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№ 52 ケレス、母の墓標に縋る姉の思いを知る

 光るアスチルベがあった場所にはラニーニャがいた。

 だが、そのラニーニャの手に握られている物を見たケレスの足は止まる。

 そして、何とかラニーニャの愚かな行為を停め様とケレスは説得するがそこにまさかの人物が現れ……。

 鳳凰島に下立ったケレスが光るアスチルベがあった場所に行くとそこには俯いたラニーニャがおり、

その横には心配そうな顔をしている たぬてぃが寄り添っていた。

「姉ちゃん‼」

 そのラニーニャにケレスが叫ぶとラニーニャは徐に振り返ってケレスを見つめてきたが、

その顔には表情がなかった。

「良かった、姉ちゃん! 心配したじゃないか!

 早く、帰ろう?」

 そして、不安を感じたケレスがそう声を掛けて近付いたが、ラニーニャから首を横に振られ、

「何言ってんだ⁉ 一緒に帰ろう! 宝珠の国に‼」

と、ラニーニャの手に握られている物を見て立ち止まったケレスが必死に訴えると、

「ケレス君……。私ね、もう、この世界には、いられないよ」

と、言ったラニーニャは悲しい目で笑った。

「馬鹿な事を言うな‼」

 その顔に胸が締め付けられたケレスは怒鳴ったが、

「馬鹿な事じゃないよ? 私、やっぱり災いだもの。

 あのね……。私、あの時、ケレス君達の声以外に他の人の声も聞こえてたの。

 ダーナの人達が言ってたでしょ? 私は死んだ方が良いって。消えた方が良いって。

 それが、世界の為だって……」

と、ふるえた声で言ったラニーニャが瞳を閉じるとその瞳から涙が零れ落ちた。

「……いつもならね、ここでお母さんのマナを感じれたんだ。

 だから、がんばれたんだけど……。

 でも、ここにはもう、お母さんの事を感じれない……。嫌なんだ、こんな世界……。

 私、もう誰も傷付けたくない……。誰からも傷付けられたくない‼

 だから、私、お母さん達の所にいきたいんだ‼」

 そして、瞳を開け声を荒げたラニーニャは右手に握っていた短刀を自身の左手首に押し当てたのだ。

「駄目だ‼ 姉ちゃん‼」

 それを見て叫んだケレスだったが、ケレスの体が急に痺れ、頭痛までも加わり、

(この感じ……ヘイムダルか⁉)

と、思ったケレスが倒れ、ラニーニャも持っていた短刀を手放してその場に座り込むと、

「喜蝶……。わかったであろう? お前は罪深き者だ。

 その罪は、決して死ぬ事では償えない。唯一、お前を救えるのは私だけなのだよ。

 さあ、私の下へ帰りなさい」

と、言いながらニブリヘイムで見た深めの帽子をかぶり長い口髭を生やした中年の男が現れたのだ。

「お、お前……は、あの時の……」

 その男に薄れいく意識の中、絞り出す様にケレスがそう言うと、

「しししっ☆ まぁだ、意識あるんだ……。しぶといね?」

という、人を不快にさせる声が聞こえ、

「や、ぱり……ヘイ……ムダルか……」

と、その声の主に何とか意識を保っているケレスが言うと、

「あれれえ? 今日は鼠爺さんはいないのかい?」

と、ケレスの前まで歩いて来たヘイムダルは聞いてきたが、

「……子猿よ。貴様、何を企んでおるのじゃ?」

と、答えた長の声は怒りにふるえていた。

「しししっ☆ やっぱりいるんだ⁉」

 すると、そう言ったヘイムダルは、ぴょんと飛び撥ねて退き、

「ねぇねぇ、セルファお父様! 鼠の精霊爺さんを何とかしなきゃ、喜蝶、取られちゃうよ?」

と、ヘイムダルが振り返って言うと、

「わかっておる」

と、言ったセルファお父様と呼ばれた男は、パチンッと指を鳴らし、

ケレス達の周りに地面からあの鳥籠を生やし、その中にケレス達を閉じ込めた。

 そして、たぬてぃは別の鳥籠に閉じ込められてしまった。

「これ……あの……時の……」

 その鳥籠の中でケレスが途切れ途切れに言葉を出すと、

「まさか……これは、グレープニルの鳥籠か⁉」

と、長の驚いた声が聞こえ、

「その通りだよ鼠君。君では、これをどうする事も出来まいよ?」

と、セルファの嬉しそうな声が聞こえると、

「長殿……。何とか……しなきゃ」

と、頭がぼんやりしているケレスは言ったが、

「すまぬ、小童よ。この封印具の中では、儂は無力なんじゃ」

と、長は悔しそうに言ったので、

「長殿? どうしてだ?」

と、ケレスが聞くと、

「小童よ、己でもう動けると感じておるであろう? この封印具は、マナを無効化するのじゃ」

と、冷静な長の声が聞えた。

「えっ⁉ ほ、本当だ! 痺れてないぞ⁉」

 すると、それに気付いたケレスは驚いたが立ち上がる事が出来、

「グレープニルの鳥籠は、マナを吸収する封印具じゃ。そして、中と外とを別の世界とするんじゃ‼」

と、長の焦っている声が聞こえると、

「さすが、長生きしているだけあるね鼠君? その通りだよ!」

と、言って、パチパチと手を叩き続けているセルファは白い口髭の中からニタリと笑みを覗かせた。

「貴様! 何故この技を使えるんじゃ⁉ この様な古の技を何故……⁉」

 そして、そう言った長がはっとして言葉を詰まらせると、セルファは、カカカと高笑いし、

「長殿! そんな技どうでもいいけど、何とかならないのか⁉

 このままじゃ姉ちゃんが攫われる‼」

と、その笑いに嫌な予感がしたケレスは怒鳴ったが、

「しししっ☆ わかってんじゃん?」

と、笑いながら言ったヘイムダルは、くるっと尻尾を丸め、

「じゃあ、セルファお父様。やっちゃっていいかい?」

と、その尻尾を真上に伸ばして言うと、

「……始めなさい」

と、冷酷な目になったセルファはラニーニャにその目を向け言い放ち、

「はぁーーい☆」

と、言ったヘイムダルが右手を上げその手で眼鏡を上げて笑うと、

ラニーニャが頭を抱え苦しみだしたのだ。

「何をするんだ⁉ やめろぉ‼」

 そのヘイムダルにケレスが怒鳴ると、

「しししっ☆ 負け犬の遠吠え!

 もう、喜蝶は君達の所から僕達の所に帰って来るんだよぉ?」

と、笑いながら言ったヘイムダルは眼鏡を上下に動かし、

「そんな事、あるか‼」

と、さらに大きな声でケレスが怒鳴ると、

「わかってくれ。喜蝶は弱い。

 だから、我々の下に置いておかねばならないのだよ。

 我々は弱い喜蝶をこの絶望の世界から守らなくてはならない……。

 そう、救ってやらねばならないのだよ」

と、言ったセルファが憐れみの目でラニーニャを見たので、

「姉ちゃんが弱いだって? この世界が絶望の世界だって? ふざけるな‼

 姉ちゃんは弱くなんかない‼ この世界は絶望の世界なんかじゃない‼」

と、怒りが頂点にまで達したケレスは怒鳴り、力の限り鳥籠に体当たりした。

 だが、グレープニルの鳥籠はビクともしなかった。

「無駄な事はやめた方がいい。そこで大人しく見ていなさい。

 君の知っている喜蝶が消えるところをね……」

 すると、静かにそう言ったセルファからケレスはその目を向けられたが、

「消える⁉ 姉ちゃんは消えたりなんかするか‼」

と、その目に怯む事なくケレスが怒鳴ると、

「見ていなさい。喜蝶はこの世界に何の希望も持っていない。

 消えたがってるのだよ。そして、救われたがっているのだよ……私の下でな!」

と、その目をケレスに向けたままセルファは言ったが、

「そんな訳ねえーーーーーーっ‼」

と、ケレスは喉が裂ける程叫んだ。

 そして、

「姉ちゃん‼ しっかりしろ‼ そんな奴の言い成りなんかになるな‼

 みんな、姉ちゃんと帰りたがってる‼ この世界で暮らしたがってるんだ‼

 兄貴だって、アルトだって‼ それに、うさ爺、先生‼ それに、それにサキさんだって‼ 未来ウェイライだって‼

 イェンさん、嫌だけどフェイトだって‼ 姉ちゃんが消えたらみんな悲しむ‼」

と、鳥籠をドンドンと叩きながらケレスが叫ぶと、

「け、ケレ……ス……君……」

と、ラニーニャはケレスに助けを求める様に声を絞り出し、

「そうだよ‼ そんな奴なんかじゃなくて、俺達が守るよ‼ だから……」

と、ラニーニャに届く様にケレスは声を張り上げたが、

「ふははは……ひゃぁーはっはっはっ!」

と、それをかき消す程の大声でセルファが笑いだしたのだ。

「何がおかしいんだ⁉」

 その笑い声にケレスが一瞬怯むと、

「はは……いやね? 君は喜蝶に絶望を見せたがっているのかと思ってね」

と、言ったセルファには笑い声が残っており、

「何が絶望なんだ‼」

と、その笑い声に底知れぬ不安を感じたケレスが怒鳴ると、

「君が言っているイェンさんとは、以前、君と会った時にいた方の事かね?」

と、笑い声がなくなったセルファから聞かれ、

「そうさ!」

と、ケレスが答えると、セルファは、また大声で笑い出した。

「君は、あの方の事を知っているのかね?」

 すると、その笑いを堪えたセルファからまた聞かれたので、

「知らないけど、姉ちゃんを守ってくれる人だ‼」

と、声を張り上げて答えたケレスだったがセルファの口から知られざるイェンの正体が明かされると、

ケレスは言葉を失ってしまう。


 ケ、ケレス君!

 何であいつ等が現れたの⁉

 ど、どうしよう……、このままじゃラニーニャちゃんが⁉

 そ、それに、イェンさんの正体が遂に明かされちゃうう?

 そんな次話のタイトルは、【ケレス、思いがけない救世主に再会する】だ!

 ……救世主って事は、大丈夫なのかしらね?

 それに、誰なんだろう救世主って……。

 あと、久しぶりに新キャラの登場かぁ……。

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