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№ 64 ケレス、世界を滅亡に導くものと遭遇する

 突然の来訪者を追い払ったのはあの信頼のおける者だった。

 だが、その後、ケレス達以外、誰もいないはずの部屋で不気味に聞こえた声。

 その声の持ち主はまさかの存在だった……。

「……さい」

 俯いたケレスの口からこんな小さな声が漏れた。

「うぅん? 聞こえねぇなぁ?」

 すると、そう言った田爪はケレスを馬鹿にする様な顔で右耳をケレスの方に向けたが、

「煩いって言ったんだ‼ 下らない事を言うんなら、さっさと帰れ‼」

と、顔を上げたケレスが怒鳴ると、

「おいおい? そんなに怒んなよ。俺は本当の事を教えてやったんだぜ?」

と、また馬鹿の様に笑って言った田爪はケレスの左肩を、バンバンと叩いたのである。

「帰れって言ってんだろ‼」

 そして、その手を払い除けたケレスがさらに怒鳴ると、田爪は壁をドンッ!と強く叩き、

その音にケレスは一瞬怯んだ。

「口の利き方が悪いシスコン野郎‼ いい加減に認めろよ‼

 あれが死んでこの世界はこんなに幸せに溢れてんだ! それが答えなんだよ‼

 お前だってそうだろ? あれがいなくなって、良い事あったろ?

 幸せだっただろうが‼ だから、その制服着れてんだろうが‼」

 それからそう怒鳴った田爪はドンッ!とケレスをその壁に押し当て、身動きを封じ、

「……いつまでも、こんなきったねぇ所があるから、いけねぇんだよな?

 俺が、目を覚まさせてやんよ……」

と、ケレスに顔を近づけて囁く様に言った田爪はケレスの腹を一発殴ったのだ。

 その時、一瞬ケレスの意識が飛ぶ衝撃があり、その衝撃でケレスは息が出来ない程苦しんだが、

ガシャーーンッ!と、その苦しみを忘れさせる音が部屋中に響いたのである。

 そして、息もせずにケレスがその音の方を見るとラニーニャの仕事机が無残な形となっており、

その傍では田爪が嬉しそうに笑っていた。

 さらに有ろう事か、田爪は残ったラニーニャの仕事机の残骸を何度も踏みつけたのだ。

 すると、その光景が目に入ったケレスの怒りは頂点に達した。

 そんなケレスは何も考えず暴言を吐いて田爪に襲いかかったが、

「非力だな……。それで、何が出来るんだぁ?」

と、言った田爪から右手一本で停められ、揚げ句の果てにケレスは突き飛ばされてしまった。

「……そこで大人しくしてな。俺が、お前のシスコン根性を治してやんよ!」

 そして、田爪から笑いながらそう言われたが、

「やめろって言ってんだ‼」

と、体の色んな所が痛く動ける状態ではないケレスが立ち上がり田爪に立ち向かおうとすると、

ケレスの右肩に誰かの優しい手が触れたのである。

「えっ?」

 その優しさで怒りが少し静まったケレスが振り返ると、

「ぐげぇ‼」

と、田爪の無様な叫び声が聞こえ、

「えっ⁉」

と、ケレスがまた振り返って田爪を見ると、

いつの間にかいた高杉が田爪の顎を右手で握り絞めていたのだ。

「……死にたいのか?

 俺は、あいつと違うんだがな?」

 そして、そう静かな怒りの籠った声で言った高杉の顔は背筋も凍る様な顔をしていたのである。

「先生⁉」

 その高杉にケレスは声を掛けたが、表情を一切崩さない高杉はさらに右手に力を入れ、

その手からミシミシと鈍い音が響く中、田爪の顔がゆっくりと歪んでいくのが見えた。

「ひゃ……みぇてぇ……」

 それからそう言葉を漏らした田爪の目からボロボロと涙が零れ落ちると、

「二度と来るな」

と、言って、鼻で溜息をついた高杉は田爪を放した。

 すると、田爪は一目散に逃げて行ったのである。

「大丈夫か?」

 そして、穏やかな顔になった高杉から優しく聞かれ、

「はい、先生……」

と、ほっとして気が抜けたケレスが返事をすると、

「はぁ……。こんな事に力を使うなんて、力の民も終わりだな……」

と、壊れた机を見て言った高杉は眉を顰め片付けを初め様とした。

「……何してんだ? 手伝え。俺は片付けが苦手なんだ!」

 だが、高杉は口を尖らしてそう言うとその手は止まり、ケレスを、じっと見つめてきたのである。

 そんな高杉と視線が合ったケレスはラニーニャの死を伝えようと思った。

 それは、何となく今のタイミングを逃したら言えなくなりそうだったからだった。

「先生……」

 だが、そう思ったケレスがそれを伝え様とすると、辺りが一気に暗くなったのだ。

「な、何だ⁉」

 その辺りの急変に驚きのあまり叫んだケレスが辺りを見渡すと、

「皆既日食の第二接触に入ったんだ。今回、皆既継続時間が長いらしいぞ」

と、冷静でいる高杉から教えられ、

「それって、どのくらいの時間あるんだ?」

と、落ち着きを取り戻したケレスが聞くと、

「六分以上あるみたいだ」

と、高杉は答えたので、

「六分か……」

と、高杉のその言葉でケレスは呟き、

(それが終わったら、話そう……)

と、タイミングを逃したケレスは心に決め、片付けを始めた。

 そんなケレスは無言で壊れた机を運び、散らばった破片をほうきで掃いていたが、

「やれやれ……。何処だい、喜蝶?」

という、気味の悪い男の声が聞こえてきたのである。

「「だ、誰だ⁉」

 そして、思わず叫んだケレスは辺りを見渡したが、その声の主の姿は何処にも見当たらなかった。

 それでもケレス達以外、誰もいないはずの部屋には異様な雰囲気が漂っていたのである。

 その雰囲気にケレスが身構えると、

「ここだよ」

という声がケレスの足元から聞こえた。

 そして、その声の主を見たケレスは言葉を失った。

 何故なら、その声の主は長さが五十センチメートル程、

太さはケレスの腕くらいの真っ黒い蛇だったからである。

 その蛇は禍々しい気配を纏い、ケレスから数メートル離れた処で蜷局を巻いていたのだ。

 そして、その蛇から鋭い赤紫色の瞳で睨まれると、ケレスは動けなくなった。

(この感じ……。祟り神に会った時と同じだ⁉)

 心臓を握られている感覚のケレスは何とか息だけは出来ていたが、

「ふぅーん……。匂いがするんだけど、喜蝶の姿、見えないな。

 喜蝶、何処に隠れてるんだい?」

と、真っ赤な舌をチロリと出して言ったその蛇は目だけでキョロキョロと辺りを見渡した後、

「……ねえ。お前、知ってるんだろ?」

と、その蛇はケレスに視点を合わせ言った。

 すると、その蛇に睨まれたケレスは何も言えなかった。

 いや、恐怖を超えた感覚で、ケレスは息すら出来ず、いつの間にか座り込んでいたのだ。

 だが、その蛇はケレスを睨んだまま、ズズー、ズルと音を鳴らし、

徐に這ってケレスに近づいて来たのである。

(く、来るな‼ 頼むからこれ以上、近づくな‼)

 その蛇の圧倒的な威圧感に冷や汗を掻いたケレスはそう願うしか出来なかったが、

「お前、何者だ」

と、高杉がケレスの前に立ち塞がったのだ。

「あれぇ? 何で、お前、動けるんだい?」

 すると、その蛇は、パチパチと不思議そうに瞬きしたが、

「……ああ、そうか。お前、あの忌々しい羊の力を享けてるんだね」

と、言いながらその蛇は高杉を鋭く睨みつけ、

「だったら何だ?」

と、言った高杉が睨み返すと、

「面倒くさいな……。破片じゃなければ、今ここでお前を殺せるんだけど。

 まあ、今回はこの辺でお暇するよ。でも、いずれ我の本体として会おう……。

 その時は、喜蝶を渡してもらうね。勿論、お前は一番に殺してやるから……」

と、平然としているその蛇は言い残し、黒い霧になって消えた。

 そして、黒い蛇が消えると、ケレスの息苦しさは無くなったのである。

「せ、先生⁉ あいつ何者なんだ?」

 それから何とかケレスは声を出したが、険しい顔の高杉は黙っており、

「先生?」

と、ケレスが首を傾げると、

「……大変な事になったかもしれん」

と、大きな溜息の後、高杉は言ったので、

「大変な事?」

と、立ち上がったケレスが言うと、

「このままでは、世界に光は戻らん」

と、眉を顰めた高杉の口から耳を疑う様な言葉が漏れたのだ。

ねっ! ケレス君、大変だったでしょ?

 そう、あいつが蘇っちゃったのさ!

 あわわ……。ど、どうしたらいいのかね?

 ぅうん? ケレス君はそんな事を考えている余裕はないみたいね?

 だってぇ、あいつがさぁ……。

 まっ、どうにかなるっしょ?

 そんなあいつの事を少しだけ知る事が出来る次話のタイトルは、

【ケレス、世界を滅亡へ導くものの名と存在を知る】だ!

 出来るだけあいつを可愛らしく描いております!


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