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№ 62 ケレス、すれ違った思いの果てに蘇った地を包む思いを感じる

 瞳を閉じたホンは静かに話し始めた。

 それは、ホン炎月イェンへの思い。

 届かなかった思いだった。

 その話を聴き終えたケレスはホンからある指輪を渡されるのだが……。

 ケレス達が見つめる重い空気の中、瞳を閉じたホンは静かに炎月イェンユエとの話を始めた。

「私は幼少期より、炎月イェンユエ様の許嫁でした。

 そして、つい最近、公の場で私達の婚約発表が行われました。

 ですがその後、婚約は炎月イェンユエ様によって破棄されたのです……」

 ここまで話したホンだったが瞳を開け、バックから小さな青色の箱を取り出した。

 そして、ホンがその箱をそっと開けると、中には小さな指輪が入っていたのである。

 その指輪は銀色のリングにクリーム色の宝石をいくつもの花の様に鏤めているデザインで、

ケレスはその指輪に見覚えがあった。

 そう、その指輪はラニーニャの蝶を装飾した指輪の下にはめられていた指輪だったのだ。

 そして、ケレスがぼんやりとその指輪のいくつかある花の装飾が奏でる光を眺めていると、

ホンはその指輪を左掌にのせ、悲しい目をして見つめた。

「これは、どんなに私が望んでも炎月イェンユエ様からいただけなかった指輪です」

 すると、そう言ったホンは悲しい目のまま眉を下げたので、

「いただけなかった? その指輪は一体何なんですか?」

と、はっとして目線をホンに移したケレスが聞くと、

「この指輪は、炎月イェンユエ様のお母様の南河三ナンファェサン様の形見で、

炎月イェンユエ様は南河三ナンファェサン様から一番大切な人に渡す様に言われていたのです」

と、ホンは寂しそうに答え、

「あの人のお母さんの形見だって⁉」

と、ケレスが大声を出すと、

南河三ナンファェサン様は、大いなる災いのせいでお亡くなりになりました。

 とても病弱な方でして、すぐに滅びの呪いが体中に拡がりそのまま……」

と、頷いて話したホンの頬をすっと涙が流れ落ちた。

ホンさん……」

 その涙を見たケレスが言葉に詰まると、

「そして、大いなる災いは、天狼ティェンラン様の命と引き換えに消滅しました。

 それから氷月ビンユエ様は剣の国の皇帝に君臨され、許嫁同士である私達はそれを支える事となったのです」

と、涙を拭ったホンは話してくれたが、

「ティェンラン様?」

と、その名を知らないケレスは首を傾げた。

 すると、

「ケレス! 剣の国の前皇帝様の名前だよ‼ もうっ!」

と、眉を顰めたミューに教えられ、

「はははっ……」

と、ケレスは苦笑いしてしまった。

「……正式に私達の婚約が発表された時、本当に嬉しかった。

 私は幼少期から、ずっと炎月イェンユエ様が好きでしたもの。

 ですが、炎月イェンユエ様は、そうではなかったのです。

 私の知らない、心に決めた人がずっといらしたみたいで、私は一度も見てもらえていなかった……。

 でも、この婚約発表でやっと、炎月イェンユエ様が私を見てくれる。そう思ったのですが……。

 だけど、それも叶わなかった。

 国の流れでそうなっただけで、炎月イェンユエ様はずっと私ではなく、あなた様方のお姉様を見ていたのです」

 そんなホンはふふっと笑い、ここまで話したが、

炎月イェンユエ様が本当に好き……いえ、愛していた方を我が国の為に利用するとは思えません」

と、ホンはケレス達を真直ぐ見つめ、続けたのである。

 すると、そのホンの瞳から見つめられたケレス達はホンの話に嘘、偽りがない事を悟った。

ホンさん……」

 それから暫く静かな時間が過ぎたがミューが口を開くと、

「それにしても、狡いですわ。あなた様方のお姉様は……」

と、呟く様に言ったホンは深い溜息を漏らし、

「狡い?」

と、ミューが首を傾げると、

「私と勝負すらしないまま、消えてしまわれたのですから……。

 しかも、あの方の心を持って行ったままですよ? もっと生きて、私と勝負してほしかった……。

 でも、私では勝てなかったでしょうけどねぇ……」

と、言ったホンは胸が苦しくなる様な悲しい笑顔をケレス達に向け、

「……ケレス様、ミュー様。どうかこの指輪をもらっていただけませんか?

 これは、あの方のものですので……」

と、それからその笑顔のホンからケレス達は南河三ナンファェサンの形見の指輪を差し出された。

(姉ちゃん……。炎月イェンユエさんは、姉ちゃんが好きだったんだ。

 今更 遅いかもしれないけど、そうだったんだ……)

 ホンとの話で心が苦しくなり俯いて、空の上にいるラニーニャに語り掛けたケレスは、

その指輪を無言で受け取った。

 すると、

「そろそろ着きますわ」

と、ホンが言うと、ケレス達を乗せた飛行機はヘルヘイムに着陸した。

 そして、ケレス達がヘルヘイムの地に降り立つと、そこは、一面の銀世界だった。

 その銀世界では薄日を纏った粉雪が積もった雪の上を軽やかに舞い、

生き生きと舞う粉雪はとても幻想的で、まるでケレス達を出迎えてくれている様だった。

「何だろう……。この感じ、何か懐かしい気がする……」

 すると、その美しい世界を見たミューの頬を温かいものが伝っており、

「えっ⁉ な、何で、涙が出るの?」

と、驚いたミューが涙を拭うと、

「何でだろうな……」

と、言ったケレスの頬も心の中からじんわりと溢れ出した涙が伝っていたのである。

 そう、ここはケレス達が会いたかった人物の優しさで溢れていたのだ。

 そんな懐かしさと胸の苦しさが入り混じる世界をケレス達が暫く無言で眺めていると、

「わん、わん!」

と、クリオネがある方を見て吠えたので、

「クリオネ、どうしたの?」

と、言って、ミューがその方を見ると、そこには立派に聳え立つ建物の様な物が見えた。

「あれは?」

 それからその建物を見つめたミューが首を傾げると、

「あれは、サダクビア城ですわ。

 以前、氷月ビンユエ様達が住まわれていた所です」

と、ホンから教えられた。

 そんなサダクビア城は離れた所にある様だが、

白い霧に覆われており、微かにその姿が見えるだけだった。

 だが、そのサダクビア城の方からケレス達の方へ白い霧が急に流れ込み、

何故かその白い霧はケレス達に襲いかかってくる様にケレス達の周りを一気に包み込んだのだ。

 そして、ケレス達の周りは一瞬で白い霧の世界へと変わったのである。

「キューーん……」

 その白い霧の世界の中でクリオネが寂しそうに鳴くと、サダクビア城の姿は見えなくなっており、

「霧が凄いですね……」

と、その霧に不安を抱えたミューが言うと、

「ええ。サダクビア城付近を流れるアルバリ川から出る毛嵐です。

 ですが、こんなに出るのは久しぶりですわ」

と、ホンは不思議そうに言ったが白い霧の中からぼんやりとオレンジ色の光が浮かび上がったのである。

「ぃいっ⁉ な、何だ、あの光ぃ⁉」

 すると、その光にケレスは腰を抜かしそうになったが、ピコリン♪と聞き覚えのある音が聞え、

「えっ? この音って、p?の音?」

と、何とか腰を抜かさずに踏ん張ったケレスが言うと、一体の浮遊しているp?が近づいて来た。

 さらにそのp?が、ピコリン♪と音を数回鳴らすと、

「……そこにいるのは、誰だ」

と、霧の中から氷月ビンユエの不機嫌そうな声が聞こえ、それからその声同様の顔をした氷月ビンユエが現れたのだ。

 だが、その氷月ビンユエは霧が掛って見えにくいが、髪と眉毛の色は白色になっていたのである。

氷月ビンユエ様⁉」

 その氷月ビンユエの登場にホンが驚くと、

ホン。何だ、そいつ等は」

と、眉を顰めた氷月ビンユエは徐に口を開き、

「この方々は、あの御方の……」

と、狼狽えたホンは何か言いかけたが、

「そんな事は聞いていない……。何故、ここにいるのかを聞いているのだ!」

と、語気を強めて言った氷月ビンユエから鋭い眼光を向けられると、

「あっ、はい! あの御方の、お墓参りをしにいらしたのです!」

と、姿勢を正したホンは答えたが、

「墓参り……だと? 今更か……?」

と、言った氷月ビンユエは顔を歪め、くくっと笑ったのだ。

 だが、そんな氷月ビンユエは暫くそうやって笑い続けたのである。

 それは、まるでケレス達を馬鹿にするかの様に……。

 そして、その笑い声は静かなこの場に暫く響き渡ったのである。

 ケレス君!

 まずは言いたい事がある!

 その、南河三の事なのだが、ちゃんとした発音だと「ナンフェ゛ァサン」となるらしいのだよ。

 でも、読めないので「ナンフェァサン」とした! 許してほしい!

 とまあ、これは仕方がないとしてだね……。

 次の話からは一気にアクションが増えるのだよ!

 なので君の絶叫シーンが増えると思うが、悪しからず!

 で、次話のタイトルは、「【ケレス、皆既日食を祝う】だ!

 またまた久しぶりのキャラ達の登場があるよん♪


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