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№ 55 ケレス、いよいよ夢を叶える為の決戦の日を迎える

 いよいよケレスはこの日を迎えた。

 そして、皆が協力してくれたからこそ迎えられたこの日を失敗しない様にケレスは挑む。

 そんなケレスの前に立ちはだかる試験とは一体どんなものであろうか……。

 ケレスがアカデミーに到着すると既に多くの人が集まっており、

彼等は続々と吸い込まれる様にアカデミーに入って行った。

ケレスもそれに続いて試験会場となる部屋に入るとそこも多くの人がおり、

そこではある人は本を見て、またある人は瞑想していた。

(うわあぁ……。みんな、頭、良さそうだ⁉)

 そして苦笑いしているケレスが自身の席に座るとその席は一番前の長い机の通路側で、

さらに二席左隣の席には他の受験生がおり、そこは窓際だった。

(俺も、窓際が良かったなぁ……)

 その受験生を見てつまらない事を考えたが、ケレスは試験の開始時刻までの時間を無心で過ごした。

 そして、試験開始時刻の一五分前になると試験官が入って来て、部屋は緊張感に包まれた。

(ひえぇ……。な、何か、緊張するなぁ!)

 それからケレスがそう思いながら試験官の話を聴いている内にケレスの前に試験用紙が配られ、

(どんな問題なんだろう……)

と、裏返っている白紙の試験用紙を眺めながらケレスが考えていると、

「始めてください!」

と、号令が掛り、パララと一斉に試験用紙をひっくり返す音が聞えたが、

(うわっ⁉ 遅れたぁ!)

と、ケレスは出遅れてしまい、少々焦りながら試験用紙をひっくり返し、試験に取り組んだ。

(これって……、アルトの言った通りだ⁉)

 だが、その試験問題を見たケレスはそう思った。

 何故なら、その問題はアルトのアドバイス通りだったからである。

 そう、アルトはケレスの家庭教師をしていた時、この様に指導していたのだ……。

☆*☆*☆

「なあ、アルト。過去問なんか意味あるのか?

 一度出た問題が出るとは思えないんだけど……」

 とある日、ケレスがそう聞くと、

「そうだね。出るかなんてわからないけど、試験を作るのは人だよ。

 その人が何を求めているかはそんなに変わらないんじゃないかな?」

と、アルトは答え、

「ふーーん……。まっ、そういう考えもあるか!」

と、妙に納得したケレスが言うと、

「つべこべ言わず勉強に集中しなよ! 君は僕とは違うんだから!」

と、言ったアルトの眉間にはしわが寄っていた。

☆*☆*☆

(アルト。ありがとう!)

 そんな事を思い出しながらケレスは笑顔で試験に取り組む事が出来た。

 それから二教科の試験が終わり昼休憩の一時間となりケレスはジャップからの弁当を開けた。

 すると、その中身は、ドライカレーに目玉焼きがのっていた。

 そのドライカレーは細かく切られた人参、ほうれん草、キャベツ、それに豚肉といった具材で、

スパイスの香りが食欲を高めた。

 ちなみに目玉焼きは黄身までちゃんと火がとおっており、固めだった。

(兄貴。ありがとう!)

 そのジャップ特製弁当を眺めたケレスが一口ドライカレーを食べると、

「美味い!」

と、思わず言葉が出てしまったが、さらに笑顔になれ、

(やっぱり、兄貴は何でも出来るんだ!)

と、思いながらケレスはジャップ特製弁当を感触していった。

 その弁当のおかげもあり、残り二教科の試験も難なく解く事が出来たケレスは

無事に試験一日目を終える事が出来た。

 そして、ケレスが試験会場を出ると外は暗くなっており、

そんな中帰り着くと、高杉が何故か外にいたのである。

「先生? どうしたんだ?」

 その高杉にケレスが声を掛けると、

「別に。煙草を吸っていただけだ」

と、言った高杉だったが、その手に煙草は持っていなかったので、

「……変な先生だ」

と、不思議に思ったケレスがつい言ってしまうと、

「さっさと入れ」

と、眉を顰めた高杉から不愛想に言われ、その高杉はさっさと家に入って行った。

「はいはい……」

 それはいつもの事だと思ったケレスは、家に入り、まず高杉の仕事場を覗いた。

 そう、今日一日ケレスがおらず、どれだけ部屋が無事であるか心配だったのだ。

「へえ……。先生、部屋が無事だな⁉ やろうと思えば出来るじゃんか!」

 だが、意外にも綺麗な部屋を見たケレスの目は丸くなった。

「余計な事を言ってる暇があれば、明日に備えろ」

 すると、そう言った高杉はさらに眉を顰め、

「わかってるよ!」

と、その高杉が面白かったが笑いを堪えたケレスが言うと、高杉が夕食を運んで来た。

「こ、これは……⁉」

 そして、その食事を見たケレスは驚きのあまり、立ち止まってしまった。

 何故なら高杉が用意した夕食のホワイトシチューの隣に

ケレスの大好物のニョルズの塩バターパンがあったからだ。

 ちなみにそのシチューの中身は、乱雑に切られた数種類の野菜とキノコ、それに豚肉だった。

「先生⁉ この組み合わせって……」

 その素晴らしい光景にケレスが目を輝かせると、

「アルトとかいう口煩い奴のせいだ」

と、溜息をついた高杉は答えたが、

「嫌なら……」

と、高杉は拗ねた様に言ったので、

「いただきます!」

と、それ以上言われる前にケレスはそれ等を食べ始めた。

 そんな高杉のシチューは温かかった。

 いつも交代に食事の準備をしており、何度も高杉の手料理を食べていたが、

「美味いよ、先生!」

と、ケレスが言うと、

「ふん。それを食べたら、さっさと寝ろ」

と、言った高杉はその後 無言を貫いた。

「御馳走様でした。先生、ありがとう!」

 それからケレスは自室に戻り、就寝の準備をして窓の外を見た。

 すると、窓の外は寒いからか、星や満月がくっきりと見え、

その幻想的な夜空でケレスはラニーニャの笑顔を思い出した。

(姉ちゃん……。俺、がんばるからさ、早く帰って来てくれよ!)

 そして、そう思ったケレスは次の日に備え早めの就寝につき、次の日を迎えたが、

「ケレス! 良く眠れたか?」

と、相変わらずノックをせず、ジャップがケレスの部屋に入って来たのだ。

「兄貴⁉ びっくりするじゃないか!」

 その相変わらずのジャップの行為にケレスは少々呆れたが、

「試験は今日までだったな。朝食を持って来たぞ!」

と、それを全く気にも留めない陽気なジャップから言われ、

「兄貴……過保護すぎじゃ……」

と、呆れて開いたままのケレスの口から言葉が漏れると、

「ん、まあ、そうなんだが……。アルトが煩くってな……」

と、言ったジャップは苦笑いをし、

「そ、そうだったのか……」

と、ジャップの心情を知ったケレスはジャップからの朝食を受け取った。

 そんなアルトから言われジャップが作った朝食は、トロトロのチーズと、トマト、

豚肉や鶏肉のカツが入ったホットサンドだった。

 ホットサンドは周りのパンが程好いカリカリ感で、小麦の香りが際立っていた。

 そして、中は少し甘めのタレにトマトの酸味、チーズはこってりしていたが豚肉は脂身が少なく、

それ等が絶妙な味を醸し出していた。

「美味い!」

 勿論、その言葉が出てしまったケレスがホットサンドを頰張っていると、

「今日の午前は、お前の苦手な霊獣に乗るやつだよな? 体力がいるからって、アルトが言っててさ。

 朝食をこれに指定してきやがったんだ!」

と、言いながらジャップもホットサンドを食べていたが、

「はあ……。昨日は上手くいったと思うけど、何か今日はそうはいかない気がする……」

と、その試験を想像し、自信なさ気に言ったケレスの食事の手が止まると、

「俺が教えたんだぜ? 大丈夫に決まってる!

 随分、上達してるから自信持てよ!」

と、言ったジャップからケレスは頭をグシャグシャにされたので、

「だぁーーからぁっ! それは、やめろって!」

と、瞳を強く閉じたケレスは怒鳴ったが、

「……自信 持って受けて来いよ。お前なら、出来る!」

と、優しいジャップの声が聞こえると、

「ああ。わかってる!」

と、瞳を開けて真直ぐジャップを見つめたケレスは言えた。

「一番大切な試験があるのを忘れるなよ」

 だが、いきなり部屋に入って来た高杉から、そんないい空気を壊された。

「あっ! 高杉さん。弟が世話になってます!」

 すると、その高杉にジャップは頭を下げたが、頷いた高杉はホットサンドを取って食べたので、

「せ、先生⁉ 勝手に食べるなよ!」

と、それに気付いたケレスが慌てて言うと、

「いいじゃないか! 沢山あるし!」

と、陽気なジャップから言われたが、

「そうだけど……」

と、言ったケレスが納得がいかない顔をすると、

「お前。午後の部、気を抜くなよ」

と、それを全く気にしていない顔の高杉からホットサンドを食べながら注意されても、

「ああ、わかってる! 先生にしごかれたんだ。気を抜く訳ないだろ?」

と、笑ってケレスが言うと、

「……ふん。ならいいが」

と、言った高杉はホットサンドを食べながら部屋を出て行った。

「ケレス。いい先生に巡り合ったな……」

 その高杉を見送っているとケレスの耳にこんなジャップの優しい声が聞こえ、

「そうだな。全部、姉ちゃんのおかげだよ……」

と、言ったケレスの目頭は熱くなり、

「……ああ、そうだな」

と、言ったジャップの声は寂しくふるえていたので、

「全部、みんなのおかげだ!」

と、ケレスが元気良く言い直すと、

「そういうのは、受かってから言いな!」

と、言ったジャップからまたケレスは頭をグシャグシャにされ、

「だあぁーーかぁーらぁっ!」

と、ケレスは怒鳴ったが、

「そうするよ!」

と、ケレスは髪を整えながら笑って言えた。

 そして、ジャップに見送られたケレスが前日とは違う試験会場へと向かうと、

その試験会場は相変わらず緊張感に包まれていた。

(うわぁ……。昨日とは、また違う感じがしてる……)

 そんな張り詰めた空気の中、冷や汗が出そうなケレスが試験会場に入ると、朱雀一族が数十体おり、

(さすがに、ララやメタはいないか……)

と、その朱雀達を見て思ったケレスは試験開始時間までの時を静かに過ごした。

 ちなみに今回の試験内容は、一〇分程朱雀に乗り、試験官によって採点されるといったものだ。

 そして、ケレスの試験の順が回ってくると、ケレスの相棒となる朱雀が歩いて現れた。

 だが、その朱雀は両耳にキラリと光るピアスの様な水晶が生えており、

目は三白眼で、ジロリとケレスを睨んできたのだ。

(何だ、こいつ……⁉ 目つき悪っ!)

 そんな第一印象が良くない朱雀をまじまじとケレスが見ていると、

「彼女は、ハリスだ」

と、試験官に言われ、

「そっか……。ハリス、今日はよろしく」

と、ケレスが苦笑いしながら言うと、ハリスからそっぽを向かれた。

(な、何なんだ⁉ 俺が何したってんだ?)

 そのハリスの行為にケレスが動揺していると、

「ははっ。彼女は気位が高いから、気を付けるんだよ?」

と、笑っている試験官に言われ、

(気を付けるって言われても……)

と、思っているケレスが右手で頭を掻くと、ハリスは溜息をつき、その場に伏せてしまった。

「じゃあ、君、試験を開始するよ」

 それから試験官にそう言われたのでケレスはハリスに近づいたが、ハリスから牙を剥き出しにされ、

「は、はい? 何で?」

と、ケレスがたじろぐと、

「君、彼女に乗らないと。試験は、もう始まってるんだよ?」

と、試験官から冷静に言われ、

「そ、そうなんですけどねぇ……」

と、言ったケレスはまたハリスに乗ろうとしたが、

「ガルルル‼」

と、全身の毛を逆立てたハリスから威嚇をされてしまった。

(どうしよう……。このままじゃ……)

 その威嚇に悪い未来を見たケレスだったが、どうするべきかを考えた。

(何で、こいつは怒ってんだ? メタの時はどうだったっけ?

 メタは、人懐っこい……。でも、そうじゃない奴もいるって兄貴が言ってたな……。

 そういえば、アルトに言われた事がある。俺は、デリカシーがないって。

 こいつは試験官が彼女って言ってたって事は、雌って事だよな?)

 そして、色々な事が頭を巡ったケレスの頭には何故か ぴゅーけんの顔が浮かんできた。

(ぴゅーけんは、だらしない奴が嫌いだったな……)

 それからケレスはこの考えに行き着き、

「ハリス。俺は、ケレスだ。今日は頼むぜ!」

と、ハリスと目を合わせて自信あり気に言うと、じっとケレスを見つめたハリスは威嚇をやめ、

ケレスが乗りやすい様に姿勢を変えた。

「じゃあ、失礼するぜ?」

 そして、ケレスが堂々とハリスに乗るとケレスを乗せたハリスは試験コースを滑走していった。

「ハリス。お前、乗り心地、結構イケるぜ!」

 そのハリスの上でケレスが正直に言うと、ハリスは、フッと笑った様に見え、

そして速度を上げたハリスは試験会場を誰よりも美しく滑走し、あっと言う間にその時間は終了した。

「ハリス、ありがとう! また何かの機会があれば頼むぜ?」

 試験終了後、笑顔のケレスが右手を差し出すと、

「ワォン!」

と、ハリスは返事をする様に鳴いてケレスから離れていった。

 それから長い待ち時間があったがジャップの特製弁当を食べる時がきた。

 今日の弁当は、ハムとチーズ、それにレタスがはさまったサンドイッチだったが、

パンの表面は、しましま模様でスリッパの様な変わった形をしていた。

 だが、そのパンは、もっちりとした触感とシンプルな味が中の食材と良く合ており、美味しかった。

(今日は外で食べるからこんなのが良かったよ。でも、これもアルトの指導か……)

 そう思いながらそれを食べたケレスは最終試験に挑む事となった。

 最終試験は、特殊能力、つまり時読みの力を試すもので、

制限時間の中で時読みをし、それをレポートとして提出するものだった。

(この紙一枚に何を書けばいいのか……)

 すると、試験開始直後、ケレスはそう思ったが、

(てか、先生の所でやってたやつじゃんか!)

と、気付き、難なく時読みの試験を終える事が出来た。

(無事に終わったけど、まさかの時読みの試験が呆気なさすぎて、ふわふわしてて達成感がないな……。

 だけど……。出来た! 絶対、出来た!)

 それから全ての試験が終わりケレスが帰り着くと、やはり高杉が家の外にいた。

「先生、ただいま!」

 その高杉にケレスが笑って声を掛けると、

「ふん……」

と、ケレスの顔を見た高杉は言葉で泣く鼻で返事をし、家に入って行った。

 そして、その日はケレスはそのまま休んだが次の日からは普通の生活が始まった。

 だが、そうやって普通の生活をしていると一か月は早く過ぎ、

いよいよケレスはアカデミーの結果発表の日を迎えた。

 ケレス君。

 まずは、本当にお疲れ様でした!

 いやぁ……試験かぁ……。

 もう二度とそういうのは御免だね♪

 おわかりだろうが少々作者の実体験が入っているんだ! えへへ♪

 あの席の場面とかね~。

 ……そんな事より、次話で君の結果がわかるんだよ!

 さぁ~て、どうなってるんでしょうかね? ふふふの、ふ♪

 そんな次話のタイトルは、【ケレス、遂にあの日を迎える】だ!

 結果はどうあれ、ここから話は新たな方に進むんだよぉ~。

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