№ 71 ケレス、因縁を乗り越え、二人の明るい未来への道を切り開く為の一歩を踏み出す
お草との話を終えたケレスはミュー達の所へと戻った。
だが、花梨の顔はさらに思いつめたものとなっており、
花梨はケレス達から逃げる様に部屋を去ってしまった。
そんな花梨を見たミューはケレスに話し掛けた。
大切な友である花梨の気持について……。
「ねえ、ケレス……。どっちだと思う?」
「どっちって……。それ、どういう意味だ?」
ミューの問いにケレスは聞き返した。
それは、ミューの真意がわからなかったからである。
「花梨、お姉ちゃんが酷い目に合った事で悲しんでいるのか、
それとも、お姉ちゃんのせいで花梨が、いえ、世界が辛い目に合ってた事を許せないのか……」
すると、そう答えたミューは自身の服を握り締めた。
「ミュー……」
そして、答えに困っているケレスがミューを見つめていると、
「私達は、お姉ちゃんが災いじゃないって信じてる。
けど、昴の人はそうじゃない。全て、お姉ちゃんのせいだって思ってる」
と、言ったミューは眉を顰めたが、
「……ミュー。お前は、どっちだと思うんだ?」
と、暫く考えたケレスは聞いた。
「ケレス?」
そんなケレスにミューは、はっとしてケレスの目を真直ぐ見つめて来たので、
「俺は、答えは出てる。けど、お前の答えを聞いておきたい。
お前が花梨様をどう見ているのかをな」
と、言ったケレスも真直ぐミューの目を見つめると、
「……私、花梨は、お姉ちゃんの事で心を痛めてるんだと思う」
と、ミューはケレスから視線を外さずに答えた。
「俺も、花梨様は姉ちゃんが傷付いた事を気にしてると思う!
俺、あの時、花梨様が必死になってたのを見たんだ。
凄く姉ちゃんを助けたかった気持ちが伝わってきたよ」
それからそのミューの答えで穏やかな顔のケレスが気持ちを打ち明けると、
「だよね! 花梨は、いい娘だもの」
と、ミューもほっとした様な顔で言い、
「ミュー、信じようぜ! 全部上手くいって、花梨様と姉ちゃんが笑える世界をさ!」
と、ケレスが笑顔で言えると、
「うん、信じる! そんな世界が訪れる日を!」
と、言ったミューも笑顔になったが、
「……そろそろ、いいか?」
と、いつの間にか戻って来ていた不機嫌そうな顔の高杉から話し掛けられた。
「あっ、先生⁉ いたのか?」
そして、その高杉に返事をしたケレスの顔が鳩が豆鉄砲を食った様になると、
「はぁ……」
と、眉を顰めた高杉は大きな溜息をつき、右手で自身の顔を覆ったが、
「で、先生。何か用があるのか?」
と、そんな事はいつもの事だと思い、元の顔に戻ったケレスが聞くと、
「お前は相変わらず呑気だな……。まあ、聞け。
これから俺達は光の神殿に行くが、恐らくそこにはヨルムンガンドの奴もいるはずだ。
それも、本体がな」
と、右手をどけ、またはっきりと眉を顰めている事がわかる高杉は衝撃の事を話したのである。
「はっ⁉ ど、どうしてヨルムンガンドの本体がそこにいんだよ?」
その高杉の言葉でケレスの顔がまたあの鳩の顔になると、
「太古の昔、奴の本体はアマテラスの光のマナと水鏡によって封印されたんだ。
水鏡とは光の神殿の周りにある泉の事だが……。
ロキが暴れたとなれば、ヨルムンガンドを封じる水鏡の力は弱まったはずだ。
それに加えこの皆既日食でアマテラスの光のマナが弱まり、ヨルムンガンドは完全に復活した……。
そんなヨルムンガンドの奴はまずは力を取り戻す為、世界樹を喰らうだろう。
だから、奴の本体は光の神殿、それも世界樹にいるはずだ」
と、眉間のしわがくっきりと残ったままの高杉から説明され、
「ヨルムンガンドの本体って……。
じゃ、じゃあ、ケレスを襲ったヨルムンガンドの破片は」一体何なの?
と、その高杉に息を飲んだミューが聞くと、
「ヨルムンガンドの破片とは、簡単に言えば奴の分身だ。
だから、その破片の一つ一つに奴の意思が宿ってやがる。
そして、ヨルムンガンドの奴は破片であろうとマナを喰らうし、
面倒臭い事に滅びの呪いをかける事も出来やがるんだ。
まあ、そうなれば必然的に世界のマナは減り、世界は滅びに向かう。
世界が滅びに向かえば、奴の力は増す。
本来はそうやって世界のマナを不足状態にし復活するのが奴の目的だったのだろうが……」
と、高杉は、ひょうひょうと答えた。
「で、でも、世界が滅びに向かったら、ヨルムンガンドだってマナを喰えなくなるんじゃないのか?
それに、力が増すって、どういう事だよ?」
だが、話に付いて行けないあの鳩の顔のケレスがたて続けに聞くと、
「マナは、そう簡単になくなる訳ではない。奴は世界のマナを独り占めにでもしたいのだろう。
そして負の感情が混じれば、奴の力はさらに増強されるみたいだからな。
また大恐慌みたいな事にでもなれば、奴の望むところだろうぜ?」
と、高杉が小馬鹿にする様に答えたので、
「望む処だって……。何かそれを防ぐ方法とかないのかよ?」
と、聞いたケレスの口が開いたままになると、
「ない」
と、言った高杉はケレスを真直ぐ見つめ一度、瞬きした。
「そ、そんなぁ……」
そして、高杉の話で未来に絶望しか見えないケレスは言葉を失ったが、
「ヨルムンガンドを亡ぼすには、どうしたらいいのですか?」
と、聞いたミューはまだ明るい未来をしっかり見ており、
「残念だが奴が滅ぶ事は、ない」
と、険しい顔の高杉が答えると、
「どうしてですか⁉」
と、眉を顰めたミューは声を荒げた。
「奴の正体は、生きとし生けるもの全ての負の感情のマナの塊なんだ。
そういった感情が世界から完全になくなる事はないからな」
すると、それでも落ち着いている高杉はそう説明し、
「じゃあ、どうすればいいんだよ?」
と、眉が下がってしまったケレスが聞くと、
「気は進まんが、アマテラスの奴の力を借りるしかない。
奴の力でヨルムンガンドを弱らせ、再び水鏡の泉に封印するんだ」
と、高杉は溜息交じりに答えた。
「そう言えば、アマテラス様の力がヨルムンガンドの力を跳ね返すって言ってたな!」
それからそれを思い出したケレスの眉が戻ると、
「ああ、そうだ。アマテラスの力は、所謂正のマナだからな。
ヨルムンガンドの負のマナを抑えれる。
それに、アマテラスの奴もヨルムンガンドに世界のマナを取られてしまったら生きていけない。
だから嫌でも力を貸すだろう」
と、眉を顰めてはいたが高杉が言ったので、
「じゃあ、そっちは花梨様達に任せればいいんだ!
となれば俺は一七年前の事を時読みすればいいとして……。
先生、お告げって光の神殿の何処で行われたんだ?」
と、明るい表情になったケレスは聞いたが、
「……世界樹がある中庭だ」
と、悪戯な顔の高杉は答え、
「えっ⁉ と、という事は……、俺も世界樹がある所に行くって事になるんだ‼」
と、その高杉の顔と言葉で青褪めたケレスは絶叫した。
「そういう事になるな」
そんなケレスは高杉から悪戯な顔を向けられ続け、
「うぅ……。やっぱ、怖い……」
と、言いながら顔のパーツを中心に集めたケレスは自身の胃があるであろう部分を摩っていたが、
「てか、三春って人の記憶を覗いた方が早くないか⁉ ラタトスクなんだろ?」
と、思い付いたケレスの顔のパーツは元に戻った。
「残念だが、一七年前にお告げを聴いたのは三春ではない」
だが、真面目な顔に戻った高杉からそう言われてしまい、
「そうなんだ……。じゃあ、聴いた人って、誰なんだ?」
と、そんな高杉に鼻で大きく息を吐いたケレスが聞くと、
「知らん。だが、そいつは死んだらしい。お告げを知らしめた後にな」
と、高杉は平然と答えた。
「いっ⁉ どうして? おかしいだろ⁉」
すると、その新たに知った事実でケレスの顔はまたもやあの鳩の顔になったが、
「理由は知らん。そして、どうやって死んだのかもな」
と、言った高杉は眉を顰めるだけだったので、
「先生、そんなの変じゃないか!」
と、眉を吊り上げたケレスが大声でつっこむと、
「そうだな。あの時は考える余裕もなかったんだが、変だ……」
と、言って、鼻で大きく息を吐いた高杉からそのままの顔で睨まれた。
そんなケレス達二人の間に微妙な空気が流れてしまったが、
「じゃあ、全てを見るしかないね! ケレス、私達、協力するから!」
と、明るい表情のミューが言うと、
「わん、わん!」
と、それに続きクリオネも楽し気に吠えたのでその空気は消え、ケレスと高杉は頷いた。
(いよいよだ! 俺か先生が時読みをすれば、全てがわかる!
そして、花梨様がアマテラス様を呼び出して世界樹からマナを渡す事が出来れば、いいんだ‼)
それからケレスが理想の未来予想図をたてている内にレーヴァレイティン号は稲叢島に到着した。
ケレス君!
君達が描いた未来が早く訪れるといいね!
私も出来るだけ早くそんな未来を執筆したいな♪
おぉっ⁉ そんな未来を描いている者が君達以外にもまだいるみたいよ?
それが誰だかわかる次話のタイトルは、【ケレス、同じ志を持った青年と再会する】だ!
さぁ~て、その青年とは誰の事でしょう?




