№ 57 ケレス、成功の先で泊まっていた絆の時計の針は動き出す
多くの人の助けにより、この日を迎えたケレス。
だが、ここからがケレスの夢を叶える第一歩なのだ。
そして、まだまだ先が長い道の途中にいるケレスに大切な絆の時計の針を動かす出会いが訪れる……。
「さあ、ミュー様?」
そう言ったニックは左にズレた。
すると、そこには下を向いたミューがいたのである。
そのミューは少し髪が伸び、背も伸びている様で化粧も相まって大人っぽくなっていた。
さらに服もモスグリーンをベースとした膝上までのドレスで、
宝珠の国らしく所々紅色のラインが入り、大人っぽさを増幅している様だった。
「ミュー⁉」
そんな思いがけないミューとの再会にケレスの口がぽかんと開くと、
「あ、あの……」
と、だけ言ったミューは下を向いたまま、もじもじして喋らなかった。
一年以上、ケレスはミューとは顔を合わせてなかった。
そのせいか、互いに羞恥心が芽生え、二人共何も喋れず、微妙な空気が流れてしまったのだ。
だが、コホン!と何かの音がその空気を壊した。
「ミュー様。門限はお守りくださいね?」
それは、ニックの咳払いの音だった。
そんなニックはそう言い残し、この場を去ってしまったのでケレス達二人きりになってしまった。
そして、表情が硬い二人は話せずにいたが、
「ぅわん!」
と、鳴いたクリオネがケレスに飛び掛かり、じゃれてきたのである。
「クリオネ、くすぐったいって!」
すると、緊張が解れたケレスは笑ってしまい、
「こ、こらっ、クリオネ! やめなさい!」
と、眉が下がったミューが言うと、じゃれるのをやめたクリオネはキューンと鳴いてケレスを見つめ、
それからミューを見つめ、尻尾を速く左右に振ったのだ。
「どうしたの? クリオネ?」
そんなクリオネにミューは不思議そうな顔をしたがクリオネは何かを訴える様にミューを見つめ、
「俺達が変な事を気にしてんだよな。クリオネ?」
と、一つ息を吐いたケレスがクリオネの気持を言うと、
「わん、わん、わん!」
と、クリオネが嬉しそうに何度も鳴いたので、
「クリオネったら……」
と、言ったミューの表情は少しだけ穏やかになり、クリオネの頭を撫でた。
「ミュー……。久しぶりだな」
そんなミューを見ていると、先程まで言葉が出なかったケレスは普通に喋れる様になっていた。
「ケレス……。久しぶり」
そして、少し頬を赤くしたミューも同じ様になっており、
「俺、合格したんだ! 昨日 発表があって、兄貴と見に行ったんだ!」
と、言いながらケレスは自身の制服姿をミューに見せたが、
「うん。知ってた……」
と、声をふるわせながらミューが言ったので、
「えっ⁉ 知ってたのか?」
と、言ったケレスは何か背中に、ズンッと重しがのってきた気になったが、
「うん。ずっと気にしてたの……。
でも、私が近くにいたら、色々と迷惑が掛ると思ったから」
と、目を潤ませたミューからずっと抱いていた心情を告白されたのである。
「迷惑?」
そんなミューの言葉にケレスが首を傾げると、
「その……。私がいたら、ケレスの合格を変に疑う人も出てくるって思って……。
それに、邪魔したくなかったっていうのもあって……」
と、恐る恐る言ったミューは俯いてしまい、
「そうだったのか……。お前に気を使わせてたんだな、悪かった……」
と、言ったケレスが軽く頭を下げると、
「ううん。気にしてない」
と、顔を上げたミューは笑って言ってくれた。
「ケレス、改めて言わせて。合格、おめでとう!」
それからそんなミューは微笑みながらケレスにずっと言いたかった事を伝え、
「ありがとう。ミュー!」
と、言って、その言葉を受け取ったケレスも微笑むと
止まっていた二人の絆の時が少しずつ動き出したのだ。
すると、
「ねえ、ケレス。私、まだ時間あるの。ケレスの仕事場を見てもいい?」
と、いきなりミューから聞かれたが、
「ああ。勿論、いいさ!」
と、答えたケレスはミューに仕事場を見せる事となった。
「へえ……。綺麗にしてる。ケレス、大変でしょ?」
それからケレスの仕事場を興味津々に見渡しているミューに、
「もう、慣れたさ。少しでも目を離すと、あの時みたいになるけど……」
と、苦笑いしながらケレスが言うと、
「ふふっ、そうだった! あの時、泥棒にでも入られたのかと思ったね!」
と、笑顔で言ったミューだったが、
「お姉ちゃん……」
と、ぽつりと呟く様に言ったミューは目を潤ませたのである。
「ミュー……」
そんなミューに言葉が漏れたケレスは胸が締め付けられる思いになったが、
「ミュー、見てみろよ! 姉ちゃんがいつでも帰って来れる様に部屋は綺麗に掃除してんだ!」
と、それを振り払う様に大きな声を出してケレスがラニーニャの仕事部屋を見せると、
「ケレス……。ちょっと、中に入ってもいいかな?」
と、聞いたミューは泣くのを堪えており、
「少しぐらいなら、いいんじゃないかな?」
と、答えたケレスはミューとラニーニャの部屋へと入った。
「……あの時と、変わってないね」
それからラニーニャの部屋に入りあのソファーに座ったミューは
そのソファーを優しく すぅーっと撫で寂しく呟いたが、
「そうさ! そういう風にしてるからな!」
と、その寂しさを吹き飛ばす様にケレスが言うと、
「そっか……。そうだよね!」
と、言ったミューは零してしまった涙をその手で拭った。
「ケレス、ごめんね」
すると、まだ涙が残っている大きな瞳のミューからケレスは真直ぐ見つめられた。
「いきなりどうしたんだ⁉」
そのミューの瞳にケレスは驚きのあまり何度も瞬きしたが、
「私、お姉ちゃんに嫉妬してたの。何もかも持っている、お姉ちゃんが羨ましかった……。
あの時、私はケレス達から離れなきゃいけないって思ってた。
でも、お姉ちゃんは、ずっとケレス達といれるって考えてた。だから……」
と、あの時の苦しい心情を告白したミューはぽろぽろと涙を流したのである。
「お、おい、ミュー⁉ 泣くなよ!」
そして、その涙に慌てたケレスがそう言うと、
「あんな事をして、許される訳ないってわかってる……。
それでも私、お姉ちゃんを取り戻したい……。
謝りたい! だから、努力してる!
お父様、お兄様に頼んで、剣の国と交渉を続けてる。だけど、何の進歩もない……」
と、言ったミューは涙を右てで拭ったが、それでも涙は止まらなかった。
「ミュー……。お前も、努力してくれてたんだな」
そんなミューにケレスが優しく声を掛けると、
「うん。私、もっと王族としての地位を確立させる!
そして、私が交渉出来る様になる。絶対、お姉ちゃんを取り戻すわ!」
と、泣き顔のままのミューから見つめられたケレスは覚悟伝えられ、
「頼もしいな! 俺もがんばる‼ 姉ちゃんの居場所、守ってみせる!」
と、ケレスもミューを見つめ己の覚悟を伝えると、
「約束するね」
と、言ったミューは大きく頷いたが、
「約束か……。ねえ、ケレス。あそこに行かない?」
と、ミューは急な申し入れをしてきたのである。
「あそこって、雪桜の園か?」
そして、ミューの心情を察したケレスがそう言うと、ミューは、こくんと頷き、
「そうだな……。久しぶりに行きたい!
けど、ミュー。お前、遠出してもいいのか?」
と、心配になったケレスだったが、
「門限までに帰れば大丈夫だよ。きっと、ニックさんが何とかしてくれる!」
と、顔を上げたミューは笑顔で答え、
「ははっ。怒られても知らないからな?」
と、笑いながらケレスが言うと、
「じゃあ、行こう!」
と、言ったミューとケレスは雪桜の園へと向かう事となった。
「クリオネ、頼むね?」
それから高杉の家を出たミューがそう言ったので、
「クリオネ?」
と、言ったケレスがクリオネを見ると、クリオネの大きさがケレス達二人を乗せれる程大きくなった。
「さあ、ケレス。行こっか?」
そして、そのクリオネの隣でミューはにっこりと笑い、
「わかった!」
と、返事をしたケレスはクリオネの背に乗り、
「ミュー。俺の後ろに乗れよ!」
と、余裕な顔をしたケレスがミューをを見つめ誘うと、
「ケレス……。霊獣に乗れる様になったの?」
と、きょとんとした顔のミューから聞かれ、
「ああ、そうさ! 兄貴に鍛えられたからな!」
と、鼻を少し上げてケレスが答えると、
「ふふっ。本当かな?」
と、笑いながら言ったミューはケレスの後ろにそっと乗った。
「クリオネ。雪桜の園まで頼む!」
それからケレスの号令で、クリオネは颯爽と走り出した。
そのクリオネの乗り心地は今まで乗ったどの朱雀よりも良く、
駆けている足から見える炎はどの朱雀よりも美しかった。
「ミュー。こんな事まで出来る様になったんだな!」
そんなクリオネの背でケレスがそう言うと、
「……努力してるもの。炎の瞳だって、制御出来る様になった。
もう、あんな事をしない様に……」
と、静かなミューの声が聞こえ、
「そうだな……」
と、ケレスは前を向いたままその言葉を背で受けとめた。
(俺の知らない所でミューの奴、努力してたんだ……。俺もあの時、立ち止まらなくって良かった!)
そして、その事を噛みしめているケレスを乗せたクリオネはどんどん雪桜の園へと近づいて行った。
その間、二人で他愛無い話をしていると、一時間程で雪桜の園の付近へと到着した。
だが、
「……何か、変じゃないか?」
と、思わずケレスの口から言葉が漏れると、
「そうね。何か、物寂しいって感じがする……」
と、ケレスと同じ感覚を覚えているミューの口からも言葉が漏れたのである。
そう、口では言い表わせない何とも言えない嫌な雰囲気がそこにあったのだ。
そして何かが変だという事はわかったが、それが何なのか、まだこの時の二人にはわからなかった。
(何だろう……。ずっと来ていなかったからといっても、変だ……)
そんな不安を抱えたケレス達が雪桜の園に到着すると、そこで何が変だったのかがわかった。
ケレス君♪ まずは皆様に新年のご挨拶をするんだ!
明けましておめでとうございます!
どうぞ、本年も【嘘と秘密だらけの世界のかたすみで】をよろしくお願いいたします!
そして、この場を借りて報告があります……。
あ、あの、誠に勝手ながら投稿日を「火曜日」と「金曜日」にいたします……。
深い意味はありません。唯、こちら側の都合ですので、許していただけたら幸いです。
一応まだこのペースで続けられそうですので、がんばって参ります! by 紅p☆
ーー
ねえ、ケレス君♪ 久しぶりのミューちゃんとの雰囲気は中々だったねぇ?
もっと良い雰囲気にしたかったんだけど、まだまだそれは君には早い!
ケレス君、もっと大人になるんだ! ふふん♪
ぅうん? そんな事より雪桜の園が変だって⁉
えぇっと……。 ⁉ あわわ⁉ 本当だ!
雪桜の園があんな事になってるぅ‼
雪桜の園がどうなったのかがわかる次話のタイトルは……、
【ケレス、絆の時計の針が止まっていた時に世界が出していた答えを知る】だ!
久しぶりにあの人も登場するよん♪




