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番外編 龍宮 アルトの憂鬱 12

 ラニーニャを無事にアルトの屋敷に運び入れる事に成功したアルト達はそこで話し合う事にした。

 そこでアルトの婆やが漆黒の炎を操る男にその正体を問うた。

 すると、その漆黒の炎を操る男は答えたのだがその答えにアルトは納得せずにいて……。

 

 アルトは無事にラニーニャをアルトの屋敷に運ぶ事が出来た。

 そしてラニーニャを寝かしつける事も出来た。

 そんなアルトはこれからアルトの屋敷に集まった者達と話し合う事となった。

 まずアルトの屋敷にいる者はアルトにアルトの婆や。

 それからラニーニャの祖父であるハーゼ・ホフマン。

 そして、漆黒の炎を操る男、イェンだった。

(彼の名は、イェン……名前からしてもやはり彼は……)

 その漆黒の炎を操る男の正体にかなり近づいたアルトの眉間にはしわが寄っていた。

 何故なら彼がアルトの予想通りならば、決してラニーニャに近づけてはならない。

 それどころか敵になるかもしれなかったからである。

(厄介な事になったね。婆やの話からすると、先輩は見張られていた……。

 やはり彼が見張っていたという事だろう)

 アルトは冷ややかな目で漆黒の炎を操る男を見張っていた。

 その男は苦悩な表情を浮かべ、眠っているラニーニャを見守っていたが、

その男を見ているとアルトは気付かない内にどんどん眉間にしわが寄っていったのである。

「少し落ち着きなさいな」

 すると、そんなアルトの肩にアルトの婆やは優しく手を置いた。

「すまない、婆や……」

 そして、そう言えたアルトの眉間のしわは少しだけ減り、

「ほほ。いざとなったら私奴もいますので!」

と、言ったアルトの婆やから目配せされると、

「そうだったね!」

と、アルトは言える事が出来、眉間のしわは無くなった。

「さあ、始めましょうか?」

 それからアルトの婆やのこの言葉でラニーニャ都は別室で話し合いを始める事となった。

 そこではピンと張り詰めた空気が流れ、皆険しい顔で正座していたが、

「さて、皆様。私はツヅミ メイサと申します。

 アルトお坊ちゃまの執事を務めさせていただいている者です。以後お見知りおきを」

と、メイサの言葉から話し合いは始まった。

「メイサ殿。この度は何と礼を言って良いものか……」

 それからラニーニャの祖父は深々と頭を下げたが、

「ホフマン殿。我々は当然の事をしており、その様な事は不要!

 それより、これからの事を話し合わねばなりません」

と、厳しい顔のメイサから話を戻され、

「そ、そうじゃったの……」

と、顔を上げたラニーニャの祖父が申し訳なさ気に言うと、

「いえ。では……」

と、視線を一度下に下ろしたメイサは言った後、

「……イェン殿。貴殿は何者ですか?」

と、眼光鋭く漆黒の炎を操る男を睨みつけ、問うた。

「俺の正体は今は言えない」

 すると、漆黒の炎を操る男は表情崩さずそう答え、

「ほう……。何故に?」

と、また問うたメイサの眼光は一段と鋭くなったが、

「理由は話せない。だが、信じてくれ。

 俺は喜蝶の味方だ。命を懸けても、守る!」

と、その眼光に負けない強さで漆黒の炎を操る男がメイサを真直ぐ見つめ言うと、

「……。まあいいでしょう」

と、言ったメイサは一つ息を吐き、握っていた扇子の手を緩めた。

「婆や⁉ 何を言ってるんだい? 彼は……」

 だが、納得がいかないアルトが立ち上がろうとすると顔面にその扇子がバシッ!と直撃したのだ。

「……っっ!」

 あまりの痛さで顔を押さえ、瞳を強く閉じているアルトが悶絶していると、

「龍宮の者、大丈夫か?」

と、ラニーニャの祖父の心配する声が聞えたが、

「大丈夫ですわ。手加減はしておりますので♪」

と、メイサの楽しく、そしてそれ以上何も言わせないといった声がすると、

「あぁ……」

と、ラニーニャの祖父はそれ以上何も言えなかった。

(っうぅ……! 全く、婆やったら!

 これのどこが手加減なんだよ? 滅茶苦茶痛いじゃないか‼

 どうして、いつもいつも扇子をぶつけるかな!

 いや、今はそんな事よりどうして婆やはあの男に何も言わないんだ?)

 額を摩りながらアルトは考えた。

 何故、敵である可能性が高いその男に対し、メイサは何も追及しないのか。

 だが、答えは出なかった。

 揚げ句の果てにメイサはその後特に話す事なく話し合いを終わらせ、

漆黒の炎を操る男に部屋だけでなく着替えまでも用意したのだ。

(全く、婆やは何を考えているんだい!

 あんな男にどうしてああまでするかな‼)

 話し合い終了後、自室で一人で待機していたアルトはイライラしていた。

 そして、行き場のない怒りを抑える為、部屋をウロウロし続けていた。

 すると、

「龍宮の者、少し良いか?」

と、ノックの後、ラニーニャの祖父の声がし、

「あっ、はい。どうぞ!」

と、慌てて立ち止まり表情を直したアルトが返事をすると、

音を立てずにラニーニャの祖父は引き戸を開けた。

 だが、そのラニーニャの祖父は何か思いつめた顔でアルトを見つめてきたのである。

「立ち話も何ですので……」

 それからアルトは自室にある畳張りの部屋にラニーニャの祖父を招き入れたが、

「あの……。何か僕に話があるのですか?」

と、向かい合って座り暫く経ってもラニーニャの祖父が一言も喋らないのでアルトが尋ねると、

「ああ、そうじゃったの……」

と、思い出した様にラニーニャの祖父は口を開いた。

「この度は儂等の為の数々の行為、何と礼を言って良いものか……」

 それからそう言って、ラニーニャの祖父は頭を畳のすれすれにまで下げたが、

「先輩のお爺様。その様な事はなさらないで。

 婆やも言ったじゃないですか? 僕達は当然の事をしているだけなのですから」

と、そのラニーニャの祖父にアルトが優しく声を掛けると、

「そう……じゃったの……」

と、言いながら徐にラニーニャの祖父は体勢を戻したが、

「すみません、先輩のお爺様。先に先輩の容態を伺っても宜しいでしょうか?」

と、そのラニーニャの祖父にずっと気掛かりだった事をアルトは尋ねた。

 今、ラニーニャは別室で眠っていて、それをラニーニャの祖父とメイサとで看護している。

 ラニーニャを運び入れてから何時間も経つが、それからアルトはラニーニャの顔を見ていない。

 なのでとても気掛かりだったのである。

「ふむ。まだ眠ったままじゃが、お前さん達のおかげで少しは良いみたいじゃ」

 すると、ラニーニャの祖父は頷いてそう答え、

「そうでしたか……」

と、言ったアルトは胸を撫で下ろした。

「で、先輩のお爺様、話と言うのは?」

 それからアルトが話を戻すと、

「おお、そうじゃった……」

と、言ったラニーニャの祖父は一つ息を吐き、

「龍宮の者。お前さんはこれからどうするべきだと思う?」

と、アルトを真直ぐ見つめ問うてきた。

「それは先輩の事ですか?」

 その問いにアルトは問いで返してしまったが、

「そうじゃ」

と、ラニーニャの祖父は答え、

「そうですね……」

と、言って、大きく息を吐いたアルトは考えた。

 本当は今すぐにでもラニーニャを昴の者に認めさせるべきなのだろう。

 そうする事でラニーニャを傷つけた男、宝珠の国の皇子が手を出せなくなるからだ。

 だが、今はそんな事が出来る状態ではない。

 そして、その事を何故かラニーニャは望んでいない。

 なのでラニーニャの祖父の問いにアルトは答えられなかったのだ。

「すまぬの……。これは老い耄れの戯言と思って忘れてくれ……」

 すると、答えがない事を知っていたラニーニャの祖父からは乾いた笑いが生まれ、

「申し訳ありません……」

と、言ったアルトの眉が下がると、

 「いいんじゃよ。儂の方こそすまぬの」

と、言ってくれたラニーニャの祖父はアルトに優しい目を向け、

「先輩のお爺様。今はその答えは出せませんがどうか、先輩の傍にいてあげてください。

 それが、先輩が今、一番望んでいる事でしょうし。

 僕も微力ながら先輩を守りますので、どうか……」

と、今出来る事をアルトが伝えると、

「龍宮の者……」

と、アルトの心が伝わったラニーニャの祖父は目を潤ませ、

「わかった、龍宮の者よ。お前さんは本当に優しいんじゃのう」

と、言ったラニーニャの祖父は穏やかな顔で退室した。

「僕が優しい……? それは違いますよ、先輩のお爺様……」

 そう悲しく呟いたアルトはそれから変わらない生活を数日過ごした。

 その間、アルトは一人で瞳を閉じて考えていた。

 そもそも何故ラニーニャが昴から堕とされなくてはならなかったのか。

 本来ならラニーニャこそ皆で守るべきなのにどうして……。

 どうして世界はそれと真逆の道を進んでいるのか。

 そして、ラニーニャの気持……。

 どんなに考えても目の前の闇は消えずわからなかった。

 すると、アルトがいる部屋の外で大きな物音がしたのだ。

「な、何だ⁉」

 その音でアルトが瞳を開けると、その音は激しさを増し、

「まさか先輩⁉」

と、その音の発生源を察したアルトの顔色は変わり一目散にラニーニャの下へ向かった。

 そんなアルトがラニーニャがいる部屋へと向かう間ずっと物音は聞こえており、

その音は物を投げつけている様な音だった。

(おかしい……この屋敷には婆やの水の盾が張り巡らせらているはずなのに……)

 そう、アルトの思っている通り、この屋敷の周りにはメイサによる水の盾が張られている。

 なのでラニーニャに仇なそうとする如何なるものは決して入れないはずだった。

 だが、それにもかかわらずラニーニャの部屋で異変が起きている……。

 底知れぬ不安がアルトを襲い続けた。

(先輩! 今行きます!)

 その不安を振り払う様にアルトはラニーニャを思い走り、ラニーニャのいる部屋に到着した。

「先輩!」

 そして、部屋に入るなりアルトはそう叫んだ。

 だが、そこにいたのは声も出せず怯え切ったラニーニャだけだったのである。

 そのラニーニャは誰もいないのにそこにいる何かに怯え、手当たり次第の物を投げつけていたのだ。

「先輩、どうしたんですか? 僕です! 落ち着いてください。もうここは安全ですよ?」

 そのラニーニャにアルトが優しく声を掛けながら近づこうとしたが、

両手で頭を押さえているラニーニャから首を横に強く振られ、

「先輩⁉」

と、その行為でアルトの足が止まると、ラニーニャは強く胸を掻きむしり出した。

(まさか……、あの時の記憶がフラッシュバックしている⁉)

 それはアルトの想像通りだった。

 ラニーニャは宝珠の国の皇子からの仕打ちでその時の記憶に閉じ込められていたのだ。

 だが、それだけではなかったのである。

(先輩……? ま、まさか、声を出せない⁉)

 そう、ラニーニャは声を出さないのではなく、出せなかったのだ。

 あの時の出来事はラニーニャの心にまで深く傷を負わせていたのだ。

 その傷は決してアルトの治癒術では治せない。

 それがわかっているアルトは後悔の念に襲われ、何も出来ずその場に立ちつくした。

「喜蝶、俺だ……」

 だが、漆黒の炎を操る男はラニーニャに近づいたのである。

 そして、ラニーニャに優しく語り掛け、暴れるラニーニャを強く抱きしめた。

 すると、ラニーニャは暴れる事をやめ、漆黒の炎を操る男はそっとラニーニャを放し、

まだ息が荒いラニーニャをその吸い込まれる様な黒い瞳で見つめた。

 そして見つめられたラニーニャの瞳は潤み、漆黒の炎を操る男の胸の中ですすり泣き出した。

 その二人を見ていたアルトはその二人に近づけなかった。

 目の前に見えないがはっきりとある聳え立つ壁がそうさせたのだ。

 以前この壁と似た様な壁をアルトは感じた事がある。

 そう、それはケレスとジャップとの関係を見せつけられた時だった。

 そして、その時はその壁は低く、乗り超えて二人に近づきたいと思えた。

 だが、今回の壁はそうではなかった。

 決して二人の間に入れなくする壁……。

 それをはっきりと感じたアルトは俯いてしまったのである。

「しっかりしなさいな」

 すると、メイサに声を掛けられたアルトは、トンッと軽く頭を扇子で小突かれ、

「婆や……」

と、言って、眉が下がっているアルトが顔を上げると

「ほほ。良き男は遠くから女子オナゴの幸せをそっと見守るものですよ?」

と、そこにはそう言った穏やかな顔をしたメイサがおり、

「婆や……。そうだね!」

と、胸に何かが刺さる感覚はあったが、アルトは笑って言える事が出来た。

 それからラニーニャをイェンに託したアルト達は他の部屋で話す事となった。

「チビは、一体どうしたんじゃ?」

 そこで俯いて頭を抱えているラニーニャの祖父がぽつりと呟いたので、

「恐らく、あの事が先輩の心を深く傷つけたのでしょう。あの男の幻を見せる程に。

 そして、声も出なくさせる程に……」

と、感情を抑える為、アルトが自身の服を握り締めながら言うと、

「どういう事じゃ⁉」

と、声を荒げた ラニーニャの祖父はガバッと顔を上げた。

「言い難いのですが、先輩はこれから先、幾度となくあの幻に襲われるでしょう」

 そして、そのラニーニャの祖父の目を真直ぐ見つめたアルトがそう伝えると、

「そんな……。じゃ、じゃが、声が出ないと言うのは……?」

と、聞いてきたラニーニャの祖父は息が荒くなり、

「所謂失語症と言われるものです」

と、眉間にしわが出来たアルトが伝えると、

「ああ……」

と、言葉を漏らしたラニーニャの祖父は脱力し呆然となった。

「先輩のお爺様。しっかりしてください!

 こんな時こそ僕達がしっかりして先輩の傍に寄り添わなくてはいけないんです!」

 だが、しっかりと床に足をつけ立っているアルトはラニーニャの祖父を真直ぐ見つめそう伝えた。

 そう、今、自分達が何をすべきなのかを。

 すると、その事が伝わったラニーニャの祖父はまだ立てなかったが顔を上げる事が出来たのである。

 そして、そのアルトを見守っていたメイサが目を潤ませていた事にアルトは気付かなかった。

 そうやってラニーニャを守る事を決めたアルト達だったが、

数日後に現れる訪問者にまた運命を翻弄されるとはこの時は知る由もなかった。


 えぇ……。今回で【番外編 龍宮 アルトの憂鬱】は終了いたします……。

 作者の力不足をお、お許しくだせぇ……。

 んでも、続けたいんだよね~。

 で、何でそんな事を言うのかと言うと、

そろそろね、本編より言っちゃぁマズイ事が多くなってきたって訳なのよ。

 だから、この【龍宮 アルトの憂鬱】は、本編である程度話が進んだら……、

シリーズ化して投稿いたします! パチパチパチ♪

 色々とリニューアルするつもりなんで、投稿した時はまた応援の程、よろしくお願いいたします☆

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