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№ 50 ケレス、晴れた世界で悲しみを知る

 みんなでやっと取り戻したラニーニャの笑顔。

 それを見たケレス達も皆笑顔になれたのだが、その笑顔はある人物の一言で消えてしまう。

 そして、そんなラニーニャをケレスは放っておけなく……。

「アルト‼」

 太陽に照らされた笑顔の世界。

 それは、アルトの父の怒鳴り声と共に終わりを迎えた。

「父上……」

 そのアルトの父を眉を顰めたアルトが睨むと、

ケレス達の前にはアルトの父を筆頭に大勢の水鏡の人が集まっていた。

 そして、そんな彼らの顔は、皆、敵意に満ちていたのである。

(この人達……。まさか、姉ちゃんを⁉)

 そんな彼等の考えを察したケレスの顔が引き攣ると、

「何の用ですか? こんなに人を集めたりして……」

と、言ったアルトも彼等と同じ様に敵意を向けたが、

「アルト……。黙って、こちらに来なさい」

と、言ったアルトの父からは何故か敵意が消え、

「何を仰っているのですか?」

と、言って、敵意が消えないアルトがアルトの父を睨み続けていると、

「……これ以上、龍宮家の恥さらしにはならないでくれ」

と、アルトの父は表情なく恐ろしい言葉をアルトに投げつけた。

(この人……。今、何を言ったんだ?)

 そして、その言葉を聞いたケレスは背筋が凍りつき、動けなくなってしまったが、

「貴殿は、ここに相応しくない。出ていけ」

と、冷酷な目でラニーニャを睨みつけたアルトの父は静かにさらに背筋が凍る事を告げたのである。

「何て馬鹿な事を言ってるんですか‼」

 そのアルトの父にアルトは詰め寄ろうとしたが、

「アルト! やめて‼」

と、声を張り上げたラニーニャにそれを制され、

「せ、先輩⁉」

と、言ったアルトはそのラニーニャを困惑した顔で見たが、

「御迷惑を御掛して、申し訳ありませんでした」

と、静かに告げたラニーニャはアルトの父に深々と頭を下げ、

「お、おい⁉ 姉貴! 何言ってんだよ‼」

と、そのラニーニャをを見て動揺したジャップは怒鳴ったが、

「……ジャップ。ちょっと、静かにしててくれる?」

と、言ったラニーニャはそのままの姿勢で声をふるわせた。

「……アルトさんの御尊父様。私は、どんなお咎めも受けます。

 ですから、ここにいる者にはどうか寛大な御心を……」

 それからラニーニャは静かにそう告げ、

「先輩‼ やめてください‼ そんな奴の言う事なんて聞かないで‼」

と、眉間にしわが寄ったアルトは怒鳴ったが、

「貴殿が大人しく我が国から出て行き、二度と我が嫡男に関りをもたないと約束すれば、

ここにいる者に難の咎を負わせる事はないと約束しよう」

と、それを無視したアルトの父も静かに告げると、

「父上‼ あなたが何を言おうとも僕は……」

と、怒鳴り、眉間に深いしわが出来たアルトだったが、

「アルトさん……。もう、いいの」

と、ラニーニャの静かな声を聞くと、

「せ、先輩……? 何で、僕に、さん付けするんですか……」

と、呟く様に言ったアルトの眉間のしわはなくなった。

「もう、アルトさんに関わりません。二度と、近づきません。この国にも。だから……」

 そして、声をふるわせたラニーニャの両頬には、はっきりとした涙の道が出来ており、

「先輩……。どうしてそんな事を?」

と、放心状態になったアルトがラニーニャを見つめ呟くと、

「アルトさん。こんな事ぐらいで君の人生を駄目にしないで」

と、言ったラニーニャはアルトを見ずに、ふふっと笑った。

「はあぁっ‼ くぅっだらねぇ‼ こんな汚ねえ国、さっさと出て行こうぜ‼

 それから青いの! てめぇこそ、二度と姉さんに近寄るんじゃあねえぞ‼」

 その後、怒鳴ったフェイトはラニーニャとアルトの間に立ち塞がり、

水鏡の国の者達を憎しみの籠った目で睨みつけた。

 それからケレス達は何も出来ないままアルトと鼓と引き離された。

 そんなケレス達は水鏡の国の飛行艇で地上へと向かわされる事となり、

その中の一室にケレスは一人でいた。

(何で、こうなるんだ? おかしいだろ? 姉ちゃんが何か悪い事したか?

 アマテラス様は何がしたかったんだ?)

 そこでケレスは俯いて考えていたが、

「ケレス君、どうしたの?」

と、ラニーニャの声が聞こえ、

「姉ちゃん⁉」

と、言ったケレスが顔を上げると、そこに にこにこしたラニーニャがいた。

「なぁーーに、暗い顔してるの? みんな無事だったのに?」

 そして、そんなラニーニャに見つめられ、

「だって……」

としか、ケレスは言えなかったが、

「……大丈夫だから」

と、ラニーニャが小さな声で言ったので、

「姉ちゃん?」

と、言ったケレスが首を傾げると、

「きっと、みんな幸せになれるから……」

と、静かに言い残したラニーニャは たぬてぃとケレスから離れて行った。

「あっ、姉ちゃん⁉」

 そんなラニーニャをケレスが追いかけ様とすると、

「ケレス、今は、そっとしてやってくれ!」

と、険しい顔のジャップに征され、

「兄貴⁉ どうしてだ?」

と、動揺しているケレスが聞くと、

「今、姉貴は、そっとしてやった方がいいんだ。

 俺達の役に立たない優しさで、姉貴が壊れちまわない様にな!」

と、ジャップはそのままの顔で答えたが、

「何言ってんだ⁉ それこそ、姉ちゃんを一人になんかさせられない‼

 今、姉ちゃんを一人になんかしたら絶対、駄目だ‼」

と、怒鳴ったケレスはジャップの忠告を無視し、ラニーニャを追い掛けた。

 そして、ケレスがラニーニャの下へ行くと、

瞳を閉じたラニーニャはある部屋の窓に額を当てて凭れ掛かっていた。

「姉ちゃん‼」

 それからそんなラニーニャにケレスが声をかけると、

「どうしたの? ケレス君?」

と、びくっとして振り返ってケレスを真直ぐ見つめてきたラニーニャに聞かれ、

「いや、特に用はないけど、ほっとけなくって……」

と、そのラニーニャに苦笑いしながらケレスが答えると、

「ふふっ。変なケレス君」

と、言ったラニーニャは笑ったが、その笑顔はすぐに消えてしまった。

「……ごめんね。今、一人になりたいんだ」

 そして、そう呟く様に言ったラニーニャからケレスは視線を外され、

「駄目だ‼ 一人になんかさせられないよ‼」

と、そんなラニーニャを真直ぐ見つめたままケレスは気持ちをぶつけたが、

「ケレス君……。今、私ね、君の優しさがとても辛いの。耐えれそうに、ない……」

と、ケレスとまた視線を合わせて言ったラニーニャは笑ったがその瞳からぽろぽろと涙が零れ落ちた。

「ね、姉ちゃん……」

 その涙を見て、ケレスはジャップの忠告を聞かなかった事に後悔した。

 そして、今にも壊れそうなラニーニャに何も言えなくなってしまった。

「……ごめん。姉ちゃん」

 それからそんなケレスはラニーニャから小走りで離れた。

 そう、ケレスは逃げてしまったのである。

 そんなケレスが下を向いて歩いていると、

「やい、へなちょこ!」

と、声からも不機嫌さが滲み出ているフェイトから怒鳴なれ、

「フェイト……」

と、言って、顔を上げたケレスがフェイトを見ると、

「これからの事は、てめぇが心配なんかしなくてもいい‼

 もう姉さんを傷付けさせる奴等の所には任せられねえからな‼」

と、肩を上下に動かしているフェイトはケレスに敵意を向け怒鳴ったが、

そうだな、フェイト。俺も、同じ意見だ」

と、言いながら険しい顔のジャップが近づいて来た。

「赤いの⁉ てめぇにも任せられねえ‼」

 すると、フェイトはジャップにも敵意を向け、

「そんな事、言うな……。俺達で協力しねえと」

と、眉が下がったジャップから優しく言われたが、

「てめぇ達になんか任せたからこうなっちまったんだぜ? わかってんのか‼」

と、それでも喧嘩腰になったフェイトが怒鳴ると、

「もう、やめぬか。チビは誰にも任せられぬ」

と、静かに告げた うさ爺がケレス達に近づいて来た。

「うさ爺⁉ どういう意味だ?」

 その うさ爺の言葉でジャップの目が丸くなると、

「もう、いいんじゃ。お主等は、ようやったわ。

 これからは儂等の事は忘れ、皆で暮らしていくんじゃ」

と、穏やかな顔の うさ爺は答えたが、

「答えになってねぇ‼」

と、ジャップが怒鳴ると、

「単刀直入に言おう。儂等は、お主等の知らない所へ行く。そして、細々と暮らす」

と、言った うさ爺の顔は恐面へと一瞬で変わった。

「どうして? うさ爺⁉

 昴の人のせいか? 水鏡の国のせいか? ちゃんと説明して、ずっと宝珠の国でみんなで暮らそうよ‼

 うさ爺達が何処かに行く必要なんてない‼」

 その うさ爺にケレスは必死に訴えたが、

「気持ちは嬉しいが、それは叶わぬじゃろう……」

と、言った うさ爺から首をゆっくりと横に振られ、

「何でだよ‼」

と、ケレスは苛立ちをぶつける様に怒鳴ったが、うさ爺から何も言葉は返って来なかった。

 そして、うさ爺の言葉の真意がわからないまま飛行艇は地上へと到着してしまった。

 だが、そんな飛行艇から降りる事となったケレス達はそこで意外な人物から出迎えられた。

 ケレス君。

 どうしてこうなっちゃうんだろうね。

 どうしたら、前みたいにみんな笑って暮らせるのかな?

 それとも、うさ爺の言う通り無理なのかな……。

 何か良い方法があればいいんだけど、事態は悪い方向にいっちゃうんだよね。

 そんな次話のタイトルは、【ケレス、音も立てずに消えた者の行方を捜す】だ。

 ケレス君、しっかりするんだよ!

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