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№ 73 ケレス、光雲の上で掛け替えのない友と約束を交わす

 アルトの口から告げられた真実を聴いたケレスは何も言えなくなってしまった。

 それはケレス以外の者もそうで、百合の光雲に揺られながら静かな時は流れた。

 だが、それに痺れを切らしたケレスは口を開き、友に物申すのだが……。

「すみません高杉殿。どうしても彼が姉上の事を聞きたがっていたもので……」

 冷静なアルトがフォローに入ると、ケレスの左口角の動きは止まった。

「お前の姉の事だと?」

 すると、高杉はアルトを睨んだが、

「はい。彼に教えましたよ。姉上が、龍宮家の当主の座を捨てた事を。そして、将軍の座も……」

と、頷いたアルトが言うと、

「えっ⁉ アルトさん、本当ですか⁉」

と、驚きのあまりミューは叫んだ。

(ミューが先に驚いてくれて助かったけど……、嘘だろ⁉)

 そして、ケレスも息をする事を忘れる程、驚いてしまったが、

「本当ですよ。あの事件の責任を取ってね。 そして、龍宮家を出た……。

 ですから今、水鏡の国では誰が将軍になるのかという下らない内線が続いてるんです」

と、それでもアルトは表情を崩す事なく話を続けたのである。

「内線って、アルトさんが龍宮家の当主になればいいんじゃないの? そうすれば……」

 そんなアルトに動揺の色を隠せないミューが聞くと、

「そういう簡単な問題じゃないんです。

 それに、僕はそんな下らないものになる気は さらさらありませんから」

と、ミューの言葉を遮る様に答えたアルトの瞳はとても冷たかった。

「そんな……。じゃあ、イブさんは何処にいるの?」

 そして、そのアルトの瞳にミューが表情を曇らせると、

アカマルトウですよ」

と、そのままの瞳の色のアルトの口からまさかの言葉を聴かされたのである。

アカマルトウって、あの島か⁉」

 すると、その言葉を聴いたケレスは思わず話に入ってしまった。

「そうだよ」

 そんなケレスは冷静でいるアルトにあっさり言われ。

「何でそんな所にいるんだ?」

と、聞いたケレスの眉が下がると、

「……贖罪のつもりだろうね」

と、暫しの沈黙の後、アルトは呟く様に言ったが、その瞳には悲しみの色が宿っており、

「贖罪……」

と、そのアルトの瞳の色に心が苦しくなったケレスが言葉を詰まらせると、

「そんな事をしても、意味がないのにね……」

と、その瞳を隠すかの様にアルトは瞳を閉じて言ったが寂しさは隠せなかった。

 そんなアルトの心の様な暗い中を百合は光の神殿へ向けどんどん登っていき、

誰も口を開かず、静寂の時が暫く流れていた。

 だが、

「……なあ、アルト。どうして俺に相談してくれなかったんだ?」

と、色んな気持ちに耐えきれなくなったケレスは思わず口を開いた。

「大した事じゃなかったからね」

 すると、瞳を閉じたままのアルトから冷めた様に言われ、

「大した事じゃない……だって⁉ 俺じゃ頼りないからそんな事を言うのか‼」

と、アルトのその態度にカチンときたケレスは怒鳴ったが、

「……君は、ジャップと同じ事を言うんだね」

と、ふっと笑って瞳を開けて言ったアルトから悲しい目を向けられたのである。

「兄貴とだって⁉」

 そして、そのアルトの瞳にケレスが驚きのあまり瞬きすると、

「つい最近、同じ事を言われたよ。そして……、同じ様に怒られた。

 だから、僕は君にも言えたんだ」

と、言ったアルトの顔は少しだけ和らいでおり、

そのアルトの顔を見てケレスも自身の顔が綻んだのがわかった。

 そう、それは少しだけかもしれないが、アルトが自分を頼ってくれたと感じれたからだ。

「なあ、アルト! ヨルムンガンドの奴をどうにかしたら、イヴさんの事もどうにかしようぜ!

 兄貴も絶対そう言うからさ!」

 それからケレスがアルトを見て笑うと、

「狡いかもしれないけど、僕は君がそう言ってくれる事を期待していたんだ。

 だからその時はケレス、協力してくれ!」

と、言ったアルトも笑い、

「ああ! いつもお前にばっか、いい格好させられないからな?」

と、ケレスが格好良く言うと、アルトは、ふっと笑って頷いた。

(アルトと俺の考えが正しければ、アマテラス様は姿を見せない……)

 だが、そんなケレスの心にはこの気持ちが笑顔と裏腹に、どんどん強くなっていったのである。

 そして、そんな不安な気持ちを抱えたケレスは光の神殿の門前に辿り着いた。

 すると、光の神殿の周りにあった水鏡の泉の水は全て無くなっており、

ロキが暴れたせいか地盤は滅茶苦茶に崩壊していたのだ。

「ロキが暴れたって聞いてたけど、光の神殿は無事みたいだな……」

 そして、百合から降りて光の神殿を見たケレスは思わずそう言った。

 そう、そんな中でも光の神殿だけは以前見たままの姿を保っていたのである。

「そうね。光の神殿は無事みたい。

 けど、油断出来ないわ!」

 それから百合から降りたミューが気合いを入れると、

「わん、わん、わん‼」

と、クリオネがある方向を見ながら何かを知らせる様に吠えたのである。

「クリオネ⁉ 何かいるの?」

 その泣き声にミューが身構えると、タッタカとクリオネは光の神殿とは逆の方へと走って行った。

 そして、ケレス達はそれに続いたが、クリオネはある所でまた吠えたのだ。

 そこは水鏡の泉があった場所で、ケレス達がそこから下を見ると、

「これって⁉」

と、思わずケレスは叫んでしまった。

 何故なら、そこに四本の長い髭を持つ数メートル程の巨大鯰が横たわっていたからである。

 そして、その鯰は腹を上に向け口を半開きにしたまま、全く動かなかったのだ。

「あれって、死んでる……よな?」

 その巨大鯰をおずおずとケレスが眺めていると、

「恐らくね。そして、彼がロキだろう……」

と、言ったアルトは一つ息を吐き、

「へっ⁉ あれが、ロキだって?」

と、目が丸くなったケレスがアルトを見ると、

「実際見た事はないけど、あんな巨大鯰の霊獣は彼しかいないだろうからね」

と、冷静に言ったアルトはケレスに目を転がした。

 そんなロキは死んでそう時間が経っていない様でその体はまだぬるぬるしていたが、

その白い腹は縦に裂けており、萎んでいた。

「あの穴って、何かに食い破られたみたいだ……」

 そんなロキの腹の裂け目を見たケレスがゴクット唾を飲むと、

「そうみたいだね」

と、言ったアルトの眉間にはしわが寄り、

「あんなデカい奴の腹を食い破る奴って、どんな奴だよ?」

と、言ったケレスの顔が引き攣ると、

「しかも、良く見ると、中から食い破られているみたいだ」

と、冷静なままのアルトから言われ、

「な、中からだって⁉ 一体、どうなってんだよ⁉」

と、言ったケレスは何度も瞬きしたが、

「さあね。今、そんな事を考えても仕方がないよ」

と、言ったアルトはまだ冷静なままだった。

「アルト、お前って奴は……」

  そして、そんなアルトを見ているケレスの眉間にしわが寄ると、

「おい、朱雀の犬。何か感じるか?」

と、気難しい顔をした高杉に言われ、

「キューーン……」

と、クリオネが鼻で鳴くと、

「今は何もないみたいです」

と、高杉を見たミューはクリオネの気持を伝え、

「何かいるはずだ。気を抜くなよ」

と、頷いた高杉が言うと、

「わん‼」

と、クリオネは返事をする様に力強く吠えた。

 そんなケレス達は光の神殿の中へと進み、世界樹がある中庭まで到達した。

 だが、

「グウウゥゥ……」

と、全身の毛を逆立てたクリオネが唸り声を上げたのである。

「クリオネ⁉ 何かいるのね‼」

 そして、ミューは身構え、

「皆、気を付けろ‼」

と、高杉に忠告され、ケレスも身構えたが、

クリオネの威嚇の先は世界樹だったのだ。

「世界樹が枯れている⁉」

 そしてその世界樹を見た花梨は叫んだ。

 そう、世界樹には輝きがなくなり、葉もほとんど散って枯れ葉が目立っていたのである。

「どうしてじゃ⁉ 世界樹が枯れるなど、有り得ぬ‼」

 その変わり果てた世界樹を見て叫んだ花梨の目には涙が浮かんだ。

 すると、

「我のせいだよ」

と、何処からともなくヨルムンガンドの声が聞こえ、

「ヨルムンガンド⁉ 何処にいる‼」

と、ケレスが怒鳴ると、

「ここだよ」

と、言って、世界樹の枝をスルスルと這ってヨルムンガンドがその姿を見せた。

「で、我に何か用かね?」

 そして、世界樹の下の方の枝に自身の体の半分を巻き付けてぶら下がり、

頭を下に向けたヨルムンガンドはケレス達を睨み、そう聞いてきたが、

(何だ、こいつ⁉ 宝珠の国で会った時より、ヤバい気がするぞ⁉)

と、そのヨルムンガンドの圧倒的な威圧感にケレスは息が詰まる思いとなり、身動きを封じられた。

「おやおや? 自ら我の所に来るとは⁉」

 そんなヨルムンガンドは嬉しそうに目を細め、くるんっと上半身を一回転半し、

「……それで、喜蝶は何処だい?」

と、自身の上半身を上げたヨルムンガンドは睨みながらケレスに聞いてきた。

 だが、答える訳がないケレスが黙っていると、

「あなたが、ヨルムンガンドね!」

と、言ったミューがケレスの前に立ち塞がった。

「お前は……」

 そして、そう言ってミューに目を転がしたヨルムンガンドは赤い舌をチロチロと上下に動かし、

「……ホムラの瞳の者か」

と、不服そうにヨルムンガンドが言うと、

「そうよ! あなたを燃やし尽くすホムラの瞳の持ち主、宝珠の国の時期女王 ミュー・ムステルよ‼」

と、叫んだミューの瞳は深紅に輝きだした。

「グワオーーン‼」

 それから吠えて体が大きくなったクリオネのタビーも金色に輝き出すと、

不思議な事にそのタビーから溢れ出した金色に輝く火の粉は優しくケレス達を取り囲んでいった。

(何かミュー達、頼もしいな!)

 その光輝く火の粉のヴェールの中でケレスの呼吸が少し楽になると、

「ふぅーーん……。いつ見ても、嫌な瞳だ……。

 それに、この忌々しい輝きもな……」

と、嫌悪感たっぷりなヨルムンガンドの静かな声が聞こえ、

「良かろう……。その瞳、滅ぼしてやる‼」

と、その声が憎悪に満ちた叫び声に変わると、

光のヴェールを突き破り侵入した黒い霧が一気にケレス達を取り囲んだのだ。

「この霧は危険だ‼」

 そして、その霧にケレスは叫んだが辺りは一気に闇の世界となり、

お草と花梨が次々と意識を失い倒れていった。

 いやぁ~、ケレス君も、言うようになったね!

 あんな格好良い事を言うんだもん。またまた、びっくりしちゃったぜぃ!

 って、そんな事を言っている場合じゃにゃい!

 お草ちゃんと花梨様があの暗闇の世界で倒れちゃったじゃないか⁉

 どぉーすんの? どぉーなんの?

 それがわかる次話のタイトルは、【ケレス、二者択一を迫られる】だ!

 どんな事を迫られるのだろうか……。

 お草ちゃん達の運命は如何に⁉

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