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№ 49 ケレス、晴れた世界で笑顔の花は咲き乱れる

 光るアスチルベを食べ続けているベコを見守っている間にケレスはまた新たな事を知る。

 そして、ベコは叫び、ケレスはラニーニャの下へ向かう。

 そこでベコがまたあの輝きを見せ……。


「……そこの気まぐれ蝶が教えてきたんだ」

 ジャップの問いに一つ息を吐いたフェイトはアマテラスの使いを横目で見ながら答えた。

「アマテラス様の使いがか⁉」

 そのフェイトの答えに驚いたジャップがアマテラスの使いを見ると、

「そう。私達がここに来たら急に晴れてそのコが現れたの。

 そして、心にこのお花と、お兄さん達の事を見せてきた」

と、顔を上げた未来から教えられ、

「そうか……。でも、よくこの花ってわかったな?」

と、色々な事がわかって綻んだ顔のジャップから聞かれ、

「当然だ! ここは俺と姉さんならわかるからな」

と、フェイトは笑いながら答えた。

「フェイト……。姉貴の両親がああなったんなら、お前も辛かっただろうな」

 だが、そのフェイトの心情を考えたジャップが眉を顰めると、

「……姉さんの両親と、俺の本当の両親は違う」

と、少し黙った後に言ったフェイトは眉を顰め、

「どういう事だ?」

と、目を丸くしたジャップが聞くと、

「俺と姉さんは赤いのと同じだから……」

と、フェイトは笑いながら答えたがその声はどことなく刹那毛だった。

(フェイトと姉ちゃん、血が繋がってないって事か⁉ じゃあ、どんな関係なんだ?)

 そのフェイトの言葉からラニーニャ達二人の関係をケレスは考えていたが、

「おお、そういう事か! じゃあ、お前も俺の弟になるって訳だな!」

と、言ったジャップは笑ってフェイトの頭をグシャグシャにし、

「赤いの⁉ 何しやがる‼」

と、グぐんっと背伸びをして怒鳴ったフェイトの眉は釣り上がったが、

「姉貴を助けてくれる礼だ!」

と、ジャップが陽気に言うと、

「はあっ? まだ安心すんじゃねえぞ‼ それに俺は、てめぇに言われなくても姉さんを助けたさ‼」

と、さらに背伸びをして前のめりになったフェイトは怒鳴ったが、

「そうだな!」

と、言って、余裕な顔のジャップはまたフェイトの頭をグシャグシャにしたので、

「おいっ⁉ 赤いの‼ ちょっと身長がデケエからってやめねえか‼」

と、フェイトがその手を掴みながら怒鳴ると、

「グモオォーーーーーゥ‼」

と、ベコの鳴き声がこの場に響き渡った。

「ベコ殿⁉」

 そして、その声に驚いたケレスがベコを見ると、ベコは光るアスチルベを全て食べ終えており、

「ベコ殿……。長殿みたいだ……」

と、そのベコの喰いっぷりを見たケレスの口から言葉と共に溜息が漏れると、

「余計な事を言っておる暇があれば、さっさとベコとあの娘の所へ戻らぬかぁ‼」

と、ケレスの頭の上でピョンピョン飛び跳ねている長から怒鳴なれ、

「だあぁっ⁉ わかった‼」

と、叫んだケレスはラニーニャの下へ向かう事となった。

 それからそんなケレスはラニーニャの下に戻る為に鳳凰島に上陸した場所へ戻ろうとしたが、

「ケレス様! こちらです‼」

と、鼓から声を掛けられ、

「アルトの婆やさん⁉」

と、足を止めたケレスが鼓を見て言うと、鼓の隣には巨大化した乙姫がいた。

「こちらにお乗りください!」

 すると、鼓は乙姫に乗る様に指示したが、

「でも、姉ちゃんの所へ戻るんじゃ?」

と、言ったケレスが首を傾げると、

「このまま行かせてもらいます!」

と、真面目な顔をで言った鼓が不敵な笑みを浮かべたので、

(うっ⁉ あの顔……。嫌な予感が……⁉)

と、思ったケレスの左口角はピクピク動き出したが、乙姫に乗り込んだ。

「お坊ちゃま! 宜しいですね?」

 それからアルトを見た鼓は一つ頷き、

「わかってる!」

と、アルトが返事をすると、乙姫はそのまま宙に浮かんで泳ぐ様に進み出した。

「う、浮いてる⁉ どうなってんだ‼」

 その信じられない現象にジャップの目は丸くなったが、

「本当だ⁉ すっごぉーーい!」

と、言った未来は、はしゃぎ、

「やっぱり、何か凄い事をしてる……」

と、言ったケレスは大きな溜息をついた。

 すると、

「それより、フェイト君……」

と、突然アルトがフェイトに声を掛けたが、

「君なんて付けんな! 青いの‼」

と、フェイトから怒鳴なれたので、

「……未来君には、ちゃん付けされてるのにかい?

 まあ、嫌なら、フェイト。これからどうやって先輩をマナの枯渇から救ってくれるのかい?」

と、つっこんだアルトが聞くと、

「ふんっ! 後は、その赤牛がやってくれるさ!」

と、ぷいっとアルトから顔を背けたフェイトは答え、

「ベコ君がかい?」

と、言ったアルトがベコを見ると、

「モォウ、モォウ、モォウ、モォウ‼」

と、ベコはジャップの左肩の上でいつもとは違う気合いの入った鳴き方をした。

「おおっ⁉ そうか! あの光を出してくれんだな?」

 そのベコにジャップが笑顔を向けると、

「そうか! ベコ殿のあの力はそういう力だったんだ!」

と、ベコがジャップを助けた時の事を思い出したケレスも笑顔で言ったが、

「あの光?」

と、言ったアルトが首を傾げたので、

「そうさ! ベコは前にも赤く光って、ケレスと姉貴を助けてくれたんだぜ?

 勿論、俺も助けてもらったがな!

 あっ⁉ でも、あん時は白銀だったっけか?

 まあ、何にせよ、今のベコに任せておけば大丈夫!」

と、教えたジャップは嬉しそうだったが、

「……僕は知らない」

と、言ったアルトが、しょんぼりすると、

「モゥ、モゥ、ウモ!」

と、ベコは首を縦に振りながら何かを伝える様に鳴いた。

「ありがとう、ベコ君。君なら先輩を必ず助けてくれるって信じるよ!」

 すると、そう言ったアルトは微笑み、

「さすがベコ! 任せたぜ!」

と、ジャップが陽気に言うと、

「当然だろ、赤牛め!」

と、フェイトも普通に言ったので、

(だから、何で兄貴達は精霊と話せるんだよ⁉)

と、ケレスは心の中でつっこんだ。

 そんな会話をしている間も乙姫は宙をまるで海の中を泳ぐ様に進んで行った。

 そして、遂に乙姫はそのまま泳いで光の神殿まで到達したが、

ケレス達を乗せた乙姫がラニーニャの傍へと近づいた時、乙姫は急に小さくなったのだ。

「へっ⁉ どうしたんだ?」

 その乙姫の急な変化に地面に下りたケレスが辺りを見渡すと、

「婆や⁉ しっかりするんだ‼」

と、アルトの叫び声が聞こえ、ケレスが鼓を見ると鼓は、アルトに支えられながらやっと立っていた。

「アルトの婆やさん⁉」

 そして、ケレスは鼓に近づこうとしたが、

「何をしているのですか? 私の事より、大切な事があるでしょう‼」

と、眉を顰めた鼓から怒鳴なれ、

「婆やは後で僕と行くよ! 君達は早く先輩を助けるんだ‼」

と、同じく眉を顰めたアルトから訴えられたので、

「わかった!」

と、言って、ケレスはラニーニャの所へ走って行った。

 それからケレス達がラニーニャの傍まで行くと、

「ダーナの者は?」

と、眉を顰めたイェンに聞かれ、

「それが、その……」

と、ケレスが言葉に詰まると、

「……ほれ見た事か」

と、大きな溜息をついた うさ爺から言われたが、

「うさ爺! ダーナの人は駄目だったけど、他に方法があるんだ!」

と、言って、ジャップがベコを見せると、

「モォウ、モォウ、モォウ、モォウ‼」

と、ベコは気合いが入った鳴き方をしてアピールした。

「まさか……⁉」

 そして、そのベコを見て呟いた うさ爺の顔は驚いていたが、

「おい! 赤牛‼ さっさと、やりやがれ‼」

と、フェイトから怒鳴なれジャップがベコをラニーニャに近づけると、

赤く光ったベコは木漏れ日の様な光の玉を出し、その光はラニーニャに降り注がれた。

 すると、ラニーニャの顔は先程までとは打って変わって穏やかになった。

(何となく、わかる……。これで、姉ちゃんは助かった!)

 そのラニーニャの顔を見たケレスが大きく頷くと、

「お母さん……」

と、呟いたラニーニャが、ゆっくりと目を開けた。

「ね、姉ちゃん‼」

「姉貴‼」

「姉さん‼」

 そして、各々がそう叫ぶと、

「喜蝶、良かった……」

と、優しく言ったイェンはラニーニャを抱きしめ、

「……イェン? どうして、あなたが?」

と、呟く様に言ったラニーニャの声を聞いた者は何も言葉が出なかった。

(姉ちゃん……良かった……。本当に良かった‼)

 そんなラニーニャを見たケレスは目頭が熱くなり、唯、それだけしか言葉が浮かばなかった。

 だが、

「先輩‼ 良かった‼」

と、叫んだアルトはラニーニャに近づこうとした。

 すると、無言で鼓がアルトの後ろ頭に扇子を、バシンッ!と振り下ろした。

「いっ、痛っ⁉ 何するんだ‼」

 そんな鼓に後ろ頭を押さえながらアルトが怒鳴ると、

女子オナゴの邪魔をするものではありませんよ‼」

と、目尻が釣り上がっている鼓から怒鳴なれ、

「そ、そんなぁ……」

と、悲しそうに言ったアルトの眉は下がったが、

「……アルト。ありがとう」

と、微笑んでいるラニーニャから言われると、アルトの眉は戻り、微笑んだ。

 そして、

「みんな、ありがとう。私、みんなの声、ちゃんと聞こえてたよ。

 本当に何て、お礼を言ったらいいのか、わからない……」

と、瞳を潤ませても微笑んでいるラニーニャが言うと、

「姉ちゃん。俺達の方こそ、感謝してる」

と、言ったケレスの瞳も潤んできたが、たぬてぃがラニーニャに凄い勢いで顔を擦り寄せたので、

「たぬてぃったら!」

と、言ったラニーニャは涙を一粒零したが自身の顔を たぬてぃに優しく擦り寄せた。

「その者を連れて帰れ」

 だが、フレースヴェルグを睨みつけているイェンの冷たい言葉がこの場に響いた。

「ギャオォォォス……」

 すると、悲しそうに鳴いたフレースヴェルグはラニーニャを見たが、

「彼女の気持ちを大切にしろ」

と、ラニーニャを強く抱きしめているイェンが言うと、

「イェン……」

と、言ったラニーニャはイェンからフレースヴェルグに目を転がした。

「ギャオォス……」

 そのラニーニャを切なく見たフレースヴェルグは小さな声で鳴いて根の一族の女を右前足で握り、

そして、ビョーーゥッ!と風を起こしながら空へと羽ばたいていった。

「これで良かったんだ……」

 それからそのフレースヴェルグを悲しく見つめているラニーニャにイェンが声を掛けると、

ラニーニャはイェンを見つめ、潤んだ目で微笑んだ。

 すると、晴れた世界の太陽の光がラニーニャの首元の雪桜の蕾のネックレスを照らし、

ラニーニャの笑顔を際立させ、ここにいる全ての者を笑顔にさせた。

 だが、そんな笑顔の世界はこの後すぐに終わりを迎える事となる。

 ケレス君! よくやった!

 もう、私から言う事はそれしかない‼

 うんうん……、いくら私の表現力がないとは言え、君はあまり活躍しなかったとは言え、よくやった‼

 さあ、後はみんなで笑って帰るのみだ!

 そんな次話のタイトルは、【ケレス、晴れた世界で悲しみを知る】だ……。

 ……あ、あれ⁉ 何で?

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