№ 44 ケレス、光からの使者の導きで強力な協力者を得る
アマテラスの使いの導きを信じ、ケレス達が向かった場所には二人の人影が見えた。
そして、その二人を見たアルトは叫ぶ。
それからその二人に背を向けたケレス達の前にはまたアマテラスの使いの導きがあり……。
「あれって、姉上と花梨様だ!」
龍神の岩があった島に見えた二人。
それは、イヴと花梨だった。
その二人を見たアルトがそう叫ぶと、また二人目掛け数回落雷があった。
「姉上‼ 花梨様‼」
その落雷に臆する事なくアルトが叫ぶと、二人の無事な姿が見え、
「そうか! あれはアルトの姉さんの水の盾で守ってんだな!」
と、ジャップは歓喜の声を上げたが、
「そうだね。でも、いつまで持つのかわからない」
と、言ったアルトは冷静だった。
すると、
「アルト! 青龍の狙いは私一人です。どうか、花梨様を安全な所へ‼」
と、イヴはアルトに必死に訴えたが、
「姉上……」
と、呟いたアルトの顔は険しくなり、
それからアマテラスの使いが、ひらひらと龍神の岩があった島へ飛んで行くのが見えたので、
「まさか、アマテラス様の意思って、花梨様を助ける事なのか⁉」
と、目を丸くしたケレスが言うと、いきなりジャップが浦島からイヴ達がいる島へと飛んで渡った。
「お前……、何言ってんだ?」
そして、そう言ったジャップはイヴを嫌悪感に溢れる顔で睨みつけ、
「貴殿は……⁉」
と、ジャップの睨みに怯んだイヴが言葉を失うと、
「……お前、俺達の大事な人を傷付けてまで花梨様を守ろうとしたんだろ?
だったら! 最後まで、てめぇ一人で守り切れよ‼」
と、怒鳴ったジャップは自身の右手の拳でイヴの冬夏青々をダンッ!と殴った。
すると、ジャップのその殴りではイヴの冬夏青々は、ビクともしなかったが、
「貴殿、その手は何故……?」
と、呟いたイヴが動揺の色を隠せずジャップに怯むと、また青紫色の雷がイヴ達を目がけ落ちた。
「兄貴‼」
ケレスはジャップの身を案じ、叫んだ
だが、
「……さて、行くか!」
と、落雷の後そこには陽気な声で言った無事なジャップの姿があり、
ジャップはそのままケレス達に笑顔を向けた。
「はぁ……。行くか!じゃあないだろ?
本当に君は無謀なんだから……」
すると、そのジャップに溜息交じりにそう言ったアルトは眉間の深いしわを見せ、
「はぁ……。全く、その通りじゃな……」
と、長も溜息交じりの言葉を投げつけると、
「二人共、ありがとう! 兄貴を守ってくれて!」
と、ほっとして言ったケレスは笑顔になり、
「ケレス、早く行こう! 彼を放っておいたら、また何をするかわからないよ?」
と、指示したアルトは龍神の岩があった島へと上陸した。
そして、
「姉上、僕も、彼と同じ意見です。
花梨様は姉上にお任せいたします。
それと、このままでは青龍様は姉上だけでなく、この国自体を滅ぼすつもりです」
と、眉間のしわが取れないアルトがイヴに伝えると、
「そんな……」
と、イヴはまた言葉を失ったが、
「僕達は何とかそれを阻止してみせます。
ですので、姉上。花梨様の事は御自身で最後までお守りください」
と、言ったアルトがそのままジャップの傍へ歩いて行くと、
「小童よ! なぁーーにをしておるんじゃ‼ さっさと上陸せぬか‼」
と、ケレスの頭の上でピョンピョン飛び跳ねている長から命令され、
「だあぁ! わかってる!」
と、叫んだケレスもその島に上陸した。
そんなケレスが龍神の岩があった島へと上陸すると、
アマテラスの使いはケレス達を何処かへ導く様にまた飛び始めた。
「なあ、長殿。アマテラス様の使いは何が言いたいんだ?」
そして、そのアマテラスの使いを見たケレスがそう聞くと、
「わからぬ。じゃが、付いて行くしかなかろう」
と、長は答えたが、アマテラスの使いはある場所でくるくると回って飛んでいた。
「お、おい。あれって、フレースヴェルグじゃないか⁉」
すると、それを見たジャップは目を丸くして叫んだ。
そう、アマテラスの使いが回っている場所の下でフレースヴェルグが弱弱しく横たわっていたのだ。
そして、そのフレースヴェルグの体には数本の矢が刺さっており、動けそうにはなかった。
「何であんな目に合ったんだ?」
そのフレースヴェルグの哀れな姿が目に焼き付いたケレスは動けなかったが、
「そんな事はしらん! アルト、あいつを助ける‼ 手伝ってくれ‼」
と、大声で言ったジャップはフレースヴェルグの傍へと走って行き、
「はいはい。手伝いますとも。
だけど……勝手に突っ走るなよ!」
と、言ったアルトはムッとしていたが、フレースヴェルグの傍へと駆け寄って行った。
そして、ケレスもそれに続くと、
「ギャオォォギャオ!」
と、フレースヴェルグが小さな声で威嚇をしてきたが、
「ほいほい。落ち着けって! 今、助けてやるからよ!」
と、言って、ジャップはそれを宥め、
「ちょっと痛いが、我慢しろよ……」
と、言って、フレースヴェルグに刺さっていた矢の内の一本を一気に抜いた。
「ギャアァーオォーズゥ‼」
すると、フレースヴェルグは叫び、ジャップをその鋭い嘴で突いたが、
「……痛いよな? だが、お前を助ける為だ。もう少し我慢してくれ」
と、優しく言ったジャップの右上腕からは血が滴り落ち、
「ギャオォォ……」
と、その血を見たフレースヴェルグが威嚇をやめ大人しくなると、
「よしよし! そのままでいてくれよ……」
と、言ったジャップは手際よく全ての弓を抜いていった。
「アルト! 後は頼んだ!」
それから、全ての矢を抜き終わったジャップがアルトにそう言うと、
「わかってる!」
と、言った険しい顔のアルトはフレースヴェルグの傍でしゃがみ、
「さあ、これで良くなる。よく頑張ったね……」
と、優しく言いながらフレースヴェルグに治癒術を施した。
そして、フレースヴェルグの治癒が終わると、
「さあ、終わったよ。痛かったね……。でも、よくがんばった!
そして、僕達の国の者の非礼を許してくれ」
と、言ったアルトはフレースヴェルグの頭を優しく撫で、
「ここは危ないから離れるんだ!
君なら逃げれるだろうし」
と、伝えると、立ち上がってフレースヴェルグに背を向けたが、
「……ジャップ、こっちに来たまえ」
と、感情なく言ったので、
「お、おぅ?」
と、不思議そうに言ったジャップがアルトに近づくと、
「君は何度言えば無謀な事をやめてくれるんだ‼
さっきもそうだけど、僕達が君に冬夏青々を張り巡らさなければどうなってたと思うんだい?
僕がいなかったらそのケガをどうしたつもりだい?
こんな酷い怪我……ああ、もうっ! こんなに深いのに……」
と、怒鳴るやら、ぶつぶつ文句を言うやらしながらもアルトはジャップに治癒術を施した。
「へへっ、悪いな! だけど、俺はお前を信じてたぜ!」
すると、そう言ったジャップは陽気に笑い、
「はぁ、全く……。君って奴は……」
と、アルトが右手で自身の額を押さえ眉間のしわを隠すと、
アマテラスの使いはまた何処かへ ひらひらと飛んで行ってしまった。
「さあ、次は何処に導くのか……」
そのアマテラスの使いを見たジャップがわくわくしながら言うと、
アマテラスの使いはどんどん高く舞い上がって行ったので、
「今度は滝の上か⁉」
と、そのアマテラスの使いを見守っていたケレスが驚きのあまり叫ぶと、
「滝登りか……。アルト、浦島で行けそうか?」
と、決め顔のジャップは聞いたが、
「どうも、それは無理そうだね……」
と、眉間のしわが減らないアルトから答えられ、
「おいおい……。今いい感じなのに、そんな事言うなよ!」
と、ガクッとなったジャップは苦笑いしながら言ったが、
「だけど、滝がなければ滝登りなんて出来ないよ」
と、見上げたアルトから冷静に言われ、
「滝がないだって⁉」
と、言って、ジャップも見上げ、ケレスも滝を見ると、
「な、ない⁉ 龍神の滝が……⁉」
と、言ったケレスは、愕然となった。
そう、龍神の滝があった所は唯の山肌が見えるだけで、滝は無くなっていたのだ。
「ど、どうなってんだ⁉ こんなに雨は降ってんのに⁉
いやいやいや⁉ そもそも滝は何処にいったんだ?」
その龍神の滝があったであろう所を見つめているケレスの目が丸くなり、頭を抱えると、
「青色童が言ったであろう? あの滝こそが青龍そのものじゃったんじゃ。
今、青龍はここにおらぬ。じゃから、滝が無くなっておるのは当然じゃて」
と、長から冷静に言われ、
「長殿! 落ち着きすぎだ‼
そんなのは滝が消えている説明になってないし、それよりどうやって、あんな所まで行くんだよ‼」
と、その長の落ち着き様に苛立ったケレスが怒鳴ると、
「おっしっ‼ お前等、あの崖を登んぞ‼」
と、言ったジャップは意気揚々とその滝があった場所に近づこうとしたが、
「無理だよ」
と、アルトから冷静につっこまれ、
「じゃあ、どうやって行くんだ?」
と、言ったジャップが怪訝そうな顔をしてアルトを見た時、
「ギャオォォス……」
と、か細く鳴いたフレースヴェルグがケレス達に近づいて来た。
すると、
「おっ⁉ マジか‼」
「えっ? いいのかい?」
と、ジャップとアルトが同時にそう言ったので、
「……あの、フレースヴェルグは何て言ったんでしょうか?」
と、ケレスが申し訳なさ気に聞くと、
「こいつが、俺達を乗せて上まで連れて行ってくれるってさ!」
と、ジャップは陽気に答え、
「はあ。そうですか……」
と、フレースヴェルグの気持を理解出来たケレスが溜息を漏らして言うと、
「でも、君一人で僕達三人も運べるのかい?」
と、心配になったアルトは聞いたが、
「ギャオオーースッ‼」
と、当然と言わんばかりにフレースヴェルグは胸を張って鳴いたので、
「よっし! 頼んだぞ‼」
と、ジャップが言うと、フレースヴェルグは背を低くした。
「じゃあ、ケレス。まずはお前からだ。乗ってくれ!」
そして、ジャップにそう言われケレスがフレースヴェルグの背へ乗ると、
それからケレスを挟んで、アルト、ジャップの順に乗り、
「いいぞ! フレースヴェルグ、飛んでくれ‼」
というジャップの号令でフレースヴェルグは風邪を纏い、空へと舞い上がった。
そのフレースヴェルグは見た目通り羽毛がふさふさ生えており、
その羽は水を弾く為か、羽と羽の間は全く濡れていなかった。
(へぇ。こいつの乗り心地もかなり良いな!)
そのフレースヴェルグにケレスがそう思っている間に、
フレースヴェルグは滝より上へと辿り着き、
「おい、フレースヴェルグ! あの光る蝶を追いかけてくれ‼」
と、ジャップが指示すると、
「ギャオーーーースッ‼」
と、返事をする様に鳴いたフレースヴェルグはアマテラスの使いを追いかけ様としたが、
ドガガガッ!とケレス達を乗せたフレースヴェルグに雷が直撃し、辺りは真っ白になった。
だが、アルト達の強固な冬夏青々に守られているフレースヴェルグは何事もなく飛行し続けていた。
「うえぇ⁉ 凄い音だ!」
そして、その落雷に怯えたケレスが舌を出してそう言うと、
「大丈夫かい? 雷は僕達が防ぐから、君は安心して彼を追ってくれ」
と、優しく言ったアルトはフレースヴェルグの頭を撫で、
「ギャオーーオオーース‼」
と、フレースヴェルグは気合いを入れる様に鳴き、そのままアマテラスの使いを追いかけた。
暫くアマテラスの使いを追いかけて行くと、暗い中、一か所だけ光っている場所が見えた。
「あ、あそこ! 何か光ってる⁉」
そして、それに気付いたケレスが指を差しながら言うと、
「あそこは世界樹がある所だね」
と、言ったアルトは小さく頷き、
「じゃあ、あそこは光の神殿か!
こんなに暗くても見えるんだな!」
と、ケレスが言った時にはアマテラスの使いはそこへ下り立とうとしており、
「どうやら目的地は光の神殿。それも、世界樹みたいだね」
と、アルトがアマテラスの使いが導こうとしている場所を言うと、
「そうみたいだ。じゃあ、フレースヴェルグ!」
と、言ったジャップがフレースヴェルグの背をぽんぽんと叩くと、
「ギャオーーーーース‼」
と、ジャップの意思を汲んだフレースヴェルグは鳴いて、そこへ向かった。
ケレス君♪
今回もジャップ君とアルト君の熱き友情を描いてみたんだけど、如何だったかね?
そして、またまた君の活躍は大して描けにゃかった……。
折角今回の投稿は初登校から一年という節目だったんだけど、ごめんねぇ!
次こそは、きっと君を主人公らしく描いてみせる!と……。
ま、まあ、それはそれとして……。
本日迄【嘘と秘密だらけの世界のかたすみで】を支えてくださった方々へ。
本当にありがとうございました!
感謝感激あめあられです☆
活動報告にも書いた様に、ここから今月の投稿ペースは2話/週となります!
とりあえずは今月はこのペースで投稿いたしますので、
今後とも【嘘と秘密だらけのかたすみで】をよろしくお願いいたします☆
ちなみに次話のタイトルは、
【ケレス、光からの使者の意志を知ったその先で希望を掴む道を切り開く】にゃのだ!




