№ 69 ケレス、新たな神の使徒と出会う
世界を守る為、ミューはこれから光の神殿へと赴く。
そんなミューは秘めたる思いをケレスに打ち明けてきた。
それに共感したケレスも光の神殿へと赴く事となったが、そこで新たな神の使徒と出会う……。
「だけど、俺、まだ記録石に記録なんて出来ないぞ?」
ミューの意志に応えたかったケレスだったがこのせいで応えられそうになかった。
なので眉を顰めたケレスが正直に言うと、
「高杉さんなら出来るわ! 高杉さんも光の神殿に行く……。
そして、ケレスか高杉さんがまずは時読みで一七年前の事を見て欲しいの。
それからどうにかしてこの記録石に記録すれば、
絶対に世界にお姉ちゃんが災いじゃないって証明出来るから!
今の光の神殿はとても危険な所だから、時読みが出来る人が一人でも多い方がいいと思って……」
と、真剣な眼差しのミューに言われ、
「なるほど! そういう事か!」
と、理解したケレスは晴れた顔で大きく頷いたが、
「私、本当は危険な所にケレスを行かせたくない。けど……」
と、言葉を詰まらせたミューは眉を顰め唇を噛みしめた。
「ミュー、何言ってんだ! お前も危険な所に行くんだろ? それに、今の状況なら何処でも危険さ!
心配するなって! 俺も絶対に行くからな!」
そんなミューの不安を振り払う様にケレスが笑いながらそう言うと、
「ケレス……。ありがとう!」
と、言ったミューは笑顔になり、
「そんな事は言いこなしだ! 絶対、作戦を成功させようぜ!」
と、言ったケレスはまた大きく頷いた。
それからケレスはミューと作戦を話し合った。
作戦と言っても、記録石に記録し、世界にラニーニャが災いではないという事を証明するまでは、
ラニーニャが生きているという事を隠しておくというだけのものだった。
だが、その中でケレスが新たに知った事もあったのである。
それは、これからミューは花梨と高杉、
それに、新たな神の使徒であるダーナの三人と光の神殿に向かうという事だった。
「うぅっ……、神の使徒⁉ 洲之のおばさんみたいなのが来たら、どうしよう……」
なのでミューの話を聴いていたケレスの頭に洲之の不敵に笑う顔が思い出されてしまったのである。
そんなケレスはつい嫌な顔をしてしまったが、
「ケレス! そんな事、言ってる場合じゃないでしょ?」
と、言ったミューから呆れた顔をされ、
「ははっ、そうだな……」
と、言ったケレスが苦笑いすると、
「お兄様は、フィードと朱雀達とで宝珠の国を守るから、
実質、ヨルムンガンドに対抗出来るのって、クリオネと高杉さんだけになる。
私も協力して絶対にケレスを守るから、ケレスもがんばってほしい!」
と、真剣な眼差しのミューは話を続け、
「そっか……。みんな がんばってんだもんな。俺達もがんばろうぜ!」
と、笑ってケレスが言うと、ミューは頷いた。
それからミューのおしにより半ば強引にケレスもミュー達に同行する事が出来た。
そして今回、光の神殿までは宝珠の国の飛行船で稲叢島まで行き、神の使徒の力を借りて行くので、
ケレスは宝珠の国の飛行船である、レーヴァレイティン号に乗り込む事となった。
ちなみにケレスはこのレーヴァレイティン号に一度乗った事がある。
それは一年以上前のあの時の事だ。
そして、このレーヴァレイティン号はミューによると、フィードの炎のマナの加護を享けており、
悪しきものを払う力がある。
なので目的地までは無事な飛行が出来るらしい。
(今度の神の使徒って、どんな人なんだろう? と言うか、神の使徒って、ダーナだったのか?
じゃあ、洲之のおばさんもダーナだったんだ)……⁉
そのレーヴァレイティン号の中でケレスがあれやこれやと考えていると、
意外な神の使徒が高杉と花梨と現れたのだ。
そして、その姿を見て、ケレスは思わず叫んでしまった。
「えっ⁉ 神の使徒って、お草ちゃんなのか⁉」
そう、高杉達と現れたのは、あの お草だったのだ。
久しぶりに見た お草の黒髪は肩までの長さになっており、少し身長も伸びている気がした。
だが、その幼顔はあまり変わっていなかった様に見えた。
そして、着物は以前見た様な色に、恐らくハマルの光る羊毛を使った兎の刺繍が施されていた。
「そうだよ、ケレスさん! お久しぶりです!」
そんな お草は元気良く返事をしたが、
「あの、ケレスさん……」
と、急に悲しそうな顔をし、何か言いた気にケレスを見つめてきたのである。
「ん? 何か俺に言いたいのか?」
そんな お草にケレスが優しく聞くと、
「ケレスさん。少し、二人だけでお話したいのですが……」
と、ケレスの目を真直ぐ見つめた お草は小さな声で答え、
「えっ、でも……」
と、その突然の お草の申し入れにケレスは戸惑っていたが、
「構わぬ……」
と、静かな花梨の声が聞えた。
そんな花梨は一年以上見ていないせいか身長が伸びただけでなく、見た目が大人っぽくなっていた。
そして、
(花梨様、以前見た時に比べて、何か暗い気がする……)
とも、ケレスは思った。
そう、あんなに明るく無邪気だった花梨の面影はどこにもなかったのである。
「わかった……」
そんな花梨が気にはなったがケレスはお草と二人だけで話す事となった。
それからある部屋で、お草とケレスの二人は向かい合ったが、
お草はケレスの顔を真面に見れず、何も言えずにいた。
「で、話って言うのは、何だい?」
そんな お草にしゃがんで目線を合わせたケレスが優しく話し掛けると、
「……ごめんなさい」
と、言った お草は頭を下げたのだ。
「ど、どうしたんだよ?」
そんな お草に慌てたケレスが聞くと、
「あの時、あなたのお姉さんを助けれなかった……。
あんなに、あなた達が頼んでいたのに、私、何も出来なかった……。
後で聞いたの……。あなた達の大切なお姉さんは、死んじゃったって……。
昴の人達は、みんな喜んでた。でも、私、凄く悲しかったんだ……」
と、申し訳なさ気に答えた お草は泣き出してしまった。
「お草ちゃん……」
そんな お草を見たケレスは何も言葉を掛けれなかった。
あの時の事で、まさかこんな小さな子が心を痛めているとは思いもせず、
胸がきゅっと締め付けられ苦しくなってしまったのだ。
だが、そのケレスの前で お草は泣きながら話を続けたのである。
「私ね、花梨様より後に生まれたから大恐慌の怖さなんて知らないの。
だから、みんなが言っている意味がわからないんだ……。
だけど、困っている人を見捨てていい訳ないよ‼
だって、ダーナの祈りの力は困っている人達の為にあるって教わってたのに……。それなのに……」
お草は自分なりの言葉で、一生懸命ケレスに気持ちを伝えてきた。
その お草の心に、ケレスは心を打たれた。
そして、
「お草ちゃん……」
と、ケレスはラニーニャの事を言おうとしたが、やめた。
(危なっ! ミュー達との約束だった!)
そう、それは高杉を含めた三人の約束だったからである。
それを思い出したケレスは慌てて両手で自身の口を塞いだ。
(お草ちゃんみたいな子を疑いたくはないけど……。昴の人達に余計な事はされたくない!
でも、何か心苦しいなぁ……)
そう思ったケレスは一呼吸し、
「気にしないで」
と、表情を変えずに言うと、
「メエエぇ?」
と、泣いた一体のハマルがケレスを見つめてきたのである。
「お前は?」
そのハマルをケレスが見つめると、
「百合ちゃん。私の霊獣だよ」
と、泣き顔のままの お草に教えられ、
「ユリか……」
と、言って、ケレスは百合をまじまじと見た。
その百合は杏と同じ様な姿をしていたが顔は大分優しい顔をしており、
ケレスを見つめ もじもじしていた。
「今回は、お前が光渡雲になって光の神殿に連れて行ってくれるのか?」
そんな百合にケレスが優しく聞くと、
「メエェェヘェ……」
と、百合は恥ずかしそうに鳴き、
「任せて! 百合ちゃんと私でお連れするから!」
と、鳴くのを堪えているお草が言ったので、
「頼んだよ」
と、優しく言ったケレスが微笑むと、、お草の顔は、ぱっと晴れ、笑った。
(こうやって笑うと、お草ちゃんは普通の子供みたいだな……)
そんなお草を見つめたケレスの心は温かくなり、
「でも、びっくりしたよ。お草ちゃんが、神の使徒だったなんて」
と、ケレスが話を振ると、
「へへっ。私も驚いてるんだ。
先代の洲之さんが死んじゃって、ラタトスクの方にいきなり言われちゃってさ……」
と、言ったお草の頬は少し赤くなり、
「ラタトスクの方? それって、アマテラス様の御意思を伝える人の事か?」
と、ケレスが聞くと、
「そうだよ! ケレスさん、良く知ってるね」
と、答えた お草は目を輝かせた。
「ま、まあね……。
でも、ラタトスクの方って、どうやってお告げを伝えるんだ?」
そんな お草の目にケレスが照れると、
「うーんとね……。私が生まれてから、お告げ自体が今回で初めてだったんだ。
だから聞いた話になるんだけど……」
と、言った お草はラタトスクによるお告げに付いて話し始めた。
ケレス君♪ 新たな神の使徒が お草ちゃんみたいな可愛い子で良かったね!
でも、そんな お草ちゃんはケレス君なんかにこんなに話しちゃっていいのかな?
あのケレス君だよ?
デリカシー0のケレス君だよ?
大丈夫かな……。メッチャ心配!
大丈夫かそうでないかがわかる次話のタイトルは、
【ケレス、新たな神の使徒と心を交わし、約束する】だ!
きっと大丈夫だと私は信じたい!




