№ 47 ケレス、晴れた世界で儚く希望の光は消える
ラニーニャを助けるたった一つの方法、。
それはダーナの供与の力だった。
その力を求め、ケレスは走った。
そして、ダーナの者達がいる部屋へと辿り着く。
そこでケレス達が嘆願すると、一人のダーナの少女が協力に名乗りを上げるのだが……。
鼓と別れたケレスはアルトを追い掛け長い廊下を走っていた。
「な、なあ、アルト!」
そして、アルトを追い掛けながらケレスがアルトの背に声を掛けると、
「何だい、ケレス?」
と、真直ぐ前だけを見て走っているアルトは返事をし、
「えっと、ツヅミさんは一人で大丈夫なのか?」
と、走りながらケレスが聞くと、
「ああ、婆やね。彼女は強いから心配しなくていいよ」
と、アルトは振り返る事なく答え、
「でも、あんな人数を一人でって……」
と、それでも心配なケレスが言うと、
「今は人の心配より、僕達の目的の事だけを考えよう。
時間がないんだ、ケレス!」
と、言ったアルトは真直ぐ前だけを見ていたので、
「わかった!」
と、言ったケレスの心に、絶対に取り戻したい微笑んでいる姉の顔が浮かび、
(姉ちゃん……。絶対、助けるから、がんばってくれ!)
と、ケレスは強く思った。
それから立派な開き戸の前まで来るとアルトは足を止めたので、ケレスも足を止めた。
「ここだ。入るよ」
そして、そう言ったアルトが開き戸を開けるとその部屋の中は大きな畳張りの客間があり、
そこには着物姿の十人程の男女がおり、彼等から一斉にケレス達は見られた。
(もしかして、この人達がダーナなのか⁉
何かそう言われれば、凄く高貴な感じがする……)
そんな彼等と目が合ったケレスがゴクッと唾を飲むと、
「どうなされたのですか?」
と、その中の一人の中年の女性から聞かれ、
「ダーナの方々! 失礼を承知で申し上げます!
この中で供与の力を使える方、僕達に協力していただけませんか?」
と、一歩その部屋に入ったアルトが言うと、
「協力? 何故?」
と、言って、その女性は首をかしげたので、
「僕達の大切な人がマナの枯渇に陥ってます。
助けたいんです! どうか、力を貸してください‼」
と、言ったアルトは深く頭を下げた。
「お願いします‼ 助けてください‼」
それから、そのアルトに続いてそう言ったジャップも頭を深く下げ、
「お願いします‼」
と、言って、ケレスも頭を深く下げて懇願すると、
ケレス達の必死の訴えを見たダーナの者達は互いの顔を見合わせ少し困惑していた。
だが、
「いいですよ。私、協力します!」
と、黒髪のおかっぱヘアーで、黒い瞳、色白のベージュ肌、
薄黄色の着物を着た十歳ぐらいの少女はそう言って、ケレス達に近づいて来た。
「ありがとう。えっと、君、名前は?」
その少女としゃがんで目を合わせたケレスがそう聞くと、
「お草だよ。あなた名前は?」
と、答えた お草と名のった少女は聞いて来たので、
「俺、ケレスだ。そして、こっちが兄貴のジャップ。そして、友達のアルトだ」
と、言って、ケレスは紹介した。
「へえ……。ところで、ケレスさん。誰を助けたいの?」
すると、目を輝かせたお草がそう聞いてきたので、
「俺の姉ちゃんだ」
と、ケレスが答えると、
「お姉さんもいるんだ⁉ 兄弟が多くて羨ましいな!」
と、言った お草の目はさらに輝き、
「ははっ! まあ、血は繋がってないけど大切な家族なんだ!」
と、気恥ずかしくなったがケレスが自慢すると、
「へえ。異国の人って面白いね! いいな、そういうのって!」
と、言った お草は息を飲んで微笑んだ。
「お草ちゃん、頼む! 俺達と一緒に来て姉貴を救ってくれ!」
それから、しゃがんで お草と目を合わせたジャップがそう頼むと、
「うん。行くよ! 任せて、ジャップさん!」
と、頷いたお草は言ったが、
「ならぬぞ‼ お草‼」
と、この客間十二響き渡る怒号が飛んだ。
そして、ケレス達がその声の方を見るとそこには明石が仁王立ちしており、
その明石の顔は怒りで歪み、体全体から湯気が見える様だった。
「明石さん⁉ 何であなたがここに⁉」
その明石の迫力に驚いたケレスがたじろぐと、
「こ奴等が救いたがっておるのは、例の災いじゃ‼ 絶対に近寄っては、ならぬ‼」
と、お草の傍に近づいた明石は客間十二響く様に声を張り上げて怒鳴り、
「災い?」
と、言った お草だけは首を傾げ、その意味がわかってなかったが、
他のダーナ達は怯え、ケレス達を蔑む様に見た。
それから、そのダーナ達はそそくさとケレス達から離れて行き、
「お草ちゃん! そんな奴等から離れなきゃ駄目‼」
と、叫んだ最初にケレス達に話し掛けてきた女性はお草の手を思いっきり引っ張って自身の方に寄せ、
「どうして⁉ 困ってる人がいるんだよ?」
と、言ったお草が困惑すると、
「あれは、この世界から消えなきゃいけないの! 助けちゃ駄目‼
それが世界の為なの‼」
と、言って、その女性は無理やりお草を何処かへ連れて行ってしまい、
「お、おい⁉ お草ちゃん‼」
と、ジャップが呼び止めたが、お草は戻って来なかった。
「くそっ‼ じゃあ、誰でもいい‼ 姉貴を救ってくれ‼」
そして、他のダーナの者達に近づいてジャップは必死に訴えたが、
そのダーナの者達は誰一人その言葉に耳を貸そうとはしなかった。
それどころか、
「来ないで‼ あれの仲間だったの?
信じられない‼」
「あれ、まだいたんだ……。
どうりでアマテラス様が姿をお見せにならない訳ね……」
「でも、あれ、やっと死んでくれるって事? なら、嬉しいな!」
と、そのダーナの者達は耳を疑う様な恐ろしい言葉を平気で次々と並べていった。
「……お前達、何、言ってんだ? 姉貴は災いなんかじゃねえ‼
現に今、青龍の怒りを鎮めたじゃねえか‼
姉貴がこの国を救ったんじゃねえか‼
お前達を救ったんじゃねえか‼」
すると、その恐ろしい言葉を聞いたジャップが怒りに任せ声を張り上げたが、
それは、有り得ない」
と、一人のダーナの者は言い、
「何でだ? 俺達の目の前で姉貴がそうしたんだ‼」
と、肩で息をしているジャップが怒鳴っても、
「だって、あれは災いだよ? そんな力がある訳ない。
きっと、イヴ様が花梨様を救ってくださって、花梨様が私達を救ってくださったんだ!」
と、首を横に振って言ったそのダーナは、にっこりと笑い、
「もしかして、あれが死んじゃうからアマテラス様の恩恵で青龍様の怒りを鎮めてくれたのかもよ?」
と、そのダーナを見た他のダーナは嬉しそうに言った。
「お前等、何、言ってんだよ……? どうしてそうなるんだ⁉
てめぇ等、ダーナの癖によくそんな事が言えんな‼
てめぇ等こそ、災いじゃねえか‼」
そして、ダーナの者達の信じられない言動を前にしたジャップが憎しみを込め、そう怒鳴ると、
「そもそも、青龍様がお怒りになったのってあれのせいでしょ? やっぱり、あれは災い!
世界から消えた方がいいんだよ!」
と、また他のダーナはそう言って笑顔になり、
「わかったであろう? あれを誰も助け様とは思わない。
あきらめなさい。それが世界の答えなのだから」
と、穏やかな顔になった明石が言うと、
「明石さん‼ いい加減にしてください‼
世界はそんな事を望んでなんかない‼
姉ちゃんは災いなんかじゃない‼
俺達の国を何度も救ったんだ‼ エーリガル達だって、ゴンズ様だって救ってくれたんだ‼
それに今回だってここの人達を救ったのに‼ どうして姉ちゃんを殺そうとするんだ‼
あなたは間違ってる‼」
と、声を張り上げてケレスは必死に訴えた。
だが、
「話は終わった。お帰り願おうか?」
と、言った明石の目が一瞬で氷の様に冷たくなると、
「お願い。もう、帰って……」
「あなた達もいずれわかる。
あれが世界から消えた方が良かったって」
「そうさ。誰も、あれを助ける気はないよ」
という言葉を残し、全てのダーナの者達はケレス達の前から消えてしまった。
「ま、待ってくれ‼ 頼む‼ 姉貴を……」
そして、そんなダーナの者達に縋る様にジャップが叫ぶとある人物の怒鳴り声がこの客間に響いた。
ケレス君。
何で彼等はそんな風になっちゃったんだろうね……。
真実は君達が見たままなのにね……。
でも、悲しんでいる暇はない!
絶対にラニーニャちゃんを助けなきゃ男が廃るぜ?
と言っても方法がねぇ……。
ややっ⁉ まさかの救世主の到来だぁ!
その救世主とは一体……?
それがわかる次話のタイトルは、【ケレス、光からの使者より導かれし者と合流する】だ。
さぁ~て、それは誰でしょうねぇ?




