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№ 54 ケレス、悲しみを背負い、夢を叶える一歩を踏み出す

 鳳凰島で意識を失ったケレスは闇の中を藻掻いていた。

 何所までも続く闇の世界。

 その闇の世界でケレスは姉を呼んだ。

 すると……。

 ケレスは何処までも広がる闇の中でもがいていた。

「「ここ、何処だ? 暗くて何も見えない……。

 てか、みんな何処にいったんだよ? 兄貴? 長殿? ミュー? それから……」

 藻掻き続けるケレスはそう言った後、

「姉ちゃん‼」

と、叫ぶと、明るい世界に辿り着いた。

 その世界ではケレスはベットで仰向けになり天井を見つめ、汗を沢山かいて息切れしていた。

 だが、

「ケレス⁉ 大丈夫か?」

と、目を見開いて叫んだジャップがその世界に突如現れたのだ。

「……兄貴?」

 そのジャップにまだ息切れしているケレスが声を掛けると、

「はぁーーー……良かったぁ……」

と、言ったジャップは、脱力し、その場に座り込んだので、

「お、おい、兄貴⁉ 大丈夫か?」

と、慌てて起き上がったケレスが聞くと、

「……なんとかな。ほっとしたら、こうもなるさ」

と、椅子に座り直したジャップは言った。

「なあ、兄貴。ところで、ここは何処だ?」

 それからケレスがそんなジャップを改めて見ていると、

「ここは、宝珠の国の迎えの飛行船の中だ」

と、一つ息を吐いたジャップから教えられ、

「そうか……。でも、何で俺はここにいるんだ?」

と、聞いたケレスが首を傾げると、

「何から話せばいいか……」

と、答えたジャップは難しい顔になったが、ケレスが意識を失ってからの事を話してくれた。

 そのジャップの話はケレスが鳳凰島で意識を失っていた処からで、

その事を浦島がジャップに教えた処から始まった。

「……びっくりしたよ。

 浦島に連れられ俺が鳳凰島に行ったら、お前が倒れていて、その近くには大量の血痕があったし……」

 ここまでジャップが話すと、

「血痕……?」

と、呟いたケレスはふるえがきた

 そう、その言葉を聴いたケレスの脳裏に、くっきりと うさ爺が殺され、

それを追ってラニーニャが自害した光景が写し出されたのだ。

「ケレス……」

 そのケレスを見たジャップは優しくケレスの右肩に手を置いたが、

「あ、あ 兄貴……う、うさ爺が……」

と、言ったケレスは吐き気を催してしまい、両手で口を覆うと、

「うさ爺がどうした?」

と、ジャップが優しく聞いてきたので、ふるえが止まらなかったがケレスは何があったのかを話せた。

「そうだったのか……」

 その話を聴いたジャップは眉を顰め、ケレスを発見した時の事を話してくれた。

「俺がお前を見つけた時、お前以外 誰もいなかったんだ。

 唯、大量の血痕があって、その傍にお前が倒れていた……。

 びっくりしたよ。お前の血かと思った。でも、そうじゃなかった……」

 ここまで話したジャップだったが、その後が続かなかったので、

「姉ちゃん達、何処に行ったんだ?」

と、ケレスが聞くと、

「それはわからんが、お前の話からして、帝様と、アルデバランとかいう奴が知ってそうだな」

と、答えたジャップは溜息をつき、

「うん。帝様は、姉ちゃんを助けるって言ってた。そうなら、助かってほしい……」

と、眉を顰めたケレスは言ったが、

「助かったとしても、その後が面倒だ」

と、言ったジャップからケレスは視線を逸らされた。

「どういう事だ?」

 そのジャップを見てケレスに不安が過ると、

「前にも言ったが、剣の国は鎖国制度がある。

 かなり秘密が多い国でな、姉貴が無事に帰ってくるかどうか……」

と、言い難そうに答えたジャップは、チラッとケレスを見た。

(剣の国は、昔からダーナを利用してきた……。姉ちゃん、恐らく剣の国にダーナってバレてる。

 だったら……)

 ジャップのその言葉を聴いたケレスはアルトの言葉を思い出した。

 そして、ケレスが嫌な未来を創造していると、

「……ミューに頼むしかないな」

と、深い溜息の後、ジャップは言ったが、

「兄貴。それは……」

と、ラニーニャとの約束を考えたケレスが言葉に詰まりながら言うと、

「そうするしか方法は、ない。

 今から俺が頼んでくる。お前は、もう少し休んで色」

と、低い声で言ったジャップは立ち上がり、部屋を出て行った。

「……長殿」

 それからケレス以外誰もいなくなったその部屋でケレスは呟いたが返事はなかった。

「長殿、何処に行ったんだよ? いてくれるんじゃ、なかったのかよ……」

 それでもそう呟いたケレスは俯き、

「どうなってんだ⁉ どうして、こうなるんだ? どうして、どうして……」

と、言いながら両手で顔を覆い、体中から溢れ出す何かを抑える為に唇を噛みしめた。

 その後、数時間で飛行船はミラへと到着した。

 そして、ケレスは五里霧中状態で高杉の家へと戻り、

自身の部屋に逃げ込んでカーテンを閉め、ベットに潜り、瞳を閉じて総ての光を遮断した。

 そうやって何も感じない時間を過ごすしかケレスは出来なかったのだ。

 だが、

「おい。何をしてる」

と、不愛想な高杉の声からその時間を壊された。

 それでもケレスが暗い世界に閉じ籠っていると、

「起きろ! 何時だと思ってんだ‼」

と、怒鳴った高杉からケレスは被っていた掛布団を剥ぎ取られ、

「何すんだよ‼」

と、苛立ったケレスは怒鳴ったが、

「仕事だ。さっさと起きろ」

と、いつも通りな高杉から言われ、

「仕事? こんな時に、何を言ってんだ‼」

と、その高杉にさらに苛立ったケレスが怒鳴ると、

「どんな時でも、やらない訳にはいかんだろう。休んでた分、溜まっているしな」

と、高杉は眉一つ動かさずに言ったので、

「ふざけるな‼ あんた、おかしいんじゃないのか? どうして平気でそんな事を言えんだ‼」

と、その言葉で何かがプツリと切れる音が聞えたケレスが高杉を睨みながら怒鳴ると、

「じゃあ、クビだ。出て行け」

と、言った高杉は鼻でフンッと息を吐いた。

「ああ、そうか‼ 出て行ってやるよ‼」

 そして、高杉からそう言われ、勢いよくベットから下りたケレスだったが、

「それで、お前はどうする気だ? また姫君にでも頼んで、王宮に厄介になるつもりか?」

と、高杉から静かに聞かれると、

「そんな事は、しない‼」

と、高杉を睨んだケレスは大声で答えたが、

「じゃあ、どうするんだ?」

と、高杉からまた静かに聞かれると、

「そ、それは、その……」

と、俯いたケレスは答えられなかった。

「いつまでも子供みたいな事を言うな。さっさと準備して、仕事にかかれ」

 すると、鼻で大きな溜息をついた高杉からそう言われ、

「……出来ないよ。俺、姉ちゃんの事が……」

と、言ったケレスの目から涙が零れると、

「そうやって、お前がやるべき事をしない間も世界は勝手に進んでるんだ。

 お前は世界に取り残されてもいいのか?」

と、高杉はケレスを諭し、

「先生ぇ……」

と、涙が止まらないケレスが高杉を見上げ言うと、

「あいつが戻って来た時、あいつの居場所がなかったら……。

 お前が何も変わってなかったら、あいつがどう思うか考えてみろ。また、泣くぞ?」

と、言った高杉は胸が締め付けられる様な悲しそうな顔をしており、

「せ、先生ぃ……」

と、言ったケレスの目からさらに多くの涙が零れると、

「全く、姉弟そろって泣き虫め! 顔を洗って、落ち着いたら仕事にかかれよ!」

と、高杉から呆れた様に言われたがケレスは頷いた。

「あいつは、宝珠の国が剣の国と交渉するそうだ。

 それを信じるしか今は、ない」

 それからそれを見て頷いた高杉はそう言い残し、部屋を出て行き、

それを見送ったケレスは涙を拭い、顔を洗って仕事に入った。

 そんなケレスは歯を喰いしばり、溜まっていた仕事を少しずつ片付けていき、

徐々に普段の生活へと戻っていった。

 そして、それにジャップも同じ様にケレスに協力し、意外な事にアルトまで戻ってきたのである。

「アルト。大丈夫なのか?」

 そんなアルトをケレスは心配になったが、

「人の心配より、自分の心配をしなよ。時間がないんだ」

と、言ったアルトは家庭教師を続けてくれたが、何となく厳しくなっていた。

 そうやって時は一年以上過ぎ、ケレスは仕事にも慣れた。

 そして、仕事にも慣れたある朝、いつもの様に仕事場を掃除していたケレスは、

ふとラニーニャの部屋が気になった。

「姉ちゃん……。部屋、綺麗にしてるから早く帰ってこいよ?」

 そんなケレスはラニーニャの仕事部屋に入り、そう言って笑い、また仕事へと戻った。

 それからまた時は過ぎ、いよいよ、アカデミーの入学試験の日の前日となった。

(遂に明日かぁ……。何か、緊張する!)

 その夜そう思ったケレスが身震いすると、ケレスの部屋のドアをコンコンと叩く音がした。

「先生? 何か用か?」

 そして、ケレスがドアの方を見てそう言うと、

「……いや。何もない」

と、ドアを少しだけ開けた高杉は言ったが、

「何か用があるから来たんじゃないのか?」

と、首を傾げたケレスが聞くと、

「いや、別に……」

と、答えた高杉は何かを言いた気にケレスを見つめてきたので、

「先生が緊張して、どうすんだよ?」

と、その高杉の気持ちを察したケレスが笑って言うと、

「そんな事はない」

と、眉間にしわを寄せた高杉はケレスの目を見ずに言ったが、

「明日は、がんばるから!」

と、ケレスが高杉を真直ぐ見つめ言うと、

「ふん」

と、鼻息を出した高杉はドアをそっと閉めて部屋を離れて行った。

(先生。ありがとう!)

 それからその高杉の足音を見送ったケレスは速めの就寝とした。

 そして次の日の早朝、少し肌寒く晴れた中、ケレスが準備をしていると、

「おーい、ケレス!」

と、言って、ノックもせずにジャップがケレスの部屋に現れた。」

「兄貴⁉ どうしたんだ?」

 そのいつも通りのジャップにケレスが目を丸くすると、

「ほれ! ジャップ様特製の弁当だ!」

と言って、ジャップは布に包まれた四角い箱を見せてきた。

「弁当だって⁉」

 すると、そのジャップにケレスの目はさらに丸くなったが、

「アルトの奴に聞いてな。試験の一日目は何時間もある筆記なんだろ?

 んで、アルト曰く、買いに行くのも大変だから作ってやれってさ。

 で、炭水化物がどうとか言っててよくわからんが、そういった物を入れてみた!」

と、ジャップは陽気に言ったので、

「兄貴。料理も出来るのか?」

と、ケレスが聞くと、

「おうよ! 自分で言うのもなんだが、味見した時 美味かったぜ!」

と、答えたジャップはにんまりと笑った。

「ははっ。兄貴は相変わらず何でも出来るんだな!」

 その笑顔でケレスの顔が綻ぶと、

「まあな! まあ、持って行ってくれや!」

と、言ったジャップはケレスの頭をグシャグシャにしたので、

「だあぁっ⁉ それ、やめろって!」

と、叫んでしまったケレスだったが、

「ありがたく、持って行くよ!」

と、笑って言ったケレスはジャップに見送られ一人でアカデミーへ向かった。

 

 ケレス君、大変だったけど君が無事で本当に良かった……。

 いや、君がどうかなったらと思うとねぇ……。

 まあ、君がどうかなったらこの作品は終了するだけなんだけどね~。 へへへ♪

 そうならない為にもがんばって前を向くんだケレス君!

 そんな君のがんばりが報われるかどうかがわかる次話のタイトルは、

【ケレス、いよいよ夢を叶える為の決戦の日を迎える】だよん!

 決戦の日かぁ……。

 うん、もう二度とあんなのはごめんだ!

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