 顧問官、護民官は、裁判所及びその他の公的機関並びに公務員、公法人の職員及び公的業務を遂行するその他の者が法律を遵守し、及びその義務を履行することを監督しなければならない。顧問官、護民官は、その職責の遂行に当たって、基本権及び人権の実現を監督する。

 

第4条

 顧問官と護民官の間の職責の分担について、法律で定めることができるが、合法性の監督に関するいずれの権能も狭めてはならない。

 

第5条

 顧問官及び護民官は、公的機関及び公的業務を遂行するその他の者から、合法性の監督のために必要な情報を入手する権限を有する。

 

第6条

 枢密院議長及び首席顧問官は、健康上或いは職務の遂行上やむを得ない事情がある場合を除き、閣議の案件の説明に出席しなければならない。首席護民官は、これらの会議及び説明に出席する権限を有する。

 

第7条

 顧問官は、内閣または大臣の決定または措置の合法性について指摘の必要を認めるときは、理由を付して指摘をしなければならない。当該指摘が顧慮されることなく放置された場合には、顧問官は、その意見を内閣の議事録に記録させなければならず、また、必要なときは、その他の措置を講じなければならない。護民官も、また、指摘を行い、及びその他の措置を講ずる同様の権限を有する。

 

第8条

 内閣の構成員の公務の合法性の調査は、顧問官又は護民官が憲法委員会に対して行う通知、または十人以上の国会議員が署名した申立書、もしくは議会のその他の委員会が憲法委員会に対して行う調査要求のいずれかにより、議会の憲法委員会において開始することができる。憲法委員会は、また、自発的に内閣の構成員の公務の合法性の調査に着手することができる。

 

第9条

 内閣の構成員に対する訴追の提起については、その者が故意又は重大な過失により、大臣の職責に属する義務に本質的に違背した場合又はその公務において明らかに違法に行動した場合に、内閣の構成員による処置の違法性に関する憲法委員会の意見を得た上で、議会が議決する。議会は、訴追の議決の前に、内閣の構成員に対し、弁明を行う機会を与えなければならない。当該事案を審査する際には、憲法委員会は全ての委員が出席しなければならない。

 

第10条

 公務における違法な処置に関する内閣の構成員に対する訴追は、法律で詳細を定めるところにより、弾劾裁判所において処理される。内閣の構成員に対する訴追は、検事総長が実施する。

 

第11条

 顧問官及び護民官の公務の適法性の調査、その公務における違法な処置に関するこれらの者に対する訴追の提起並びにこれらの訴追の処理については、内閣の構成員に関する規定が適用される。

 

第12条

 議会の憲法委員会は、その構成員が多様な識見を有し、いかなる特定の利害関係からも独立して判断を行い、公正な見解を持つことができるよう、法律でその選出方法を定めるものとする。憲法委員会の委員は、その職務遂行にあたり、特定の政党その他の政治的団体又はその利益に偏ることなく、公正かつ中立の立場を保持しなければならない。

 

 

第20章 会計

 

第1条

 議会は法律で会計年度を定める。

 

第2条

 新たに租税を課し、税率を変更するとき、及び国の機関の公務その他の業務の手数料負担及び手数料額の一般的な基準については、納税義務及び納税額の基準並びに納税義務者の法による保護に関する規定を含め、法律で定める。租税の賦課は公正に行われ苟も消費諸税を偏重して国民に過重の負担を負わせてはならない。

 

第3条

 現行の租税は、更に法律をもってこれを改めない限りは、旧来通りに徴収する。

 

第4条

 国の予算の政府の提案及びこれに関連するその他の政府の提案は、会計年度の開始前の適切な時期に議会の審議に付される。予算案の補足及び撤回については、予算案を審査する委員会がその報告書を提出した後には、補足及び撤回することができない。

 

第5条

 国会議員は、予算案を受けて、予算発議により、国の予算に組み入れる経費又はその他の決定の提案をすることができる。

 

第6条

 国の予算は、議会の財務委員会がその報告書を提出した後、本会議における一度の審議において承認される。議会における予算案の審議については、議事規則で詳細を定める。

 

第7条

 議会は、一会計年度につき一度、国の予算を議決し、国の予算は官報において公示される。

 

第8条

 国の予算の公示が会計年度を越えて遅れる場合には、議会が定める方法により、政府の予算案が予算として暫定的に遵守される。

 

第9条

 国の予算には、歳入の見積及び歳出に充てる経費並びに経費の使途及びその他の予算の根拠が組み入れられる。相互に直接関連する収入及び支出について、それらの差額に相当する収入見積又は経費を予算に計上することができる旨を法律で定めることができる。

 

第10条

 予算に計上される収入見積は、予算に計上される経費を満たさなければならない。経費の充当に際しては、法律で定めるところにより、国の決算における余剰又は不足を考慮することができる

 

第11条

 相互に関連する収入及び支出に対応する収入見積及び経費は、法律で定めるところにより、複数の会計年度の予算に計上することができる。

 

第12条

 経費は、確定経費、概算経費又は繰越経費として国の予算に計上される。法律で定めるところにより、概算経費は、超過することができ、また、繰越経費は、会計年度の後で使用するために繰り越すことができる。法律で認められている場合を除き、確定経費及び繰越経費は、超過することができず、確定経費は、繰り越すことができない。

 

第13条

 経費は、予算において認められている場合を除き、別の予算項目に移してはならない。ただし、使途が密接に関連する項目に経費を移すことは、法律で認めることができる。

 

第14条

 翌会計年度以降の予算に必要な経費が計上される支出を会計年度の間に約束する権限は、金額及び使途を限定して、予算において付与されることができる。

 

第15条

 予算を変更することに正当な必要がある場合には、政府の補正予算案が議会に提出される。

 

第16条

 国会議員は、補正予算案に直接関連する予算の修正のために予算発議を行うことができる。但し予算の先決権は衆議院が有する。

 

第17条

 国の継続的な任務の遂行に当然に必要とされる場合には、国の基金を予算外に置くことについて法律で定めることができる。予算外の基金の設置又は当該基金若しくはその使途の本質的な拡張を目的とする法律案の可決には、議会において議員総数の三分の二以上の出席、かつ投票の三分の二以上の賛同を必要とする。

 

第18条

 国債を起こし、又は予算に定めたものを除き、国庫の負担となる契約をするには、債務の上限額を示した議会の同意に基づかなければならない。国の保証は、議会の同意に基づき与えることができる。

 

第19条

 議会は、国の財政運営及び国の予算の遵守を監督する。このため、議会に監査委員会を置き、同委員会は、その重要な監督所見を議会に報告しなければならない。

 

第20条

 天皇は法律の定める規則に従い、毎年、国庫から給付金を受ける。当該法律は、給付金が支給される皇族の範囲について定め、及び当該給付金について規律する。

 

第21条

 皇族が国庫から受領した給付金及びその職務の遂行のために使用する財産については、個人課税が免除される。また、皇族が相続権に基づき又は贈与により他の皇族から受領したものについては、相続、譲渡及び贈与に関する法の適用を受けない。

 

第22条

 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

 

第23条

 何人も、法的にその者に帰属するものを、予算に関わりなく、国から受け取る権利を有する。

 

第24条

 国の職員の勤務条件に関する協約に議会の同意が必要な場合には、議会の所管の委員会が、議会を代表して、これを承認する。

 

第25条

 日本における中央銀行たる日本銀行は、法律で定めるところにより、議会の保証及び管理の下で活動する。議会は、日本銀行の活動を監督するために銀行評議員を選挙する。

 

第26条

 議会の所管の委員会及び銀行評議員は、日本銀行の監督に必要な情報を入手する権限を有する。

 

第27条

 国の企業の業務及び財務の一般的な基準については、法律で定める。国の企業に関する収入見積及び経費は、法律で定める範囲内でのみ計上される。議会は、予算の審議に関連して、国の企業の主要な事業目標及びその他の業務目標を承認する。

 

第28条

 国が支配権を有する会社において国が株主権を行使する際の権限及び手続については、法律で定める。同様に、国が会社における支配権を取得し、又は放棄することに議会の同意が必要とされる場合についても、法律で定める。

 

第29条

 国の不動産は、議会の同意によってのみ、又は法律で定めるところによってのみ譲渡することができる。

 

 

第21章 会計検査院

 

第1条

 国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は年度の中間期と次の年度にその検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。

 

第2条

 会計検査院の検査が国の活動以外のものも対象とし得ることに関する規定は、法律で定める。

 

第3条

 会計検査院は、国により実施される活動を検査する任務を有する内閣から独立した機関である。

 

第4条

 会計検査院は、三人の検査官を以て構成する検査官会議と事務総局を以てこれを組織する。

 

第5条

 会計検査官は、両議院の同意を経て、内閣がこれを任命する。

 

第6条

 会計検査官の任期は、五年とし、一回に限り再任されることができる。

 

第7条

 会計検査官は、他の検査官の合議により、心身の故障のため職務の執行ができないと決定され、又は職務上の義務に違反する事実があると決定された場合において、両議院の議決があったときは、退官する。

 

第8条

 会計検査官は、刑事裁判により禁錮以上の刑に処せられたときは、その地位を失う。

 

第9条

 会計検査官は、自ら願い出ることにより、及び法律で定める年齢に達したことを理由として、解任される。

 

第10条

 会計検査官は、前三条の場合を除いては、その意に反してその官を失うことがない。

 

第11条

 会計検査官は他の官を兼ね、又は国会議員、若しくは地方公共団体の職員若しくは議会の議員となることができない。

 

第12条

 会計検査官は法律の規定に配慮し、検査すべき事項を独立して決定する。会計検査官は、検査方法及びその検査結果をそれぞれ独立して決定する。

 

第13条

 監査委員会及び会計検査院は、公的機関及びその監督の対象とされるその他のものから職責の遂行に必要な情報を入手する権限を有する。

 

第14条

 会計検査院は財政運営及び国の予算の遵守の監査に責任を有する。

 

第15条

 会計検査院に関する組織、構成、地位及び職責については、法律で詳細を定める。

 

 

第22章 公務員

 

第1条

 国の中央行政組織は、内閣及び省のほか庁、施設及びその他の機関により構成することができる。さらに、国は、地域機関及び地方機関を置くことができる。議会の下に置く行政組織については、法律で個別に定める。

 

第2条

 国の行政機関の一般的な基準は、それらの業務が公権力の行使に該当する場合には、法律で定めなければならない。国の地域行政機関及び地方行政機関の基準についても、同様に法律で定める。その他の場合においては、国の行政単位については、命令で定めることができる。

 

第3条

 内閣は、省又はその他の公的機関の職責と規定されていない国家職への任命を行う。

 

第4条

 公行政の任務は、任務の適切な遂行のために必要であり、かつ、基本的人権、法による保護又はその他の良好な運営の要請を損なわない場合において、法律に基づいてのみ、公的機関以外の者に付与することができる。ただし、公権力の重要な行使を含む任務は、公的機関のみに付与することができる。

 

第5条

 公務員の法的地位について法律で定める。法律は、さらに、公務員の労働の際の保護及び共同決定に関する規則を定める。

 

第6条

 公務員は、その公務の適法性について責任を負う。公務員は、また、合議制の機関の決定であって、当人が当該機関の構成員として支持したものについて責任を負う。

 

第7条

 公務の提案者は、その提案に基づき決定されたことについて責任を負うが、その者が当該決定に異議をとどめた場合は、この限りでない。

 

第8条

 公務員又は公的業務を遂行するその他の個人の違法な作為又は不作為により、権利侵害又は損害を被った全ての者は、法律で定めるところにより、当該公務員等を刑に処すること及び公法人又は公務員若しくは公的業務を遂行するその他の者からの損害賠償を要求する権利を有する。ただし、この項に規定する訴追権は、訴追が憲法に基づき弾劾裁判所において処理される場合には、認められない。

 

第9条

 特定の公職又は公的任務には、日本国民のみが任命されることができる旨を法律で定めることができる。公職の一般的な任命基準は、技能、能力及び証明された国民としての適性とする。

 

第10条

 公務員は政党その他の政治的団体の結成に関与し、これらの団体の役員となってはならず、又はこれらの団体の構成員となるように、若しくはならないように勧誘運動をしてはならない。

 

第11条

 公務員は国民に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をし、又は行政機関の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。又、何人も、このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおってはならない。

 

第12条

 武官、治安職員、消防職員は、自らの勤務条件の維持改善を図ることを目的とし、かつ、当局と交渉する団体を結成し、又はこれに加入してはならない。

 

第13条

 公務員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他規則で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。

 

第14条

 全ての公務員は、公共の奉仕者であって一部の利益授受者の為の奉仕者ではないことを自覚し、良く身を修め、品性を高く保ち、公共の奉仕者として相応しい人格を身につけなければならない。

 

 

第23章 地方自治に関する諸規則

 

第1条

 地方自治体は法律で廃止、合併及び新設することができる。但し、廃止、合併及び新設の権限は日本国政府に有り、その地方自治体の住民の投票においてその有権者総数の二分の一以上の同意を得なければならない。地方自治体の境界の変更については法律で定める。

 

第2条

 地方自治体について、その内部事項に関する規則の制定及び執行の権限は、その行政機関に委ねられる。住民は地方自治体に対し、法律により又は法律に基づき、行政機関の規則の制定及び執行を要求することができる。

 

第3条

 地方自治体の最高機関は議会とする。その会議は、法律で定める例外を除き、公開とする。

 

第4条

 地方自治体の首長は、その地方自治体の住民である国民により、直接、秘密に選挙される。国会は、法律の定めるところにより、首長の候補者として適格性を有すると認める者を複数選定し、これを当該地方自治体の住民に提示しなければならない。 住民は、提示された候補者の中から、一人を選択して投票する。

 

第5条

 国会は、前項の候補者選定にあたり、当該地方自治体の特性、住民の意見及び候補者の行政能力、倫理観等を総合的に考慮しなければならない。選定の手続き及び基準は、別途法律で定める。

 

第6条

 地方自治体の首長の地位、権限及びその職務の遂行に関する責任は、別途法律にて定める。

 

第7条

 地方自治体の首長は、法令に基づき、自治体の行政を統一的に執行し、その職務の遂行に関して、当該自治体の住民及び議会に対し責任を負う。

 

第8条

 国は、地方自治に関する国の責務を果たすため、法律の定める範囲内で、地方自治体の事務に対し指導及び助言を行うことができる。

 

第9条

 地方自治体議会は、憲法又は法令が定める例外を除き、地方自治体の条例を定める。

 

第10条

 地方自治体が内部事項に関する規則の制定及び執行の権限を他の機関に対し付与することは、合併及び新設の場合を除き、地方自治体議会によってのみ行うことができる。ただし、公権力の重要な行使を含む権限は、地方自治体議会のみに付与することができる。

 

第11条

 地方自治体議会の議員は、その地方自治体の住民である国民であって、衆議院の選挙に適用される要件を満たすものにより、直接、秘密に選挙される。議員の資格についても、同一の要件が適用される。

 

第12条

 地方自治体議会の議員は、法律により定める範囲内において、単一の選挙区で二つ以上の候補を選択する制度に基づいて選挙される。

 

第13条

 地方自治体議会の議員選挙は、選挙区で有権者数の四分の一以上の無効投票があるときは選挙結果は無効となりその選挙区では再度の選挙を行わねばならない。再選挙については法律でこれを定める。

 

第14条

 地方自治体議会の任期は、法律で定める例外を除き、四年とする。

 

第15条

 法律は、議員資格と同時に遂行することができない職の種類について定める。法律は、親族関係又は婚姻から議員資格への障害が生ずること及び法律で指定された行為を行うことにより議員資格を喪失し得ることを定めることができる。

 

第16条

 地方自治体議員は、その職において自己の良心、正義及び真実に従う義務を負う。議員は、憲法を遵守する義務を負い、何人からも指示を受けることなく投票する。

 

第17条

 地方自治体の議会の議員の妊娠及び出産並びに疾病負傷を理由とする一時的な代理については法律で定める。

 

第18条

 地方自治体の組織並びにその運営機関の構成及び権限について憲法に別段の定めがないものは地方自治の本旨に基づき法律で定める。

 

第19条

 地方自治体は、課税権を有する。納税義務、課税標準の基準及び納税義務者の法による保護並びに地方自治体の運営機関により課することができる租税の種類、地方自治体と国の財政関係については法律で定める。

 

第20条

 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。

 

第21条

 地方自治体が法律により又は法律に基づき要求された規則の制定及び執行を行わない場合の措置については法律で定める。地方自治体の運営機関がその職務を著しく怠っている場合には、法律で措置を講ずることができる。

 

 

第24章 非常事態宣言に関する諸規則

 

第1条

 災害、疫病が発生し、又は発生するおそれがある場合において、国は地方公共団体、日本赤十字社その他の団体及び国民の協力の下に、速やかに必要な対策を行い、災害、疫病により被害を受け又は被害を受けるおそれのある者の保護と社会の秩序の保全を図らねばならない。

 

第2条

 国は公共の安全を保持し、その災厄を避けるため緊急の必要があり、且つ衆議院が解散中の場合は、国内外の安全の維持のため、法律により指定される非常事態を参議院の緊急集会で宣言することができる。法律は非常事態の宣言の場合について定め、効果について定める。

 

第3条

 緊急集会において参議院議員は、参集に支障をきたす心身の負傷疾病を除き参集の義務を負う。参議院が改選中であった場合、改選中の議員も参集の義務を負う。

 

第4条

 参議院の緊急集会は召集の日から十日を超えて開会されてはならず、会期の延長は認められない。

 

第5条

 緊急集会において採られた措置は、即時施行の緊急法令としての効力を有し、責任は参議院が負うものとする。

 

第6条

 緊急集会において採られた措置は、臨時のものであって、次の会期開会の後十日以内に、衆議院は緊急集会において採られた措置に対し十日以内に衆議院として採決を行わなければならない。衆議院が採決を行わない場合は同意したものと見做す。衆議院の同意がない場合には、政府は将来その効力が失われることを遅滞なく公布しなければならない。

 

第7条

 緊急集会において採られた措置により法律または他の命令を改正又は廃止したときは失効公布の時よりその法律又は命令はその効力を回復する。

 

第8条

 非常事態の宣言に伴い、地方自治体の権限は制限される。また、個人の信仰と生活信条の表明の権利、表現の自由、結社の権利、集会及び示威行動の権利、住居の不可侵、信書及び電話電信による通信の秘密について規定する基本権から逸脱することができる。

 基本権について、法律又は法律において特別な理由について定められ且つ適用範囲を厳格に限定された授権に基づいて発せられた政令で、一時的な例外を定めることができ、この例外は、日本国に対する武力攻撃時及び国民を深刻に脅かすその他の非常事態であって、法律で定めるものの際に不可欠なものとする。

 ただし、一時的な例外の基準は、法律で定めなければならず一時的な例外に関する政令は、遅滞なく憲法委員会の審議に付されなければならない。議会は、一時的な例外に関する政令の効力について決定することができる。

 

第9条

 非常事態の宣言後、当該宣言が廃止されるまでの間、議会は一年或いは必要であると判断する都度、当該宣言の更新について決定し、議会は両院合同会議においてこれについて審議及び議決する。

 

 

第25章 外交

 

第1条

 日本の外交政策は、内閣が指揮する。外交政策的に重要な見解の外国及び国際組織への通知については、国際関係を所管する大臣が責任を負う。ただし、議会は、この憲法に定める限りにおいて、国際義務及びその破棄を承認し、並びに国際義務の施行について決定する。

 

第2条

 国際義務又はその破棄の承認は、両議院の総議員数の過半数の賛成で可決される。ただし、義務の承認についての提案が、憲法に関わる場合若しくは国の領域の変更に関わる場合、国際組織若しくは国際機関に対する権限の移譲であって、日本の主権の観点から重要なものに関わる場合には、両議院の総議員数の三分の二以上をもって支持された議決により可決されなければならない。

 

第3条

 国際義務は、憲法の民主主義の原理を損なってはならない。

 

第4条

 条約その他の国際義務の規律であって、立法の領域に属するものは、法律により施行される。その他の国際義務は、命令により施行される。国際義務の施行に関する法律案は、通常の法律の制定手続により審議される。ただし、提案が、憲法に関わる場合若しくは国の領域の変更に関わる場合、国際組織若しくは国際機関に対する権限の移譲であって、日本の主権の観点から重要なものに関わる場合には、議会は、未決とすることなく、両議院の総議員数の三分の二以上をもって支持された議決により、これを可決しなければならない。

 

第5条

 国際義務の施行に関する法律において、その施行について命令で定める旨を規定することができる。条約その他の国際義務の公布に関する通則については、法律で定める。

 

第6条

 両議院の外務委員会は、その要求により、又は必要がある場合においても、内閣から外交政策及び安全保障政策に関する事項について報告を入手しなければならない。議長評議会は、報告を本会議における討論に付することを決定することができるが、その際、議会は、当該案件について議決をしない。

 

第7条

 議会の所管の委員会は、報告、情報を受けて内閣に意見書を提出することができる。

 

 

第26章 安全保障に関する諸規則

 

第1条

 日本国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならず、国外において緊急事態が生じたときは、在外国民の保護に努めなければならない。

 

第2条

 日本国は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、他国民の自由に対する攻撃の手段としての戦争及び国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄する。諸国民の平和的な共同生活を妨げ、とりわけ他国の領域を侵す戦争の遂行を準備するのに手助けとなり、かつそのような意図をもってなされる行為は、憲法違反である。

 

第3条

 日本国は、自らの平和と独立を守り、その安全を保つため、自衛のための軍隊を持つことができる。

 

第4条

 日本国は、国家間の平和と正義を保障する体制に必要ならば他の国々と同等の条件の下で軍隊の制限に同意する。

 

第5条

 日本国は、国家間の平和と正義を保障する目的を持つ国際組織を支援する。

 

第6条

 日本国の軍は、日本国の防衛及び利益の保護並びに国際的な法秩序の維持及び促進のために存在する。

 

第7条

 日本国の軍は、政治的問題における中立性を保持し、国民の代表者たる文民の統制に服する。

 

第8条

 日本国の軍は内閣総理大臣が統帥する。内閣総理大臣は軍務を主管する国務大臣に軍の指揮権を委任することができる。

 

第9条

 軍務を主管する大臣には佐官以上の地位にあって、不名誉除隊を除く退役後五年以上経過した者が就任する。但しその席が空白の場合は大臣の罷免権を持つ内閣総理大臣が兼任する。

 

第10条

 軍務を主管する大臣は、政策的な補佐を文官が、軍事的な補佐を武官が各々対等な立場で行える体制を法律によって設置しなければならない。

 

第11条

 軍の編成と予算は議会が定めた法律に基づき内閣が定める。

 

第12条

 国が戦争状態又は戦争の危険に陥った場合には、政府又は議長評議会は、集会するために議会を招集しなければならない。招集を行った者は、議会が所在地以外の場所で集会すべきことを決定することができる。

 

第13条

 議会又は政府は、被占領地域において決定を行ってはならない。また、当該地域においては、議員又は大臣としての資格において有する権限は行使してはならない。

 

第14条

 各公的機関は、被占領地域において、防衛の努力及び抵抗運動並びに市民の保護及びその他日本国の利益一般に資する最善の策を講じるように行動する。いかなる場合においても、公的機関は、国際法に反して、占領権力を援助するよう国の市民に対して義務を課す決定を行い、又は措置を講じてはならない。議決を行うためのあらゆる選挙は、被占領地域で実施されてはならない。

 

第15条

 国に対する武力による攻撃の際を除き、国が戦争状態にあるという宣言は、議会の承認なしに政府が行ってはならない。

 

第16条

 休戦に関する条約の遅延が国に対する危機をもたらす場合には、政府は、議会の承認を得ることなしに、かつ、外務委員会と協議することなしに、当該条約を締結することができる。

 

 

第27章 文化及び国土保全に関する諸規定

 

第1条

 自然及びその多様性、環境、並びに文化遺産に対する責任は、何人にも帰属する。国及び地方自治体は、日本古来の風景、歴史的、芸術的遺産及び文化を保護し、文化的、科学的、技術的研究を推進し、その価値を高めるとともに、国民がこれらに誇りを持てるよう、必要な措置を講じなければならない。

 

第2条

 慣習及び伝統は、この憲法及びこれに基づく法律に反しない限り尊重される。

 

第3条

 何人も、健康で文化的な生活を営む上で不可欠な、良好な環境を享受する権利を有する。国及び地方自治体は、国土の居住適性及び生活環境の保護と改善に努め、国民の健康を増進するための措置を講じなければならない。

 

第4条

 何人も、環境状態を配慮する義務を負い、自らの行為により招いた環境の悪化に対し責任を負う。

 

第5条

 国及び地方自治体は、国土の永続的な保全と、その均衡ある計画的な利用、開発及び無秩序な開発の抑制について、基本となる施策を定め、必要な法令を制定し、これを施行しなければならない。

 

第6条

 土地の所有権その他の土地に関する権利は、社会の安寧秩序及び持続可能な発展を確保し、並びに公衆の健康、道徳、及び他の者の基本的な権利と自由を保護するために必要な制限に適合するよう行使されなければならない。

 

第7条

 日本国民または日本法人に対して土地に関する権利の享有を禁止し、または条件や制限を付ける国に属する外国人または外国法人に対しては、法律により日本国内での土地に関する権利の享有について同様または類似の禁止、条件、または制限を付けることができる。

 

第8条

 国及び地方自治体は、農林畜産業及び水産業が食料の安定供給、国土の保全、自然環境の維持など、多面にわたる機能を持つことに鑑み、その持続的な発展と、これに従事する者の生活向上と経済的な安定を図るため、必要な施策を総合的かつ計画的に推進しなければならない。

 

第9条

 国は、消費者が産業に関する理解を深め、農林畜産業及び水産業に関する消費生活の向上に積極的な役割を果せるよう、必要な施策を講じなければならない。施策に関する基本事項は、法律でこれを定める。

 

第10条

 すべて国民は、日本の自然環境、歴史及び文化遺産に対する深い認識を持ち、これらを愛護し、将来の世代に継承する責務を負う。また、国民は、健全な社会生活を営む上で、自らの生活環境に関する決定に影響を及ぼす機会を有し、公的機関はこれを保障するよう努めなければならない。

 

 

第28章 公的団体

 

第1条

 職業及び産業に関する公的団体及びその他の公的団体は、法律により又は法律に基づき設立し、又は廃止することができる。

 

第2条

 法律は、職業及び産業に関する公的団体及びその他の公的団体の任務及び組織、その運営機関の構成及び権限並びにその会議の公開について定める。法律により又は法律に基づき、その運営機関に対して規則制定権を付与することができる。

 

第3条

 法律は、団体の運営機関の監督について定める。当該運営機関の決定の破棄は、違法であること又は一般の利益に反することを理由としてのみ行うことができる。

 

第4条

 法律は、二以上の公的団体が関係する問題について措置するための規則を定める。その際には、新たな公的団体の設立の措置を講ずることができる。新たな公的団体は法律により又は法律に基づき設立し、又は廃止することができ、運営機関に対して規則制定権を付与することができる。

 

第5条

 公的団体間の紛争は、当該紛争が司法権の審査に服する場合又はその解決が法律で他に委ねられている場合を除き、国会の議決により解決される。

 

第6条

 法律は、相互扶助を特徴とし、私的な利益追求を目的としない協同組合の社会的機能を認め、最も適切な手段によりその発展を支援し又適切な管理を行うことで協同組合の性格目的を保障する。法律は職人業の保護およびその発展への対策を講じる。

 

第7条

 労働の経済社会的向上を目的とし且つ生産活動の必要性と調和する形態において、日本国は法律で規定する方法および制限範囲内で労働者が企業管理および運営に協力する権利を認める。

 

第8条

 日本国は、企業がその種類及び規模に応じ、それぞれ国民経済の発達に寄与するように、調和ある発達を図らなければならない。また、国は、国民経済について、急激な変動を避け、長期的安定を目途として、その発達を図るものとし、かつ、すべての国民の福祉の増進を目的として、自由かつ公正な事業活動の基礎の上に、富の公正な分配が行なわれるように努めなければならない。

 

第9条

 日本国は、商業、工業、農業、漁業その他の産業における中小の企業が、国民経済の重要な基盤であることを認め、その自主的運営を確保するとともに、技術的改善の助長等により、その地位を安定するようにしなければならない。

 

 

第29章 栄典

 

第1条

 栄典は、国家公共に対し功労のある人を幅広く対象とする。

 

第2条

 勲章及び記章は、本人に限り終身これを着用することができ、その遺族は、これを保存することができる。

 

第3条

 外国の勲章等は、内閣総理大臣の認可を受けた者でなければ、日本国内で着用することができない。但し、外国人は、この限りでない。

 

第4条

 憲法に規定のない栄典に関する詳細は別の法律で定める。

 

 

第30章 雑則

 

第1条

 法律は、個別法において特定の事項について定める権限を除き、民法、刑法、民事訴訟法及び刑事訴訟法、商法、その他必要な事項に就いて定める。

 

第2条

 法律は、行政法の一般的な規則を定める。

 

第3条

 日本国憲法及びそれに基づく法令、条約の公布、文書、官記、爵記、位記、勲記の形式については法律で定める。

 

第4条

 通貨、度量衡の制度は国家の専決事項である。制度の詳細については法律で定める。

 

 

第31章 最高法規

 

第1条

 この憲法は、日本国の最高法規であり、日本国に居住する全ての民は憲法を遵守する義務を負う。

 

第2条

 天皇は即位に際し、この憲法に対する忠誠及びその職務の誠実な執行を宣誓し誓約する。誓約に関する手続は法律に定める。

 

第3条

 華族の当主は家督を継承するに際し、この憲法に対する忠誠を宣誓し誓約する。誓約に関する手続は法律に定める。

 

第4条

 内閣の構成員、国及び地方自治体議会の議員、枢密院の構成員、通常裁判所又は通常行政裁判所の構成員、国及び地方自治体その他すべての公務員がその職に就いたときは、就任に際して、憲法に対する忠誠及びその職務の誠実な執行を宣誓し誓約する。誓約に関する手続は法律に定める。

 

第5条

 この憲法は、国の最高法規であって、現行の法令はこの憲法に矛盾しない限り、法律、規則、命令又は何らの名称を用いているに関わらず、すべて遵守すべき効力を有する。日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

 

 

第32章 憲法改正に関する諸規定

 

第1条

 憲法は、両議会の何れかが選挙などにより機能を停止している間、これを審議し採決する事は出来ない。

 

第2条

 領土の一体性が侵害されているときは、いかなる改正手続も、着手され、あるいは継続されることはできない。

 

第3条

 この憲法に定められている手続きに依らずに、いかなる手段を持っても憲法の条規を変更する事は出来ない。変更された条規は効力を有しない。

 

第4条

 憲法改正の法案については、内閣の発議、衆議院の総議員の三分の二以上の議員の賛同又は参議院の総議員の三分の二以上の賛同により衆議院の憲法委員会並びに大委員会に提出できる。なお、無効票は反対を表明したものと看做す。

 

第5条

 憲法改正は、衆議院の憲法委員会並びに大委員会の審査及び決議を経た後に、衆議院本会議の可決と、衆議院の可決後六十日以内に参議院の憲法委員会並びに大委員会の審査及び決議を経た後に、参議院本会議により同じ文言で決議された法律により行われ、憲法改正の詔勅の発布後、国民投票に掛けられる。

 

第6条

 憲法改正に関する法律について衆議院は総議員の五分の四以上の出席の下で七分の六以上の賛同により決議する。衆議院において否決された法案は廃案となる。なお、無効票は反対を表明したものと看做す。

 

第7条

 憲法改正に関する法律について参議院は総議員の五分の四以上の出席の下で七分の六以上の賛同により決議する。参議院において否決された法案は廃案となる。なお、無効票は反対を表明したものと看做す。

 

第8条

 憲法改正に関する法律については参議院の議決後、天皇の認証の後に憲法改正の詔勅を発布し、選挙権を有する国民による投票を行う。

 

第9条

 憲法改正に関する法律が国民投票の結果、七分の六以上の賛成を得た場合、憲法改正に関する法律は承認されたとみなし、天皇は直ちに憲法が改正されたことを公布する。なお、無効票は反対を表明したものと看做す。

 

第10条

 憲法改正に関する法律が国民投票の結果否決された場合、民意と乖離した衆議院は即時解散し新たな議員の選出を行う。

 

第11条

 憲法改正に関する法律が国民投票の結果否決された場合、参議院は直近の改選にて選出された議員を除く議員を即時改選し新たな議員の選出を行う。なお、直近の改選に補欠選挙は含まない。

 

第12条

 内閣の発議による憲法改正に関する法律が国民投票の結果否決された場合、内閣は即時総辞職し、議会の新たな議員選出後に新たな内閣を発足させる。新たな内閣は憲法否決時の内閣総理大臣、大臣であってはならない。

 

第13条

 本章の規定により新たに選出された議員、内閣は憲法改正に関する法律について同一の内容で決議を行ってはならない。

  

 

第33章 経過規定

 

第1条

 皇室令と附属法令を廃し新たに国会と皇族会議が議決した皇室諸法を定める。皇室典範の改正を以て他の権利義務を実質的に制限、変更し、或いは憲法並びに憲法に基づき成立した法律の条規を文章の変更を行うことなく解釈により実質的に制限、変更することはできない。

 

第2条

 旧華族令の廃止と国会の議決した新たな華族法の施行に伴い既存の華族で新たな法律上の華族に該当しない家は華族の地位を失う。但し、憲法発効の際現に華族の地位にある者については、その地位はその生存中に限り一代名誉華族としてこれを認める。一代名誉華族は華族籍による参議院議員等の資格は有せず、当然、新たな華族法の対象にはならない。

 

第3条

 憲法が発効する以前に選出もしくは任命された公権力機関及びその構成に入る者の憲法上の任期は、憲法発効の日に効力のある規則に定められた期間の終了と共に終了する。

 

第4条

 憲法発効日の前に華族として選出された貴族院議員で法律で定められ、新たな憲法において華族籍にある年齢未満の貴族院議員は、選出された任期の終了まで参議院議員の地位を維持する。

 

第5条

 参議院議員の第一期の議員の半数に当たる者を3年で改選する。改選の方法は法律に定める。

 

第6条

 衆議院議員もしくは参議院議員の地位とその他の兼職の禁止が該当する職務の兼職は、憲法発効の日より一箇月後に議員の地位を喪失をもたらす。但し、衆議院議員もしくは参議院議員がその職務を従前に辞職もしくは離職すればこの限りではない。

 

第7条

 この憲法は、公布の日から六箇月後に発効する。

 

参考図書

・日本国憲法・法律色々

・大日本帝国憲法

・皇室典範

・大日本帝国憲法義解

・憲法改正(私案)布施辰治起案

・憲法草案要綱憲法研究会案

・自由党 憲法改正要綱

・進歩党 憲法改正要綱

・芬蘭土憲法

・瑞典統治法

・和蘭陀憲法

・独逸基本法

・自由民主党 日本国憲法改正草案

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ